村上春樹氏 Blue Note 私の10枚

ブルーノートの発売権がキングレコードから東芝EMIに戻った当初、東芝から発売されたブルーノート盤にはA4二つ折のライナーが封入されていて、そこに「ブルーノート私の10枚」というシリーズ企画が掲載されていました。ジャズ評論家や、ジャズが好きな著名人が、封入されたレコードには関係なく自分の好きなブルーノート盤を紹介するコーナーです。

村上春樹さんの「ブルーノート盤私の10枚」は、東芝EMI盤の「マイルス・デイビス第二集」アナログ盤に掲載されていました。(リンクを貼った現在のCDには封入されていませんので念のため)

ブルーノートは「東芝」→「キングレコード」→「東芝EMI」と販売元が変遷しており、このライナーが入っているのは、二回目の東芝発売のもので、帯の代わりに丸いワッペンのようなシールが貼ってありました。

 


そこで村上春樹氏が選んだブルーノートの10枚がなかなか渋いチョイスなので、このページでご紹介いたします。

渋いCDなので、CD屋などを探しても見つからないかもしれません。画像にアマゾンのリンクを貼りました。こういう点でネット通販は便利です。



村上春樹氏 ブルーノート 私の10枚

①Jack Wilson:Easterly Winds 84270

ジャック・ウイルソンは西海岸の活動期間が長く中央に出たのが遅かったとも言われますが、活躍をする時期がハードバップ全盛期を過ぎていたので、知る人ぞ知る存在のピアニストです。

この作品は冒頭の一曲はジャズ・ロック的ですが、二曲目以降はオーソドックスなジャズで、リー・モーガン、ジャッキー・マクリーンといったブルーノートの千両役者が共演していますので、一聴の価値があります。


②Jack Wilson:Something Personal 84251

マニアックな一枚のようでありながら、実は耳になじみやすいオーソドックスなカッコいいジャズなので、愛聴盤になりうるおすすめの作品だと思います。レイ・ブラウン(b)の参加に注目です。


③Dexter Gordon:Dexter Calling 84803

あまり人気盤にはなっていないのは、デクスター・ゴードンのオリジナル曲がやや地味で耳になじみにくいのかもしれません。しかし後年スティープルチェイス盤のライブで再演したり、彼としてはお気に入りの作品だったのでしょう。私的にはB面がおすすめです。


④Stanley Turrentine : Blue Hour 84057

スタンリー・タレンタインとスリー・サウンズの共演盤です。日本では人気はそれほどでもないようですが、アメリカ本国ではどちらもブルーノートの看板大スターで、それぞれ大量のリーダー作を残しています。

ブルー・アワーというタイトルですが、ノーマルなブルースは一曲だけで、あとは唄モノのスタンダードがゆったりとブルージーに演奏されるリラックスした一枚で、激しい演奏は一曲もありません。夜ゆったりと聴くのにいいかもしれません。


⑤Gene Harris:Gene Harris 84423

※⑤は入手困難で、アマゾンでも単独のものとしてはみつかりませんでした。画像を貼ったのは4378と4423両方を含んだ編集盤です。


⑥Lee Morgan:Live at The Light House 89906

1970年の録音ですが、彼は約1年半後の1972年2月に射殺されてしまうので、彼が生きているうちに発売された最終作品です。村上春樹氏のコメントではオリジナル仕様の2枚組レコードということになっていますが、現在のCDは追加トラック8曲が加わりCD3枚の大作ライブで、1枚あたり一時間以上の収録時間があるので、全部聴くと3時間かかります。ピアノのハロルド・メイバーンはこういうライブでかっこよさ全開です。


⑦Lou Donaldson :Mr.Shing-a-Ling 84271

ギターとオルガン入りのジャズロック路線。この前作に「アリゲーター・ブーガルー」というヒット作があるので、これはその続編のようなイメージの作品です。前作同様にポップなヒット要素がある一枚。


⑧Hank Mobley : A Caddy For Daddy 84230

リー・モーガンとカーティ・フラーが参加したこれもジャズロック路線の一枚。耳になじみやすい昭和的カッコいい曲が多く、ジャズファン以外にも好まれる要素があります。これもヒットを狙った作品なんでしょう。村上氏は「イモっぽい」と称してますが、さすがになんとも言えず的確な表現です。


⑨Donald Byrd : Off To The Races 84007

ドナルド・バードのブルーノート第一作。ジャッキー・マクリーンのアルト&ペッパー・アダムスのバリトンとの3管+ピアノがウィントン・ケリーというすさまじい重量級豪華メンバーです。バードとマクリーンはしばしば共演しクインテット作品は多いですが、ペッパー・アダムスのバリサクが加わっているところが聴きどころの純粋なハードバップ作品です。


⑩Horace Silver : Song for My Father 84185

印象的なメロディのタイトル曲「ソング・フォー・マイ・ファザー」はシルバーのヒット作のひとつ。一度聴いたら忘れられない旋律です。素敵なジャケットデザインですが、この男性は本物のホレス・シルバーのお父様ということです。ダンディでオシャレですね。