John Lewis ジョン・ルイス  おすすめCD名盤 & 全リーダー作 レビュー



モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の実質的リーダーであるジョン・ルイス(1920.5.3-2001.3.29)。MJQ自体は新ジ談メンバーにあまり人気がないのですが、ミルト・ジャクソンは第9回で取り上げた人気ジャズマンです。そしてこのジョン・ルイスについてもリーダー盤についてはhand氏は愛好しており、今回取り上げることとなりました。クラシックからフリージャズまで幅広くカバーし、ビバップ時代から活躍するピアニストでもあり、作曲家、アレンジャーでもあります。そんな多才なルイスについて談義してみました。(しげどん)


私handのお気に入りピアニストの一人であるジョン・ルイス。談義の結果は比較的順当と思われるもので、東西海岸共演の「グランド・エンカウンター」が首位となった。第2位も順当に大西洋の東西共演の「アフタヌーン・イン・パリ」が選ばれた。3位以降は票が割れ、「瞑想と逸脱」が僅差で3位に選ばれた。ルイスをトリオで聞くには最適な盤だと思う。そして私handのプッシュした「ジョン・ルイス・ピアノ」はぎりぎり5位に滑り込み、初期の50年代盤が5枚中4枚を占めることとなった。唯一60年代から選ばれたのが第4位、アルバート・マンゲルスドルフとの「アニマル・ダンス」。ルイスの、そしてトロンボーンの隠れ名盤だと思う。選外には、フリーに最接近した「ジャズ・アブストラクション」、後期80年代のプッテ・ウィックマンとの「ジョン・ルイス・アルバム」、初期の「ワンダフル・ワールド」、最終盤2000年の「エヴォリューションⅡ」と続いた。私自身クラシック音楽は苦手だが、なぜかルイスのクラシック系音楽は嫌いではない。「プレリュードとフーガ」も昔、愛聴した時期があり、プッシュしてみたが押し戻されてしまった(笑)。(hand)


おすすめ盤 1位:GRAND ENCOUNTER / John Lewis

1956.2.10

Pacific Jazz

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★★

John Lewis(p), Bill Perkins(ts), Jim Hall(gr), Percy Heath(b), Chico Hamilton(ds)

東西海岸の邂逅を記録した大名盤。ビル・パーキンスのテナーも秀逸

最高傑作だ。ビル・パーキンスのテナーが趣き深く語りかけ、ジム・ホールのギターも優しく応える。ジョン・ルイスの全てを包み込むような雰囲気が、メンバーにしっかり染み込んでおり、美しいメロディーがそこここに散りばめられた心が洗われるアルバムだ。(ショーン)

ジョン・ルイスのみならず、ビル・パーキンスにとっても代表作と言える名盤である。ジャケットも綺麗で魅力的な、格調高い落ち着いたいい雰囲気の作品だが、ジャズ的な破たんが好きな私にとっては、こじんまりとまとまり過ぎなイメージをもっていた。でも、あらためて聴いてみると、昔やや弱々しく感じていたパーキンスのテナーが、まさにレスター派的なまったりした中にも力強さもある一級の作品と感じた。パーキンスは6曲中4曲にしか登場しないが、ジョン・ルイスというより私はビル・パーキンスの一級作品として味わえた作品。(しげどん)

ルイス名義の初リーダー盤になる(「モダン・ジャズ・ソサエティ」が実質上は初盤だが、ルイスのリーダー表示なし。)。ルイスらしからぬ西海岸の風が漂うが、大傑作であることは間違いない。レスター的なビル・パーキンスをなぜ採用したのかと思うが、ルイスはレスターのサイドをつとめていたことを思えば不自然ではない。この盤をきっかけにパーキンスの盤を集めたが、なかなかこれを超えられないように感じた。名盤の多いジム・ホールにとっても上位盤であることは間違いない。ルイス自身は間合い十分のルイスらしいピアノが全編にわたり聞かれる。(hand)



おすすめ盤 2位:AFTERNOON IN PARIS / John Lewis & Sacha Distel

1956.12.4 & 7

Atlantic

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★

ショーン   ★★★★☆

John Lewis(p), Sacha Distel(gr), Barney Wilen(ts),

①-③:Pierre Michelot(b), Connie Kay(ds)

④-⑥:Percy Heath(b), Kenny Clarke(ds) 

米仏の邂逅セッション。若きバルネ・ウィランが光る。

ルイスと仏ギタリストのサッシャ・ディステルのパリ録音の共同名義盤。「グランド・エンカウンター」が米国内の東西海岸の邂逅だったのに対し、こちらは大西洋を挟んだ米仏の邂逅セッションになっている。MJQのパーシー・ヒースとコニー・ケイはこの録音のために連れて行ったのではないかと思う。そして、第三の主役と言えるのがバルネ・ウィランで、事実上の主役としてこの盤の内容を決定付けている。この時期のウィランはロリンズ風で、好印象の初々しいプレイがたっぷりと聞ける。ウィランは翌57年、初リーダー盤「バルネ・ウィラン・クインテット」を吹き込むだけでなく、マイルスの「死刑台のエレベーター」にも参加し、メジャーアーティストとなっていく。57年はルイスの三大名盤が録音されたものすごい年だった。(hand)

静謐なピアノとベースの響きに、ギターとサックスの優しい味付けが心地良い1曲目I cover the  waterfront 。2曲目のDear old stockholmでは、メロディを細かく切り分けて演奏するあたりは、仲良くノリ良く面白い。後半の演奏が、ややダレる感じで惜しい。(ショーン)

編成がグランド・エンカウンター同様にギターとテナーを加えたクインテットで、テナーはバルネ・ウィラン。東西のエンカウンターではなく米欧の邂逅だ。この盤も有名曲を多く取り上げていて親しみやすい一枚でいい作品だが、グランド・エンカウンターと比較すると、やや大味に感じる。(しげどん)



おすすめ盤 3位:IMPROVISED MEDITATIONS & EXCURSIONS / John Lewis 瞑想と逸脱の世界

1959.5.7

Atlantic

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★★

John Lewis(p), Percy Heath(b:4–6), George Duvivier (b:1–3,7), Connie Kay(ds)

ピアノトリオでのルイスを聞くのに最適な盤

タイトルからしてジョン・ルイスらしい内省的で難解な音楽を想定してしまい、私のような単純なジャズファンは避けてしまいそうなタイトルだ。でも内容はジョン・ルイスにしては珍しいくらいのノリのいいハッピーなジャズ。オーソドックスなピアノトリオとは少し違ったルイスらしい変化もあり、楽しめる一枚だった。(しげどん)

元タイトルもすごいが、日本タイトルもすごくて、どう見ても売れなそうだ。せめて「瞑想と逸脱」でよかったのではなかったかと思う。内容は、至ってルイスらしいピアノトリオ盤で、ルイスをトリオで楽しむには最適な盤だと思う。4曲にジョージ・デュビビエが入っているが、残り3曲がヒースとケイのMJQリズム隊で、特段違う雰囲気にはなっていない。(hand)

真面目なジョンルイスのメロディ展開のせいか、全体を通してさして抑揚のない優等生的な演奏となっている。私個人的には、淡々とした演奏よりスリリングな演奏が好きなので、少し物足りない。(ショーン)



おすすめ盤 4位:ANIMAL DANCE / John Lewis & Albert Mangesldorff

1962.7.30

Atlantic

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★☆

ショーン   ★★★★★

1–6:John Lewis(p:1,3–6), Albert Mangelsdorff(tb), Karl-Theodor Geier(b), Silvije Glojnaric(ds)

7:Zagreb Jazz Quartet:Bosko Petrovic(vib), Davor Kajfes(p), Miljenko Prohaska(b), Silvije Glojnaric(ds)

ルイスとアルバート・マンゲルスドルフが共演したモダントロンボーンの名盤

軽快かつ爽やかなJohn Lewisのピアノプレイと時に優しく時に強くリードするAlbert Mangelsdorffのトロンボーンが、なんとも良い雰囲気を醸しており、思わず心がホッとする。少しスケールを外して緊張感を与えるAlbertが、真面目なJohnの演奏に彩りを与えていて、心地良く聴き続けられる大人なjazzとして完成した。(ショーン)

ルイスのピアノトリオ+アルバート・マンゲルスドルフのトロンボーンという構成。②枯葉、はルイス抜き。⑦オーナメンツ、のみはドラムだけが共通のザグレブ・ジャズ・カルテットの演奏。モダントロンボーンのワンホーン盤としてかなりの名盤に位置付けられると思う。真面目系のマンゲルスドルフの影響か、ルイスもいつものくつろぎ系のピアノではなく、緊張感のある演奏をしており、これはこれで好感だ。(hand)

アルバート・マンゲルスドルフのトロンボーンが中心で、ドイツのミュージシャンにジョン・ルイスが客演した感じである。マンゲルスドルフのトロンボーンはオーソドックスで聴きやすく、悪くはないが、ジョン・ルイスの作品としては特筆すべきものは感じなかった。(しげどん)



おすすめ盤 5位:THE JOHN LEWIS PIANO

1956.7.30

1957.8.24

Atlantic

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★☆

ショーン   ★★★★

John Lewis(p), Barry Galbraith(gr:3,5,6), Jim Hall(gr:7), Percy Heath(b:2,4), Connie Kay(ds;1,2,4)

若きルイスの枯れた味わいが何とも言えず素晴らしい名盤

名盤ガイドで見て購入し、初めて聞いた印象はあまり良くなかった。20年くらいジャズを聞いた後に聞くとこの枯れた味わいが何とも言えず素晴らしいと思うようになった。今回、改めて気づいたのは、この盤が一気に録音されたものではなく、寄せ集めであるということ。しかしながら、完成度はかなり高い。これはルイスの音楽性にいつもブレがないということだと思う。ルイスのピアノをメインに、親しい仲間が少しだけ、曲によっては加わるという構成も良い結果につながったのだろう。(hand)

完全にジョン・ルイスのソロピアノを聴かせるアルバムで、ギターもルイスのリードで脇役に徹している。静かでソツのないプレイだが、辛口に言うと、メリハリに乏しく聴きどころがない。(ショーン)

全7曲のうち4曲がギターとのデュオなので、その印象が強い。通常のピアノトリオ編成は2曲だけで、残りの1曲はドラムとのデュオという変則編成だ。ビル・エバンスのアンダーカレントのような落ち着いた作品が好きな人向き。トリオで演奏するD&Eのような曲はノリが良くスィングしているので、私としてはもっとトリオ演奏を増やして欲しかったが、一般的にはデュオ編成の内省的な曲が高く評価されているのだと思うけど、私好みではない。(しげどん)