Miles Davis マイルス・デイビス CDレビュー  リーダー作 ②

ハードバップの夜明け盤とも言える「ウォーキン」、モンク、ミルトらとの「バグス・グルーヴ」、「モダン・ジャズ・ジャイアンツ」を経て、コルトレーンを含む黄金のクインテットによる「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」へと至る、若きマイルスがビッグ・ネームとなった時期です。飛び入りのニューポートで名を上げた記録もあります。

ハードバップの夜明け=ウォーキン

有名なモンクとのケンカセッション=バグズグルーブ

デリケートなトランペットの極致=ラウンドミッドナイト



Collector’s Items/Miles Davis コレクターズ アイテム/マイルス・デイビス

1953年1月30日

1956年3月16日

Prestige

おすすめ度

hand       ★★★

しげどん  ★★★

1953年1月30日:Miles Davis(tp),Charlie Chan(=Charlie Parker),Sonny Rollins(ts),Walter Bishop Jr.(p),Percy Heath(b),Philly Joe Jones(ds)

1956年3月16日:Miles Davis(tp),Sonny Rollins(ts),Tommy Flanagan(p),Paul Chambers(b),Art Taylor(ds)

前半はパーカーがテナーで参加。後半はロリンズとの最後のスタジオの記録

53年の前半は、兄貴分のパーカーがテナーで参加。弟分のロリンズも当然、テナーで参加。なぜパーカーがテナーなのかはわからない。天才パーカーも時代的には凋落期で、しかもテナーでは、、、である。レーベル問題はあるにせよ、変名チャーリー・チャンなのでアルトでよかったのでは?と思ってしまう。それによってこの盤の価値も全く違ったと思う。56年の後半は、ロリンズとの2管。マイルスとロリンズ の2巨人の最後の共演。絶頂期直前のかなり素晴らしいロリンズが聞かれるかと思うと、録音のせいか?ロリンズの風圧がやや弱い気がする。直前の「バグス・グルーブ」での勢いがない。(hand)

A面はチャーリー・パーカーがテナーで変名参加し、ロリンズと共演しているが、どちらかと言うとロリンズのほうが勢いがあって、パーカーの天才ぶりがあまり発揮できていない。後年の名演があるラウンド・ミッドナイトの深みのある表現は、この時点でマイルスのプレイヤーとしてのスタイルがかなり完成されている事を感じる。(しげどん)



Blue Haze/Miles Davis    ブルー・ヘイズ/マイルス・デイビス

1953年5月19日

1954年3月15日

1954年4月3日

Prestige

おすすめ度

hand       ★★★

しげどん  ★★★☆

④⑥⑦⑧:1953年5月19日:Miles Davis(tp), John Lewis(p), Charles Mingus(b), Max Roach(ds)

②③⑤:1954年3月15日:Miles Davis(tp), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Art Blakey(ds)

①:1954年4月3日:Miles Davis(tp), Dave Schildkraut(as), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Kenny Clarke(ds)

マイルスとしては目立たない盤だが、アイル・リメンバー・エイプリルなど聴きどころもある盤

近い時期に似たタイトルの盤2枚「ブルー・ヘイズ」(53、54年)と「ブルー・ムーズ」(55年)があってわかりにくい。内容は決して悪くはないが、他に素晴らしい盤の多いマイルスとしては目立たない盤になっている。①アイルリメンバーエイプリルは「ウォーキン」B面の残り曲で勢いもありなかなかいい。他曲はマイルスのワンホーンで比較的地味だと思う。タイトル⑤ブルー・ヘイズのパーシー・ヒースのベースは鳴り響いている。名盤に飽きたときに聞くにはいいかもしれない。(hand)

一曲目だけがクインテットでほかの曲はマイルスのワンホーン作品。リリカルでクールな彼のソロイストとしてのスタイルは確立されている。タイトル曲のブルースは名演。(しげどん) 



At Last!/Lighthouse AllーStars アット ラスト/ライトハウス・オールスターズ

1953年9月13日

Contemporary

おすすめ度

hand       ★★★

Miles Davis,Rolf Ericsson(tp),Bud Shank(as),Bob Cooper(ts),Lorraine Geller(p),Howard Rumsey(b),Max Roach(ds)

西海岸のライトハウス・オールスターズにマイルスが客演したライブ。ラウンド・ミッドナイトがいい。

ジャムセッションかと思って聞くと、意外にまとまった盤。ライトハウス・オールスターズにマイルスが客演したものなので、リズム隊のまとまりはいい。オープンで吹いた②ラウンドミッドナイトもいい。マイルスは全5曲中3曲に参加。④はドラムソロ曲、⑤はチェットのカルテットで、マイルスとチェットの共演曲はない。(hand)



Hi-Hat All Stars/Miles Davis ハイハット・オールスターズ/マイルス・デイビス

1955年

Fresh Sound

おすすめ度

hand        ★★★☆

Miles Davis(tp), Jay Migliori(ts), Al Walcott, Bob Freeman(p), Jimmy Woode(b), Jimmy Zitano(d)

ボストンのハイハットクラブのライブに客演

発掘盤を得意としてきたスペインの老舗レーベル、フレッシュサウンド。新録もするなど頑張っているが、近年レゾナンスなどの新興に押されている感じはある。そのFSが1987年に発掘した盤。ハイハットというレーベルもあるのでややこしいが、ボストンのハイハット・クラブにマイルスが1955年に出演した記録だ。店のバンド、ハイハット・オールスターズとの共演なので、ベースのジミー・ウッド以外は聞いたことのないメンバーだ。ところが、さすがアメリカ、無名のローカル・ミュージシャンだと思うが皆さんなかなかのプレイを聞かせてくれる。①ディグという曲がビバップっぽいこともあるが、ビバップとハードバップの中間的な感じのライブだと思う。(hand)



Walkin’/Miles Davis  ウォーキン/マイルス・デイビス

1954年4月3日,29日

Prestige

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★★

Miles Davis(tp),Dave Schildkraut(as),J.J. Johnson(tb),Lucky Thompson(ts), Horace Silver(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds)

マイルス最初のハードバップ名盤。マイルスを始め、J.J.ジョンゾン、ラッキー・トンプソンなどの堂々たるソロが聞かれる。

マイルス最初のハードバップ名盤。ビバップと異なり曲ごとに一応のアレンジが施され、テーマやブリッジ、バッキングなどに合奏によるハーモニーも聞かれるようになっている。マイルスを始めとするJ.J.など各ソロイストの堂々たるソロが聞かれる。(hand)

このレコードのA面を聴いていないジャズファンはほとんどいないだろう。だが、タイトルナンバーの全力投球的なテーマ部分がなんだかダサく感じてあまり好きじゃなかった。改めて聴くとマイルスのソロの完成度はやはりすごいし、J.J.のソロも同様に名演。だけどラッキー・トンプソンのソロは、ソロとしては悪くないけどなんだかアンマッチで、彼のソロ部分だけ聴くとヴァーブのジャム・セッション的な中間派的なテイストになる。まあこういう点が面白い魅力とも言える。別セッションであるB面の圧力がA面より極端に低い感じもして、ほとんどA面しか聴かないファンも多いのではと思う。(しげどん)

アルバムタイトル曲walkin'、各メンバーのソロ演奏がそれぞれ素晴らしく、しかも飽きずに聴き込める大作である。ドラッグによる不調から復帰して、行け行けマイルスという勢いに満ちた前のめり感のあるアルバムだ。(ショーン)



Bags Groove/Miles Davis  バグス  グルーブ/マイルス・デイビス

1954年6月29日,

12月24日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★★★

しげどん ★★★★★

ショーン ★★★★☆

1954年6月29日:Miles Davis(tp),Sonny Rollins(ts),Horace Silver(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds)

1954年12月24日:Miles Davis(tp),Milt Jackson(vib),Thelonious Monk(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds)

マイルス初期の名盤中の名盤。モンクとのいわゆるケンカ・セッションを収録

インパクトのある①②バグスグルーブのアナログ時代のA面に同曲を並べた編集。これが全く違和感なく耳に入ってくる。いわゆるケンカ・セッションだが、マイルス、モンク、ミルトという巨人の緊張感ある一期一会の記録は必聴だと思う。半年前録音のロリンズ入りのB面も素晴らしいハードバップ。(hand)

アナログB面の4曲も、ロリンズの好演が聴ける優れた演奏だが、やはり聴きどころはクリスマス・セッションのタイトルナンバーだ。A面に同じ曲の2テイクが収録されているというのも、アルバムとしては異様な編集だが、2テイクとも何度聴いても凄みを感じる演奏だ。マイルスもさることながら、ミルト・ジャクソンのソロが完璧なまでに素晴らしい。もちろんモンクのソロは恐ろしいまでに研ぎ澄まされた凄みを感じる傑作。(しげどん)

アルバムタイトルのbags grooveのセロニアス・モンクが素晴らしい。テイク1と2の2テイクが収録されているが、いずれも甲乙つけ難く、ハードバップの本質を知る上で、MILES DAVIS AND THE MODERN JAZZ GIANTS のアルバムとともに、マイルスとモンクの競演であるこの曲を2テイクとも入れたPRESTIGEは偉いっ!後半のソニーロリンズ の筋肉質な演奏も見事だし、何よりマイルスの素直な演奏が素晴らしい輝きを見せている。(ショーン)



Miles Davis & The Modern Jazz Giants    マイルス・デイビス アンド ザ モダンジャズ ジャイアンツ

1954年12月24日

1956年10月26日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★★★

しげどん ★★★★★

ショーン ★★★★★

1954年12月24日:Miles Davis(tp),Milt Jackson(vib),Thelonious Monk(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds)

1956年10月26日:Miles Davis(tp),John Coltrane(ts),Red Garland(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds)

「バグス・グルーブ」と同日録音のマイルス、モンク、ミルトという3巨人の素晴らしい邂逅の記録

ガーシュインの①⑤ザ・マン・アイ・ラブ、ビバップ時代にはなかったタイプのドラマチックな演奏。「バグス・グルーブ」と同日録音で、マイルスという巨人が、モンク、ミルトという巨人の協力を得て新たな分野を開拓した記録で、私自身若い頃、愛聴していた盤。③ラウンド・ミッドナイトのみが2年後のマラソンセッションから。(hand)

この「The Man I Love」も必聴盤から外せない。本当にケンカをしたのか真相は不明だが、モンクは途中で演奏をやめてしまうところが録音されているんだから面白いったらない。マイルスの「弾け弾け」といわんばかりのトランペットに押し出されてピアノを弾くモンク。それを受けてマイルスがミュートを差し込む音。すべてがドラマでしかも演奏は素晴らしい。テイク2ではハプニングなく完奏しているのに、そのやめた方のテイク1をA面の冒頭にもって来て、B面冒頭は2年後の有名なマラソンセッション時期の録音を一曲だけ入れている。そのワインストック氏の露骨な売らんかな主義もすごい。(しげどん)

ミルト・ジャクソンのヴィブラフォンの美しい音色とマイルスの共演に、僅かな音で個性をめちゃくちゃ発揮したセロニアス・モンク。このセッションにモンクが参加したことで、マイルスの演奏は緻密かつ大胆なフレーズの連発で自身の存在感を鼓舞し、またモンクは一音一音鬼気迫るレベルで昇華し、とんでもないアルバムが出来上がった。ハードバップが全盛期に向かう息づかいとmodern jazzの歴史すら感じることのできる最重要盤だ。(ショーン)



The Musings of Miles/Miles Davis  ザ ミュージング オブ マイルス/マイルス・デイビス

1955年6月7日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★★

しげどん ★★★★☆

Miles Davis(tp),Red Garland(p),Oscar Pettiford(b),Philly Joe Jones(ds)

珍しいマイルスのワンホーン盤。レッド・ガーランドの加入で雰囲気はマラソンセッション

コルトレーン入りのクインテット結成の直前の珍しいマイルスのワンホーン盤。ガーランドとフィリーは加入しており、ベースがオスカー・ペティフォードだ。コルトレーンはいないが、盤の雰囲気はマラソンセッションとかなり似てきている。ガーランドが入ったことで、このバンドらしい色合いが出てきたと思う。(hand)

プレスティジの番号は7007番で、マイルスの12インチLP最初の一枚。Digは10インチ盤が先だったが、この作品は初めから12インチ盤として企画された作品だったのだろう。寄せ集めではなく全曲がマイルスのワンホーンで統一されている。トランペッターのワンホーン作は名盤が多く、代表作とみなされる作品が多いが、マイルスは名盤がありすぎるのでこの盤は比較的地味な印象だ。でも小粋な印象の曲が多く愛着がもてる。B面のチェニジアの夜のような選曲も意外性があって面白い。(しげどん)



At Newport 1955-1975 The Bootleg Series Vol.4(4枚組)/Miles Davis

データ省略

おすすめ度

hand     ★★★★

8回、20年間に及ぶマイルスのニューポート・ジャズ・フェスティバルの出演記録CD4枚組

55年、58年、66年、67年、69年、71年、73年、75年の8回、20年に及ぶマイルスのニューポート・ジャズ・フェスの出演記録4枚組。58年だけは「マイルス&モンク・アット・ニューポート」で、早くから一部が正規発売され、全貌も海賊盤で出ていた(別掲)。55年(★★★★)はまさにマイルス&モンクの共演で、マイルスの名が一躍有名になったラウンドミッドナイトが演奏され、海賊盤「MISCELANEOS MILES」で出ていた。66年(★★★☆)は「プラグドニッケル」の半年後、「マイルス・スマイルズ」の3ヶ月前のライブ。プラグドニッケルの怒涛性、凶暴性は収まり、次のスマイルズに向かう落ち着いたライブに聞こえる。ただ、③ステラは、珍しく激しい演奏だ。これまで未発だったのは、オープンステージのせいか音のまとまりが今ひとつだからかもしれない。67年(★★★☆)は「ネフェルティティ」直後のライブ。ネフェルティティとは似ても似つかぬ激しいライブ。ただ、メンバー間に似たような演奏への倦怠感のようなものを感じる。トニーだけが特に熱くなって違うプレイに挑戦しているように聞こえる。69年以降省略。(hand)



Blue Moods/Miles Davis ブルー・ムーズ/マイルス・デイビス

1955年7月9日

Debut

おすすめ度

hand     ★★★★

しげどん ★★★☆

Miles Davis(tp),Britt Woodman(tb),Teddy Charles(vib),Charles Mingus(b),Elvin Jones(ds)

ミンガスのレーベル、デビューへの録音。知性派のテディ・チャールズなどと味わい深いブルーな演奏

チャールズ・ミンガスのレーベル、デビューへの録音。バイブがミルトではなく知性派のテディ・チャールズだ。あまり知られぬトロンボーンのブリット・ウッドマンも加わり、味わい深い演奏をしている。10インチ盤をそのまま12インチにしたのか全体の時間は短いが、もっと聞かれていい盤だと思う。同じトランペットのブルー・ミッチェルにも似たタイトル「ブルース・ムーズ」(Blue's Moods)という名盤がある。(hand)

ピアノがなくテディ・チャールスのバイブが共演しており、51年にコニッツと共演したEzz-Theticを思い起こさせるようなクールなイメージだ。レギュラークインテット結成間近の頃であるが、この時期前後の作品とはかなり異なった内容の作品で、プレスティジとの契約中だったはずだが、なぜデビュー・レーベルに吹き込んだのだろう。収録時間が短いのはミンガスが音質にこだわって、レコードの溝の間の幅を余裕もって刻んだとの事らしいが、そのせいか彼のベースはビンビン響いている。(しげどん)



Miles Davis and Milt Jackson/Quintet/Sextet  マイルス・デイビス アンド ミルト・ジャクソン/クインテット  セクステット

1955年8月5日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★☆

しげどん ★★★★

Miles Davis(tp),Milt Jackson(vib),Jackie McLean(as),Ray Bryant(p),Percy Heath(b),Art Taylor(ds)

「バグス・グルーブ」以来のマイルスとミルトの組合せは、ややブローイングな内容

マイルスとミルトの組合せは「バグス・グルーブ」以来だが、モンクの存在はやはり大きかった。マイルス&ミルト、モンク&ミルトのセッションはあるが、マイルス&モンクは、スタジオはバグスのケンカセッションしかない。マイルス&モンクにミルトという豪華セッションはやはり貴重なものだったと改めて思う。この盤は、55年の録音だが、選曲のせいか、ビバップや「ディグ」に近い雰囲気を感じてしまう。ハードバップ的なアレンジがなく、ブローイングセッション的な内容になっている。ソロ自体は、マイルス、ミルト、マクリーン、ブライアント、皆素晴らしく、特にミルトが好調だ。(hand)

マイルスのみならずやはりミルト・ジャクソンの名人ぶりが際立つ一枚だが、今回聴きなおしてみると、マクリーンの存在感が気になった。曲も2曲提供している。タイトルがQuintet/Sextetとなっているが、マクリーンが抜けたのは最後の一曲だけで、残りの3曲ではこの時期のマクリーンの個性を発揮している。それにしても4曲だけでアナログでは各面15分くらいしかないとても割高?なアルバムだ。 (しげどん)



’Round about Midnight/Miles Davis  ラウンド アバウト ミッドナイト/マイルス・デイビス

1955年10月26日

-1956年9月10日 

Columbia

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん ★★★★☆

ショーン ★★★★☆

Miles Davis(tp), John Coltrane(ts), Red Garland(p), Paul Chambers(b), Philly Joe Jones(ds)

名曲ラウンド・ミッドナイトの超有名バージョン収録の名盤

何を隠そう、曲として、演奏として、私が一番好きなのは、この①ラウンドミッドナイトだ。モンクの曲も良ければ、演奏も良く、ギル・エバンスとされるアレンジも最高だ。同じマイルスの他盤のこの曲が見劣りするのはアレンジの要素が大きいと思う。コルトレーンのソロもこの時期の中では最上のレベルで文句のつけようがない。だが、この盤の問題は、②アーリューチャと⑤ダッズディライトの2曲のビバップ曲がハードバップ盤としての完成度を低くしてしまっていることだ。追加曲の⑦ツーベースヒットなど3曲もビバップなので、もう少し新しい録音があり、新旧で盤が分けられていれば申し分なかったと思う。とはいえ、最高レベルの盤であることに変わりはない。(hand)

プレスティジ4部作と同系列の作品だが、一曲単位ではタイトルナンバーである「ラウンド・ミッドナイト」が、マイルスの数ある録音の中で、最も有名な演奏かも知れない。それももちろん良いけれど、私の好みはAll of You、Bye Bye Blackbird と言ったウタモノで、リラクシンに似たジャズらしい「粋」を感じる。バップチューン2曲も面白く、全曲が高水準の傑作アルバムだと思う。(しげどん)

セロニアス・モンクの名曲'round midnightにマイルスがコルトレーンとの2管で挑んだ傑作。哀愁のあるマイルスのミュートサウンドが心に染みる。またコルトレーンの演奏も完璧でとても美しい。余韻が残る名演だ。その他の演奏はそれなりのためアルバム評価は少し厳しめのB+としたが、最後のdear old stockholmもなかなか聴きごたえのある演奏。コルトレーン、ポール・チェンバースもその後の自身のリーダーアルバムでもこの曲を演奏している。(ショーン)



Round About Midnight Legacy Edition/Miles Davis

おすすめ度

hand         ★★★★☆

日本タイトル「スペシャル・エディション」(英タイトル「レガシー・エディション」)ということで、従来の「ラウンド・ミッドナイト+3」にもう1枚2①ラウンドミッドナイトのライブバージョンを始めとするライブ音源が加わり2枚組でコロンビアから正規発売された。この時期のライブ音源は少なく、しかも音も内容も悪くないので貴重だ。ウォーキンのような暗いブルースは、想像どおりガーランドには似合わなかった。とはいえこの盤も内容は素晴らしいので、「スペシャル・エディション」Disc2ではなく、単独発売してほしいと思う。(hand)



Miles/The New Miles Davis Quintet マイルス/ニュー マイルス デイビス クインテット

1955年11月16日

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★

しげどん  ★★★★

Miles Davis(tp), John Coltrane(ts), Red Garland (p),Paul Chambers (b),Philly Joe Jones (ds)

コルトレーン加入後の初作品。コルトレーンの活躍は少なめだが盤の内容はモダン

盤単位ではコルトレーン加入後の初作品(セッション単位では「ラウンド・ミッドナイト」に少し早いものがある。)。2日間のマラソンセッションの5月分やラウンドミッドナイトの初期セッションがビバップ度が高いのに比して、このセッションは意外にもビバップ度が低くモダンだ。なのに、なぜあまり人気がないのか?マイルスのワンホーンが多く、加入したコルトレーンの活躍が少ないこと、地味な曲が多いこと、ハードバップとしてのアレンジメントがほとんどないこと、そしてジャケが殺風景でダサいことなどだろうか。(hand)

レギュラークインテットの初アルバムで、内容的にはマラソンセッションの4部作に近いレベルだと思う。静かなウタモノバラードではじまる雰囲気も4部作に近い。B面最後はベニー・ゴルソンの有名曲「Stablemates」。このクインテットでユニゾンでテーマを吹奏しているのはこの曲だけかも?マイルスとコルトレーンによるゴルソンハーモニーは意外な感じだ。ジャケデザインは「小川のマイルス」といわれているそうだが、内容とはカンケーない風景写真にでかでかとMILESの文字で、アルバムタイトルも「MILES」とはテキトーすぎるのでは??もっとマシなデザインだったら人気も上がったはず。(しげどん)