・新宿ジャズ談義の会 :バド・パウエル CDレビュー 目次
リーダー作、サイド参加作、発掘盤も含めてレビューしています。下記よりクリックして参照してください。
・Bud Powell バド・パウエル おすすめBest5・・・このページ
・Bud Powell CDリーダー作 ①1947年~55年
・Bud Powell CDリーダー作 ②1955年~58年
・Bud Powell CDリーダー作 ③ 1959年~パリ時代
・Bud Powell CDリーダー作 ④ 1962年~65年 パリ時代後半~帰国
今回、改めて聞いてわかったことは、初期が天才的であとはヨレヨレみたいな説は必ずしも当たっている訳ではなく、初期ほどでなくとも晩年まで輝きを見せることはあったこと。
既にそう考えている人も多いと思われるが、BEST5とはならなかった後期にも後期の良さがあり、デクスター・ゴードンで映画化(『ラウンド・ミッドナイト』)されたパリでのバドをフランシス・ポードラが録音した海賊録音(「アール・バド・パウエル」シリーズなど)などにも素晴らしいものがあること。
パウエルの後半生をモデルに、デクスター・ゴードンが主演した「ラウンド・ミッドナイト」
超素晴らしい最初期の3枚(「バド・パウエルの芸術」、「ジャズ・ジャイアント」、「アメイジングVol.1」)、そして人気の「アメイジングVol.5」以外にも、もっと聞かれていい盤が多数あること、などである。
バド・パウエルの芸術
ジャズ・ジャイアント
アメイジング 第一集
アメイジング第5集
1947年1月10日
Bud Powell(p),Curly Russell(b),Max Roach(ds)
1953年8月14日
Bud Powell(p), George Duvivier(b),Art Taylor(ds)
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
ジャズを聞き始めた頃にアナログで聞き、すごさが理解できなかった盤。音があまり良くないのに、なぜかスピーカーから飛び出してくる感じがいいと思えなかった記憶がある。ピッチに問題があったという説もあるが、近年のCDでは普通に鑑賞できる音になったと思う。とはいえ、バドの天才が最高に発揮されたと言われる前半の47年録音。確かに天才過ぎて真剣に聞くことが求められる。寛ぎを得るための音楽ではない。精神的な浮沈も含めてバドの全ての盤は嫌いではない私としては、疲れも覚悟でたまに聞くというのが現状だ。後半は、天才性は弱まるもののこれはこれで素晴らしい。愛聴盤ではなく愛蔵盤だ(笑)。(hand)
モダンジャズのピアノ作品としては絶対的な名盤とされている作品で、しかもパウエルの初リーダー盤である。初めて聞いた頃(今から40年前:アナログ盤「バド・パウエルの芸術」)は初心者の私にはなかなか理解できない難しい盤だった。今でも充分理解できているとは言い難いが、久しぶりに聞いての印象の違いは選曲で、例えば「インディアナ」などは、普通はのんびりムードな味わいのイメージだが、パウエルの手にかかると凄みのあるかっこいい演奏になる。そのほかモンクのオリジナルなどもテーマ解釈とソロの素晴らしさと完成度が高く、これが初リーダー作で達成されるとは、神がかり的なものを感てしまう。今聞くと意外とオーソドックスピアノトリオと思えてしまうが、それは逆でパウエルのピアノトリオがモダンジャズのピアノトリオの原型をつくったのであった。(しげどん)
「素晴らしい」の一言!音の数が多いと、メロディが散漫になりがちだが、このアルバムでのバドパウエルの演奏は、骨太なメロディラインを聴く側も決して見失う事なく追うことができ、心地良い音符の流れに安心して身を任せることができる。マックスローチの正確なリズムが貢献しているのだろう。特に冒頭のSomebody Loves Meは最高傑作演奏といえるだろう。高い芸術性を感じる。残念なのは、8曲目のOff Minorのバラードが粗雑に聞こえる点だ。(ショーン)
1949年8月9日: 4, 5, 9-11
1951年5月1日: 1-3, 6, 7, 8, 12
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★☆
Bud Powell(p),Curly Russell(b: 1-3, 6-8, 12),Tommy Potter(b: 4, 5, 9-11),Max Roach(ds: 1-3, 6-8, 12),Roy Haynes(ds: 4, 5, 9-11),Fats Navarro(tp: 4, 5, 9, 11),Sonny Rollins(ts: 4, 5, 9, 11)
アナログの「ウン・ポコ・ロコ」3連チャンの鬼気迫る演奏がこの盤の魅力を象徴している。
ジャズを聞き始めた頃、ルースト盤と同時期に聞き、私としてはこちらが馴染めた盤だ。LPのウン・ポコ・ロコの3連チャンは、迫力の3連続で、異常な曲順とは思ったが、嫌ではなかった。このワイルドな緊張感は、ここにしかない唯一無二のものだ。パウエルだけでなく、ローチもラッセルも同様に素晴らしい。ナヴァロやロリンズ入りの演奏も良く、その後、ナヴァロのBN盤やマイルストーンのライブ2枚組も入手した。ロリンズは19歳で最初期の演奏だが素晴らしい。Vol.2も含めて、色々な収録曲、曲順の盤があるのは多少不満がある。私のCDは収録時期順で49年のナヴァロ入りから始まる。51年だがウンポコから聞きたいので、今は、LP順にしたり、当初の10インチの順にしたりして聞いている。(hand)
ジャズを聴き初めた頃に名盤だというので聴いてみると、A面で3回ウン・ポコ・ロコが続くので、なんじゃこりゃ!と面食らった。好き嫌いで決めるなら納得できない人もいるかも・・・でも両面の前半は51年のトリオ演奏が占めているので、アルフレッド・ライオンもこのトリオ演奏をこのアルバムの中心にしようと意図したと思う。ルースト盤ではスタンダード中心にピアノトリオの完成度を示したパウエルはこのブルーノート盤では自己表現の極地を演じた。もちろん49年の演奏も、若きロリンズやファッツ・ナヴァロも素晴らしく、歴史的な演奏である。(しげどん)
マイナーラテンな雰囲気が新鮮なUn Poco Loco から始まり、Fats NavarroとSonny Rollinsのホーンが冴える曲が2曲繋がり、It Could Happen To Youで一旦クロージング。アナログレコードでいうB面の後半は、またまたチュニジアの夜のエスニカル感全開で、ジャズの新領域を披露した名盤だ。(ショーン)
1949年1月,50年1月
Verve
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★☆
Bud Powell(p), Ray Brown(b),Max Roach(ds),Curley Russell(b)
①テンパス・フュジットは、バドの天才性が濃く出た最高峰の演奏の1つだと思う。この盤はパチパチノイズはあるが、音のエッジが立っていて、いい音に聞こえる。他の曲ももちろん素晴らしいが、①は何かが乗り移っているというくらいの迫力がある。バド作の名作バラード④アイル・キープ・ラヴィング・ユーなどその後ライブで何度も演奏されるようになる原点の演奏が聞かれる。前半49年、後半は翌50年の録音。前半の方が緊張度は高いが、後半もいい演奏だ。(hand)
セッション単位または10インチ盤で言うとこのA面はルースト盤の次で第二作。スタンダードも演じているが、オリジナル曲が増えて、パウエル本人の表現意図がより強くでた作品かもしれない。パウエルは本能的な天才という印象が強いが、有名なテンパス・フュージット=Time Fly 光陰矢のごとし というタイトルは、何を思ってつけたのだろうか?哀愁がありかつ迫力ある曲調を考えると、それからの彼の人生も彼自身が予感し、意図したものだったように思え、天才の思考の深さに愕然とする。(しげどん)
前半は1949年の演奏で、Budの驚異的な鍵盤捌きがノリノリだ。スピードの中にしっかりとした重量感があるのが特徴で男臭い。一方後半の1950年の演奏は柔らか味が増し、深みを感じる。特に最後のBody And Soulは、美しいメロディにまさしく身も心も溶け出してしまいそうだ。(ショーン)
1955年4月25,27日
Verve
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★☆
Bud Powell(p),George Duvivier(b),Art Taylor(ds)
55年録音、ベースはジョージ・デュビビエで、ドラムはアート・テイラー。バドの作品には、明るくて楽しそうなものが少ないと思う。その中でこの盤の②イースト・オブ・ザ・サンは、珍しくウキウキする何かを感じる。③ハート&ソウルもそれに近い。あまり聞かれていないと思うが、隠れ名盤だと思う。(hand)
パウエルのオリジナルも一部あるが、多くは有名なスタンダード中心の選曲でなじみやすい一枚だ。初期の凄みが消えた感じだが、それがダレたリラックス感ではなく、逆にギスギスしたスリルの代わりに何か品格のようなものを感じる落ち着いた味わいを感じる。一枚のピアノトリオ作品として長く愛聴に値する傑作だと思う。(しげどん)
1955年の演奏で、パウエルがあまり調子の良い状態の演奏ではないとされる評が多いが、どうしてどっこいなかなか素晴らしいアルバムだ。軽やかなパウエルのピアノはクセと力みがなく、聴いていてとても快適な大人の空間を作ってくれる。サラリとJAZZに身を委ねたい時に相応しい1枚。ジャケットデザインも好きだ。(ショーン)
1958年12月29日
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★
ショーン ★★★★☆
Bud Powell (p),Paul Chambers (b),Art Taylor (ds)
最も売れた人気盤で現在もよく売れていると思うが、バドの絶頂期の作品ではない。録音は58年12月29日。この録音を最後に59年にパリに移住する。64年まで5年間滞在し、64年に帰米し、翌65年には亡くなってしまう。ベースとドラムは、チェンバースとA.T.でVol.3と同じだ。初めて聞いたとき、オリジナルのいい曲ばかりで1枚の盤を作るバドをすごいと思った。演奏がすごいのはVol.1でわかっていたので特に感じなかった。絶頂期でないのは読んで知った知識であり、この盤を聞いてそうは感じなかった。チェンバースもA.T.もいいプレイをしている。A.T.は彼の最高傑作かもしれない。①クレオパトラは、バドの最大の名曲とされていて、確かに素晴らしい。ただ、バド自身がそう思ってはいなかったのではないか?と思う。というのも大量の海賊ライブ録音にこの曲がない。それだけでなく、Vol.5の曲はクロッシン・ザ・チャネル以外に全く再演記録がない。バド自身はこの盤に好きな曲がなかったのかもしれない。そして、もし長生きしていたら、日本人プロデューサーにクレオパトラ・アゲインのような盤を吹き込まされていたかもしれない。早世してよかったとは言わないが、変な作品を聞かないで済んだとは思う。唸り声への賛否はあるが、やはりバドはこの盤から入るのがいいと思う。(hand)
バド・パウエルの人気盤といえばこれ。昔キングレコードから初めてブルーノート盤が紹介された第一弾発売時にも、パウエルの作品はVol.1ではなく、こちらが選ばれていた。名曲「クレオパトラ」は、耳になじみやすいいい演奏で人気があるのも納得。もちろんVol.1で感じるような凄みは感じないが、親しみやすさがある。でもCMにも使われ、ちょっと飽きてしまうくらい使い尽くされた感じがして、私自身はあまり聴き返す事をしない一枚になっている。ほかのオリジナルも耳に馴染みやすいのが逆にちょっとコーニーに聴こえてしまう。(しげどん)
バドにかかると、複雑なメロディラインもサラリと弾いてしまうので、その価値を見落としてしまいそうだが、印象に残るフレーズをこのアルバムでは、次々と披露し、創造性に満ち溢れた名盤だ。特にComin’Upには映像感と新規性を感じ、ユニークで素晴らしい。聴く側の想像力も試される曲だ。(ショーン)
そのほかのリーダー作、サイド参加作は、下記ページにてレビューしています。
・新宿ジャズ談義の会 :バド・パウエル CDレビュー 目次
リーダー作、サイド参加作、発掘盤も含めてレビューしています。下記よりクリックして参照してください。
・Bud Powell バド・パウエル おすすめBest5・・・このページ
・Bud Powell CDリーダー作 ①1947年~55年
・Bud Powell CDリーダー作 ②1955年~58年
・Bud Powell CDリーダー作 ③ 1959年~パリ時代
・Bud Powell CDリーダー作 ④ 1962年~65年 パリ時代後半~帰国