Art Farmer CD 主要作 ディスクガイド:                      リーダー作1

アート・ファーマーには、完成したスタイルをずっと維持し続けた職人的な名手といったイメージがあります。しかし今回彼の主要作を聴き通してみて、実は常に試行錯誤をしながら変貌していった人なんだと改めて感じます。

クリフォードブラウンの初期の名演

例えばこのPrestige盤「CLIFFORD BROWN MEMORIAL」で有名ストックホルムセッション(1953年)は、ファーマーの初期の演奏と言えますが、私にはブラウニーもさることながら、ファーマーの素晴らしさを感じます。それを聴いた後で、下記の1.Art Farmer Septet を聴くと、当時の彼のスタイルがよくわかります。

おすすめ盤ベスト5には、そのようないろいろな段階のものが選びきれないので、この主要作のディスクガイドで、できるだけご紹介します。ぜひ埋もれた名盤を探し出してください。

1955-57の代表作のお買い得コレクション



Art Farmer Septet  (Work of Art /Art Farmer)  アート・ファーマー・セプテット

1953年7月2日

1954年6月7日

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★★

1953年7月2日 Art Farmer(tp),Jimmy Cleveland(tb),Cliff Solomon(ts),Oscar Estell(bs),              Quincy Jones(p),Monk Montgomery(e-b),Sonny Johnson(ds)

1954年6月7日 Art Farmer(tp),Jimmy Cleveland(tb),Charlie Rouse (ts),Danny Bank (bs),Horace Silver (p),Percy Heath(b),Art Taylor (ds)

ハンプトン楽団メンバーとの共演。初リーダー作。

クリフォード・ブラウンと名演を演じたライオネル・ハンプトン楽団での訪欧は1953年9月。この作品A面はその2か月前の録音で、当時のハンプトン楽団のメンバーとの共演。クインシージョーンズとジジ・グライスのアレンジも同様な雰囲気で、ブラウニーのパリセッションと比較して資料的な聴き方をすると面白い。

ここでベースを弾いているモンク・モンゴメリーは、あのウエス・モンゴメリーのお兄さん。彼はエレキのベースを弾いており、この録音がジャズ史上初めてのエレキベース録音と言われている。(しげどん)

クインシーのアレンジを全体に感じる。イブニングインパリは名曲(hand)

1953年の録音は、オリジナルは10インチLPでWork of Art というタイトルで発売。録音時間が5分前後なのは最初からLPを意識して作られていたから?

後年New Jazz8278で再発された時も同様のタイトル。54年録音の4曲は当初78回転SPで発売されていましたが、53年の録音のうち一曲目MAUMAUは両面にまたがるSPで発売されていました。



Early Art /Art Farmer  アーリー・アート/アート・ファーマー

1954年.1月20日  Art Farmer(tp),Sonny Rollins(ts),Horace Silver(p),Percy Heath(b),Kenny Clark(ds)

1954年11月9日  Art Farmer(tp),Wynton Kelly(p),Addison Farmer(b),Herbie Lovelle(ds)

New Jazz

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ソニー・ロリンズ,ウィントン・ケリーの参加も興味深い初期の佳作。

クリフォードブラウンととても似ている。フリューゲルホルンに変えたきっかけではないか?恋したことはないは名曲名演(hand)

アート・ファーマーの味わい深いソロが楽しめる作品。うっとりさせるような一面がよく出ていて、特にミュートよりオープンのソロがいい。A面で若かりしロリンズが聴けるのも面白いが、B面のワンホーンカルテットはウイントン・ケリーの参加もあり聴く価値がある。(しげどん)



When Farmer Met Gryce ホエン・ファーマー・メット・グライス

1954年5月19日 

1955年5月26日

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★

しげどん  ★★★☆

ショーン  ★★★★

1954年5月19日  Art Farmer(tp),Gigi Gryce(as),Horace Silver(p),Percy Heath(b),Kenny Clark(ds)

1955年5月26日  Art Farmer(tp),Gigi Gryce(as),Freddie Redd(p),Addison Farmer(b),Art Taylor(ds)

Prestige

グライスとのコンビの第一弾。スィングジャーナルゴールドディスクにもなった有名盤。

グライスは好きなアーティストだが、この盤は、過去にはピンと来たことがない。名盤だと言われるが、どこがいいかわからない盤(笑)。多分、全体に慌ただしく落ち着きとくつろぎが不足している。(hand)

スイングジャーナルゴールドディスクにもなった有名盤。ジジグライスの曲だけで構成されているが、A面はアップテンポの曲調が続きやや単調。脇役に徹したホレスシルバーの個性が面白い。B面のほうが曲調は変化に富んでいて味わいがある。(しげどん)

ジジのアルトが冴え渡り、ファーマーも触発され、美しい旋律と軽快なコンビネーションを披露!しかもピアノのホレスシルヴァー、フレディーレッドも情感豊かに加わり、どの曲も素晴らしい仕上がりだ。特に1曲目の A NIGHT AT TONY'S は秀逸!(ショーン)



The Art Farmer Quintet                                                                                イブニング・イン・カサブランカ/アート・ファーマー

1955年10月21日

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★

Art Farmer(tp),Gigi Gryce(as),Duke Jordan(p),Addison Farmer(b),Philly Joe Jones(ds)

再びグライスとのコンビ。タイトル曲はファーマーらしい哀愁ただよう名演。

前作とほぼ同メンバーながら、落ち着きと陰影もあり、こちらの方がいい。過去の評価がなぜ前作が高いのかわからない。(hand)

再発時の日本タイトルは「イブニング イン カサブランカ」。グライスがハンプトン楽団とヨーロッパを訪れた時に曲想を得たという曲だが、雰囲気のある曲なので、これをタイトルにしたのは正解だと思う。グライスのオリジナルは雰囲気に変化もあり楽しめる作品。(しげどん)

ジジのアルトとファーマーのトランペットの競演。テンポの良い佳曲揃いで、安定した内容のアルバム(ショーン)



Two Trumpets / Art Farmer & Donald Byrd                                                 トゥー・トランペッツ/アート・ファーマー&ドナルド・バード

1956年8月3日                       Prestige

おすすめ度

hand        ★★★★

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★☆

Art Farmer,Donald Byrd (tp),Jackie McLean(as),Barry Harris(p),Doug Watkins(b),Art Taylor(ds)

ドナルド・バードに触発されてホットなソロを展開するファーマー

50年代のハードバップの雰囲気が味わえるジャズらしさ全開の作品。ドナルド・バードのトランペットはメロディアスで上品。

ファーマーもホットな熱演をしており彼を静的なトランペットと思ったら間違いだ。ほかのメンバーの存在感も十分に楽しめる。今回はCDで聞いたが、アナログが欲しくなった。(しげどん)

単なるプレスティッジのジャムセッション的な盤だろうと思って聞くと、きちんとアレンジされた盤である。ファーマーとドナルド・バードの二枚看板に、好調のジャッキー・マクリーンも加わり、隠れ名盤である。1曲目からかっこいいソロの共演が聞かれる。③のファーマー、⑤のバード単独も素晴らしい。(hand)

ドナルド・バードとアート・ファーマーの2人のトランペッターが競演する贅沢なアルバムだが、テンポの速い曲が多く、ハリキッタ2人が疾走すると、ごちゃごちゃしてしまい、やや聞き辛くなるところもある。最後のラウンド・ミッドナイトは、ドナルド・バードの快活なトランペットの雰囲気が良い。(ショーン)



Farmer’s Market/Art Farmer                                                                            ファーマーズ・マーケット アート・ファーマー

1956年11月23日

New Jazz

おすすめ度

hand        ★★★☆

しげどん   ★★★★☆

Art Farmer(tp),Hank Mobley(ts),Kenny Drew(p),Addison Farmer(b),Elvin Jones(ds)

ハンク・モブレーの参加が目をひくハード・バップらしいまとまりがある作品。曲もイイ。

グライスがモブレーに代わり、ハードバップらしい盤になった。ケニードリューのピアノの溌剌感はいい。エルビンの初期の演奏が聴ける。(hand)

1956年というまさにハードバップ全盛期らしいまとまりのある作品。ここでの注目はハンク・モブレーの参加。ファンにはそれだけで充分だろう。曲も良く、愛聴に耐える名盤だ・・・(しげどん)



Portrait of Art Farmer/ポートレイト オブ アート・ファーマー

1958年4月19日,5月1日  Contemporary

おすすめ度

hand        ★★★★

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★★☆

Art Farmer(tp),Hank Jones(p),Addison Farmer(b),Roy Haynes(ds)

ワンホーンによるしっとりとした味わいのファーマーらしい秀作。

ワンホーンによる佳作。ファーマーのもつしっとりとした味わいのトランペットがたんのうできる。ハンク・ジョーンズのピアノも上品でファーマーとよくマッチしている。オリジナルよりもスタンダード曲が良く、ゴルソンのステイブルメイツもマクリーンのものよりもいい感じだ。夜、一杯飲みながら一人で静かに聞きたくなる作品。(しげどん)

アートファーマーのトランペットは、微妙にキーがズレたような独特の浮遊感、新鮮感があり面白い。特に空(から)吹きのかすれた息づかいが、とても魅力的でハスキーだ。リーダーのファーマー自身がリラックスして演奏を楽しんでいるアトモスフィアが伝わって来る。そのためか、ハンクジョーンズのピアノも肩の力が抜けた好演奏だ。(ショーン)

初のワンホーンリーダー作。ワンホーンと言えば、アーゴの「アート」だが、こちらも悪くない。ハンク・ジョーンズがやや地味な気はするが、地味がハンクの売り物だ!(笑)。早逝したアートの双子の兄弟、アディソン・ファーマーも、さすがに息が合っている。あまり知られていないが、愛聴する価値のある盤だ。(hand)

 



Modern Art/Art Farmer  モダン アート/アート・ファーマー

1958年9月10日,11日,14日

United Artists

おすすめ度

hand        ★★★★☆

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★★☆

Art Farmer(tp),Benny Golson(ts),Bill Evans(p),Addison Farmer(b),Dave Balley(ds)

ソロ良し、曲良し、の全体的にバランスのとれた名盤。ビル・エバンスのサポートが効果発揮。

とにかく聴きなじんだ名盤。曲も演奏もよい。ベニー・ゴルソンの作編曲家ぶりを発揮した作品かと思いきや、ファーマーが アレンジも多く担当していて、ファーマー主導によるファンキージャズアルバムなのであった。(しげどん) 

我が敬愛するビル・エバンス様ながら、この1曲目のイントロは好きになれない。1曲目の冒頭は、盤全体の印象に影響を 与えてしまう。それ以外に問題のない、どころか、超好内容の盤だ。2曲目フェアウェザーは傑作だ。クオリティの一段高い 名盤だ。(hand)

アート・ファーマーの代表作ともいえるアルバム。やや特徴に欠けるきらいがあるが、全体的には、良くまとまっている。 ファーマーのプレイは前半のパッパラ全開トランペットより、後半のミュートした曲の方が味があり、ピアノのビル・エヴァンス が、上手くバラードの雰囲気の演出を支えている。残念なのはベニー・ゴルソンのテナー、表情無く一本調子で、やや雰囲 気を壊している。(ショーン)