Hampton Hawes ハンプトン・ホーズ リーダー作② 1964~1970

薬禍により服役したホーズは、服役後。スタイルを変えつつ精力的に録音していきます。ある意味、ホーズの黄金時代と言えるかもしれません。世間的にはあまり注目されていませんが、名盤の数々が生み出されています。66年で一旦コンテンポラリーを離れたホーズはヨーロッパに渡り、その足で日本も訪れています。各地での録音も魅力満載です。


THE GREEN LEAVES OF SUMMER / Hampton Hawes

1964.2.17

Contemporary

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★★

 Hampton Hawes(p), Monk Montgomery(b), Steve Ellington(ds)

服役後、奏法に変化の見られる名盤

10年の実刑判決で服役していたところに恩赦が実行され、5年で出てきたホーズ。早速、古巣のコンテンポラリーに録音したのがこの盤。モンク・モンゴメリーの珍しい?アコースティック・ベースにスティーブ・エリントンのドラムだ。服役の影響なのかどうかは不明だが、ホーズの弾き方は、相変わらず速いものもあるが、慌たゞしさが消えてレガート気味の奏法になっている。私にとって好ましいスタイルへの変貌だ。同じコンテンポラリーに所属したこともあるフィニアス・ニューボーンJr.にスタイル的に最も接近した盤のように思える。マイルス曲①ヴァイアード・ブルース、はフィニアスも「ストックホルム・セッションVol.2」(1958 年)で演奏している。タイトル曲②は冒頭がソロで演奏され、この曲は、この頃はまだほとんど活動していないキース・ジャレットにつながる雰囲気もある。ベースにはチャーリー・ヘイデンを感じる。(hand)

麻薬での服役によりから復帰してからの本格作としては第一弾。約5年の空白期間を経て、ホーズのピアノはかなり変わったという印象を受ける。特にスローな曲では、硬質な特徴よりも情感が前面に出てきている。(しげどん)

ハンプトンのフレーズは、力強くユニークで、チャレンジ感がある。特にアルバムタイトルのTHE GREEN LEAVES OF SUMMERは、耳から音が入ると、何となく映像が目に浮かんでくるような、そんな素晴らしい演奏だ。その他の曲も時に芸術性を感じる部分があり、名盤だ。(ショーン)



HERE AND NOW / Hampton Hawes

1965.5.12

Contemporary

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★☆

 Hampton Hawes(p), Chuck Israels(b), Donald Bailey(ds)

ホーズがエバンスに最接近したと思われる盤

服役後の第2作。スタイルが変わった前作「グリーン・スリーヴス」の路線を延長だけでなく拡大し、私handの考えるホーズのピークである67〜68年に向けて大きく変貌している時期で、ベースが当時エバンス在籍中と思われるチャック・イスラエルが参加し、ホーズがエバンスに最接近したと思われる盤。元々の強烈な個性があるので、エバンスの影響を受けても、モロにエバンス派とはならず、新たなホーズらしさが生まれていると思う。③イパネマをスイングで演奏したのは新鮮だと思うが、ボサ全盛の当時は不評だったようだ。ドラムのドナルド・ベイリーも手堅い。(hand)

前作にくらべ、さらに新しい時代になった事を感じる一枚。情感がたっぷりでていて、味わい深いし選曲的にも親しみやすい作品。(しげどん)

スタンダード曲中心の演奏だが、いまいち情感に欠けるところがある。軽快なのは良いが、Donald Baileyのドラムが、ドスンドスンとオカズも多く、シンバルもやや耳触りに聞こえる。ハンプトンのピアノの邪魔になるくらいで残念だ。(ショーン)



THE SÉANCE / Hampton Hawes

1966.4.30 & 5.1

Contemporary

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★

Hampton Hawes(p), Red Mitchell(b), Donald Bailey(ds)

新しいホーズのスタイルを確立したライブ

「アイム・オール・スマイルズ」と同日のライブ。長く在籍したコンテンポラリーのラスト録音だが、いずれもすぐには発売されず、この盤は69年、「アイム」は73年に出されている。初期のトリオのメンバーであったレッド・ミッチェル、前作からのドナルド・ベイリーが参加している。ミッチェルは、当初からこの方向性は持っていたが、より自由なベースを弾くようになり後輩のラファロの影響も感じられ好感だ。ホーズ自身は、後期のスタイルが確立していて、前期的なスタイルは垣間見えることもない。特に②オレオ、のような高速曲を聞くとよくわかる。ラスト、エバンスで知られる⑥マイ・ロマンス、も素晴らしい。(hand)

完全なライブ作品は初めてではないか?新しいハンプトン・ホーズのスタイルを出しつつも、ライブらしい盛り上がりがある。(しげどん)



I'M ALL SMILES / Hampton Hawes

1966.4.30 & 5.1

Contemporary

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Hampton Hawes(p), Red Mitchell(b), Donald Bailey(ds)

新スタイルのホーズが名曲に取り組んだライブ名盤

「ザ・セイアンス」と同じ2日間のライブ。2枚を2日から選曲しているので、後発のこちらが残り物なのかもしれないが、選曲のせいか、私にはこちらが親しみやすく、聞く回数が多い。メンバー3人の高い能力と工夫により飽きさせないライブだと思う。ただし、アフロで笑顔のホーズのジャケは、内容とイメージが合っていないと思う。スマイルに合うジャケを無理矢理当てはめたのだと思うが、録音当時の写真ではなく、発売時の73年頃の写真ではないかと思われる。(hand)

前作と同じライブ作品で、基本的には前作とあわせてVol.1、Vol.2と位置づけられる作品。こちらのほうは「黒いオルフェ」「いそしぎ」といった有名曲が入っていて親しみやすく、人気作だと思う。愛聴できる作品。(しげどん)

前衛的な感覚を持ち合わせた良盤。ピアノとベースとドラムスがうまく溶け合って、新鮮な演奏だ。バラード調の曲the shadow of your smile等も前半の芸術性のあるアレンジとレッド・ミッチェルの多彩なプレイで、とても面白く魅力的な曲に仕上がっている。保存盤にしたいライブアルバムだ。(ショーン)



HAMP'S PIANO / Hampton Hawes

1967.11.8

SABA → MPS

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★☆

Hampton Hawes(p), Eberhard Weber(b), Claus Weiss(ds)

欧州楽旅中に録音した洗練された名盤

私が考えるホーズの最高傑作。あらゆる意味で完璧なピアノトリオ盤だ。コンテンポラリーを離れたホーズは、67年9月から68年5月にかけて、欧州〜日本に滞在し、各地で現地ミュージシャンと9か月で9枚の録音を残した。これらがいずれも素晴らしく、第二の黄金期と言えるのではないか、また、私hand的にはホーズのピークと考えている。西のビバップとも言うべきスタイルはほぼ消えて、モーダルな感じのする落ち着いたスタイルに変貌している。私にとってこの盤のキラー曲は⑥ソノーラで、ホーズ作の哀愁のボサだ。ただ、同じホーズ作のソノーラには2種類あり、4か月後の翌68年3月録音の「ブルース・フォー・バド(スパニッシュ・ステップス)」では別メロのワルツ曲になっていて、これはこれで素晴らしく同盤のキラー曲になっているのだ。(hand)

ドイツに於ける録音で、ベース、ドラムスは現地ミュージシャン。情感にあふれたやわらかいタッチで、とても洗練された味わいがある。演奏スタイル的には硬派なイメージも残るが、エコーを効かせた甘口のヨーロッパらしい録音が気になるが、この時期の代表作ともいえる作品だ。(しげどん)

ブルースが心地良いアルバム。ピアノとウッドベースが語り合うようにフレーズ交換する部分は、とても息が合っていて、安心して聴き込める。ハンプトンのメロディは優しく叙情的で、どの曲も浸る。(ショーン)



AUTUMN LEAVES IN PARIS (PIANO IMPROVISATIONS) / Hampton Hawes

①②:1968.1.25

③⑤:late1967

④:1968.3.23

Joker → Moon

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★☆

Hampton Hawes(p), 

①②: Jimmy Woode(b), Kenny Clarke(ds)

③⑤: Gilbert Rovere(b), Daniel Humair(ds)

④: Martial Solal(p)

海賊的な伊レーベルから出た名盤

ジョーカーという海賊的なレーベルの盤ではあるが、私が後期のホーズを聞くようになったきっかけの盤だ。とにかく熱いモダンジャズが好きな私にドンピシャにはまる内容だった。枯葉2回はちょっと多いがメンバーが違うのでOKだ。私には、枯葉とソフトリーは、入っているだけで嬉しくなる選曲だ。ケニー・クラークは、MJQやマイルスの初期盤でタイトなドラムを聞かせてはいたが、熱いドラムという感じではなかった。そのクラークが渡欧後に熱いドラムでホーズを煽り、クラーク=ボランでも活躍するジミー・ウッドが太っといベースを聞かせるのが素晴らしい内容の①枯葉と②フライ・ミーだ(68.1.25)。フランス人のベースとドラム、ジルベール・ロヴェールとダニエル・ユメールに変えての⑤枯葉と③ソフトリーも楽しい。というよりも、実はこの世に数あるソフトリーの中でもかなり上位の私のお気に入り演奏ではある(67/68)。ピアノデュオ曲④ゴッド・チャイルド、はソラルとの2ピアノ盤「キー・フォー・トゥー」の別テイクかと思っていたが、それよりも2カ月後のデュオ録音だった(68.3.23)。(hand)

中期の作品はビル・エバンスみたいに情緒的で、好みは別れるかも。ライブ盤で、そのような情緒的なイメージは強く残る一枚。(しげどん)

枯葉の物静かなメロディで始まるこのアルバムは、JAZZのスタンダードナンバーをハンプトンの落ち着いたピアノで、しっかり聴くことができる。ベースの奔放なランが、クオリティをワンランク上げて、一味違った素晴らしい演奏となった。(ショーン)



KEY FOR TWO/ HAMPTON HAWES & MARTIAL SOLAL(未CD化)

1968.early1

BYG

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★

Hampton Hawes(p), Martial Solal(p), Pierre Michelot(b), Kenny Clarke(ds)

マーシャル・ソラルのピアノトリオにホーズが加わった盤

マーシャル・ソラルとピアノデュオではなく2台のピアノとピエール・ミシェロ、ケニー・クラークという大御所コンビの共演盤だ。④バグス・グルーヴではソラルが抜け、⑧ゴッド・チャイルドのみピアノデュオとなっている。リズム隊がいるので、ピアノデュオがなりがちなクラシカルな感じはなく、⑤恋人よ我に帰れ、などグルーヴ感のある演奏になっている。(hand)

ピアノのデユオは良くわからない。サックスのバトルはあるがピアノのバトルはないのは、音色に個性が出せないピアノという楽器の特徴だと思う。悪くはないが特段強く愛聴する盤にはならなそうだ。(しげどん)



BLUES FOR BUD (SPANISH STEPS) / Hampton Hawes

1968.3.10

Black Lion

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★

Hampton Hawes(p), Jimmy Woode(b), Art Taylor(ds)

タイトルやジャケ、曲順の変更などで名演ながら名声が確立できなかった盤

アナログ時代は「スパニッシュ・ステップス」として出ていたが、CD化で追加5曲が入りジャケもタイトルも変わり「ブルース・フォー・バド」となったようだ。その後、CDでも「スパニッシュ・ステップス」が出て、同内容ながら、オリジナル曲順を尊重しオマケを後ろにつけるといういい形になった。よく見るとジャケ写は同じ写真でカラーがモノクロになり左右が逆焼きになっているだけだった。この盤はMPSの「ハンプス・ピアノ」と並ぶ渡欧時のベストプレイだと思う。ただ、音質面では「ハンプス」に一歩譲る気がするのと、名曲は多いのだが、追加曲のせいかもしれないが盤としてのまとまりも一歩譲ると思う。(hand)

情緒的なアルバムが多い時期だが、この作品はわりと硬質なテイストを持っている。このようなアルバムが好きな向きには高く評価されるのではないかと思う。(しげどん)

軽快なハンプトンのピアノのフレーズが空から降り注ぐような勢いがあるが、少し単調でもあり、それほど印象には残らない。惜しい一枚。(ショーン)



THE CHALLENGE / Hampton Hawes(未CD化)

1968.5.7&9

Victor(Japan) → RCA

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★☆

Hampton Hawes(p)

日本録音の生涯唯一のソロ盤

楽旅がヨーロッパから日本に移り、2枚残した録音のうちの1枚。ホーズには珍しい、生涯唯一のソロ盤となる。ソロピアノ盤というと耽美的な作品等が思い浮かぶが、この盤はまさにその対極にあるような濃厚でブルージーな盤。左手が太いベースラインを作りながら、右手がブルージーにテーマやソロを弾きまくるというご機嫌な盤だ。タイトルがソロへのチャレンジという意味であれば、成功としか言いようがない。(hand)

日本で録音された彼の唯一のソロアルバム。新しい時代のテイストに合った情緒的な演奏が多かった時期だけに、このソロアルバムは意外な気がした。とても保守的な味わいで、私の好みにマッチする。原点回帰とも言えるのではと思ったが、日本のファンの温かさがそうさせたのかも?とも感じてしまう。(しげどん)



HAMPTON HAWES JAM SESSION

1968.5.15

日本Columbia(Japan)

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★☆

Hampton Hawes(p), Hidehiko Matsumoto(ts), Akira Miyazawa(ts), Shungo Sawada(gr), Isato Suzuki(b), George Otsuka(ds)

日本のミュージシャンと録音した記念盤

日本録音の第2作。冒頭に過去に駐留していたホーズが再び戻ってきてくれたことを延々とMCが語り、繰り返し鑑賞するには妨げだが、CDでは飛ばして聞くことができる。松本英彦はモカンボのメンバーより上の世代で、ビッグ・フォー時代とは多少スタイルが変わり新生ホーズのセッションになんとか適合はしているが、若手のコルトレーン派を入れたほうが面白くなったのではないかと思う。宮沢昭は松本以上に適合している。ホーズのスタイル変化を日本側が知らなかった可能性もあるので仕方ないのかもしれない。全体の演奏自体は悪くない。(hand)

60年代後半とは思えないハードバップ全盛期的なソロ。ホーズ自身はあまりこのような編成でリーダーをしたことがないと思うので、ピアニストとして身を任せている感じ。彼の演奏スタイルも初期の頃のように戻った感じだ。聴きやすい作品ではある。(しげどん)



PLAYS MOVIE MUSICALS / Hampton Hawes

1969.8

Vault

おすすめ度

hand      ★★

Hampton Hawes(p), Bob West(b), Larry Bunker(ds) plus strings

ストリングス入りの映画・ミュージカル音楽集

ヴォールトというマイナーレーベルに吹き込まれた映画・ミュージカル曲集。トリオにストリングスが加わっているが、このストリングスがかなり強めに入っているのが私には苦手で、鑑賞の妨げでしかない。ヴォールトはサーフ、サイケデリックを得意としたレーベルのようだ。ジャズもジャック・ウィルソンなど多少扱っているようだ。ホーズのこの時期は、コンテンポラリーから離れ、このヴォールトやJASという聞いたことがないような超マイナーレーベルへの録音が続く。(hand)



MEMORY LANE-LIVE / Hampton Hawes

1970.1

JAS

おすすめ度

hand      ★★★☆

Hampton Hawes(p), Harry Edison(tp), Sonny Criss(as), Teddy Edwards(ts⑤), Leroy Vinnegar(b), Bobby Thomson(ds), Joe Turner(vo③④)

ロスでのビバップ的なジャムセッション

ロスのジャズクラブ、メモリー・レーンの出演記録。JASという超超マイナーレーベルで、カタログを見た限りでは14枚しかなく、そのうちの4枚がホーズ盤(1枚はコンピ盤)というレーベルだ。そんなJASがホーズを一応のリーダーに録音したジャムセッション。ハリー・スウィーツ・エジソン、ソニー・クリス、テディ・エドワーズにジョー・ターナーのボーカルまで加わったごった煮的な言葉どおりのジャムだ。スウィーツも思ったほど古臭くなく違和感はない。クリスとエドワーズは熱いソロで好感だ。ターナー参加の2曲③④は、管のソロはいいがボーカルはあまり得意ではない。他の3曲は長尺でソロも長いのがいい。ただ、ホーズ自身は、スタイルも変わった後のビバップ的なセッションなので、あまり目立っていない。(hand)



HIGH IN THE SKY / Hampton Hawes

1970

Vault

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★☆

Hampton Hawes(p), Leroy Vinnegar(b), Donald Bailey(ds)

バカラックのルック・オブ・ラブは沁みる新感覚のトリオ盤

「ブルース・フォー・バド(スパニッシュ・ステップス)」以来、2年ぶりのトリオでの録音。レーベルは2度目のヴォールト。ホーズのピアノは、よりモーダルとなり、ソロはフリーな香りもする。ポール・ブレイまでは行かないが、スティーブ・キューンとエバンスの間くらいのものを感じる。それでも、ホーズ独特のダークでロマンチックな雰囲気が出ているのは好感だ。バカラックの名曲①ルック・オブ・ラブは沁みる名曲の名演だ。他のオリジナル5曲も悪くない。旧知のルロイ・ヴィネガーとドナルド・ベイリーが参加し、2人ともにこの時期のホーズに合ったプレイをしている。ライブっぽいジャケだが、ハリウッドのスタジオ録音だ。(hand)

日本録音で保守的な回帰を見せたが、この作品では前衛的な表現を模索している。でもあまり抽象的にならず、温かみを感じるのがハンプトン・ホーズらしい。(しげどん)