Hampton Hawes ハンプトン・ホーズ  おすすめCD名盤 & 全リーダー作 レビュー


ハンプトン・ホーズ(1928.11.13 – 1977.5.22。48歳)は、西海岸ロサンゼルス出身のバド系のピアニストです。ただし、バドとほぼ同時期に活動スタートしているので、影響を受けたというよりも自らのスタイルがバッパー的だったのかもしれません。父は教会の牧師で、母は教会のピアニストという幼くして黒人教会音楽スピリチュアルやピアノに親しむ環境にありました。

初期のホーズの集大成


ハイスクール時代から活動を開始し、初録音は18歳でチャーリー・パーカーと行っています。ソニー・クリス、アート・ペッパー、ワーデル・グレイ、デクスター・ゴードンらのサイドメン時代を過ごし、西海岸のショーティ・ロジャース、ハワード・ラムゼイらと共演した後、軍人として日本で駐留し「幻のモカンボ・セッション」に参加しています。ウマさんとして日本人ミュージャンに親しまれリスペクトもされ、影響を与えました。


帰国後は、初リーダー盤「トリオVol.1」を録音し、前期の全盛時代を迎えますが薬禍により服役してしまいます。復活後は、ビル・エバンスらの影響もうけた新たなスタイルで後期全盛時代を迎え、エレクトリックにも取り組むなど精力的に活動していましたが、残念ながら48歳で脳出血で亡くなっています。(しげどん)



一部には人気があるが、近年あまり話題になることがないハンプトン・ホーズ。単なるウエストコースターではないこのピアニストを新ジ談で取り上げてみた。西海岸のバッパーとして世間の人気が高いが、前期、特に初期は、西海岸らしさが濃厚で、慌たゞしく、情感や粘り気が不足しているように私handには感じられる。後期は、エバンスの影響も受けてスタイルが変わる。落ち着きが出て、憂いも感じさせるようになり、個人的には黄金時代ではないかと思っている。


新ジ談での検討結果は、前期好きのしげどんが前期盤を推奨、エバンス好きのhandが中後期を推奨し、ポップ、ロック好きのショーンがそれらをやや後ろに引っ張るという感じの検討結果になった。1位は3人とも想定していなかったが総合的に勘案してこれ!という感じで「アイム・オール・スマイルズ」。ジャケがどう考えても日本受けしないが内容は素晴らしいライブだ。


2位は私handのイチ押し盤「ハンプス・ピアノ」。その昔、先輩N氏にレコードをカセットテープにダビングしてもらって以来の愛聴盤だ。3位はこれも1・2位と時期は近い「グリーン・リーブス・オブ・サマー」。服役後の初盤だ。4位はこれも近い時期だが海賊的録音ながら熱い演奏が収録された「オータム・リーブス」。

そして5位に前期盤から「Vol.3」。ワニジャケがかわいい親しみやすい内容の盤だ。惜しくも次点となったのは「ジス・ガイズ」でバカラックの名曲が入った後期の盤。初期盤では「Vol.2」、中期盤では「ヒア・アンド・ナウ」、ラストリーダー盤の「アット・ザ・ピアノ」も健闘した。(hand)




おすすめ盤 1位:I'M ALL SMILES / Hampton Hawes

1966.4.30 & 5.1

Contemporary

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Hampton Hawes(p), Red Mitchell(b), Donald Bailey(ds)

新スタイルのホーズが名曲に取り組んだライブ名盤

前衛的な感覚を持ち合わせた良盤。ピアノとベースとドラムスがうまく溶け合って、新鮮な演奏だ。バラード調の曲the shadow of your smile等も前半の芸術性のあるアレンジとレッド・ミッチェルの多彩なプレイで、とても面白く魅力的な曲に仕上がっている。保存盤にしたいライブアルバムだ。(ショーン)

前作と同じライブ作品で、基本的には前作とあわせてVol.1、Vol.2と位置づけられる作品。こちらのほうは「黒いオルフェ」「いそしぎ」といった有名曲が入っていて親しみやすく、人気作だと思う。愛聴できる作品。(しげどん)

「ザ・セイアンス」と同じ2日間のライブ。2枚を2日から選曲しているので、後発のこちらが残り物なのかもしれないが、選曲のせいか、私にはこちらが親しみやすく、聞く回数が多い。メンバー3人の高い能力と工夫により飽きさせないライブだと思う。ただし、アフロで笑顔のホーズのジャケは、内容とイメージが合っていないと思う。スマイルに合うジャケを無理矢理当てはめたのだと思うが、録音当時の写真ではなく、発売時の73年頃の写真ではないかと思われる。(hand)



おすすめ盤 2 位:HAMP'S PIANO / Hampton Hawes

1967.11.8

SABA → MPS

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★☆

Hampton Hawes(p), Eberhard Weber(b), Claus Weiss(ds)

欧州楽旅中に録音した洗練されたホーズの名盤

私が考えるホーズの最高傑作。あらゆる意味で完璧なピアノトリオ盤だ。コンテンポラリーを離れたホーズは、67年9月から68年5月にかけて、欧州〜日本に滞在し、各地で現地ミュージシャンと9か月で9枚の録音を残した。これらがいずれも素晴らしく、第二の黄金期と言えるのではないか、また、私hand的にはホーズのピークと考えている。西のビバップとも言うべきスタイルはほぼ消えて、モーダルな感じのする落ち着いたスタイルに変貌している。私にとってこの盤のキラー曲は⑥ソノーラで、ホーズ作の哀愁のボサだ。ただ、同じホーズ作のソノーラには2種類あり、4か月後の翌68年3月録音の「ブルース・フォー・バド(スパニッシュ・ステップス)」では別メロのワルツ曲になっていて、これはこれで素晴らしく同盤のキラー曲になっているのだ。(hand)

ドイツに於ける録音で、ベース、ドラムスは現地ミュージシャン。情感にあふれたやわらかいタッチで、とても洗練された味わいがある。演奏スタイル的には硬派なイメージも残るが、エコーを効かせた甘口のヨーロッパらしい録音が気になるが、この時期の代表作ともいえる作品だ。(しげどん)

ブルースが心地良いアルバム。ピアノとウッドベースが語り合うようにフレーズ交換する部分は、とても息が合っていて、安心して聴き込める。ハンプトンのメロディは優しく叙情的で、どの曲も浸る。(ショーン)



おすすめ盤 3 位:THE GREEN LEAVES OF SUMMER / Hampton Hawes

1964.2.17

Contemporary

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★★

Hampton Hawes(p), Monk Montgomery(b), Steve Ellington(ds)

服役後に奏法に変化の見られる名盤

ハンプトンのフレーズは、力強くユニークで、チャレンジ感がある。特にアルバムタイトルのTHE GREEN LEAVES OF SUMMERは、耳から音が入ると、何となく映像が目に浮かんでくるような、そんな素晴らしい演奏だ。その他の曲も時に芸術性を感じる部分があり、名盤だ。(ショーン)

10年の実刑判決で服役していたところに恩赦が実行され、5年で出てきたホーズ。早速、古巣のコンテンポラリーに録音したのがこの盤。モンク・モンゴメリーの珍しい?アコースティック・ベースにスティーブ・エリントンのドラムだ。服役の影響なのかどうかは不明だが、ホーズの弾き方は、相変わらず速いものもあるが、慌たゞしさが消えてレガート気味の奏法になっている。私にとって好ましいスタイルへの変貌だ。同じコンテンポラリーに所属したこともあるフィニアス・ニューボーンJr.にスタイル的に最も接近した盤のように思える。マイルス曲①ヴァイアード・ブルース、はフィニアスも「ストックホルム・セッションVol.2」(1958 年)で演奏している。タイトル曲②は冒頭がソロで演奏され、この曲は、この頃はまだほとんど活動していないキース・ジャレットにつながる雰囲気もある。ベースにはチャーリー・ヘイデンを感じる。(hand)

麻薬での服役によりから復帰してからの本格作としては第一弾。約5年の空白期間を経て、ホーズのピアノはかなり変わったという印象を受ける。特にスローな曲では、硬質な特徴よりも情感が前面に出てきている。(しげどん)



おすすめ盤 4 位:AUTUMN LEAVES IN PARIS (PIANO IMPROVISATIONS) / Hampton Hawes

①②:1968.1.25

③⑤:late1967

④:1968.3.23

Joker → Moon

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★☆

Hampton Hawes(p), 

①②: Jimmy Woode(b), Kenny Clarke(ds)

③⑤: Gilbert Rovere(b), Daniel Humair(ds)

④: Martial Solal(p)

海賊的な伊レーベルから出た名盤

ジョーカーという海賊的なレーベルの盤ではあるが、私が後期のホーズを聞くようになったきっかけの盤だ。とにかく熱いモダンジャズが好きな私にドンピシャにはまる内容だった。枯葉2回はちょっと多いがメンバーが違うのでOKだ。私には、枯葉とソフトリーは、入っているだけで嬉しくなる選曲だ。ケニー・クラークは、MJQやマイルスの初期盤でタイトなドラムを聞かせてはいたが、熱いドラムという感じではなかった。そのクラークが渡欧後に熱いドラムでホーズを煽り、クラーク=ボランでも活躍するジミー・ウッドが太っといベースを聞かせるのが素晴らしい内容の①枯葉と②フライ・ミーだ(68.1.25)。フランス人のベースとドラム、ジルベール・ロヴェールとダニエル・ユメールに変えての⑤枯葉と③ソフトリーも楽しい。というよりも、実はこの世に数あるソフトリーの中でもかなり上位の私のお気に入り演奏ではある(67/68)。ピアノデュオ曲④ゴッド・チャイルド、はソラルとの2ピアノ盤「キー・フォー・トゥー」の別テイクかと思っていたが、それよりも2カ月後のデュオ録音だった(68.3.23)。(hand)

枯葉の物静かなメロディで始まるこのアルバムは、JAZZのスタンダードナンバーをハンプトンの落ち着いたピアノで、しっかり聴くことができる。ベースの奔放なランが、クオリティをワンランク上げて、一味違った素晴らしい演奏となった。(ショーン)

中期の作品はビル・エバンスみたいに情緒的で、好みは別れるかも。ライブ盤で、そのような情緒的なイメージは強く残る一枚。(しげどん)



おすすめ盤 5 位:THE TRIO VOL.3 / EVERYBODY LIKES HAMPTON HAWES

1956.1.25

Contemporary

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★

Hampton Hawes(p), Red Mitchell(b), Chuck Thompson(ds)

「ワニ」ジャケで知られる初期の名盤

三部作の最終作。ワニのイラストが良い感じで、アナログ盤を部屋に飾るにはピッタリのジャケットで、ジャケットの分だけ+☆おまけした。演奏としては前2作と大きくは変わらないが、ジャケットのイメージに沿った小粋で楽しめる作品だ。中後期の演奏に比べて情感が足りない感もあるが、このケレン味のないドライなタッチもなかなか捨てがたいのだ。(しげどん)

比較的スローで静かな曲が多く、大人の雰囲気がある。逆に言うと少し単調に感じる部分もあり、そこに物足りなさを感じる人もいるかもしれない。アルバム全体の演奏の完成度はそれなりに良いものがある。(ショーン)

「Vol.1」から多少時間のあいた「Vol.3」。ジャケも全く関係ないワニだ。「Vol.1」と「Vol.2」に比べると、尖り度がほんの多少だが弱まり、聞きやすくなっていると思う。過去の評論家さんは「Vol.1」ばかりやたらと褒めるのは、尖りピアノがよほどお好きなのだろう。後期のホーズが好きな私としては、年月とともにだんだん良くなるホーズのピアノ!という感じで聞いている。(hand)