Kenny Burrell リーダー作①1956・1957年

デトロイトからニューヨークに出てきた初期のバレルは、ブルーノートとプレステッジを中心にリーダー盤やリーダー的ジャムセッション盤を数多く録音しています。ウエス・モンゴメリーの活躍よりも早く、ニューヨークで重用されていたことがわかります。


KENNY BURRELL VOL.2

④-⑧:1956.3.12

①②:1956.5.29 & 30

③:1956.5.31

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん ★★★☆

Kenny Burrell(gr), Tommy Flanagan(p:except③)

④-⑧:Frank Foster(ts), Oscar Pettiford(b), Shadow Wilson(ds) 

①②:Paul Chambers(b), Kenny Clarke(ds), Candido Camero(conga)

③:Kenny Dorham(tp), J. R. Monterose(ts), Sam Jones (b),Arthur Edgehill (ds) 

Vol.2ながらバレルの初録音を含む盤

12インチリーダー盤としては、先に発売された1956年5月29日録音の「イントロデューシング」に対して、次に発売されたので、この盤が「Vol.2」となったと思うが、こちらの方が56年3月12日の初録音を含む。ただ、ジャケには「ケニー・バレル」としか書いてないので、日本盤のみのタイトルだ。初録音は、ライオンがあまり評価できなかったのか、この盤の後半に収められている。冒頭2曲が「イントロデューシング」の残りテイク、3曲目がケニー・ドーハムの「カフェ・ボヘミア」の残りテイク、というように、ひどい扱いなのだが、この後半の初録は、リラックスした演奏で悪くない。ただ、管楽器の代わりに据えたギターが管ほどインパクトのある演奏とは言えないので、デビュー盤には使わなかったと想像できる。発掘音源の「スインギン」にも同日の録音が入っている。(hand)

バレルの初リーダー作はアンディ・ウォホールのジャケットデザイン。アナログA面はイントロデユーシングに使われたセッションの残り2曲(つまり2回目のセッション)から始まり、しかも2曲目はギターソロ、3曲目はドーハムのカフェボヘミアの別テイク、そして4曲目が初リーダーセッション曲ということで、一曲づつは悪くはないが、アルバムとしてはかなりバラバラな印象だ。B面は初リーダーセッションで統一されているが、選曲としてもかなり保守的な中間派のようなイメージで、フランク・フォスター参加の影響もありそうだ。初リーダーセッションを最初にもって来なかったのは、売れないと思ったのだろうか?その割にはお蔵入りせず発売されているのも不思議な一枚。(しげどん)



KENNY BURRELL VOL.3(SWINGIN')

②:1956.3.12

①:1958.5.14

③-⑤:1959.8.25

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

Kenny Burrell(gr),

②:Frank Foster(ts), Tommy Flanagan(p), Oscar Pettiford(b), Shadow Wilson(ds)

①:Louis Smith(tp), Junior Cook, Tina Brooks(ts), Duke Jordan(p), Sam Jones(b), Art Blakey(ds)   

③-⑤:Tina Brooks(ts), Roland Hanna(p③④), Bobby Timmons(p⑤), Ben Tucker(b), Art Blakey(ds)

初録音を含む寄せ集め発掘盤だが聞き応えあり!

1979年の世界初登場シリーズでLP「スインギン」として発掘された盤。同時に「KBブルース」と「フリーダム」が出たと記憶している。この盤は、「Vol.2」と同じ1956年3月12日の最初のリーダー録音も含んでいる。初リーダー録音は、リーダーのはずのサド・ジョーンズが現れず、急遽、バレルをリーダーに録音したものらしい。残り物の寄せ集めとは思えない素晴らしい盤。多分、日米の選曲の趣味の違いで残り物とする基準が違うのだろう。(hand)



JAZZMEN DETROIT(Kenny Burrell)

1956.4.30 & 5.9

Bethlehem

おすすめ度

hand      ★★★

Kenny Burrell(gr), Pepper Adams(bs), Tommy Flanagan(p) Paul Chambers(b) Kenny Clarke(ds)

デトロイト出身のミュージシャンのジャム的な盤

厳密にはバレルのリーダー盤ではなく、デトロイト出身のミュージシャンを集めて録音したジャムセッション的な盤。バレルの名前が先頭に表記されているので便宜的にリーダー扱いとして整理されている。とはいえ、バレルがかなりの活躍度なので、違和感はない。ペッパー・アダムスのバリやトミフラのピアノがバレルに次いで目立っている。バリの炸裂度がもう少し高ければいいのにと思う。あまり炸裂するとギターが目立たなくなってしまうので、協調に重点が置かれたのかもしれない。(hand)



INTRODUCING KENNY BURRELL

1956.5.29 & 30

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★☆

Kenny Burrell(gr), Tommy Flanagan(p), Paul Chambers(b), Kenny Clarke(ds), Candido Camero(conga)

記念すべきバレルのデビュー盤はコンガ入り

ジャズを聞き始めたかなり初期に聞いた盤。その時の印象は、バレルはいいけど、コンガがなければもっといいのに、というような感じだった。今ではコンガ入りの盤もかなり好きになったのだが、この盤はどうか?やはりキャンディドのコンガの軽い感じがあまりよろしくないと思う。コンガはもう少し重い音色でアフロな感じを出したほうがいい。コンガではなく、ボンゴなのかもしれないが、特に③テキーラ、⑧ゲットハッピーのようなチャカポコ感はよろしくない。ケニー・クラークとのデュオ、リズモラマでのコンガはディープで好ましい。とはいえ、全体としてはなかなかいいバレルのデビュー盤だ。なお、現在は、初期の演奏を録音別に並べた2枚組「イントロデューシング・ケニー・バレル:ファースト・ブルーノート・セッションズ」も出ている。(hand)

デビューアルバムとは思えないほど、変化に富んだ完成度の高い一枚で、全編楽しく聴きとおせる一枚だ。コンガの効果もうるさくなく違和感がない感じでデビュー作ながらケニー・バレルの代表作になってしまった。(しげどん)

Tommy Franagan のピアノと Candido のコンガが軽快な流れを作っていて、サラリと聴くことができる。ただ軽いが故、JAZZ のコクがあまり感じられない。あっさりしすぎるのもどうか?ブルースコードのフレーズも単純で、メリハリと工夫が感じられず寂しい。(ショーン)



MONDAY STROLL / Kenny Burrell With Frank Wess

1956.12.17

1957.1.5

Savoy

おすすめ度

hand      ★★

Kenny Burrell(gr:lead), Freddie Green(gr:rhythm), Frank Wess(fl,ts), Eddie Jones(b), Gus Johnson, Kenny Clarke(ds)

フランク・ウエス、フレディ・グリーンらとの中間派的雰囲気の盤

バレル・ウィズ・フランク・ウエス名義のサボイの発掘盤。この盤の失敗の原因は、ギターの先輩フレディ・グリーンを招いてしまったことだと思う。グリーンと言えば、カウント・ベイシーのザ・リズム・セクションとして、リズムギターの専門家だ。ということは、デビューしたばかりのバレルは先輩グリーンのリズムギターをバックにソロをとることになる。なので、どうもソロが遠慮気味に聞こえるのだ。また、グリーン自身の参加により、曲の雰囲気が中間派のようになってしまっている。ウエスのフルートもいいので、グリーンがいなければ、もっとモダンな盤が生まれたと思う。もちろん、私はグリーンが嫌いなのではなく、ベイシー盤では不可欠だと思っている。(hand)



ALL NIGHT LONG / Kenny Burrell & Donald Byrd

1956.12.28

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん ★★★★

Kenny Burrell(gr), Donald Byrd(tp), Hank Mobley(ts), Jerome Richardson(fl,ts), Mal Waldron(p), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds)

プレステッジお得意のジャムセッションの1枚

プレステッジお得意のジャムセッション盤。長尺タイトル曲①がバレル作でバレルのソロから始めるので、バレルがこのセッションの主導的役割を果たしている可能性は高い。人気の高さから、バレルとバードを一応の共同リーダーにして発売しているようだ。誰がリーダーか表示のない盤は分類しにくく、売上からも好ましくないと思う。「オール・○・ロング」は朝昼晩の3種あり、朝はレッド・ガーランド、昼夜はバレルと整理していいと思う。3枚とも参加しているのはバードとアート・テイラーだけだ。朝は録音も10か月後で、メンバーもかなり違うので昼夜とは少し距離があると思う。「アーシー」の方が時期的には3部作に相応しい気がするが、タイトルが朝昼晩とわかりやすいので仕方ない。内容は、さすがハードバップ御三家のプレステッジ、サボイ盤「マンデー・ストロール」と似たような楽器編成のジャムセッションながら、ピシッとカッコいいハードバップになっている。CD追加の2曲⑤身も心も、⑥チューン・アップもなかなかいい。(hand)

この一連のジャムセッションシリーズでは、この「ナイト」が一番の出来だと思う。曲にも変化があり、単にだらだらしたジャムセッションではない作品としての締まりがある。ケニー・バレルの存在感が光るが、ハンク・モブレーの参加もうれしい。マル・ウォルドロンの曲「フリッカーズ」は、ジャッキー・マクリーン&カンパニーの冒頭で演奏していた印象深い曲で、違うメンバーでのテイストの違いも面白い。(しげどん)



ALL DAY LONG / Kenny Burrell & Donald Byrd

1957.1.7

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん ★★★☆

Kenny Burrell(gr), Donald Byrd(tp), Frank Foster(ts), Tommy Flanagan(p), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds)

「ナイト」の1週間後に録音された「ディ」セッション

「オール・ナイト・ロング」から年を越して1週間後のセッション。モブレー、リチャードソン、マルがフランク・フォスターとトミフラに交替している。バード、ワトキンス、テイラーは同じ。バレルもバードも両盤ともに好調なので、他のメンバーや選曲により好みは分かれる。私は「ナイト」が好みだ。(hand)

年明け後に録音されたジャム・セッション・シリーズの続編。ケニー・バレルのブルージーなソロは相変わらずいい感じだが、この二枚で共通しているダグ・ワトキンスの重厚な雰囲気は、全体を支えていてすばらしいベースだ。(しげどん)



EARTHY / Prestige All-Stars(Kenny Burrell)

1957.1.25

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★☆

Kenny Burrell(gr), Art Farmer(tp), Hal McKusick(as), Al Cohn(ts), Mal Waldron(p), Teddy Kotick(b), Ed Thigpen(ds)

「ナイト」、「ディ」に引き続くジャムだがメンバーは一変する。

「オール・デイ・ロング」から3週間後のジャムセッション。バレル以外のメンバーは大幅に変わる。「ナイト」にいたマルのみが再参加。ファーマー、ハル・マキュージック、アル・コーン、テディ・コティック、エド・シグペンが新たに参加。やはりバレルがリーダー的位置付けだと思うが、マルの曲が2曲あり、特にマル作曲のタイトル曲①はマルのカラーもかなり強い。(hand)



KENNY BURRELL(BLUE MOODS)

1957.2.1

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★☆

Kenny Burrell(gr), Cecil Payne(bs), Tommy Flanagan(p), Doug Watkins(b), Elvin Jones(ds)

英タイトルは「ケニー・バレル」、日タイトルは「ブルー・ムーズ」

「ブルー・ムーズ」の日本タイトルで出たこともある、名前をタイトルにした盤。名前をタイトルにするのはデビュー盤や決定盤的な自信作が多い。バレルの名盤として扱われることは少ないが、決定盤の一つではあると思う。バレルのプレイはいいと思うが、選曲が地味なのと、セシル・ペインのバリが意外と控えめなのもマイナス要因かもしれない。(hand)



K.B.BLUES / Kenny Burrell

1957.2.10

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★☆

ショーン  ★★★☆

しげどん ★★★★

Kenny Burrell(gr), Hank Mobley(ts), Horace Silver(p), Doug Watkins(b), Louis Hayes(ds)

モブレーが入りJM的なメンバーによる発掘盤

バレルの代わりに同じケニーのドーハムが入ればジャズ・メッセンジャーズというイメージの盤。40年前のジャズを聞き始めた初期に、ビル・エバンス「クインテセンス」を同時代的に聞き、バレルが気に入り「ミッドナイト・ブルー」を買い、さらに気に入り次に買ったのが世界初登場シリーズのこの盤。シルバーの①ニカズ・ドリームはいい曲と思ったが、モブレーのもごもごしたテナーがあまり好きになれなかった。当時は、グリフィンのようなエッジの立ったテナーが好きだったのだ。モブレーはその後、60年代のプレイを中心にお気に入りとなったなっが、やはりこの時期のプレイは風圧が不足していると思う。(hand)

スピードと力のある演奏が多いが、少しガサガサした印象だ。Louis Hayes のドラムスがドサドサシャリシャリで、もう少し優しく叩いた方が雰囲気が出たであろう。やはり JAZZ は雰囲気なのだ。また Hank Mobley のテナーも聴かせどころがいまいちなく、残念ながら全体的なまとまりに欠けるアルバム。(ショーン)

本来ならば、ケニー・バレルVol.3となるようなセットだが、当時は1枚のアルバムにはならず、タイトルナンバーと、D.B.ブルースの2曲がシングル盤として発売されたらしい。日本のキングレコードの世界初登場シリーズで初めて陽の目を見た作品で、初期のバレルのセッションは発売経過がややこしい。A面がシルバーの名曲「ニカの夢」から始まるので、なんだかシルバー・クインテットみたいだ。B面のブルースは一連のジャムセッション風で、ブルーノートの前2作とは違ったバレルの魅力がうかがえる。                                  DBブルースを聴いてから、あらためてレスター・ヤングの除隊後初のアラジンセッションでの同曲を聴き返すと、モダンでやわらかい音色に感心し、モブレーがレスターをアイドルにしていたこともよく納得できるのであった。(しげどん)



2 GUITARS / Kenny Burrell & Jimmy Raney

1957.3.5

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★

Kenny Burrell, Jimmy Raney(gr), Donald Byrd(tp), Jackie McLean(as), Mal Waldron(p), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds)

バレル、ジミー・レイニーによる2ギター盤

ジミー・レイニーはハードバッパーに紛れ込んだクール派のような印象で少し浮いてしまっていると思う。バレル、バード、マクリーンは熱くて良質なハードバップを演奏している。(hand)



THE BEST OF KENNY BURRELL(GUITAR SOUL/Various Artists) (LP)

A1,B1,B3:1957.5.10

Prestige

いずれもリンクはありません。画像のみ。

おすすめ度

hand      ★★★☆

A1,B1,B3:Kenny Burrell, Barry Galbraith(gr), Leonard Gaskin(b), Bobby Donaldson(ds) 

ここでしか聞けない貴重な未CD化音源の3曲

「ザ・ベスト・オブ」(未CD化)は、ベスト盤ではなく、1957年5月の独自音源3曲に「オール・ナイト・ロング」と「オール・デイ・ロング」のアウトテイク各1曲を加えて出たのもの。「ギター・ソウル」は、バレルの同じ3曲に、タイニー・グライムスの2曲と、聞いたことのないビル・ジェニングスの1曲を加えた、ギタリスト3人のオムニバス盤(こちらも未CD化で、ジャケがカッコいいので、アナログは高価)。バレルの3曲は、バリー・ガルブレイスがリズムギターで入ったカルテット演奏だが、ガルブレイスは目立たず、バレルの元気な演奏が聞かれる。トータル15分足らずなので、3か月前の「ケニー・バレル」か、2か月前の「2ギターズ」のCDにオマケ追加してほしい。(hand)