アート・ファーマーには、完成したスタイルをずっと維持し続けた職人的な名手といったイメージがあります。しかし今回彼の主要作を聴き通してみて、実は常に試行錯誤をしながら変貌していった人なんだと改めて感じます。
例えばこのPrestige盤「CLIFFORD BROWN MEMORIAL」で有名ストックホルムセッション(1953年)は、ファーマーの初期の演奏と言えますが、私にはブラウニーもさることながら、ファーマーの素晴らしさを感じます。それを聴いた後で、下記の1.Art Farmer Septet を聴くと、当時の彼のスタイルがよくわかります。
おすすめ盤ベスト5には、そのようないろいろな段階のものが選びきれないので、この主要作のディスクガイドで、できるだけご紹介します。ぜひ埋もれた名盤を探し出してください。
→アート・ファーマーのリーダー作レビュー4(準備中)
①〜④:Art Farmer(tp), Jimmy Cleveland(tb), Cliff Solomon(ts), Oscar Estell(bs), Quincy Jones(p), Monk Montgomery(el-b), Sonny Johnson(ds)
⑤〜⑧:Art Farmer(tp), Jimmy Cleveland(tb), Charlie Rouse(ts), Danny Bank(bs), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Art Taylor(ds)
クリフォード・ブラウンと名演を演じたライオネル・ハンプトン楽団での訪欧は1953年9月。この作品A面はその2か月前の録音で、当時のハンプトン楽団のメンバーとの共演。クインシージョーンズとジジ・グライスのアレンジも同様な雰囲気で、ブラウニーのパリセッションと比較して資料的な聴き方をすると面白い。
ここでベースを弾いているモンク・モンゴメリーは、あのウエス・モンゴメリーのお兄さん。彼はエレキのベースを弾いており、この録音がジャズ史上初めてのエレキベース録音と言われている。(しげどん)
※1953年の録音は、オリジナルは10インチLPでWork of Art というタイトルで発売。録音時間が5分前後なのは最初からLPを意識して作られていたから?
後年New Jazz8278で再発された時も同様のタイトル。54年録音の4曲は当初78回転SPで発売されていましたが、53年の録音のうち一曲目MAUMAUは両面にまたがるSPで発売されていました。
1953.9.15
Prestige
おすすめ度
hand ★★★★★
Clifford Brown, Art Farmer(tp), Åke Persson(tb), Arne Domnérus(as), Lars Gullin(bs), Bengt Hallberg(p), Gunnar Johnson(b), Jack Noren(ds), Quincy Jones(cond)
ライオネル・ハンプトン楽団での欧州ツアー中のアルバイト禁止令の眼を盗んで夜中にこっそり抜け出した録音の1つでスウェーデン録音。超々天才トランペッターのクリフォード・ブラウンと2トランペットで録音するなんて、なんてファーマーは勇気があるんだろう、と後年に聞く我々は思うが、当時はどちらも期待の新人としてハンプトン楽団のメンバーとして欧州ツアーに参加していて、本来はブラウンとファーマーの共同盤で、クリフォード・ブラウン&アート・ファーマー・ウィズ・スウェディッシュ・オールスターズ名義の録音なのだ。アナログ時代は、ジャケ写もファーマーの方が目立つデザインの盤もあった。ソロを聞き比べるとやはりブラウニーのキレの良さが際立つが、ファーマーも決して悪くない。(hand)
1953.9.15
Prestige
おすすめ度
hand ★★★
Art Farmer(tp), Jimmy Cleveland(tb), Anthony Ortega(as), Clifford Solomon(ts), Henri Renaud(p), Pierre Michelot(b), Alan Dawson(ds)
ライオネル・ハンプトン楽団での欧州ツアー中のアルバイト禁止令の眼を盗んで夜中にこっそり抜け出したクリフォード・ブラウンのパリ録音集3枚は有名だが、ファーマーのリーダー録音も2曲(1曲は別テイクあり)が残されている。同時に録音されたジジ・グライスの録音(これがとても素晴らしく私は愛聴している)のオマケのような形でのみCD化されているのが上記盤。とても入手しにくい状況だが、別テイクなしだがラッキー・トンプソンとカプリングした「ストリート・シーンズ」は比較的入手しやすい。ファーマーの2曲はビバップで、愛聴するほどではない。(hand)
①〜④:Art Farmer(tp), Sonny Rollins(ts), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Kenny Clarke(ds)
⑤〜⑩:Art Farmer(tp), Wynton Kelly(p), Addison Farmer(b), Herbie Lovelle(ds)
①〜④はファーマーの2度目のリーダーセッションで、10インチ「アート・ファーマー・クインテット」。クリフォード・ブラウンととても似ている。もしブラウンかマイルスだったら、ロリンズやシルバーもいるし、歴史に残る録音になっていただろう(たらればの話。ファーマーさんごめんなさい)。⑤〜⑩は6度目のリーダーセッションで、10インチ「アート・ファーマー・プレイズ」。ウィントン・ケリーを迎えてのワンホーンだ。私の所有するOJC盤は録音順の収録の表記だが、実際は間違っていて後半のセッションのオータム・ノクターンが裏ジャケで⑤だが④に入り曲順が混乱していてイラッとする。OJC盤は、③⑤①②、⑥⑦⑧⑨⑩④の順に聞くと10インチと同じでいいと思う。日本盤は2回のセッションを(意図的に?)混ぜこぜにしているようだ。バラードのオータム・ノクターンやウィステリアは素晴らしく、後年バラードの名手となる予感がある。 ⑥以下は表示が合っており、⑥恋したことはない、は名曲の名演だ。(hand)
アート・ファーマーの味わい深いソロが楽しめる作品。うっとりさせるような一面がよく出ていて、特にミュートよりオープンのソロがいい。A面で若かりしロリンズが聴けるのも面白いが、B面のワンホーンカルテットはウイントン・ケリーの参加もあり聴く価値がある。(しげどん)
①〜④:Art Farmer(tp), Gigi Gryce(as), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Kenny Clarke(ds)
⑤〜⑧: Art Farmer(tp), Gigi Gryce(as), Freddie Redd(p), Addison Farmer(b), Art Taylor(ds)
スイングジャーナルゴールドディスクにもなった有名盤。ジジグライスの曲だけで構成されているが、A面はアップテンポの曲調が続きやや単調。脇役に徹したホレスシルバーの個性が面白い。B面のほうが曲調は変化に富んでいて味わいがある。ジャケデザインがいいので得をしている盤。(しげどん)
ジジのアルトが冴え渡り、ファーマーも触発され、美しい旋律と軽快なコンビネーションを披露!しかもピアノのホレスシルヴァー、フレディーレッドも情感豊かに加わり、どの曲も素晴らしい仕上がりだ。特に1曲目の A NIGHT AT TONY'S は秀逸!(ショーン)
Art Farmer(tp), Gigi Gryce(as), Duke Jordan(p), Addison Farmer(b), Philly Joe Jones(ds)
前作とほぼ同メンバーながら、落ち着きと陰影もあり、こちらの方がいい。デューク・ジョーダンの参加がプラスに働いたのだと思う。過去の評価がなぜ前作が高いのかわからない。(hand)
再発時の日本タイトルは「イブニング イン カサブランカ」。グライスがハンプトン楽団とヨーロッパを訪れた時に曲想を得たという曲だが、雰囲気のある曲なので、これをタイトルにしたのは正解だと思う。グライスのオリジナルは雰囲気に変化もあり楽しめる作品。ジャケデザインがダサいので損をしているが、前作よりこちらのほうがゴールドディスクにふさわしい盤。(しげどん)
ジジのアルトとファーマーのトランペットの競演。テンポの良い佳曲揃いで、安定した内容のアルバム(ショーン)
Art Farmer,Donald Byrd (tp),Jackie McLean(as),Barry Harris(p),Doug Watkins(b),Art Taylor(ds)
50年代のハードバップの雰囲気が味わえるジャズらしさ全開の作品。ドナルド・バードのトランペットはメロディアスで上品。ファーマーもホットな熱演をしており彼を静的なトランペットと思ったら間違いだ。ほかのメンバーの存在感も十分に楽しめる。今回はCDで聞いたが、アナログが欲しくなった。ジャケデザインがダサいので損をしている。(しげどん)
プレスティッジお得意のジャムセッション的なタイトルだが、ジャム盤ではなく、きちんとアレンジされたハードバップ盤だ。ファーマーとドナルド・バードの二枚看板に、好調なジャッキー・マクリーンも加わった隠れ名盤だと思う。バード曲①ザ・サードからかっこいい各人のソロの共演が聞かれる。②コントゥアー、④ディグでの2人のチェイスは聞き応えがある。③ホエン・ユア・ラブのファーマー、⑤ラウンド・ミッドナイトのバードのワンホーンも素晴らしい。聞き直して︎を☆追加した。(hand)
ドナルド・バードとアート・ファーマーの2人のトランペッターが競演する贅沢なアルバムだが、テンポの速い曲が多く、ハリキッタ2人が疾走すると、ごちゃごちゃしてしまい、やや聞き辛くなるところもある。最後のラウンド・ミッドナイトは、ドナルド・バードの快活なトランペットの雰囲気が良い。(ショーン)
Art Farmer(tp),Hank Mobley(ts),Kenny Drew(p),Addison Farmer(b),Elvin Jones(ds)
1956年というまさにハードバップ全盛期らしいまとまりのある作品。ここでの注目はハンク・モブレーの参加。ファンにはそれだけで充分だろう。曲も良く、愛聴に耐える名盤だ・・・(しげどん)
1957.1.26
Prestige
おすすめ度
hand ★★★☆
Art Farmer, Donald Byrd, Idrees Sulieman(tp), Hod O'Brien(p), Addison Farmer(b), Ed Thigpen(ds)
バード、マクリーンとの「2トランペット」から5か月後、マクリーンがアイドリス・スリーマンに変わりタイトルどおりの3人のトランペッターの共演・競演盤となっている。リズム隊は3人とも交替し、この盤がデビューらしいホッド・オブライエン、弟アディソン、シグペンに変わっている。スリーマンも他のメンバーも悪くはないが、3よりも2の方が魅力ある盤に感じる。私のマクリーン贔屓もあるとは思うが、ファーマー、バード、マクリーンが揃うと作品にブルーな陰影のようなものが漂うのだと思う。2がアレンジがきちんとされた盤なのに対し、この盤は、全曲がメンバーのオリジナルで、特徴的な曲がなく、ジャムっぽい選曲・演奏ということも影響していると思う。(hand)
1957.3.28, 4.24 & 29
ABC-Paramount
おすすめ度
hand ★★★
Art Farmer (tp), Jim Buffington, Donald Corrado, Sal Amato, Gerald Sanfino, Stan Webb(frh), Romeo Penque, Sal Amato (f), Arnold Eidus, Julius Held, Harry Lookofsky, Gene Orloff, Leonard Posner, Harry Urbont, Alvin Rudnitsky, Sol Shapiro(vn), David Mankowitz, Walter Trampler, Howard Kay, David Mankowitz, Burt Fisch(vl), George Ricci, Maurice Brown(vc), Betty Glamann (hrp), Tommy Kay, Barry Galbraith(g), Hank Jones (p), Addison Farmer (b), Osie Johnson, Sol Gubin(ds), Quincy Jones (cond)
Art Farmer(tp),Hank Jones(p),Addison Farmer(b),Roy Haynes(ds)
ワンホーンによる佳作。ファーマーのもつしっとりとした味わいのトランペットがたんのうできる。ハンク・ジョーンズのピアノも上品でファーマーとよくマッチしている。オリジナルよりもスタンダード曲が良く、ゴルソンのステイブルメイツもマクリーンのものよりもいい感じだ。夜、一杯飲みながら一人で静かに聞きたくなる作品。(しげどん)
アートファーマーのトランペットは、微妙にキーがズレたような独特の浮遊感、新鮮感があり面白い。特に空(から)吹きのかすれた息づかいが、とても魅力的でハスキーだ。リーダーのファーマー自身がリラックスして演奏を楽しんでいるアトモスフィアが伝わって来る。そのためか、ハンクジョーンズのピアノも肩の力が抜けた好演奏だ。(ショーン)
初のワンホーンリーダー作。ワンホーンと言えば、アーゴの「アート」だが、こちらも悪くない。ファーマーは程よく枯れた音色で、味わいあるトランペットを聞かせている。ハンク・ジョーンズがやや地味な気はするが、地味がハンクの売り物だ!(笑)。早逝したアートの双子の兄弟、アディソン・ファーマーのベースも、さすがに息が合っている。1曲目が地味なので、損をしているかもしれない。あまり知られていないが、愛聴する価値のある盤だ。(hand)
Art Farmer(tp),
Benny Golson(ts), Bill Evans(p), Addison Farmer(b), Dave Bailey(ds)
とにかく聴きなじんだ名盤。曲も演奏もよい。ベニー・ゴルソンの作編曲家ぶりを発揮した作品かと思いきや、ファーマーが アレンジも多く担当していて、ファーマー主導によるファンキージャズアルバムなのであった。(しげどん)
我が敬愛するエバンス様ながら、この1曲目モックス・ニックスのイントロは好きになれない。冒頭曲は、盤全体の印象に影響を与えてしまう。それ以外に問題のない、どころか、好内容の盤だ。2曲目フェア・ウェザーは傑作だ。ここまでのどのファーマー盤よりもクオリティが一段高い。 ポール・ウィナーズというレーベルから出ているCDには+9という、オマケ9曲の盤になっていたので買ってみた。「モダン・アート」の別テイク等ではなく、前半4曲はテディ・チャールズの1959年2月10日録音のベツレヘム盤「サリュート・トゥ・ハンプ」の中からファーマーが目立つものをチョイスしたもの。後半5曲は珍しい音源で、アンソニー・オルテガをリーダーにしたと思われる内容で、ファーマーがサイドに入っている。録音も1958〜59年までしかわからない。オルテガは意外と張り切っていて、元気なアルトを聞かせている。(hand)
アート・ファーマーの代表作ともいえるアルバム。やや特徴に欠けるきらいがあるが、全体的には、良くまとまっている。 ファーマーのプレイは前半のパッパラ全開トランペットより、後半のミュートした曲の方が味があり、ピアノのビル・エヴァンス が、上手くバラードの雰囲気の演出を支えている。残念なのはベニー・ゴルソンのテナー、表情無く一本調子で、やや雰囲 気を壊している。(ショーン)
Art Farmer,Lee Morgan,Ernie Royal(tp),Jimmy Cleaveland(tb),Curtis Fuller(tb),Julius Watkins(frh),Percy Heath(b),Philly Joe Jones(ds),Others
なかなか楽しい盤。ファーマーは控え目な性格なのか、あまり目立つことはない。残念なことだ。④エイプリル・イン・パリは、ベイシーとはまた別の春らしい趣のある演奏で、ファーマーとフラーがいい。(hand)
メンバーのソロよりもベニーゴルソンのアレンジに重きを置いた作品。有名スタンダードと当時のヒット作であったゴルソンオリジナルやモーニンなどの有名曲揃いで、ポピュラーな人気を狙った作品か。(しげどん)
ブラス大編成の厚みが、心地良く響くアルバム。ベニーゴルソンのアレンジが冴える。スタンダード曲が大半を占め、誰でもすんなり聴き込めるように思う。惜しむらくは、リーダーのアートファーマーの出番が意外と少ないところか?2曲めの「枯葉」が良い。(ショーン)
Art Farmer(tp),Jimmy Cleaveland(tb),Zoot Sims,Seldon Powell(ts),
Hank Jones(p),Addison Farmer(b),Charlie Persip(ds),others
アステカ文明は、アメリカのお隣メキシコに16世紀に栄えた文明だが、ファーマーの「アステカ組曲」がどういう趣旨の盤なのかはわからない。ただ、一聴、ディジー・ガレスピーのアフロ・キューバン路線に似た印象を持った。楽しい盤ではあるが、愛聴することはなさそうだ。(hand)
なぜアステカなのか理解に苦しむが、ジャズというより映画音楽のようだ。南米の古代文明を探検するドキュメンタリーなんかがあったらピッタリでは?(しげどん)

ジャズCD 15000枚所蔵しているモダンジャズマニアhand氏、高校生の頃からジャズにはまり40年以上聴き続けているアナログ&トラディショナル派のしげどん、元々はビートルズマニアだったのが二人に巻き込まれてジャズファンに染まったショーン氏。三人それぞれの視点でジャズを楽しく論じているページです。
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