Art Pepper アート・ペッパー おすすめCDレビュー  後期(1964~1982)

アート・ペッパー リーダー盤⑥1978~1980

コンテンポラリーのレス・ケーニッヒが亡くなり、ペッパーも契約切れとなりました。日本人制作の「再会」で自信を持ったペッパーは、新たにギャラクシーと契約し、「トゥデイ」、「ストレート・ライフ」という意欲的な盤を次々に発表します。また、アーチストハウスから、「ソー・イン・ラブ」のような落ち着きのある盤を4枚出したほか、日本のアトラスからサイドマン扱いながら共同リーダー的な盤を出し始ます。


Not A Througu Street/Art Pepper

1978.3.14

Toy's Factory

hand      ★★★★

Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Mugnusson(b),Carl Burnett(ds)

後期の重要ピアニスト、ミルチョ・レビエフと組んでの2度目の来日公演@山形

前年の初来日が好評で、早速、翌年2度目の来日が組まれた。これは山形公演の記録2枚組。山形YBCホールでのラジオ放送用録音らしい。ペッパーは日本のオーディエンスに歓迎され、エンジンフル稼働のライブという感じだ。1②ベサメムーチョは、コルトレーン的な導入部があり、まさかの展開で楽しい。ビバップ的なアドリブの中にコルトレーン的なアドリブが時折入るという、まさに後期ペッパーの特徴が出ていて、これが嫌な人はダメかもしれないが、慣れれば違和感なく聞ける。ミルチョ・レビエフは多分、これが初録音だが、ケイブルスとともに後期の重要なピアニストとなる。(hand)



Reharsal Session & More/Art Pepper

①-③:1978.8

④-⑥:1981.5

IJA

hand      ★★★

Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Mugnusson(b),Carl Burnett(ds)

「再会」のリハーサル的位置づけとされているがメンバーは異なる。後半はイタリア・アンコーナのライブ

78年①〜③と81年④〜⑥のライブのカプリング盤。78年のほうが「再会」のリハーサル的な位置付けにあたるのでこのタイトルがついたようだが、リハーサルというより、ペッパーがこの来日メンバーでスタジオ録音したがったが、「再会」の日本人プロデューサーT氏がラス・フリーマンとの再会にこだわり、このセッションはリハたりえなかったことになる。ライブでもあり、なぜこのタイトルとしたかわからないが、多分「再会」と関係あるほうが売れるからと想像する。多少聞かれるコルトレーン的なソロもT氏はお気に召さなかったようだ。後半は「ライブ・イン・ミラノ」として発売されたミラノではなくアンコーナと同日と思われるライブ。両日の録音ともに、ペッパーやメンバーの調子はいいが、どちらも音質が今ひとつなのが残念な点だ。(hand)



Among Friends/Art Pepper 再会

1978.9.2 

Interplay

hand      ★★★★

Art Pepper(as),Russ Freeman(p),Bob Mugnusson(b),Frank Butler(ds)

ラス・フリーマンとの再会を果たした、日本人プロデュースの人気盤。「ブルー・ボサ」が素晴らしい。

日本のT氏が主催するインタープレイ・レーベルが録音・発売した後期の名盤とされる1枚。コンテンポラリーとギャラクシーの狭間をうまく捉えたといえる。日本タイトルは「再会」となっているがまさに過去の盟友ラス・フリーマンとの再会セッション。ただし、ジャケに映っているのはバトラー。ライナーによれば、バトラーは都合がつかなかったシェリー・マンのトラ(代理)だったらしい。当時、フリーマンはジャズピアニストとしてはほぼ廃業状態にあったようで、12年ぶりのジャズ録音とのこと。T氏はコルトレーン的なペッパーを嫌い、過去のメンバーでしかも過去のスタイルで、スタンダードを録音したかったようだ。その意味では成功している。しかし、後期ペッパーを肯定して聞いてきた耳には、ペッパー自身も企画を歓迎していたとはいえ、いかにも日本人プロデューサー的な発想には少し抵抗を感じる。つまりは後期否定派にも聞きやすいので名盤とされてきたのだと思う。特筆すべきは④ブルーボサが素晴らしいこと。今は「サンフランシスコ・サンバ」でも聞かれるが、ペッパーが吹くドーハムのこの曲はやはり新鮮だ。ベースから始まる盤に名盤が多く、その点はこの盤もそうなのだが、問題は70年代的なアコベなのにエレベ的な音色で録音されていることだ。時代的に仕方ないのかもしれないが残念だ。(hand)



Today/Art Pepper

1978.12.1&2

Galaxy

hand       ★★★★

Art Pepper(as),Stanley Cowell(p),Cecil McBee(b),Roy Haynes(ds),

Kenneth Nash(conga,perc:②only)

ギャラクシー移籍第1弾、赤シャツでこちらを見つめる意欲的なペッパー

コンテンポラリーからギャラクシーに移籍しての第1作。スタンリー・カウエル、セシル・マクビー、ビリー・ヒギンズというコルトレーンのリズム隊でもおかしくない東海岸的で強力なリズム隊だ。ギャラクシーに入って以降コルトレーン的要素はかなり減衰すると思う。バラードの④パトリシアの終盤などに多少フリーキーな音はあるが気持ち程度で終わる。封印したのか、飽きたのか、プロデューサー、エド・ミシェルの方針なのかはわからない。ギャラクシーはファンタジーの子会社として50年代からあったが、ジャズに力を入れたのはこのペッパー盤からだと思う。音も良く、「再会」のカール・バーネットとこの盤のマクビーのベースの音の違いは歴然としている。バーネットのプレイが悪い訳ではない。赤シャツを着てこちらを見つめるジャケは、新レーベルでの意欲の現れを感じる。オリジナル2曲が冒頭に続くのは親しみやすくなくなるので、2曲目をスタンダードにしたほうが良かったと思う。曲順は盤の印象に大きく影響する。また、この日の別テイクがオムニバス盤「バード・アンド・バラッズ」に入っている。(hand)



The Complete Galaxy Recordings/Art Pepper

1978.12.1&2etc

Galaxy

hand      ★★★☆

Art Pepper(as),Stanley Cowell(p),Cecil McBee(b),Roy Haynes(ds)etc

ギャラクシー&アーチストハウスの録音を集めた16枚組

ギャラクシーとアーチストハウスの録音を集めた16枚組。別テイクは除くと、曲としてこの盤のみに収録されているのは4曲のみ。AHのハンク・ジョーンズらとのイエスタデイズ、「ストレート・ライフ」の1か月前のソロ演奏2曲バットビューティフルと君微笑めば、ストリングス入りの「ウインター・ムーン」時のオールマンリバーだ。収録時間の都合で未発になったものなどだと思うが、いずれも悪い演奏とは思わなかった。この4曲に未収録の別テイクを組み合わせればギャラクシー落穂集として発売可能なのではないかと思う。(hand)



FUNK'N FUN/Bill Watrous  ファンク&ファン/ビル ワトラス

1979.3.26&27

Atlas(Upiteru)

hand      ★★★☆

Bill Watrous(tb),Art Pepper(as),Russ Freeman(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds) 

日本のアトラスがペッパーを共同リーダー扱いで録音した第1弾はトロンボーンのビル・ワトラス盤

日本のアトラスがギャラクシー所属のペッパーを、事実上共同リーダーながらサイド扱いで録音した数枚の第1弾。トロンボーンのビル・ワトラスとの共演だ。ワトラスは、小刻みなフレーズが得意のトロンボーンだ。ペッパーはかなりリーダー盤的に活躍する。リズム隊もマグヌセン、バーネットに再会したラス・フリーマンだ。⑤エンジェルアイズはワンホーンで素晴らしいバラードを聞かせる。アトラスのシリーズは基本的に日本向けだったが、2017年にオムニヴォアという米レーベルから「アート・ペッパー・プレゼンツ・ウエスト・コースト・セッションズ」というタイトルでシリーズで世界発売された。この盤はVol.4だ。(hand)



SO IN LOVE/Art Pepper

1979.2.23 & 5.26

Artist House

hand      ★★★★★

Art Pepper(as),

Hank Jones(p:1,4),Ron Carter(b:1,4),Al Foster(ds:1,4),

George Cables(p:2,3,5),Charlie Haden(b:2,3,5),Billy Higgins(ds:2,3,5)

ペッパーが東西の名リズム隊と共演したアーチストハウスを代表する盤

ギャラクシーに移籍したのだが、なぜかアーチストハウス(AH)からの盤が4枚続く。 AHは、A&Mの子会社ホライズンのさらに子レーベルだ。4枚はその後、ギャラクシーから発売されて現在に至るが、その辺の理由はわからない。プロデューサーはジョン・シュナイダー。リズム隊はケイブルスを除きレギュラーではなく、オールスター的なメンバーで魅力がある。78年2月23日のハンク・ジョーンズ、ロン・カーター、アル・フォスターともに多分初共演。5月25、26日のケイブルス、「リビング・レジェンド」以来のチャーリー・ヘイデン、「トゥデイ」以来のビリー・ヒギンズの3日間、2つのセッションから4枚のアルバムができている。日本では「アーチストハウスのアート・ペッパー」シリーズとして発売され、人気があった。本盤「ソー・イン・ラブ」は、2月23日と5月26日からの盤。レーベルが活動していた78〜81年に発売されたペッパー盤はこの盤だけなので、3日間のベストテイクを集めたと思われる。曲はスタンダートを中心に多少ペッパーオリジナルが混じるというもので、フリーキーなトーンも少なく聞きやすいとも言えるが、ペッパー自身もリズム隊も真剣勝負しており、ジャケから想像するような甘口の盤ではない。2つのリズム隊、特にベースのロンとヘイデンは全く個性の異なるタイプだと思うが、ここでは不思議にもどちらも違和感なく1枚の盤に収まっている。(hand)



NEW YORK ALBUM/Art Pepper

1979.2.23

Artist House

hand      ★★★★☆

Art Pepper(as),Hank Jones(p),Ron Carter(b),Al Foster(ds)

アート・ペッパー・ミーツ・ザ・グレート・ジャズ・トリオのような盤

79年2月23日のセッションだけでまとめた盤。ハンク・ジョーンズ、ロン・カーター、アル・フォスター、ロンとアルの時期は違うがGJTではある。ペッパー・ミーツ・GJTとして聞くと、ペッパーの場合、どんな高級車でもF1も乗りこなしてしまう天才ドライバーという感じがする。レッド・ガーランド、ウィントン・ケリーに続きハービー・ハンコック入りの第三次ミーツ・ザ・リズムセクションもコンテンポラリーには作ってほしかった。②ラバーマンはペッパーのソロ演奏で沁みる。④デュオブルースはロンとのデュオでこれもなかなかいい。(hand)



STARDUST/Art Pepper

1979.5.26 & 27

Artist House

hand      ★★★★☆

Art Pepper(as,cl),George Cables(p),Charlie Haden(b),Billy Higgins(ds)

西海岸の最高のリズム隊との共演盤

79年5月25、26日のセッションからなる盤。②ティンティンデオ、こういうラテンテイストの曲はペッパーはめっちゃうまい。テンポがあと微妙に少し遅めにしたほうが泣けた気もするが誰も泣かせたくなかったのだろう(笑)。ヘイデンもこの辺のポップを感じる路線が後年のカルテット・ウエストにつながったのではと想像する。それにしてもヘイデンのベースはいい重低音だ。ラスト④メロートーンはクラでピアノレス。ヘイデンがすごい。(hand)



ARTWORKS/Art Pepper

1979.5.26 & 27

Artist House

hand      ★★★★

Art Pepper(as,cl),George Cables(p),Charlie Haden(b),Billy Higgins(ds)

アーチストハウスの残り物のはずがこれも素晴らしい。

79年5月25、26日のセッションからなる盤。一番の残り物のはずが、④ドナリーなどバップ曲を中心にした選曲が私には親しみやすい内容だ。①身も心も、と⑤ユーゴートゥマイヘッドはアルトのソロ、②アンソロポロジーはクラでピアノレスもいい。ただ、ボサの③デサフィナードはあまりペッパーに合わない気がした。ラテンは合うがボサは似合わないのだと思う。現在は「PROMISE KEPT:THE COMPLETE ARTIST HOUSE RECORDINGS」という5枚組が出ていて別テイクも入っているようだ。(hand)



LANDSCAPE/Art Pepper

1979.7.16 & 23

JVC → Galaxy

hand      ★★★★

Art Pepper(as,cl),George Cables(p),Tony Dumas(b),Billy Higgins(ds)

79年、3度目の来日公演の記録

79年7月16、23日の3度目の来日公演の芝郵便貯金ホールでの記録。日本のJVCから当初79年に「ランドスケープ」が、81年に「ベサメムーチョ」が発売され、2007年に没後25周年記念で「ランドスケープ〜ザ・コンプリート・トウキョウ・コンサート1979」が4枚組CDで出た。「ランドスケープ」は、若い頃に聞いたときはあまりピンとこなかったが、今聞くとなかなかいい内容に思える。続編やコンプリート盤が出るのは内容がいいからだと思う。(hand)



BESAME MUCHO/Art Pepper

1979.7.16 & 23

JVC

hand      ★★★★

Art Pepper(as,cl),George Cables(p),Tony Dumas(b),Billy Higgins(ds)

「ランドスケープ」の続編。ベサメ・ムーチョを久々に演奏

79年7月16、23日の3度目の来日公演の芝郵便貯金ホールでの記録。「ランドスケープ」の続編として日本発売された盤。日本人の大好きなべサメを演奏している。欧米でのライブでは「コペンハーゲン」でデューク・ジョーダンのときくらいしか演奏していない。(hand)



STRAIGHT LIFE/Art Pepper

1979.9.21

Galaxy

hand      ★★★★☆

Art Pepper(as),Tommy Flanagan(p),Red Mitchell(b),Billy Higgins(ds),

Kenneth Nash(perc:⑤only)

ギャラクシー第2作は名人トミフラがサポート。気魄を込めて熱演するペッパー

「トゥデイ」の翌79年9月のギャラクシー第2作(現在はアーチストハウス盤やライブもギャラクシー盤となったので第2作ではない。)。トミフラ、レッド・ミッチェル、ロイ・ヘインズという繊細かつ強力なリズム隊だ。①サーフライドから始まるということは、デビュー時期の初心忘れず、最初に戻ってやり直します、というような意味だろうか?ペッパーの自伝タイトルにもなったタイトル曲③ストレートライフも「ミーツ・ザ・リズムセクション」の再演、⑤パトリシアも「リターン・オブ」の再演だ。気力の込められた演奏ばかりだ。(hand)



ANGEL WINGS/Jack Sheldon

1980.2.21 & 22

Atlas(Upiteru)

hand      ★★★

Jack Sheldon(tp),Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Tony Dumas(b),Carl Burnett(ds)

アトラス第2弾はトランペットのジャック・シェルドン盤

日本のアトラスでの2作目。ジャック・シェルドンのトランペットとの2管だ。ウエストの2管だとどうしてか西海岸風になってしまい、ハードバップ感は弱い。ビル・ワトラスは調べてみるとコネチカット出身なのであまり西海岸的にはならなかったのだろう。ただ、シェルドンもフロリダ生まれだった(笑)。③ユビソは、「ミーツ・ザ・リズムセクション」以来の再演。悪くはないがスーパー素晴らしいまでは行かない。日本側にやらされてと想像する。どうせ再演してもらうなら、ガーランド・トリオを呼ぶくらいしてほしかった。ミルチョ・レビエフも悪くないが、この手の曲の似合う人ではない。「アート・ペッパー・プレゼンツ・ウエスト・コースト・セッションズVol.5」として再発されている。(hand)



STRIKE UP THE BAND/Pete Jolly

1980.2.26 & 27

Atlas(Upiteru)

hand      ★★★

Art Pepper(as),Pete Jolly(p),Bob Magnusson(b),Roy McCurdy(ds)

アトラス第3弾はピアノのピート・ジョリー盤でワン・ホーン

アトラス3作目は、ピアノのピート・ジョリーがリーダーなので、ペッパーのワンホーンが実現。ベースはマグヌセンで、ドラムはロイ・マッカーディだ。ただ、残念ながら想像以上に感じるものはなかった。ジョリーの淡々としたプレイがいけないのかもしれない。ペッパーもあまり燃えていない感じがする。「アート・ペッパー・プレゼンツ・ウエスト・コースト・セッションズVol.2」として再発されている。(hand)