Hank Mobley: ハンク・モブレー 主要リーダー作  CDレビュー  2

ここでは1958年から1964年頃(一部アルバムは66年頃の音源も収録)の作品を順次レビューします。

この時期はモブレーの黄金時代と言えるもので、おすすめ1位の「ソウル・ステーション」2位の「アナザー・ワークアウト」4位の「ペッキン・タイム」を始め、1位、2位とともに、傑作4部作と言われる「ワークアウト」「ロールコール」など、たくさんの代表作が吹き込まれました。

最高傑作として名高い「ソウル・ステーション」

埋もれていた傑作

「アナザー・ワークアウト」

リーモーガンのフレッシュなトランペットも楽しめる「ペッキン・タイム」


絶頂期だけあって、サイド参加作も多いですが、それらについては、代表的なものだけを取り上げてレビューします。このページでは、リーダー作に限ってほぼ網羅的にレビューしていこうと思います。


Peckin Time/Hank Mobley  ペッキン・タイム/ハンク・モブレー

1958年2月9日

Blue Note

おすすめ度

hand     ★★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★★

モーガン&ケリー=若き才能が集結。ハードバップの粋を感じる人気盤!

Lee Morgan(tp),Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Charlie Pership(ds)

19歳で生意気盛りなリー・モーガン の突き抜けるトランペットと落ち着いたモブレーのテナーの対比が素晴らしい。しかもウィントン・ケリーのピアノが、嫌味なくメロディアスに後押しをして世界観を作ってくれているため、質の高い演奏に仕上がっている。何度も聴き込みたくなる、味のあるJAZZだ。(ショーン)

モブレーの音色が、ややコルトレーン的になり、ここから快進撃が始まる。快調なモーガンと、地味なモブレーが渡り合っている。ケリーは、マイルス加入前だが、少しモーダルな雰囲気もありこれはこれで好感。(hand)

モブレーの全盛期のはじまりはこのアルバムから。タイトルはモーガンとの双頭アルバムだが、音楽的なイニシアチブはモブレーだと考える。全部自分のオリジナルにこだわらず、1曲だけ入れたスタンダード「スピーク・ロウ」。これもいいアクセントになっている。それ以外のモブレーのオリジナルも典型的なハードバップとして愛聴できる作品。(しげどん)



Monday Night at Birdland  マンディ・ナイト・アット・バードランド

Another Monday Night at Birdland アナザー・マンディ・ナイト・アット・バードランド

1958年4月21日

1958年4月28日

Roulette

おすすめ度

hand     ★★★☆

しげどん  ★★★☆

ハードバップ全盛期の熱気が伝わる熱いライブ

Lee Morgan(tp),Curtis Fuller(tb),Hank Mobley(ts),Billy Root(ts),Ray Bryant(p),Tommy Bryant(b),Charlie Wright(ds)

一部Specs Powell(ds)がWrightに代わる。

当時の若手スターの臨時編成コンボのライブ。モブレーやフラーがアレンジしたのか、多少のアレンジが入っている。当時のライブの様子が想像できる楽しい盤で、ジャム・セッションのモデルのような内容。モブレーの長いソロも聞かれるが、作品としてのまとまりはないので、モブレーのオススメ盤に選ぶのは微妙だ。(hand)

当時のバードランドは月曜はレギュラーグループがお休みで、若手のアーティスに場所を提供していたという。これはそのジャムセッション的なライブ。今となってみるとオールスターセプテットだ。ライブの雰囲気が充分とらえられた録音で、メンバーのソロが充分味わえる楽しめる盤。ハードバップが熱かった時期の歴史を記録した作品だ。anotehr・・も続編なので同レベルの作品。(しげどん)



Soul Station/Hank Mobley  ソウル・ステーション/ハンク・モブレー

1960年2月7日

Blue Note

おすすめ度

hand       ★★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★★

リラックスした中にも繊細さがある。最高傑作といえばやはりコレ!

Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Art Blakey(ds)

説明の必要のないモブレーの最高作。何度聞いてもいい。最初と最後がスタンダードだが、最後のIf I  Should Lose Youは余韻が味わえる名演だ。モブレーのリーダー作は彼のオリジナルが多いが、スタンダードも入っていたほうが、1枚のアルバムとしてバランスがいい。ウィントン・ケリーとブレイキーのサポートも隙が無い。(しげどん)

モブレーの黄金時代の幕開けにして、この作品がまさに白眉だ。ハードになり過ぎず、リラクゼーションを感じる、モブレーならではのハード・バップといえる。モブレーは、ハード過ぎる演奏だと、地味な性格なのか、埋没してしまうことがある。この作品では、ケリー達もうまくモブレーを盛り立て、録音も主役が目立つようになっている。愛聴盤としてオススメできる名盤だ。①モブレーのために作られたように感じる最高のスタンダード。②モブレーの2大名曲の一つだと思う。(hand)

抑え気味で余裕あるモブレーのブローイングが、繊細で美しいメロディを惹き立たせるRemember。This I Dig…も同様で、ともにケリーのピアノが光る。Split Feelin'sでは、ブレイキーの異国情緒あふれるドラムが、モブレーと快調に絡む。タイトル曲Soul Stationのブルースのリズムは、心地良く身体に染み渡る。何度でも聴きたくなる無駄のないアルバム。(ショーン)



Roll Call/Hank Mobley  ロール・コール/ハンク・モブレー

1960年11月13日

Blue note

おすすめ度

hand       ★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★

傑作4部作として名高い。モブレー絶頂期の熱い一枚。

ソウル・ステーションのメンバーに、フレディ・ハバードが加わった作品。できれば、加えないで欲しかった(笑)。もし、加えたなら、モブレーのマイクのボリュームをもう少しだけ上げて欲しかった!そんな内容の盤である。③テイクユアピックとフレディがミュートの⑤ザモアアイシーユーは素晴らしい。(hand)

これもモブレー絶頂期の作品。静的なイメージの前作に比べ、一転してアグレッシブなモブレーに拍手喝采したくなる。やはりリーダーはリーダーらしく最初からソロをとって欲しい。ゴスペル調の曲などオリジナルも多彩で、ハバードがミュートを吹いている唯一のスタンダードMore I See You も味があってよい。(しげどん)

アートブレイキーが暴れる程に、ハンクモブレーのテナー、そしてフレディハバードのトランペットも激しさを増すroll call。続いて、どことなく黒っぽさを感じるmy groove your move、最後のthe break downでも、ブレイキーごまたもや大暴れ。(ショーン)



Workout/Hank Mobley  ワークアウト/ハンク・モブレー

1961年3月26日

Blue Note

おすすめ度

hand       ★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★☆

これも傑作4部作。グラント・グリーンのギターも協調したハードなワンホーン作品。

Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Grant Green(g),Paul Chambers(b),Philly 'joe' Jones(ds)

これも代表作。前作同様にアグレッシブなモブレーのソロは素晴らしい。グラント・グリーンのギターが入っているが、彼も自分の出番以外は出しゃばらないので、ほとんどワンホーンカルテットのような気持ちで聴ける。(しげどん)

流れるようなテナーが、アップテンポの曲にマッチして、まるで快速電車に乗っているような心地良さが味わえる。

しかし決してガリガリの超特急ではない柔らかさがあるところも、モブレーらしさとまいえ、なかなかいいアルバムといえる。(ショーン)

グラント・グリーンが入って、ブルージーなくつろぎ盤かと思って聞くと裏切られる。くつろぎは少なめで、まさにピシッと統制がとれ、ハードなハード・バップ盤だ。(hand)



Another Workout  アナザー・ワークアウト/ハンク・モブレー

1961年12月5日

Blue Note

アナログ盤のデザイン↓

おすすめ度

hand       ★★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★

発掘盤ながら正規盤以上の素晴らしい一枚

Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Grant Green(g),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds)

発掘盤ながら、正規盤以上に素晴らしい。アルフレッド・ライオンは、何が気に入らなかったのか、分量的に足りなかっただけだと思う。特にハンクズ・アザー・ソウルは必聴曲だ。モブレーは、入り方を間違うと嫌いになりやすい人だが、この曲から入れば大丈夫だ。ワークアウトの未収録曲が1曲あるのでこのタイトルになったと思うが、ギターなしなので、雰囲気はソウル・ステーションに近い。もっといいタイトルにして欲しかった。ウィントン・ケリー、チェンバース、フィリーにとっても名盤だ。(hand)

ソウル・ステーションと双璧と言える彼の最高作。モブレーを味わうのはやはりワンホーンがいい。オリジナルも含め素材も彼のテナーでテーマを吹奏するのにフィットしていて、出だしから引き込まれる素晴らしい演奏だ。85年に発掘盤として発売されて、なんだかワークアウトに収録されなかった残り物みたいなタイトルでイメージ的に損しているのが残念だ。(しげどん)

2曲目の I Shoud Care が良い。このようなバラードでのモブレーのタメの効いたフレーズは、なかなかツウ好みの味わいがある。また5曲目の Hello Yong Lovers に見るような、テーマフレーズを落ち着いた雰囲気でこなして、徐々に盛り上がっていく感覚も好きだ。最後の愛の泉 は、ケリーのピアノが、小気味よく転がり、素晴らしい。(ショーン)



No Room For Squares/Hank Mobley  ノールーム・フォー・スクエアーズ/ハンク・モブレー

1963年3月7日,10月2日

Blue Note

おすすめ度

hand       ★★★

しげどん   ★★★★

ハード・バップから脱却しつつあった過渡期の作品

Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),Herbie Hancock(p)Butch Warren(b),Philly Joe Jones(ds)

Lee Morgan(tp),Hank Mobley(ts),Andrew Hill(p),John Ore(b),Philly 'joe' Jones(ds)

力強くモブレーらしさを感じる作品。60年から61年にかけて生み出した傑作の余韻を確認するように、アナザーワークアウトで演奏した曲も再演。マイルスのグループ参加でスランプになったのか名作連発のあとなぜか一年以上の空白をおいての作品で、次作からジャズロック路線が強まっていく。これが最後のハードバップ優良作かもしれない。堅物お断り・・・というタイトルも意味深だ。(しげどん)

新主流派的なモーダルなバックとモブレー、やはり合ってないと思う。この路線の先にあるのは引退、となる。作品として悪くはないのだが、モブレーが浮いている気がする。(hand)

 



The Turnaround/Hank Mobley  ザ・ターンアラウンド/ハンク・モブレー

1963年3月7日,1965年2月4日

Blue Note

おすすめ度

hand       ★★★☆

しげどん   ★★★

モブレーの転換点は後期ジャズ・ロック路線の出発点。

Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),Herbie Hancock(p)Butch Warren(b),Philly Joe Jones(ds)

Freddie Hubbard(tp),Hank Mobley(ts),Barry Harris(p),Paul Chambers(b),Billy Higgins(ds)

一曲目の65年のセッションは完全なジャズロック。二曲目、三曲目は前作の63年セッションの残り。二つのセッションには二年近い開きがありなんとなくコンセプトが定まらない作品のようなイメージだが、ターンアラウンドとは転換点でもあるけど、振り返って元に戻ってくるイメージもあり、行きつ戻りつといったところだろうか?とにかくディッピンにつながるヒット路線の第一弾作品だ。(しげどん)

完全なるジャズロックからスタート。モブレー版のサイドワインダーだ。新主流派的な曲やハードバップ的な曲もあり過渡期的な盤だ。クラブなどで流れているだけなら悪くないが、鑑賞したいとは思えない。(hand)

 



Straight No Filter/Hank Mobley  ストレート・ノー・フィルター/ハンク・モブレー

1963年3月7日  Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),Herbie Hancock(p),Butch Warren(b),Philly 'joe' Jones(ds)

1965年2月4日 Freddie Hubbard(tp),Hank Mobley(ts),Barry Harris(p),Paul Chambers(b),Billy Higgins(ds)

1966年1月17日 Lee Morgan(tp),Hank Mobley(ts),McCoy Tyner(p),Bob Cranshaw(b),Billy Higgins(ds)

おすすめ度

hand     ★★★★

しげどん ★★★★

発掘盤ながらカッコいい掘り出し物的名演

最初の3曲がこの日の録音の全てで、他は「ターンアラウンド」の未収録曲で、20年後の発掘盤。CD化で「ノールーム」の別テイクも追加された。①〜③3曲の内容は決して悪くない。多分、片面分の組み合わせる録音がなく、オクラ入りしたと思われる。②チェイン・リアクションは、モブレーには珍しいモーダルな曲で、コルトレーンの「インプレッションズ」に似たカッコいい曲だ。ピアノがマッコイだからだと思う。④⑤も追加された⑥⑦もノリのいい曲だ。ジャズロック期になって、ジャズロックではない曲が発売を見送られたのかもしれない。⑧⑨もいい。特にハンコックがいい。(hand)

マッコイ・タイナーとハービー・ハンコックという若い世代のリズムセクションのため60年代らしい音作りの本格的な聴きごたえのあるジャズになっている。実はリー・モーガンとタイナーが入ったクインテットによる66年6月の演奏に、63年の「ノー・ルーム」,65年の「ターンアラウンド」の残り物を加えた編集盤なのだが、モブレーとしては好調な時期の録音であり、作曲も多く提供していてお蔵入り音源の発掘作にもかかわらず完成度が高い作品になっている。(しげどん)