Booker Little ブッカー・リトル おすすめCD名盤&全リーダー・サイド作レビュー

夭折のトランぺッター、ブッカー・リトル(1938-1961)を取り上げます。メンフィスに生まれ、20歳でマックス・ローチ+4に参加し注目されます。61年に有名なドルフィー=リトル・クインテットを結成し、ファイブ・スポットでの熱演を遺しますが、その3か月後には尿毒症で23歳で亡くなってしまいます。あまりに短い生涯ですが、いくつかの名演奏を遺しています。単独のリーダー盤と言える盤は4枚ですので、ドルフィーとの双頭盤、ローチのサイド盤なども含めて談義しました。(しげどん)

単独リーダー盤自体が4枚しかないが、ジャズ・トランぺッターの歴史の一角をなしていることは確かだということで談義の対象となったリトル。やはり、音色、フレージングや作曲に魅力を持っていることは再確認できた。4枚のリーダー盤の中では、やはりタイムの「ブッカー・リトル」が圧倒的に3人の支持を受けた。続いてドルフィー=リトルだが、リトルに焦点が当たっていると思われる「ファイブ・スポットVol.2」がここでは選ばれた。3位には最終リーダー盤「フレンド」、そして、リトルは1曲のみ収録だが素晴らしい「ニューポート・レベルズ」。ローチ盤は、ローチの頑張りすぎか、考え過ぎにより人気がやや劣り「ディーズ・ノット・ワーズ」がかろうじて何とか5位となった。(hand)


おすすめ盤 1位:BOOKER LITTLE

1960.4.13 & 15

Time

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★★

Booker Little(tp), Tommy Flanagan(p:1,2,5,6), Wynton Kelly(p:3,4), Scott LaFaro(b), Roy Haynes(ds)

最高のメンバーで吹き込まれたリトル唯一のワンホーン盤は、トランペットの名盤の1枚

このレコードを買って40年もたってしまった。ナット・ヘントフのライナーがびっしり書かれた二つ折のジャケットは懐かしいが、ながら聴きだけしかしていなかったので、今回あらてめて聴き返して完成度の高さに驚いている。6曲中5曲が彼のオリジナル曲なのだが、どれもブッカー・リトルのソロを魅力的に引き出していて、完成されている。その才能にあらためて驚いてしまう。トランペットのワンホーン作はそれほど多くないが、短いキャリアの中でもこのような作品を残せたのは幸運な事だったのかもしれない。サイドメンの演奏も聴きどころが多いが、ブルースに於けるウィントン・ケリーのノリの良さも格別な魅力だ。(しげどん)

リーダー第2作は、フラナガンとケリー、そしてスコット・ラファロにロイ・ヘインズという最高のメンバーで吹き込まれたリトル唯一のワンホーン盤。何よりもリーダー盤らしくトランペットが最高に目立つ録音になっているのがいいと思う。なぜかリトルの録音にはトランペットの圧が控えめなものが多い気がするので、この盤のトランペットは圧倒的に素晴らしいと思う。そして、いつもは暗いリトルの音色に、この盤では暗い中にも、ほの明るさが感じられるのも魅力だと思う。(hand)

数少ないブッカー・リトルのリーダー作。素晴らしい出来だ。特にベースのスコット・ラファロが、まるで生き物の様に動き回る演奏で、色付けをしている。彼もまたリトル同様若くして夭折したとなると、二人の絡みはより深く心に響く。ピアノはウィントン・ケリーとトミーフラナガン。アルバム全体のクオリティを上げており、その中でリトルは大きな羽を持つ鳥の様に、大空を自由に舞っている。(ショーン)



おすすめ盤 2 位:AT THE FIVE SPOT VOL.2 / ERIC DOLPHY

1961.7.16

Prestige

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Booker Little(tp), Mal Waldron(p), Richard Davis(b), Ed Blackwell(ds)

ファイブ・スポットの第2集は、リトルの活躍が目立つ

63年リリースのファイブスポットの第二集。アナログ時代は片面1曲の長尺。①アグレッション、はリトル曲で本人の熱いソロが素晴らしい。マルも最高速のプレイで頑張っている。(hand)

ファイブ・スポットの第二集は、ブッカー・リトルとしては自身のオリジナルであるAggressionが、スピード感爆発のカッコいいシャープなソロが聴けて見せ場だ。スタンダードのLike Someoneは、ドルフィのフルートが印象的だが、自身の名義作でも演じているスタンダードを素直に歌い上げるリトルを味わう事ができる。(しげどん)

ブッカー・リトルはエリック・ドルフィーに後押しされて、スパイス感のあるノリのいいプローイングを展開しており、存在感をバッチリアピールしている。リトルのトランペットに関しては、vol.1よりこちらの方が良いかも知れない。ドルフィーのフルートもいい感じだ。全体を通してパワフルで前衛的な世界を感じさせるJAZZとして素晴らしいアルバムに仕上がっている。(ショーン)



おすすめ盤 3 位:BOOKER LITTLE AND FRIEND

1961.summer

Bethlehem

おすすめ度

hand        ★★★★☆

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★★☆

Booker Little(tp), Julian Priester(tb), George Coleman(ts), Don Freedman(p), Reggie Workman(b), Pete LaRoca(ds)

最終リーダー作は、親しみやすいハードバップ盤

ブッカー・リトルが、23歳の若さで亡くなる1年前の絶作と言われるアルバム。そのほとんどが彼のオリジナル曲で、その才能の素晴らしさを改めて感じることができる作品だ。3管の重厚さと軽快なリトルのトランペットの歌声は、独特の雰囲気があり、彼の「友だち」と共に生きている証ともいえ、感動と余韻に満ちている。(ショーン)

最後のリーダー作も三管編成。曲調、アレンジはもちろんブッカー・リトルらしい凝ったものだが、前作のような凝りすぎな感じはなく、自然体の雰囲気が好ましい。ローチやドルフィといった先輩格ではなく、同格の友達に取り囲まれて伸び伸びとプレイしている感じがする。Looking Aheadのようなスピード感ある若々しいプレイも魅力的だし、If I Shouldのようなスタンダードで、素直な吹奏が素晴らしい。(しげどん)

リーダー第4作にして最終作は、前作「アウト・フロント」からドルフィーが抜け、ローチ時代の僚友ジョージ・コールマンが参加。プリースターはそのまま。ドルフィーとコールマンが変わっただけで、盤の雰囲気はかなり違う。普通の聞きやすいハードバップ盤になっている。正直なところ、こちらのほうが親しみやすい。スタンダード④イフ・アイ・シュド・ルーズ・ユー、のリトルのワンホーンのバラードは泣ける。リトルをルーズしたのは聞いている我らのほうだから。(hand)



おすすめ盤 4 位:NEWPORT REBELS / JAZZ ARTISTS GUILD

②:1960.11.1

Candid

おすすめ度

hand        ★★★★

しげどん   ★★★★

ショーン   ★★★★☆

②:Max Roach, Jo Jones(ds), Booker Little(tp), Julian Priester(tb), Walter Benton(ts), Peck Morrison(b)

リトルの参加は‘クリフ・ウォーク’1曲のみだが、それだけでも聞く価値のある盤

マックス・ローチのドラムが素晴らしく、他のメンバーも反応して、リアルな汗がほとぼしるような勢いを感じる。ブッカー・リトルも良いが、他のトランペット奏者も魂を絞るような叫びがあり、ハッとさせられる。全体によくまとまった演奏ばかりで、素晴らしいアルバムだ。(ショーン)

ニューポートの反逆者たち。さぞかしアバンギャルドな演奏を予想するも、一曲目のブルースはどちらかと言うと中間派的で、ロイ・エルドリッジがいい味を出していて、そのあとに続くドルフィも、なんだか中間派的に聴こえるから面白い。咆哮するような演奏スタイルはジョニー・ドッズの時代からあったわけで、あらためて彼のスタイルも伝統に乗ったものだと思ったりする。肝心のブッカー・リトルは一曲だけだが、大きくフィーチュアーされていて、中間派的な演奏とは打って変わった切れ味の鋭い攻撃的な演奏で、すばらしいソロを聴かせる。(しげどん)

ジャズ・アーチスト・ギルドの作となっているが、実際はキャンディドのオムニバス盤。ニューポート・フェスの商業主義に反発したミンガス、ローチらは同時に別の場所(クリフ・ウォーク荘)でアンチ・ニューポートのライブを開催した。そのライブ録音自体はなく、そのメンバーのスタジオ録音を集めたのがこの盤。リトルは、ローチのバンドで場所にちなんだ②クリフ・ウォーク、1曲のみに参加。リトル作で、場所とブラウニ―に捧げた曲と思われる。リトルの勢いのあるトランペットが聞かれ、1曲だがリトル好きにはマストだと思う。他のメンバーは、プリースターのトロンボーン、ウォルター・ベントンのテナーとペック・モリソンのベースだ。このメンバーでの録音がこれ1曲なのが惜しまれる。(hand)



おすすめ盤 5 位:DEEDS' NOT WORDS / MAX ROACH

1958.9.4

Riverside

おすすめ度

hand        ★★★★☆

しげどん   ★★☆

ショーン   ★★★★☆

Max Roach(ds), Booker Little(tp:1-6), George Coleman(ts:1-6), Ray Draper(tuba:1-6), Art Davis(b:1-6), Oscar Pettiford(b:8)

チューバのレイ・ドレイパー入りのピアノレス・クインテット。リトルのトランペットは輝かしい。

マックス・ローチのアルバムだが、ブッカー・リトルは若々しく伸び伸びと演奏している。テナーのジョージ・コールマン、チューバのレイ・ドレイバーとの競演も面白い。ローチのドラムが、牽引力となっているのは間違いない。異国感のあるマイナーフレーズを多用した曲もあるが、ドラムソロ曲もあり、全体的にはローチの力強さが目立つ魅力的なアルバムだ。(ショーン)

「ニューポート」に引き続き、チューバのレイ・ドレイパー入りのピアノレス・クインテット。バド・パウエルやソニー・ロリンズのリーダー盤のマックス・ローチはとてもいいが、自らのリーダー盤やそれに準じた盤のローチはなぜかうるさくて昔からあまり得意ではない。この盤もうるさくないとは言えないが、レーベルの違いからか多少節度ある音量のように感じる。リトルのトランペットはとてもよく鳴っている。私好みの尖った音色もある。DEEDS' というのはアクションに近い意味の単語のようで、ローチの黒人解放運動につながる初盤かもしれない。(hand)

ローチ=ブラウンはハードバップだったが、この1958年もまだファンキー=ハードバップ全盛真っ只中のはず。でもファンキーとは無縁な抽象的なテイストで、アレンジも凝っていて、当時としては前衛的なイメージのある作品かと思う。チューバ入りのピアノレスクインテットも実験的。リトルのトランペットは輝かしい。(しげどん)