Horace Silver リーダー作1 1952年から1959年まで

シルバーが名声を確立したアート・ブレイキーと出会い、ジャズ・メッセンジャーズを結成し、メンバーを引き連れて独立した時期から、シルバー自らがクインテットのリーダーとなり黄金のクインテットに至り、「ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ」という大ヒット盤に至る時期までをコメントします。



Horace Silver Trio Art Blakey Sabu(Complete)ホレス シルバー トリオ アート ブレイキー サブー

1952.10.9 & 20

1953.11.23

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★☆

Horace Silver(p:except 15,16), Gene Ramey(b:1-3), Curley Russell(b;4-8), Percy Heath(b:9-14), Art Blakey(ds), Sabu(conga:15)

初期10インチ盤2枚のトリオ演奏をカプリングした盤

日本ではおどけた雰囲気のあるジャズマンは人気がない。ディジーやこのシルバーが代表だ。音楽自体はおどけていないが、最初のブルーノート12インチ2枚の色違いジャケの表情とポーズが良くないのだと思う。ジャズにカッコ良さを求める日本人にはマイルスやコルトレーンの深刻な表情のジャケがいいのだ。マイルスやコルトレーンがこんなポーズのジャケを作るのはありえない。そしてこの盤がその2枚のBN盤の1枚、オレンジ色の方だ。元は10インチの渋いジャケ2枚だった。BNとしては12インチ化するときに最大限ポップなジャケにしたのだろう。日本人のジャケの好き嫌いは想定外だと思う。12インチ化で元の2枚8曲ずつから4曲がカットされた。これがCD化時にそのままの盤と今は16曲盤がある。ここではセッション別に16曲が入ったコンプリート盤を対象とする。前半8曲はバド直系という雰囲気のトリオで、その後のシルバーのファンキーな感じはまだあまりない。後半は⑩オパスデファンクなど緊張感のある最高のトリオ演奏で、シルバーらしい縦ノリのソロも既に聞かれる。サブーとブレイキーのパーカッション隊の大活躍するラテン色の強いセッション2曲はシルバーがいないので、最後に入れて欲しかった。(hand)

シルバーのピアノは、書道で言えば楷書体のようなしっかりとした味があり、その特徴が充分味わえる魅力的な作品だ。後の諸作でもピアノトリオは演じているが、クインテットでのソロとは違った雰囲気の演奏が多かったように思う。でもこのアルバムでのピアノはクインテットに於けるピアノと同じ雰囲気のシルバー節がよく聴ける。オリジナルの10インチはなかなか味のあるデザインだったが、12インチ化の際にBN1518のジャズ・メッセンジャーズのデザインを流用し、4曲もカットされてブレイキーのドラム作品が両面の真ん中に挿入されるというかなり変な編集だ。10インチのイメージを踏襲した方が売れたように思える。(しげどん)

シンプルながらしっかりと骨のある曲が揃っている。シルバーのピアノは力強く、まるでリズムセクションのようだ。加えてアート・ブレイキーの勢いのあるドラミングが絡むことで、硬派で重厚なアルバムに仕上がっている。(ショーン)




Live in New York 1953 / Horace Silver ライブ イン ニューヨーク1953/ホレス シルバー

1953.9.14

Solar

おすすめ度

hand      ★★★☆

Horace Silver(p), Lou Donaldson(as), Jimmy Schenck(b), Lloyd Turner(ds)

ルウドナ入りの初期カルテットの海賊盤

ルー・ドナルドソンをフィーチャーしたシルバー・カルテットのフレッシュサウンドからの発掘海賊盤。翌54年「バードランドの夜」と同じシルバーとルウドナのバードランドでの共演で、皆いいプレイはしているが、ブレイキーとブラウニーがいない影響はある。ベースも違う。ただ、バッパー時代のルウドナ好きには必聴盤だ。音は悪い。(hand)



Horace Silver & The Jazz Messengers ホレス シルバー&ジャズメッセンジャーズ

1954.12.13 (1-3,8)

1955.2.6 (4-7)

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★

Horace Silver(p), Kenny Dorham(tp), Hank Mobley(ts), Doug Watkins(b), Art Blakey(ds)

初期10インチ盤2枚のクインテット演奏をJM名義でカプリングした盤

シルバー&JMの名で発売されているが、元の10インチ2枚は「ホレス・シルバー・クインテット」と「同Vol.2」で、JMは付いていなくて、ブレイキーはサイドマンとして参加している。とはいえ、ドーハム、モブレーを含む初代JMメンバーによる初録音、しかも唯一のスタジオ盤ではある。⑥プリーチャー、⑦ドゥードリンなどシルバーのヒット曲が聞かれ、これらはシルバー色が強く、他の曲がJM色を感じる。プリーチャーはカーティス・フラーのダウンホームとともに、黒人教会音楽の影響を感じる曲だが、調べてみると汽車で旅するイギリスの古い曲をヒントに書かれたらしい。シャッフルリズムの調子よい曲で、特段好きな曲ではないが耳に残る。それにしても、この時期のモブレーはかっこいいし、ドーハムもハイノートを聞かせたりする。(hand)

オリジナルメッセンジャーズの初録音だが、10インチではホレス・シルバー・クインテット。カフェボヘミアのライブより後に12インチ化され、その際にJMの名称が使われた。作曲家シルバーらしさが良く出た作品集で、Doodln'やThe Preacher など有名曲が収録されている。最初は良さがわからなかったが、聴き込むにつれて、ジャケットのダサさと共に、ダサかっこいい感じに愛着が持てるようになった。それにしてもこのポーズの指の形は何を表しているのだろう。(しげどん)



Silver’s Blue / Horace Silver シルバーズ ブルー/ホレス シルバー

1956.6.2,17 & 18

Epic

おすすめ度

hand      ★★★☆

Horace Silver(p), Donald Byrd(tp:1,4,6,7), Joe Gordon(tp:2,3,5), Hank Mobley(ts), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds:1,4,6,7), Kenny Clarke(ds:2,3,5)

JM退団後の初録音。トランペットがケニー・ドーハムからドナルド・バードに交代

JMの活動が中心だったのか、2年ぶりのリーダー盤。ブレイキー以外のメンバーがJMから退団後の初録音。トランペットがドーハムからドナルド・バードと一部ジョー・ゴードンに変わっている。ドラムはアート・テイラーで一部ケニー・クラーク。レーベルは大手コロンビアの傍系エピック。JMもコロンビアから盤を出しているが、その辺の経緯はわからない。良質なハードバップに仕上がっているとは思うが、シルバーらしい黒っぽい感じはブルーノートよりも弱いと思う。(hand)



6 Pieces of Silver / Horace Silver 6ピーシーズ オブ シルバー

1956.11.10 (1-8)

1958.9.15 (9,10)

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★

Horace Silver(p), Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts:1-8), Junior Cook(ts:9,10), Doug Watkins(b:1-8), Gene Taylor(b:9,10), Louis Hayes(ds), Bill Henderson(vo:10)

シルバーの快進撃のスタート地点ともいえる盤

シルバーの快進撃は実際にはこの盤からスタートしたと思う。元々全7曲中6曲がシルバーの曲だったので、このタイトルになったらしい。シルバーの最大のヒットと思われるセニョールブルースがこの盤に入っている。ブレイキーの「バードランドの夜」でもそうだったが、一音一音をはっきり叩くシルバーのピアノスタイルは独特のもので、ハードに弾かなくてもハードな曲をハードに聞かせてくれるのが特徴だと思う。ただし、甘口の曲はあまり甘さが感じられないスタイルだ。私の所有CDにはセニョールブルースがシングル用の45回転バージョン、その2年後のビル・ヘンダーソンの歌入りとそのB面も入って全10曲になっている。おまけは歓迎だが、盤の最後にまとめて入れてほしいと思う(今はそうなっている盤が出ているようだ。)。(hand)

バード、モブレーを従えてのシルバー・クインテット始動。完全にシルバー・クインテットらしさがでてきた。彼はやはりオリジナルをやってこその男なのだ。ピアノトリオ演奏も含め多様なイメージの曲が並んでいて6Piecesというのは多面性の表現かもしれない。セニヨール・ブルースが大ヒット曲になり、このアルバムを人気盤にしたが、この曲は特段いいとは思えないのだが・・・(しげどん)



The Stylings of Silver / Horace Silver   スタイリング オブ シルバー/ホレス シルバー

1957.5.8

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン ★★★★

 

Horace Silver(p), Art Farmer(tp), Hank Mobley(ts), Teddy Kotick(b), Louis Hayes(ds)

ドナルド・バードと交代したアート・ファーマーが歯切れよく艶やかな音を聞かせる盤

57年唯一のリーダー録音。トランペットがバードからファーマーに、ベースがダグ・ワトキンスからテディ・コティックに変わる。ファーマーは後年、フリューゲルホーンに変わりほのぼのとした味わいになるが、この盤ではとてもブリリアントだ。 ファーマー史上、最もブリリアントな時期だと思う。シルバーはバド系の硬質なピアノで、あまりファンキーな感じはしない。粒揃いの曲の好盤だ。(hand)

いよいよシルバー節全開といった感じで、一曲目から勢いが加速した感じである。トランペットがアート・ファーマーに代わっているが、ソロの素晴らしさはドナルド・バード以上だと思う。歯切れよくつややかだが、柔らかな温かさも感じる名人芸的なトランペット。スタンダードの名曲My One・・・もやっているが、これは名演化しなかった。できれば最後までオリジナルで通して欲しかった。ジャケットは前作に続き急にカッコよくなってきた。(しげどん)

アート・ファーマーとハンク・モブレーがとても良く、シルバーが脇役になってしまいそうな、そんな丁寧で完成度の高いアルバムだが、もう少しグルーブ感といったノリが欲しい。(ショーン)



Further Explorations / Horace Silver ファザー エクスプロレイションズ/ホレス シルバー

1958.1.13

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★☆

Horace Silver(p), Art Farmer(tp), Clifford Jordan(ts), Teddy Kotick(b), Louis Hayes(ds)

ハンク・モブレーがクリフォード・ジョーダンに交代。

テナーがモブレーからクリフォード・ジョーダンに変わる。ジョーダンは後年大化けするがこの頃は個性が弱いと思う。前作「スタイリング」同様にキラーチューンはないが、この盤も粒揃いの曲の好盤だ。シルバーのピアノは硬質で、私には好感が持てる。(hand)

クリフォード・ジョーダンの端正なテナーはまったりしたモブレーとは違った魅力があり、ファーマーとの相性もいい。しかし全曲がシルバーのオリジナルで固められたこのアルバムは、引き続きシルバーの作曲力に負うところが大きい作品だ。彼のオリジナルは意外と構成が複雑に凝っていて耳になじみにくい曲も多く、このアルバムでは特にそれを感じる。前後作に較べてやや地味な印象なのは、アルバムタイトル「更なる探求」の通り、そのような凝った曲が多く、華やかにシンプルなノリのいい曲が少ないからかもしれない。(しげどん)



Live at Newport '58 / Horace Silver ライブ アット ニューポート/ホレス シルバー

1958.7.6

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん ★★★★

Horace Silver(p), Louis Smith(tp), Junior Cook(ts), Gene Taylor(b), Louis Hayes(ds)

メンバー交代してニューポートに出演

トランペットがファーマーからルイ・スミスに、テナーがクリフォード・ジョーダンからジュニア・クックに、ベースがテディ・コティックからジーン・テイラーに変わってニューポートに出演した記録。ブルーノートからの発売だが、発表は2008年で録音から丁度50年後のマイケル・カスクーナの発掘音源だ。MCでシルバーがニューグループのブルーノート録音と言っているので公式録音され未発になっていたようで音はいい。全体に真面目な演奏で、会場はあまり盛り上がっていない気がする。唯一、ヒット曲の④セニョールブルースだけは盛り上がっている。(hand)

冒頭のアナウンスは聴きなれた声。58年といえばあの「真夏の夜のジャズ」の年だ。あのときシルバーも出演してたんだなぁ・・・と考え、なんだかあの映画の中に出演している想像をしてしまった。とてもストレートに当時のレパートリーを演じるシルバーの生き生きした姿が想像できるライブ音源だ。(しげどん)



Finger Poppin’ / Horace Silver フィンガー ポッピン/ホレス シルバー

1959.1.31

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん ★★★★☆

ショーン ★★★★★

Horace Silver(p), Blue Mitchell(tp), Junior Cook(ts), Gene Taylor(b), Louis Hayes(ds)

クインテットの黄金時代のスタートともいえる盤

シルバー・クインテットの黄金期のスタート盤。59年になりトランペットにブルー・ミッチェルが加入し、ジュニア・クックとのフロントが完成する。いわゆる誰もがイメージするホレス・シルバー・クインテットとなり、約5年間続く。ビッグネームはシルバー以外にはいないが、シルバーらしいヒット盤をこの時期に出すこととなる。その最初がこの盤で、②ジューシー・ルーシーなど好印象の曲が揃う。(hand)

タイトル通りの明るいノリのいい作品だ。一流どころが続いたシルバー・クインテットのフロントラインがミッチェル,クックに代わり、一般的なネームバリューはやや格落ちな感じなのだが、演奏は逆にヒートアップして充実度が増している感じすらある。むしろこの二人がアンダーレイテッドなのだろう。サンバテイストなど、楽しさ満開のアルバムだ。(しげどん)

ブルー・ミッチェルのトランペットの迫力が素晴らしいfinger poppin'は、シルバーのピアノもその名の通り弾んでいて、聞き応えもあり素晴らしい。swingin' the samba もルイス・ヘイズのドラムが意欲的で楽しい。一方でsweet stuffやyou happened My Wayのようなスローなナンバーもあり、緩急揃い踏みで一曲一曲楽しめる好アルバムだ。(ショーン)



Live in Paris14 Fevrier 1959 / Horace Silver ライブインパリ1959 ホレス シルバー

1959.2.14

Fremeaux & Associes

おすすめ度

hand      ★★★★

Horace Silver(p), Blue Mitchell(tp), Junior Cook(ts), Gene Taylor(b), Louis Hayes(ds)

新メンバーでのパリ公演の記録

新メンバーによるパリ公演。過去のシルバーのヒット曲を中心に演奏。シルバーのピアノがイキイキしている。ジュニア・クックが想像以上に活躍する。(hand)



Zurich 1959 / Sonny Rollins Trio & Horace Silver Quintet

1959.3.5

TCB

おすすめ度

hand      ★★★★

Horace Silver(p), Blue Mitchell(tp), Junior Cook(ts), Gene Taylor(b), Louis Hayes(ds)

新メンバーでのスイス公演の記録。ロリンズとカプリング

「フィンガー・ポッピン」と「ブローイン・ブルース」の間2か月のほぼ中間に行われたスイスでの放送用録音。ソニー・ロリンズのトリオの同日のライブ録音とカプリングされている。拍手がないので、スタジオ録音と思われる。ミッチェル、クックのフロントというシルバー・クインテットの黄金期だ。「ライブ・イン・パリ」同様、過去のヒットパレード的な選曲になっている。(hand)



Blowin’ The Blues Away / Horace Silver ブローイン ザブルース アウェィ/ホレス シルバー

1959.8.29,30 & 9.13

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Horace Silver(p), Blue Mitchell(tp), Junior Cook(ts), Gene Taylor(b), Louis Hayes(ds)

シルバーの名盤といえばこの盤とされてきた盤。今聞いてもやはり素晴らしい。

多分、これがシルバーで最も知られた盤なのだろう。私自身、これまであまり聞いてこなかったが、改めて聞くと勢いのある素晴らしい盤だ。②セントヴィタスダンスはかっこいい曲。シルバー曲をいいと思ったのは、オパスデブルース以来だ。後年ディディ・ブリッジウォーターが歌いたくなったのも当然だと思う。バラードの④ピースも素晴らしく、物悲しさに尺度があれば確実に上位にランキングされるはずだ。シルバーは物悲しさを表現するのは決してうまい人ではないと思うが、この曲では成功している。⑤シスターセディもハードバップらしいかっこよさを持った名曲だ。(hand)

ミッチェル、クックのフロントラインによる更なる傑作盤。冒頭からノリのいいハードバップだ。二曲目のSt.Vitus Danceはピアノ・トリオ演奏だがヒット要因もありそうな曲。アルバムに挿入しているピアノトリオ演奏は、Further・・・の再演Melancholy Moodのような陰りのある静かな曲が多く、このようなメロディアスな曲は少ない。そしてヒット曲Sister Sadieは、典型的なファンキー!そのものの曲で、言うことなき名演だ。(しげどん)

カッコ良いblowin' the blues awayから始まるこのアルバムは、ブルー・ミッチェルのトランペットが生き生きと曲にスパイスを与えており、シルバーも軽やかな鍵盤捌きの応酬で終始心地良く聴くことができる。ショーン的にはpeaceの静かな調べは、もう少しウェットに弾いてほしいかな?と思ったりしたが、ともあれ素敵なアルバムであることは間違いない。(ショーン)