Eric Dolphy エリック・ドルフィー サイド作②


東海岸に移ったドルフィーは、特にミンガスの下で目覚ましい活躍を見せるようになります。特に「ミンガス・プレゼンツ・ミンガス」はモダンジャズの歴史的名盤だと思います。ミンガス以外にも、オリバー・ネルソンやジョン・ルイスなどとも重要な録音を遺しています



PREBIRD / Charles Mingus

1960.5.24 & 25

Mercury

おすすめ度

hand      ★★★☆

④⑦⑧:Marcus Belgrave, Ted Curson, Hobart Dotson, Clark Terry, Richard Williams(tp), Eddie Bert, Charles Greenlee, Slide Hampton, Jimmy Knepper(tb), Don Butterfield(tuba), Robert DiDomenica(fl), Harry Shulman(oboe), John LaPorta(as,cl), Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Bill Barron, Joe Farrell(ts), Yusef Lateef(ts,fl), Danny Bank(bs), Charles McCracken(cello), Roland Hanna(p), Charles Mingus(b,arr), Dannie Richmond(ds), Sticks Evans, Max Roach, George Scott(perc), Gunther Schuller(cond)

①②③⑤⑥:Ted Curson(tp), Jimmy Knepper(tb), Eric Dolphy(as,b-cl,fl) Booker Ervin, Joe Farrell(ts), Yusef Lateef(ts,fl), Paul Bley(p:1,3,5), Roland Hanna(p:2,4), Charles Mingus(b), Dannie Richmond(ds), Lorraine Cousins(vo:1,3)

ミンガスの初期ビッグバンドにドルフィーも参加

60年に録音され61年「プリ・バード」として出され、65年「ミンガス・リビジテッド」(Limelight)として出された盤。ミンガスの初期のビッグバンド、尊敬するエリントンの①Aトレイン、や⑥ドゥ・ナッシング、はやはりエリントン風になってしまう。それ以外のミンガスのオリジナルはミンガスらしい感じが出てくる。ただし、ミンガス=ドルフィー的なドルフィーの活躍はまだない。メインソロイストはブッカー・アービンで、ドルフィーは思ったほど活躍しない。⑦ビモーナブル・レディ、のドルフィーのソロは多少だがジョニー・ホッジスを感じる。ラスト⑧ハーフ・マスト…は、ガンサー・シュラー主導なのかクラシカルで私好みではない。(hand)



SCREAMIN' THE BLUES / Oliver Nelson

1960.5.27

New Jazz

おすすめ度

hand      ★★★☆

Richard Williams(tp), Eric Dolphy(as,b-cl), Oliver Nelson(ts,as), Richard Wyands(p), George Duvivier(b), Roy Haynes(ds)

ネルソンの超名盤「ブルースの真実」の直前作

名盤「ブルースの真実」で知られるオリバー・ネルソンの同作の前年作。ネルソンには残念ながら同作に比肩するような盤はないと思う。この盤は、冒頭タイトル曲①のファンクテナーのような音色にまず抵抗感を覚えてしまう。それ以外は普通の演奏なので、この部分は聞かなかったことにしてその後を聞くと、ドルフィーやリチャード・ウィリアムス、そしてリチャード・ワイアンズらの活躍により意外と好盤であることがわかった。特に⑤スリー・セコンズ、は「真実」に収録されていても違和感のない曲だ。ネルソンのテナーやアルトは、これという個性がなく、望洋とした感じだが、悪くはない。ドルフィーはネルソンバンドは居心地がいいのか、伸び伸びと演奏している感がある。(hand)



LOOKING AHEAD / Ken McKintyre

1960.6.28

New Jazz

おすすめ度

hand      ★★★

Ken McIntyre(as,fl), Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Walter Bishop Jr.(p), Sam Jones(b), Art Taylor(ds)

似たスタイルゆえにドルフィーと比べるとつらいマッキンタイヤーのリーダー盤

同じアルトで、ドルフィーに近いスタイルのケン・マッキンタイヤー盤に共演。左がマッキンタイヤーで、右がドルフィー。オリバー・ネルソンであれば作編曲者としてサックスの実力差に目を瞑ることもありうるが、マッキンタイヤーの場合もほぼ全作曲ではあるが、似たスタイルゆえに天才肌のドルフィーとの共演は多少苦しいところがある。悪い盤ではないが、あまり愛着も湧かなかった。(hand)



MINGUS AT ANTIBES / Charles Mingus

1960.7.13

Atlantic

おすすめ度

hand      ★★★★

Ted Curson(tp),  Eric Dolphy(as,b-cl), Booker Ervin(ts), Bud Powell(p:6), Charles Mingus(b,p:6), Dannie Richmond(ds)

ミンガス盤に大きくフィーチャーされるようになったドルフィー

「プリ・バード」に引き続きメインソロイストはブッカー・アービンだが、ドルフィーもほぼ互角に扱われるようになっている。特にラスト⑥ベター・ギット・ヒット…でのドルフィーのソロは突き抜けていてすごいと思う。ただし、当時の聴衆に理解されていたかどうかは微妙だ。(hand)



CARIBE / Latin Jazz Quintet

1960.8.19

New Jazz

おすすめ度

hand      ★★★

Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Charlie Simons(vib), Gene Casey(p), Bill Ellington(b), Manny Ramos(ds,timbales), Juan Amalbert(conga)

ドルフィーとラテンジャズの組合せの結果は?!

ドルフィーとラテン・ジャズ・カルテット(LJQ)の共演盤は2枚あるが、今回調べるまで、まさか2枚のLJQ盤が違うLJQとは知らなかった。どちらもドルフィーは元気に吹いている。ただ、ラテンバンドとドルフィーってどうなの?という想像に近い組合せだと思う。近年のラテンバンドのように強靭なコンガがあればハードボイルド感が出て違ったと思うが、チャカポコ的なコンガではアフロ感も弱く物足りない感が残る。(hand)



THE WONDERFUL WORLD OF JAZZ / John Lewis

1960.7.29, 9.8 & 9

Atlantic

おすすめ度

hand      ★★★★

Herb Pomeroy(tp:1,4,6), Gunther Schuller(French horn:4,6), Eric Dolphy(as:4,6), Benny Golson(ts:4,6), Paul Gonsalves(ts:1),  James Rivers(bs:4,6), John Lewis(p,arr), Jim Hall(gr), George Duvivier(b), Connie Kay(ds) 

ドルフィーとジョン・ルイスの共演の第1作

ドルフィーはルイス盤にオーケストラ盤を中心に5作品にフィーチャーされているが、これが初作で唯一の小編成盤。ルイスはMJQの実質的リーダーだが、西欧音楽好きなところがジャズファンにはあまり人気がない。私自身はミルトも好きだが、ルイスの間を生かしたピアノも好きだ。ただし、本盤のようなMJQ以外の盤を聞くことが多い。ドルフィーの参加は元盤では全5曲中1曲、CD追加2曲のうち1曲で計2曲。この盤は選曲からも私のルイスの2大愛聴盤「グランド・エンカウンター」と「アフタヌーン・イン・パリ」の続編で終わってしまいそうなとろで、ドルフィーのアルトの参加で多少だが只ならぬ感が出て良かったと思う。(hand)



TRANE WHISTLE / Eddie "Lockjaw" Davis

1960.9.20

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★☆

Bob Bryant, Clark Terry, Richard Williams(tp), Jimmy Cleveland, Melba Liston(tb), Eddie "Lockjaw" Davis(ts), Bob Ashton, George Barrow, Eric Dolphy, Oliver Nelson, Jerome Richardson(reeds), Richard Wyands(p), Wendell Marshall(b), Roy Haynes(ds), Oliver Nelson, Ernie Wilkins(arr)

ロックジョー、ネルソン、ドルフィーの3サックスの共演

ロックジョーとドルフィー、想像しにくい組合せだが、間にオリバー・ネルソンが入ることで違和感は解消している。また、ロックジョーはあまり知られていないが、ボス・テナー的に若手の登用していた人であることも分かってきた。そして、ネルソンの名曲④ストールン・モーメンツ、が収録されていることが意外だった。名盤「ブルースの真実」よりこちらの方がブルージーで、こちらがこの曲の初演かもしれない。残念ながらドルフィーのソロはない。(hand)



ESSENCE / John Lewis With Gary McFarland

1960.9.9

1962.5.25 & 10.5

Atlantic

おすすめ度

hand      ★★★★

John Lewis(p),Freddie Hubbard(tp:1,4,6), Louis Mucci(tp:1,4,6), Herb Pomeroy(tp:3), Nick Travis(tp:1,4,6), Mike Zwerin(tb:1,4,6), Bob Northern(French horn:1,4,6), Gunther Schuller(French horn:3), Robert Swisshelm(French horn:1,4,6), Don Butterfield(tuba:1,4,6), Harold Jones(fl:2,5), William Arrowsmith(oboe:2,5), Loren Glickman(bassoon:2,5), Phil Woods(clarinet:2,5), Don Stewart(basset horn:2,5), Eric Dolphy(as,fl:2,3,5), Benny Golson(ts:3), Gene Allen(bs:2,5), Jimmy Giuffre(bs:3), Billy Bean(gr:1,4,6), Jim Hall(gr:2,3,5), Richard Davis(b:1,2,4-6), George Duvivier(b:3), Connie Kay(ds), Gary McFarland(arr)

ドルフィーとジョン・ルイスの共演の第2作はサード・ストリーム盤

ドルフィーとジョン・ルイスの共演の第2作。ルイスのサード・ストリーム盤としてクラシックが苦手の私が敬遠してきた盤。ジャズとクラシックを融合した第三の流れと聞いただけで興味が薄れてしまっていた。今回、改めて聞いてみると、作曲とアレンジ、指揮をゲイリー・マクファーランドが担当し、ルイスがジャズピアニストとしてかなりフィーチャーされ、クラシックを感じるアンサンブルがメインではないので聞きやすく、聞かず嫌いではもったいない盤だと思った。ドルフィーの参加は、全6曲中②③⑤の3曲でアルトとフルートを演奏。ソロはルイスのピアノとジム・ホールのギターが中心で、ドルフィーはアンサンブル要員でソロはない。(hand)



MINGUS PRESENTS MINGUS / Charles Mingus

1960.10.20

Candid

おすすめ度

hand      ★★★★★

Charles Mingus(b), Ted Curson(tp), Eric Dolphy(as,b-cl), Dannie Richmond(ds)

ミンガス=ドルフィーの大傑作盤

ミンガスとドルフィーの個性が強烈に発揮された大名盤。ブッカー・アービンが抜けてメインソロイストとなったドルフィーが脱皮して生まれ変わったような素晴らしいソロを吹いている。このセッションで録音されたもう1曲ストーミー・ウェザー、は「ミンガス」と「キャンディド・ドルフィー」の両盤に収録されている。(hand)



MINGUS / Charles Mingus

1960.10.20 & 11.11

Candid

おすすめ度

hand      ★★★★☆

Charles Mingus(b), Ted Curson, Lonnie Hillyer(tp), Jimmy Knepper, Britt Woodman(tb), Eric Dolphy(as,b-cl), Charles McPherson(as), Booker Ervin(ts), Nico Bunink, Paul Bley(p), Charles Mingus(b), Dannie Richmond(ds)

(tp),  Eric Dolphy(as,b-cl), Dannie Richmond(ds)

「プレゼンツ・ミンガス」と並び立つ名盤

キャンディド時代のミンガスの落穂的な印象の盤だが正規盤だ。内容はかなり素晴らしい。特に②ストーミー・ウェザー、は「プレゼンツ・ミンガス」時の録音でドルフィーのアルトが素晴らしいバラード。「プレゼンツ」から除外した理由は時間的な制約とは思うが、雰囲気も多少甘めなので外して正解だったと思う。他の2曲の1曲①M.D.M. は「プレゼンツ」と同日に違うメンバーで録音した3曲の1曲。エリントン、モンクとミンガスをミックスした感じの曲で、確かにそんな感じのする面白い曲だ。同日の残り2曲は、ヴァッサーリーンが「ジャズ・ライフ」に、リインカーネーション・オブ・ラブ・バードが「キャンディド・ドルフィー」に解体されてしまい残念な状況だ。ここに3曲まとめて欲しかった。③ルック・エム・アップ、は22日後の11月11日の録音。この日の録音は複数あるがこのメンバーはこの曲だけなので「ニューポート・レベルズ」、「ジャズ・ライフ」や「キャンディド・ドルフィー」などが適していると思う。(hand)



CANDID DOLPHY / V.A.

1960.10.20 etc

Candid

おすすめ度

hand      ★★★★

Eric Dolphy(as,cl,fl), Charles Mingus(b), Ted Curson, Booker Little(tp), Dannie Richmond, Max Roach(ds), Abbey Lincoln(vo) etc

ドルフィーの入った他のリーダーのキャンディドのセッションからの編集盤

ドルフィーのリーダーセッションはキャンディドにはなく、他のリーダーのアウトテイクで、ドルフィー入りのものを集めた編集盤。中でドルフィーが目立つのは冒頭2曲のミンガスのセッション。「プレゼンツ」と同日録音の②ストーミー・ウェザー、が「ミンガス」と被っているのが私の日本人的潔癖症なのか、どうにも気に入らない。そもそも「ミンガス」にストーミーではなく、この盤の①リインカーネーション・オブ・ラブ・バードを入れれば、盤としても同一セッションで固められ、より完成度の高いものになったと思う。その辺はプロデューサーの感覚なのだろう。そうなれば、ストーミーはこの盤のキラーチューンになれたとう思う。オムニバス盤「ジャズ・ライフ」と「ニューポート・レベルズ」のドルフィー曲をまとめて収録しているのはありがたい。(hand)



THE JAZZ LIFE / Jazz Artists Guild

1960.11.11

Candid

おすすめ度

hand      ★★★☆

①:Roy Eldridge(tp), Jimmy Knepper(tb), Eric Dolphy(as), Tommy Flanagan(p), Charles Mingus(b), Jo Jones(ds)

⑤:Lonnie Hillyer, Ted Curson(tp), Charles McPherson(as), Eric Dolphy(b-cl), Booker Ervin(ts), Nico Bunick(p), Charles Mingus(b), Dannie Richmond(ds)

キャンディドの編集盤に2曲参加

プロデューサー、ナット・ヘントフの著書『ザ・ジャズ・ライフ』との連動企画らしいキャンディドのオムニバス盤。ドルフィーはミンガスバンドの2曲に参加。①R&R、はロイ・エルドリッジをメインにフィーチャーしているが、ドルフィーの比較的オーソドックスな素晴らしいソロが聞かれる。⑤ヴァッサリーン、はロニー・ヒリヤーのトランペットをフィーチャーしたバラードで、ドルフィーはバスクラのバックのみでソロはない。(hand)



NEWPORT REBELS / Jazz Artists Guild

1960.11.1 & 11
Candid

おすすめ度

hand      ★★★☆

Roy Eldridge(tp:1,3,5), Booker Little(tp:2), Benny Bailey(tp:4), 

Jimmy Knepper(tb:1), Julian Priester(tb:2), 

Eric Dolphy(as:1,4), Walter Benton(ts:2), 

Tommy Flanagan(p:1,3,5), Kenny Dorham(p:4), 

Charles Mingus(b:1,3,5), Peck Morrison(b:2,4), 

Jo Jones (ds), Max Roach(ds:2), Abbey Lincoln(vo:4)

キャンディドの編集盤に3曲参加

ジャズ・アーチスト・ギルドの作となっているが、実際はキャンディドのオムニバス盤。ニューポート・フェスの商業主義に反発?したミンガス、ローチらは同時に別の場所でアンチニューポートのライブを開催した。その録音自体はなく、そのメンバーの録音を集めたのがこの盤。ドルフィーは①③⑤のミンガスバンド3曲と④のアビー・リンカーンの1曲に参加。①ミステリアス・ブルース、ではこの時期のドルフィーにしてはオーソドックスなアルトソロが聞かれる。③ラップ・ユア・トラブルズと⑤ミー・アンド・ユー、はロイ・エルドリッジのトランペットが活躍し、ドルフィーのソロはない。④ノーバディズ・ビジネス、はリンカーンの歌のオブリガードのドルフィーが素晴らしく、ベニー・ベイリーのトランペットとドルフィーのアルトのソロも素晴らしい。(hand)