Curtis Fuller カーティス・フラー サイド参加作 CDレビュー ③

ここではカーティス・フラーの61年から70年代までのサイド参加作を取り上げています。

60年代は3管のメッセンジャーズとして、トロンボーン奏者最初のレギュラーメンバーになった時期で、たくさんの名盤を残しました。



Mosaic/Art Blakey & The Jazz Messengers モザイク/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1961年10月2日

Blue Note

おすすめ度

hand   ★★★★

しげどん  ★★★★☆

Art Blakey(ds),Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Jymie Merritt(b) 

ショーター、フレディ、シダーがそろい、新主流派的な色合いが強まったJM

新主流派的な色彩が急に強まった作品。モーニンの頃のJMの雰囲気はない。ショーター、フレディ、シダー・ウォルトンの3進歩派とブレイキー、フラー、ジミー・メリットの3守旧派の歩み寄りにより完成した盤だと思う。名盤と言われ、カッコ良さは感じるが、日本人が喜ぶような親しみやすいメロディはあまりない。(hand)

メンバー一新後の初のスタジオ録音盤で、勢いのある演奏だ。ゴルソン在籍時のメッセンジャーズカラーが全くなくなり、インパルス盤A La ModeやUA盤3Blind Miceに比べてショーター、ハバード、ウォルトンの存在感が増し、新しい三管のメッセンジャーズとして新しいバンドカラーが鮮明になった。(しげどん)



Buhaina’s Delight/Art Blakey & The Jazz Messengers ブハイナズ・ディライト/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1961年11月28日

Blue Note

おすすめ度

hand   ★★★★

しげどん  ★★★★☆

Art Blakey(ds),Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Jymie Merritt(b) 

ショーター色に染まるJM。バックステージ・サリーは必聴

ショーター作の①バックステージ・サリーにはモーニン時代に通じる何かがあり親しみを感じる。ただ、JMにおけるフラーの存在感はライブの「スリー・ブラインド・マイス」が最高で、それ以外はやや低いと思う。(hand)

ウェイン・ショーター作の曲が6曲中3曲。でもすべてに濃く自己主張をしているわけではない。ショーターの自己主張曲は2曲目のContemplationだけで、冒頭のBackstage Sallyは、従来のバンドカラーに沿った曲で、ここでの彼のソロを聴くと、彼の黒魔術的なイメージの先入観を忘れて、センスのいいソロだと見直してしまう。シダー・ウォルトンのオリジナルもメッセンジャーズらしい曲。(しげどん)



Caravan/Art Blakey & The Jazz Messengers キャラバン/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1962年10月23,24日

Riverside

おすすめ度

hand   ★★★★

しげどん   ★★★

Art Blakey(ds),Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Reggie Workman(b) 

JMが長年在籍したブルーノートを離れリバーサイドに移籍した第1作

JMは、長年在籍したブルーノートを離れ、リバーサイドからの第1作。リバーサイドの方針なのか、モーダルなアレンジはされているが、スタンダードが入って聞きやすい。④プレクサスでのフラーのソロがいい。この盤から長年在籍したベースのジミー・メリットがレジー・ワークマンに代わる。(hand)

リバーサイド第一作として、新メッセンジャーズを表現すべきなのに、なぜか「キャラバン」だ。アレンジは新しいがあえてオリジナルを避けてブレイキーをフィチャーした有名曲を選んだのはセールスを意識したのかもしれないが、あまり魅力は感じない。ショーターのオリジナルなどそのほかの曲も盛り上がりに欠け、強い印象に残らない少し残念な一枚だ。(しげどん)



Golden Boy/Art Blakey & The Jazz Messengers ゴールデン・ボーイ/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1963年

Colpix

おすすめ度

hand   ★★★

しげどん   ★★☆

Art Blakey(ds),Lee Morgan,Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Julius watkins(frh),Bill Barber(tu),James Spaulding(as),Wayne Shorter(ts),Charles Davis(bs),Cedar Walton(p),Reggie Workman(b) 

JM+αによるミュージカル「ゴールデン・ボーイ」のジャズ化作品

リバーサイド在籍中のユナイテッド・アーチストの盤。ミュージカルのジャズ化で、JMにホーンを強化した編成。特段感動はなかった。(hand)

ミュージカルのジャズ化という事で、ソロもあるがアレンジのウエイトが高く、ウエストコースト的な印象がある。ジャズ・メッセンジャーズ的なワイルドなジャズテイストがあまりない作品だ。(しげどん)



Ugetsu/Art Blakey & The Jazz Messengers ウゲツ/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1963年6月16日

Riverside

おすすめ度

hand   ★★★★

しげどん  ★★★★☆

Art Blakey(ds),Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Reggie Workman(b) 

来日後のJMのバードランドでのライブ。「雨月物語」にヒントを得たタイトル曲

「スリー・ブラインド・マイス」に引き続くライブ。場所はバードランドで9年前のクリフォード・ブラウン入りの「バードランドの夜」と同じピーウィー・マーケットのMCが入る。①ワン・バイ・ワンは新旧JMの雰囲気を併せ持つショーター曲。フラーの彼らしいおおらかなソロが聞かれる。タイトル曲②ウゲツはシダー・ウォルトン作。日本の雨月物語から来ているらしいが、上田秋成の暗さはなく、明るいいい曲だ。フラー作③タイム・オフでもフラーのソロはいい。ショーター作の⑥オン・ザ・ギンザも日本からヒントを得た曲だ。来日が彼らに作曲のきっかけを与えたようだ。(hand)

この時期の人気盤であり、親しみやすく愛聴できる作品だ。リバーサイド時代を代表する一枚と言っていいと思う。ライブ作品ながら粗さは感じない完成度の高い作品で、オリジナル曲もいい曲が多い。タイトル曲のUGETSUも雨月物語のようなミステリアスなイメージは全くないさわやかな印象。そのほかの演奏も無機質ではない親しみやすい曲調が多く、演奏もいい感じで味わえる一枚。(しげどん)



Free for All/Art Blakey & The Jazz Messengers フリー・フォー・オール/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1964年2月10日

Blue Note

おすすめ度

hand   ★★★★☆

しげどん   ★★★☆

Art Blakey(ds),Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Reggie Workman(b) 

古巣ブルーノートからの盤。ブレーキ―が熱くドラムをたたき、メンバーも応えている。

なぜかこの時期は、リバーサイドとブルーノートの録音がある。この10日後にリバーサイドの「キョート」を録音。この盤は、持ってはいたが、聞いた記憶がない。今回、聞いて良かった。ブレイキーがここまで熱くドラムを叩いた曲は少ないと思う。特にタイトル曲①フリー・フォー・オールのドラムだ。フロント3人のソロも熱くて興奮できる。②ハマーヘッドは、だいぶ落ち着くがいつもよりハードだ。③ザ・コアもいい。④ペンサティヴァは、クレア・フィッシャーの曲で私がコレクションしている曲。バド・シャンク盤とビリー・テイラー盤が素晴らしいが、この演奏も素晴らしい。(hand)

アグレッシブな新しいテイストを強く感じる作品。ウェイン・ショーター加入後、少しづつ新主流派色を強めて来た一方で、一部の曲ではゴルソン時代の味わいも残したアルバムが多かったように思う。しかしこの作品は全く従来のメッセンジャーズの雰囲気はなく、ドラムスもモーニンの頃のブレイキーらしさはなく新鮮なものに変化している。熱演だが、従来のメッセンジャーズらしさを求めるファンには意外な作品。(しげどん)



Kyoto/Art Blakey & The Jazz Messengers キョウト/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1964年2月20日

Riverside

おすすめ度

hand   ★★★☆

しげどん   ★★★☆

Art Blakey(ds),Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Reggie Workman(b) ,Wellington Blakey(vo)

JMのリバーサイド第3作にしてラスト作

「ウゲツ」に続くJMの日本贔屓の1枚。①ハイ・プリエストはフラーの曲。日本のお坊さんのことか?モンクのことか?フラーのソロがいい。③の男性ボーカルは、ブレイキーの従兄弟らしい。④日本橋は渡辺貞夫の曲。フラーのソロは迫力ある。ラスト⑤キョートは、フレディの曲。(hand)

1枚を通して聴くといろいろな要素が交錯しているごった煮的な印象だ。冒頭の「The High Preist」はフラーらしいキャッチーなテーマ。フラーの曲は親しみやすい曲調が多く、今までのメッセンジャーズ路線的な曲だ。でも3曲目のボーカル入りは異色で唐突。そしてこの盤の聴きどころはB面の2曲「ニホンバシ」「キョウト」。タイトルからの日本的なイメージはなく、60年代を象徴するような新しいテイストで演奏も充実している。(しげどん)



Indestructible!/Art Blakey & The Jazz Messengers インデストラクティブル!/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1964年4月24日,5月15日

Blue Note

おすすめ度

hand   ★★★★

しげどん  ★★★★☆

Art Blakey(ds),Lee Morgan(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Reggie Workman(b)

モーガンが復活したBN盤。フラーのエジプティアンは必聴!

フレディが抜けてモーガンが戻ったJM。①エジプティアンはフラーの曲で、なかなかモーダルでカッコいい。フラーのソロから始まり、ショーター、モーガンと続く。モーガンはやや芸風が変わり、モーダルな演奏にきちんと対応している。ショーターはラスト盤になるが、オリジナル⑤ミスター・ジンはなかなかいい。(hand)

冒頭から立て続けに2曲がフラーのオリジナル。で、とても勇壮な感じで勢いがあり、フラー、モーガンともにエネルギッシュなソロで、ショーターもフリーキーな彼らしい個性を発揮。続くモーガンのオリジナルもリズムが変わっているが、ブルースなのでこれもメッセンジャーズらしい。この時期は、ウェイン・ショーターがベニー・ゴルソンの後釜として全体の方向性を決めていたみたいなイメージだったが、実はほかのメンバーの影響度もかなり大きく、特にフラーが全体の雰囲気を作っている盤のほうがむしろ多いと感じる。(しげどん)



’S Make It/Art Blakey & The Jazz Messengers スメイク・イット/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1964年11月15,16日

Limelight

おすすめ度

hand   ★★★

Art Blakey(ds),Lee Morgan(tp),Curtis Fuller(tb),John Gilmore(ts),John Hicks(p),Victor Sproles(b)

メンバーの大幅な交替で、JMの栄光に陰りが見え始めた盤

ライムライトに移りフレディだけでなくショーター、シダーも抜け、ジョン・ギルモア、ジョン・ヒックスが加入している。モーガン、フラーはいるが、バンドカラーは大きく変わっている。残念ながらこの盤からのJMは低迷期に入ると思う。この後、ウディ・ショー、チャック・マンジョーネ、そしてキース・ジャレットまで加入する時期はあるが約13年間、録音も減り、ヒット盤も少なくなる。復活が始まるのは77年、ヴァレリー・ポルマレノフ、ボビー・ワトソン、ジェームズ・ウィリアムスあたりの加入からだ。80年にウィントン・マルサリスの加入で復活は確固となり、ブレイキーが亡くなる90年までその人気は続いた。この盤の音楽監督は不明だが、フラーの可能性もある。フラーは随所でいいソロを聞かせる。(hand)



In My Prime Vol.1/Art Blakey & The Jazz Messengers イン・マイ・プライムVol.1/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1977年12月29日

Timeless

おすすめ度

hand   ★★★☆

Art Blakey(ds),Valery Ponomarev(tp),Curtis Fuller(tb),Robert Watson(as),David Schnitter(ts),James Williams(p),Dennis Irwin(b),Ray Mantilla(perc)

ヴァレリー・ポノマレフ、ボビー(ロバート)・ワトソンの参加でJM復活の兆しが見え始めた盤

13年間の低迷期を脱出する契機となった盤だと思う。メンバーの問題というよりも時代の問題で、フリー、フュージョンというJMとは相容れない音楽の時代だったのだ。そんな中で本流のジャズの復活させたのはJMだと思う。アート・ブレイキーとJMという有名看板を活用して、若手を中心に新たなモダンジャズを構築している。ちょい先輩のフラーやこの盤に参加しているわけではないがハンコック達も復活の協力者だ。この盤では、フラーはブレイキーに次ぐベテランで、新旧の橋渡し役として目立たないがソロやアンサンブルに活躍する。多分、ボビー・ワトソンがメインの監督役なのだと思うが、過去のJMとはかなり音楽性は違う。この流れは、この後、ウィントン・マルサリスの出現で本格化する。(hand)



In My Prime Vol.2/Art Blakey & The Jazz Messengers イン・マイ・プライムVol.2/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1977年12月30日

Timeless

おすすめ度

hand   ★★★★

Art Blakey(ds),Valery Ponomarev(tp),Curtis Fuller(tb),Robert Watson(as),David Schnitter(ts),James Williams(p),Dennis Irwin(b),Ray Mantilla(perc)

Vol.1の翌日の録音。タイム・ウィル・テルは新しい名曲

「イン・マイ・プライムVol.1」の翌日の録音。新しいJMは、この時点では、ファンキーともモーダルとも違い、コンガ入りでもあり、元気のいいラテン・ファンキーの要素を持つ新ジャズだ。フラーは、バンドカラーに合わせたソロを吹いているが、本領発揮かどうかは微妙だ。⑤タイム・ウィル・テルは、ショーター=ハバード時代の雰囲気がある。(hand)



Hamp In Harlem/Lionel Hampton ハンプ・イン・ハーレム/ライオネル・ハンプトン

1979年5月20日

Timeless

おすすめ度

hand   ★★★

Lionel Hampton(vib,ds,p,vo),Joe Newman, Wallace Davenport(tp),Curtis Fuller(tb), Steve Slagle(as),Paul Moen(ts),Paul Jeffrey(bs),Wild Bill Davis(org,p),Gary Mazzaroppi(b),Richie Pratt(ds)

ライオネル・ハンプトンのビッグバンドとの共演

スイングバイブの王者ライオネル・ハンプトンのビッグバンドの一員としてフラーが参加したオランダでのライブ。ハンプのバイブとたまに歌をビッグバンドが支える盤。フラーは過去にこの楽団に属したことはないと思う。⑤⑥でソロはあるが、フラー聞くためのマスト盤とは思われない。(hand)



California Message/Benny Golson Featuring Curtis Fuller カリフォルニア・メッセージ/ベニー・ゴルソン・フィーチャリング・カーティス・フラー

1980年10月20-22日

Baystate

おすすめ度

hand   ★★★☆

Benny Golson(ts,ss),Curtis Fuller, Thurman Green(tb),Oscar Brashear(tp), Bill Mays(p),Bob Magnusson(b),Roy McCurdy(ds), 

旧友ゴルソンの盤に共演

昔初めて聞いたときは、エレピに違和感を感じたが今は感じない。今は、フラーの音の悪さが気になる。元気はいいのだが、音が割れる。録音のせいなのか、オーディオのせいなのか、フラーのせいなのか。フラー以外の楽器はクリアなので、フラーかフラーのマイクが原因だと思う。フィーチャリングとあっても、やはりゴルソン盤に一部ゲスト出演した内容だ。私の苦手な日本人K氏のプロデュースだが、甘口の盤にはなっていないのはいい。(hand)