Milt Jackson ミルト・ジャクソン CDレビュー  サイド作・共同リーダー盤 2

ミルトの後期は、前期に引き続き、サイド盤や共同リーダー盤、ジャムセッション盤など、多数に参加しています。最後にピーターソン、レイとのヴェリー・トール・バンドでの素晴らしい録音を残して旅立っています。


REUNION BLUES/Oscar Peterson

1971.7

MPS

おすすめ度

hand     ★★★☆

Oscar Peterson(p),Milt Jackson(vib),Ray Brown(b),Louis Hayes(ds)

9年前の「ベリー・トール」の再会セッション

ゴツいプラグが4本ささったコンセントの悪趣味なジャケで、あまり聞いてみたいと思わせない顔だ。9年前の「ベリー・トール」の再会セッション。ただしドラムはエド・シグペンからルイス・ヘイズに変わっている。タイトル曲⑤リユニオンブルースはこの盤のために作ったわけではなく「ベリー・トール」に既に入っていた曲だ。ストーンズの超有名曲①サティスファクションの珍しいジャズ化、しかも超高速演奏だ。ビートルズよりもブルースに近いとされるストーンズだが、意外とジャズでは取り上げられていない。白人のブルースと黒人のブルースのフィーリングが違うのかもしれない。冒頭にあり目立つ曲だが、盤全体の中では異色な雰囲気になっていると思う。こういう曲をやるなら盤全体をその雰囲気にしたほうがいいと思う。(hand)



CHERRY/Stanley Turrentine With Milt Jackson

1972.5

CTI

おすすめ度

hand     ★★★☆

Stanley Turrentine(ts),Milt Jackson(vib),Bob James(p,el-p,arr),Cornell Dupree(gr),Ron Carter(b),Billy Cobham(ds)

「シュガー」と並ぶスタンリー・タレンタインの人気盤に参加

スタンリー・タレンタイン・ウィズ・ミルト・ジャクソンとなっており、ミルトがソロイストとしてかなり重視されている。CTI盤なので、フュージョン度は高いが、ジャズ原理主義者にもギリギリ許容範囲の内容だと思う。ミルトのジャジーな演奏が自らのCTI盤よりもジャズ度を高めるのに貢献している。(hand)



The Dizzy Gillespie BIG 7 AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL 1975

1975.7.16

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★☆

Dizzy Gillespie(tp),Eddie "Lockjaw" Davis,Johnny Griffin(ts),Milt Jackson(vib),Tommy Flanagan(p),Niels-Henning Orsted Pedersen(b),Mickey Roker(ds)

ディジーのビッグ7によるモントルー。グリフィン×ロックジョーとともに活躍するミルト

ディジー〜ミルトに、人気のテナーバトルチーム、グリフィン×ロックジョーが加わってモントルーに出演した記録。ミルトは2人それぞれの共演盤はあるがチームとの共演はこの盤のみ。ただ、2人のバトルはなく、4人のフロントのソロ回しを楽しむ盤になっている。ラスト④チェロキーのテーマのみ2人のハモリがある。バド系バッパーにカテゴライズされているトミフラだが意外に少ないバッパー的プレイを聞かせる。ディジー自身はいつもより元気ない気がする。だから、ゲストが多いのかもしれない。ミルトとペデルセンは同日の「ビッグ6」にも出演(前後は不明)する元気さだ。(hand)



The Oscar Peterson BIG 6 AT MONTREUX

1975.7.16

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

Oscar Peterson(p),Milt Jackson(vib),Joe Pass(gr),Toots Thielemans(harm),Niels-Henning Ørsted Pedersen(b),Louis Bellson(ds)

ピーターソンのビッグ6によるモントルー。ハーモニカのトゥーツ・シールマンスが活躍

ピーターソンのビッグ6によるモントルー・ライブ。私のお気に入りのハーモニカのトゥーツ・シールマンスの活躍する盤だ。シールマンスはギターと口笛!も主要楽器で、フュージョン的な盤もあり、ハーモニカをメインにした熱い4ビートのジャズ演奏は意外と限られている。この盤はビッグ6だが、管楽器と言えるのはトゥーツだけで、ミルトやジョー・パスはリズムも兼ねているので、トゥーツの目立ち度が高くなる。ミルト、パス、そしてピーターソンも素晴らしいソロをとる。トランペットやサックスがいないので、気負わずくつろいだ感じがする。ペデルセンもいい。ソロイストは多いが、全曲10分超の4曲なので問題ない。ミルトは、特に②ヒアズザットレイニーデイ、③プアバタフライと④リユニオンブルースのテーマとソロで活躍する。④のドラムソロはちょい長い。(hand)



JAM SESSION AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL 1975/Count Basie

1975.7.19

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

Count Basie(p),Roy Eldridge(tp),Johnny Griffin(ts),Milt Jackson(vib),Joe Pass(gr),Toots Thielemans(harm),Niels-Henning Ørsted Pedersen(b),Louis Bellson(ds) 

ベイシーをセッションリーダーにしたモントルーのジャムセッション

ベイシーをセッションリーダーにしたジャムセッション。フロントは、ロイ・エルドリッジ、ジョニー・グリフィン、ミルトの3人。リズムはベイシー、ペデルセン、ルイ・ベルソン。メンバーのうち、ロイ、ベイシー、ベルソンがスイング派で、他はモダン派だ。ロイとルイは多少古さを感じるが、ベイシーはモダンとも言える。収穫はグリフィンの素晴らしいソロだ。この人は、ヒトのバンドに参加した時に、本当にノビノビとしたいいソロをとる。ミルトのソロもなかなかいい。(hand)



WHAT IT'S ALL ABOUT/Roy Eldridge

1976.1.16

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★

Roy Eldridge(tp),Budd Johnson(ts),Norris Turney(as),Norman Simmons(p),Milt Jackson(vib:4,5),Ted Sturgis(b),Eddie Locke(ds)

ロイ・エルドリッジ盤に2曲ゲスト参加

スイングのトランペッター、ロイ・エルドリッジの録音に2曲ミルトがゲスト参加。④リカードボサはモダンなボサ演奏だ。ノリス・ターネイのフルートもいい。⑤メランジェはジャムセッション的雰囲気だ。(hand)



THE KING/Benny Carter

1976.2.11

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★☆

Benny Carter(as),Milt Jackson(vib),Joe Pass(gr),Tommy Flanagan(p),John B Williams(b),Jake Hanna(ds)

スイング三大アルトのベニー・カーターがミルト、パス、トミフラらモダン派の名人と作った自作曲集

ジャズの草創期からチョコレート・ダンディーズを率いて活躍し、スイング時代には三大アルトの1人となったベニー・カーター。1907年生まれのカーターが、23年生まれのミルトの他にパス、トミフラらモダン派の名人を集めて作った盤。カーターの自作曲集なので多少古い感じもしない訳ではないが、モダンの名人達と調理することで、この時代のジャズになっている。カーターのアルト自体は、ビバップ以前のスタイルで新しさはないが、音色が美しくくつろぎはある。(hand)



QUADRANT/Joe Pass・Milt Jackson・Ray Brown・Mickey Roker

1977.2.4

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

Joe Pass(gr),Milt Jackson(vib),Ray Brown(b),Mickey Roker(ds)

達人達が名人芸を競い合うクオドラントの第1作

やはりミルトにはこの手のセッションが向いている。数名の達人が名人芸を競い合うような内容のときに、ミルトの職人芸が活きると思う。バイブもギターも電気楽器ではあるが、アタッチメントを付けなければどちらも響きはアコースティックな楽器だ。この盤は、「クオドラント」という四天王のようなタイトルだが、ミッキー・ローカーも達人ではあるが、さらに巨匠ともいうべき3人の競合・融和が楽しい。パス作②ジョーズチューンはインプレッションズを思わせるモーダルな曲だ。⑤グルーヴヤードはピアノのカール・パーキンス作のカッコいい曲で、ミルトがブルージーな本領を発揮する。パスもいいが、「バグス・ミーツ・ウエス」でも是非やってほしかった。ウエスに捧げているのかもしれない。(hand)



Dizzy Gillespie JAM

1977.7.14

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★☆

Dizzy Gillespie,John Faddis(tp),Milt Jackson(vib),Monty Alexander(p),Ray Brown(b),Jimmie Smith(ds)

ディジーのモントルー・ジャムに参加

トランペットに愛弟子ジョン・ファディスを加えたディジーのジャムにミルト、モンティ、レイ、ジミー・スミスと前日と同じ4人が参加。中間派の香り漂うクラーク・テリー に対し、ディジー&ファディスは切れ味鋭い100%ビバップのトランペットで気持ちがいい。ミルト達も前日よりもバッパーになっていると思う。ノーマン・グランツはこの77年のモントルーで15枚も盤を作ったらしい。色んな意味で、すごいと思う。(hand)



MONTREUX '77/THE JAM SESSIONS

1977.7.15

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★☆

③:Milt Jackson(vib),Ray Brown(b),Clark Terry(tp,flh),Eddie "Lockjaw" Davis(ts),Monty Alexander(p),Jimmie Smith(ds)

④:Dizzy Gillespie,John Faddis(tp),Milt Jackson(vib),Monty Alexander(p),Ray Brown(b),Jimmie Smith(ds)

⑥:Oscar Peterson(p),Milt Jackson(vib),,Clark Terry(tp,flh),Ronnie Scott(ts),Joe Pass(gr),Niels Pedersen(b),Bobby Durham(ds)

モントルー’77の各種ジャムの寄せ集め盤

ピーターソン、ミルト=レイ、ディジー、ベイシーらの5種のジャムを集めた盤。ミルトは、③ミルト=レイ、④ディジー、⑥オールスターの3曲に参加。ミルト=レイでは、ロックジョーがテキサス系のワイルドなテナーソロを聞かせる。ちょいワイルド過ぎかと思う。上品なジョン・ルイスのピアノの対極にいる人だ。(hand)



MILT JACKSON + COUNT BASIE + THE BIG BAND VOL.1 & 2

1978.1.18

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

しげどん  ★★★★

Milt Jackson(vib),Count Basie(p),Lyn Biviano,Pete Minger,Sonny Cohn,Wayman Reed(tp),Bill Hughes,Dennis Wilson,Fred Wesley,Mel Wanzo(tb),Bobby Plater,Charlie Fowlkes,Danny Turner,Eric Dixon,Kenny Hing(sax),Freddie Green(gr),John Clayton(b),Butch Miles(ds)

ミルト・プレイズ・ベイシー・ヒッツ・ウィズ・ベイシー・オーケストラのような盤

ベイシー ・オーケストラとミルトの共演。売れたのかVol.2まで出ている。録音技術にもよると思うが、大オーケストラにバイブが全く埋没することなく、いい感じのビッグ・バンド演奏になっている。曲のせいか、ミルトの演奏が若干ライオネル・ハンプトン的なスイングスタイルになっていると思う。78年のベイシー がライブでもないのに旧曲ばかりやるのは、ミルトと急遽共演だからなのか?聞く方にはわかりやすいのだが…ミルト・プレイズ・ベイシー・ヒッツ・ウィズ・ベイシー・オーケストラのような盤になっていて、プラス感はあまりない。(hand)

ジャズ聴き始めのころ、新譜で出たこの盤を図書館で借りて聴いた。私にとってベイシーはその後聴いた往年の名作よりこの盤が最初の出会いだったかもしれないとにかく懐かしい盤。全般的にリラックスした良い雰囲気で、今でもゆったりとした気持ちで楽しめる一枚。(しげどん)



ALL TOO SOON/QUADRANT

1980.1.21

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

Joe Pass(gr),Milt Jackson(vib),Ray Brown(b),Mickey Roker(ds)

名人集団クオドラントの第2作はエリントン集

グループとしてのクオドラントの3年ぶりの第2作はエリントン集。前作「クオドラント」はグループ名か作品名かはっきりしなかったが、今回は明らかにグループ名だ。内容も4人の緊密度が高まっていると思う。緊密度は高いが、緊張感はあまりないくつろぎのあるエレガントな演奏だと思う。今のところ第3作は出ていないが、パブロの大量録音なので、ライブ音源などがあるかもしれない。(hand)



MUSICIAN・COMPOSER・RACONTEUR/Dizzy Gillespie

1981.7.17

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★

Dizzy Gillespie(tp,conga,vo),James Moody(as,ts,fl),Milt Jackson(vib),Ed Cherry(gr),Mike Howell(b),George Hughes(ds)

モントルー’81のディジー・バンドにゲスト参加

1981年モントルー・フェスに出演したディジーの2枚組。ミルトはジョン・ルイスらとディジーのビッグバンドに在籍したことがきっかけでMJQを結成しているので、ディジーは師匠格にあたる。ディジーのレギュラーバンドにミルトがゲスト参加した形だと思う。ディジーのオリジナル中心だが、エレベとギターとドラムによって、フュージョン的な演奏になっている。ミルトはいつもどおりの余裕の演奏だ。サブタイトルに、プレイズ&ラップスとなっているが、演奏にラップがあるのではなく、MCを会場とのラップととらえているようだ。ディジー作のラスト曲2⑤オリンガは、ミルトも吹き込んでいる曲だが、会場も巻き込んで16分超のゴスペルコーラスのようになる。(hand)



TWO OF THE FEW/Oscar Peterson・Milt Jackson

1983.1.20

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

Oscar Peterson(p),Milt Jackson(vib)

ピーターソンとミルトの珍しいデュオ盤

ピーターソンとミルトのデュオで、ありそうでこれしかない盤。同じ楽器のチック・コリア&ゲイリー・バートンのクリスタルでサイレントな感じとは全く異なり、メロディアスでスインギーな感じの盤だ。(hand)



COMPANY/Milt Jackson・J.J. Johnson・Ray Brown

1983.5.25-26

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

Milt Jackson(vib),J.J. Johnson(tb),Ray Brown(b),John Collins(gr),Tom Ranier(p),Roy McCurdy(ds)

ミルト、J.J.、レイの3人と仲間たちの盤

ミルト、J.J.、レイの3人の共同リーダーと仲間たち(カンパニー)の盤。割と聞きやすい、張り切り過ぎず、大人の落ち着きのある盤だと思う。ラスト⑦ジャンピンブルースだけは少し熱い。(hand)



(M & M)/Milt Jackson Plays With 増田一郎 Quartet

1990.11.10

GML

おすすめ度

hand     ★★★

Milt Jackson,増田一郎(vib),塚原小太郎(p),浅見嘉則(b),佐藤節雄(ds)

増田一郎4にミルトが共演したWバイブ盤

増田一郎のGML第2作。今回は増田との双頭盤でメンバーは日本側で、ピアノの塚原小太郎らだ。塚原は、ジョン・ルイスよりも、ピーターソンやモンティに近い感じか。自盤よりも遠慮していると思う。中央左にミルト、中央右に増田が配置されているが、真面目に聞いていないと聞き分けられないと感じた。(hand)



A TRIBUTE TO Oscar Peterson LIVE AT THE TOWN HALL

1996.10.1

Telarc

おすすめ度

hand     ★★★☆

④⑤Oscar Peterson(p),Milt Jackson(vib),Ray Brown(b),Lewis Nash(ds),Herb Ellis(gr)

病気から復活したピーターソンのために仲間たちが集まったタウンホールでのライブ

ピーターソンが亡くなった訳ではなく、脳溢血から復活したピーターソンにトリビュートということで、ピーターソン本人も含め豪華な仲間たちが集まったタウンホールでのライブの記録。ミルトは④バグスグルーヴと⑤ウィローウィープの2曲に参加。快調なプレイで盟友ピーターソンの復活に花を添えている。(hand)



THE VERY TALL BAND/Oscar Peterson,Milt Jackson,Ray Brown

1998.11.24-26

Telarc

おすすめ度

hand     ★★★★

Oscar Peterson(p),Milt Jackson(vib),Ray Brown(b),Karriem Riggins(ds)

37年ぶりのベリー・トール・バンド名の再演ライブ

最晩年の共同リーダー作品はテラークから。テラークは、ピーターソンとレイの盤は多いが、ミルトも所属したのかは不明だ。ベリー・トール・バンドという名前では37年ぶりの再演ライブ。次作「ホワッツ・アップ」は同日の録音。ピーターソン=ミルト=レイという巨匠トリオに無名のカリエム・リギンズという組合せ。巨匠3人のいつまでも若々しいプレイと多少荒削りなリギンズのドラムがいい具合に融合して、いい盤に仕上がっている。調べてみると、リギンスは2019年の大西順子「ジャトロイト」にも入っていた。(hand)



WHAT'S UP/THE VERY TALL BAND

1998.11.24-26

Telarc

おすすめ度

hand     ★★★★☆

Oscar Peterson(p),Milt Jackson(vib),Ray Brown(b),Karriem Riggins(ds)

ミルトの最終盤は盟友とのベリー・トール・バンド

現時点でのミルトの最終盤は、前作「ベリー・トール・バンド」と同日ライブ録音。残り物なのかもしれないが、これはこれで充実した内容だ。テラーク盤なので音もいい。ミルトは翌99年10月9日に79歳で亡くなっている。11ヶ月後に亡くなるとは思えない元気な演奏だ。レイ・ブラウンは2002年に75歳で、ピーターソンは2007年に82歳で亡くなっている。カリエム・リギンスの溌剌としたドラムが刺激になったのかもしれないが、老マイスター3人の衰えを感じない最後の録音は本当に素晴らしい。(hand)