Phineas Newborn Jr. フィニアス・ニューボーン・ジュニア CDレビュー 目次
フィニアス・ニューボーン・ジュニア(1931-1989)は、アメリカ中南部テネシー州ホワイトビルに生まれ、州都メンフィスで活動を開始し、56年からニューヨークに移った。
最高のテクニックを持ちながら、それに見合う名声を生涯得られなかったピアニスト。アトランティック、ルーレット、コンテンポラリーなどメジャーではないがジャズの王道的なレーベルから作品を発表したが、あまり売れなかった。
60年代には精神的にも支障をきたし入退院を繰り返したらしい。
サイド盤を含めても30枚程度しか残されていないフィニアス。天才的技巧のみがこれまで語られ、各作品の素晴らしさがあまり語られてこなかったのではと考え、改めて新ジ談で検証してみた。
過去から最高盤とされてきたデビュー盤「ヒア・イズ」。私handには、技術はすごいが、バド・パウエル以降のモダンジャズの流儀を理解せず、モダンリズム車に乗ったモダン以前の巨匠アート・テイタムのように聞こえた。ショーン氏の高い評価と、しげどん氏のまずまずの評価があり善戦したがベスト5入りは果たさなかった。
実質的にはフィニアスのピアノトリオ盤 We Three 代表曲シュガー・レイの決定打
とはいえ、ダントツ1位がサイド盤「ウィ・スリー」というのも悲劇の主人公フィニアスらしい。来日ライブでは、ブルース曲くらいなら右手は要らないと言って左手だけで演奏したというちょい鼻持ちならないところもあるフィニアス。管と共演した盤は少ないこともあるが、結果的に5枚全てトリオ盤となった。
管入りでは、「ストックホルム・セッションVol.2」とメンフィス系のメンバーで吹き込んだ共同リーダー盤「ダウン・ホーム・リユニオン」が健闘した。
ブッカーリトルほか同郷のメンバーで吹き込んだダウンホームリユニオン
1958年11月14日
New Jazz
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
Phineas Newborn Jr.(p),Paul Chambers(b),Roy Haynes(ds)
技巧派的な演奏が特徴だったフィニアスが、情感たっぷりの味わいを表現するに至った至高の傑作。冒頭のレイ・ブライアントの曲はフィニアスにマッチしていないようで逆に彼から今までなかった味わいを引き出している。ロイ・ヘインズはドラマーとして引っ張りだこの名脇役。縁の下の力持ち的なすばらしくセンスがあり、マックス・ローチなどとは対照的な存在。このアルバムでも、リーダーだが基本的には素晴らしいサポート役としてフィニアスを主役級に引き立てている。(しげどん)
このトリオがなぜこんなに素晴らしいのか?前作までスタイルに迷いの感じられたフィニアスがリーダー役をロイに任せ、名手チェンバースを迎えたことで、ソロイストとして伸び伸びと弾いているからだと思う。名曲名演の名盤。(hand)
トリオの演奏だが、フィニアスの演奏には幾層もの顔があり厚みを感じる。また一音一音に無駄が無く、チェンバースのベースとハモリながらシンクロすることで、曲の一体感が感じられる。solitaireのストーリー性のあるピアノはフィニアスらしい素晴らしい演奏だ。特にエンディングのソロはgood!(ショーン)
1961年10月16日,11月21日
Contemporary
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★
Phineas Newborn Jr.(p),Paul Chambers,Sam Jones(b),Philly Joe Jones,Louis Hayes(ds)
フィニアスとしては初のクオリティの高いリーダー盤、しかも最高峰の盤だと思う。チェンバース&フィリーの①〜④が、サム・ジョーンズ&ルイス・ヘイズの⑤〜⑧より良いのでは?と想像させるが、甲乙つけがたい素晴らしさ。特にワルツ曲⑦
フォー・カールは、名曲名演だ。ベースのリロイ・ヴィネガーが早世したピアニストのカール・パーキンスのために作った曲だ。ただ、個人的にはチェンバースとフィリーで全曲聞いてみたかった。捨て曲なしの名盤。(hand)
繊細な超絶技巧に加え「熱い!」ジャズ的な盛り上がりをも表現した最高傑作。指がよく動く超絶技巧の繊細なピアニストとしてだけ売り込もうとしたルーレットに対し、レスター・ケーニッヒは、フィリーと組ませるといる荒業に出て、骨太のジャズピアノを演出し大成功。ケーニッヒの天才的なプロデュース力がフィニアスの技巧や繊細さに加えてジャズのグルーブ感を引き出して素晴らしいピアノトリオの名盤になった。(しげどん)
フィニアスのピアノは、とても細やかでスピード感もありテクニック的にも素晴らしい。(ショーン)
1961年11月21日
1962年9月12日
Contemporary
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★
Phineas Newborn Jr.(p),Sam Jones(b),Louis Hayes(ds)
コンテンポラリーからのリーダー第2作。引き続き好調な内容だ。①〜⑤がリロイ・ヴィネガーとミルト・ターナー、⑥〜⑨が前作「ワールド」の後半と同日録音で残りテープなのか?内容はいいのに2分割され、いずれもB面という気の毒な録音だ。前作のチェンバース、フィリーが片面分しかないのが原因だと思う。フィリーはウィントン・ケリーの「ウィスパー・ノット」など寝坊・遅刻して半分しか参加しないことの常習なので怪しい(笑)。(hand)
前作と同じ水準の素晴らしい作品。さすがにケーニッヒはジャズ的な魅力というものがわかっている。ルーレットの2作とは対照的だ。選曲も前作と似た傾向のモダンジャズスタンダードとフィニアスのオリジナルなどジャズ感を表出するには適切な素材。A面のセットでは名手ヴィネガーのゴリゴリしたベースが気持ち良い。(しげどん)
一流ジャズアーティストの曲をカヴァー演奏し、どれもフィニアスらしくアレンジしており、なかなか面白いアルバムだ。器用なフィニアスらしさを感じることができるが、どれも原曲を超えることはなく、軽く感じてしまい残念ではある。(ショーン)
Phineas Newborn Jr.(p),Jesper Lundgaard(b),Bjarne Rostvold(ds)
フィニアスはライブが苦手でジャズクラブから干されたという文章を読んだ記憶がある。少なくともこの日のライブは好調で素晴らしい。MCはもしかしたら苦手なのかもしれないが、この熱演があればMCは問題ではない。コペンハーゲンといえばカフェモンマルトルだが、その録音はないのだろうか?ぜひあってほしい!(hand)
断続的な体調不良の中のローカルミュージシャンとのライブ演奏なので、実はあまり期待していなかったのである。しかしこの時期の録音とは思えない、10年間若返ったような熱気のあるライブ作品であることに驚いた。1979年という事は彼はまだ40代だったのだから、体の不調がなければもっと素晴らしい作品を記録し続けたと思わざるを得ない素晴らしい作品だ。(しげどん)
勢いのある曲 Oh, lady be good で始まるフィニアス後期のライヴアルバム。緩急織り交ぜた演奏、名曲を取り入れた曲選、病と戦いながらカムバックし、演奏を続けたフィニアスの感動的な集大成っぽく感じるところがあり、フィニアス初心者の方にもオススメできる秀逸なアルバムだ。(ショーン)
1969年2月12日,13日
Contemporary
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★☆
Phineas Newborn Jr.(p),Ray Brown(b),Elvin Jones(ds)
5年のブランク後のコンテンポラリーからのリーダー盤。レイ・ブラウン、エルビン・ジョーンズという豪華リズム隊だ。この盤の8年後に吹き込まれた、ブラウン&エルビンがシダー・ウォルトンと組んだブラウンの名盤「サムシング・フォー・レスター」(1977)を思い出す。名盤請負人コンビのサポート開始だ。(hand)
レイ・ブラウン,エルビン・ジョーンズという最高のリズム・セクションの存在感がすごい。あくまでもサポートで前面に出しゃばり過ぎず、トリオとしての躍動感を生み出している。選曲は40年代のR&Bのヒット曲などバラエティに富んでいて、メンフィス生まれの彼の思い出の曲かも知れない。凄腕リズムサポートを受け、フィニアス自身もいつものテクニックに加えさらに情感もたっぷり感じる名盤だ。(しげどん)
ジャズにポップスの様な感覚が盛り込まれ、聴きやすい展開となっているアルバムで、どの曲も嫌味のない出来栄えに仕上がっている。ただフィニアスというジャズピアニストの個性があまり前面に押し出されていない様に思えるのは私だけだろうか?(ショーン)
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