アスペクトインジャズの第二話は、ルイ・アームストロング物語です。
3回に分けてルイ・アームストロングの初期の代表作を紹介しています。
ルイ・アームストロングは晩年まで演奏活動をしていましたので膨大な作品がありますが、油井先生がここで紹介したのは、アームストロングがジャズの歴史に影響を与えた最重要時期である1923年のキング・オリバー楽団によるジェネット盤から1928年までの演奏を集めています。
この時期の演奏だけで3回のシリーズにしているので、油井先生がいかにこの時期のルイ・アームストロングが重要とお考えなのかがよくわかります。
第一回はサッチモ初録音から全盛期を迎えるまでの初期の演奏を紹介しています。
ニュー・オリンズ時代から師匠とあがめてきたキング・オリバー楽団に於ける初吹き込みから、一時的にニューヨークに進出し、フレッチャー・ヘンダーソン楽団に多大な影響を与えた痕跡や、スキャットボーカル発明の瞬間を記録した「ヒービー・ジービーズ」など、興味深い音源ばかりです。
1923年のキング・オリバー楽団の録音は、ジャズの歴史に於ける最初の重要作品であり、基本的なライブラリーと言えます。
サッチモにとっても師匠のキング・オリバー(tp)にとっても初録音だった1923年の録音は、キッド・オリーのサンシャインバンド(1921年)に次ぐ、黒人のジャズ最初期の録音です。
番組では
・チャイムズ・ブルース
・ディッパー・マウス・ブルース
の二曲が紹介されました。
アナログ時代ではリバーサイドから10インチ盤ほかいろいろな形で発売されていました。
サッチモの初録音は、一聴の価値があります。
Chimes Blues By King Oliver's Creole Jazz Band
チャイムズ・ブルース/キング・オリバー・クリオール・ジャズ・バンド
King Oliver,Louis Armstrong(cor),Honore Dutray(tb),Johnny Dodds(cl),Lil Hardin Armstrong(p),Bill Johnson(bj),Babby Dodds(ds) 1923年4月5日録音
これも歴史的な名盤です。番組ではサッチモ加入前の最初期の演奏から1924年に加入後の二曲が紹介されていました。
フレッチャー・ヘンダーソン楽団は、エリントンより古いジャズ史に残るバンドですが、商業的には成功せず、CDの選択肢もそう多くありませんが、この盤はアナログ時代にも発売されたことのある決定盤です。
「Everybody Loves my Baby」は、サッチモがはじめて唄を吹き込んだ作品として、番組でも紹介されていました。
ルイ・アームストロングの第二回は、1924年にレッド・オニオン・ジャズベイビーズに録音された二曲からはじまり、1927年の自身のバンドであるホット・セブンに於いてスタイルを完成させるまでの過程を追っています。
第一回で紹介したCDですが、キング・オリバー、フレッチャー・ヘンダーソンの作品のほか、レッド・オニオン・ジャズベイビーズや当時の奥さんだったリル・ハーディンのバンドでの吹き込みなど、初期アームストロングの傑作を網羅しています。
レッド・オニオン・ジャズ・ベイビーズと題された「ケイク・ウォーキング・ベイビーズ」は、初期ジャズの決定的な名演です。 ここでの演奏はサッチモもすごいが、希代のインプロバイザー=シドニー・ベシェは、サッチモを凌駕しています。すごいです!彼にとっても代表的な一枚に違いありません。
Cake Walking Babies by Red Onion Jazz Babies ケイク・ウォーキング・ベイビィーズ/レッド・オニオン・ジャズ・ベイビーズ
Louis Armstrong(cor),Sidney Bechet(ss),Lil Armstorong(p),Buddy Christian(bj),Alberta Hunter(vo), 1924年12月録音
このCDは、スキャットボーカル発明の瞬間をとらえた「ヒービー・ジービーズ」(番組内では第一回目で紹介)が収録されています。
サッチモの歌は、最初は歌詞を歌うのですが、途中から「ダビタ・・ダッタ・・・」という意味不明の言葉になっていきます。
言い伝えによると、サッチモは途中から歌詞を忘れた(忘れたフリをした?)ために、途中からごまかすためにこのような歌い方をしたとされていますが真相は不明です。これがスキャット・ボーカルの誕生の瞬間だとされています。
いずれにせよ、すばらしいセンスとオリジナリティあふれる歌唱には間違いなく、当時としてもヒット作になった録音です。
Heebie Jeebies by Louis Armstrong and his Hot Five
ヒービー・ジービーズ/ルイ・アームストロング・ホット・ファイブ
Louis Armstrong(co,vo),Kid Ory(tb),Johnny Dodds(cl),Lil Armstrong(p),John St.cry(bj) 1926年11月16日録音
第三回はサッチモが歴史に残る最高の傑作を残した1928年の傑作を紹介しています。
ルイ・アームストロングは1970年に亡くなりましたが、当然1930年台、40年代も活躍を続け多くの感動的な傑作を残していますが、ジャズの歴史という意味では1920年代までが最重要時期と言っていいでしょう。
1928年の傑作は説明の必要がないほどです。
世界中のすべてのジャズファンが心に刻んでいる
WEST END BLUES ,MUGGLES ,TIGHT LIKE THIS を収録しています。
West End Blues by Louis Armstrong and his Hot Five
ウエスト・エンド・ブルース/ルイ・アームストロング・ホット・ファイブ
Louis Armstrong(tp,vo), Fred Robinson(tb),Jimmy Strong(cl,ts),Earl Haines(p,vo),Mancy Cara(bj,vo),Zutty Singleton(ds) 1928年6月28日録音
Muggles by Louis Armstrong and his Orchestra マグルス/ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・オーケストラ
Louis Armstrong(tp,vo), Fred Robinson(tb),Jimmy Strong(cl,ts),Earl Haines(p),Mancy Cara(bj), Zutty Singleton(ds) 1928年12月7日録音
Tight Like This by Louis Armstrong and his Savoy Ballroom Five タイト・ライク・ディス/ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・サボイ・ボールルーム・ファイブ
Louis Armstrong(tp,vo), Fred Robinson(tb),Jimmy Strong(cl,ts),Don Redman(as,vo),Earl Haines(p),Mancy Cara(bj), Zutty Singleton(ds) 1928年12月12日録音
この第三集は、第一集に収録されていない1928年の傑作を多く含んでいて、第一集と同様に重要な選曲になっています。アール・ハインズとのデュエットであるWeather Birdなどはとても昔の録音とは思えない芸術品です。
Weather Bird by Louis Armstrong
ウエザー・バード/ルイ・アームストロング
Louis Armstrong(tp),Earl Hines(p)
1928年12月5日 録音