Thelonious Monk セロニアス・モンク CD ディスクガイド:  サイド作

個性派リーダーであるセロニアス・モンクは、通常のピアニストのようにリズム・セクションの一員として脇役に回った作品があまりありません。しかし数少ないサイド参加作は、どれもユニークな作品ばかりで歴史的な名盤も多く含まれています。

ここでは、それらサイド作を紹介していきます。



Charlie Christian jazz Immortal                                                                                ミントンス ハウスのチャーリー・クリスチャン

1941年5月 Everest

 

おすすめ度

hand     ★★★★

しげどん★★★★★

Joe Guy(tp),Thelonious Monk(p),Charlie Christian(g),Nick Fenton(b),Kenny Clarke(ds)

モンクらしくないソロ。実はモンクではなかった説もある。

モンクのソロは、スイング風と言われるが、やはりモダンな感じはする。チャーリー・クリスチャンのソロは完全なモダンだが、バックに回ったときはフレディ・グリーン風のスイング・スタイルだ。(hand)

クリスチャンとガレスピーが主役この手のレコードは資料的に聴かれることが多いが、チャーリー・クリスチャンのギターは今でも新鮮にかっこよく聴ける素晴らしい演奏。でもモンクのピアノは、まだモンクらしくないこの時期のスタイルを知るための記録。(しげどん)

※音に残っているモンクの最初のレコードですが、革命的な天才児チャーリー・クリスチャンの最高傑作として歴史的に重要な作品として有名な録音です。アマチュア技師ジェリー・ニューマンが携帯用ディスク・レコーダーで録音しましたが、チャーリー・クリスチャンはこの一か月後に肺結核で入院し、翌年1942年に22歳で亡くなりましたので。彼の生涯でもっとも長いソロの記録となりました。

実はこのモンクとされているソロは、ケニー・カーセイというピアニストであったという説があります。確かにまったくモンクらしくないソロである故に初期のモンクのスタイルとされていたのですが、別人と言う説も説得力がありますね。



Harlem Odyssey/V.A.  ハーレム・オデッセイ

1941年

Xanadu

未CD化 リンクはありません。

おすすめ度

hand     ★★★☆

Joe Guy(tp),Thelonious Monk(p),Nick Fenton(b),Kenny Clarke(ds)

ザナドゥの未CD化盤。若手モンクの参加はトランペットのジョー・ガイをリーダーとしたB面5曲のみ。

ザナドゥの未CD化盤。全11曲中、モンクの参加はトランペットのジョー・ガイをリーダーとしたB面5曲のみ。若手のモンクは、後年のモンクを知る耳には個性の芽生えを感じるが、そうでなければ普通のピアノに聞こえてしまうかもしれない。A面冒頭のビリー・ホリディの歌が印象に残る盤。(hand)



Bean and The Boys/Coleman Hawkins  ビーン アンド ザ・ボーイズ/コールマン・ホーキンス

1944年10月19日

Joe Davis→Prestige

おすすめ度

hand ★★★☆

Coleman Hawkins(ts),Thelonious Monk(p),Edward Robinson(b),Denzil Best(ds)

若手モンクの初公式録音は、大御所ホーキンスのカルテット演奏に冒頭4曲のみ参加

ジョーデイビスという超マイナーレーベルへの録音をプレステッジが買い取って発行した盤。全15曲中、モンクの参加は冒頭4曲のみだが、初公式録音。カルテット演奏で、若手モンクは、大御所ホーキンスのサイドに徹しているが、イントロや短いソロで後年の個性が感じられる部分もある。(hand)



Milt Jackson  ミルト・ジャクソン

録音日、レーベル

1948年7月2日

1951年7月23日

1952年4月7日                  Blue Note

↑リンクを貼ったCDには、未発表曲のボーナストラック入り(かってBNJ61012としてアナログ発売されたもの)

おすすめ度

hand        ★★★★

ショーン    ★★★★

しげどん    ★★★★

パーソネル

  1948年7月2日   Milt Jackson(vib),Thelonious Monk(p),John Simmons(b),Shadow Wilson(ds)

  1951年7月23日  Milt Jackson(vib),Sahib Shihab(as),Thelonious Monk(p),Al McKibbon(b),Art Blakey(ds)

  1952年4月7日 Milt Jackson(vib),Lou Donaldson(as),John Lewis(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds)

ミルト・ジャクソンのリーダー10インチ作とモンクのリーダー作をカップリング

12インチはブルーノート1509。1952年録音の6曲は初期ミルトの代表作で、オリジナルは10インチ盤。ミルトのソロはすでに完成したスタイル。ルウ・ドナのバッパーぶりも面白い。48年、51年のセットは完全にモンクの作品そのまま。(しげどん)

1曲1曲は短いが、メロディアスな曲が多く、全般にポピュラリティーとオリジナリティーが混在し、なかなか楽しんで聴けるアルバム。メンバー的には、サックスのルードナルドソンの好演も光るが、なんといってもmisteriosoやepistrophyのセロニアスモンクとミルトジャクソンの絡みが聴き応えがある。(ショーン)

1952年のセット全6曲中4曲で、ルー・ドナルドソンが活躍。活躍し過ぎの側面もある。(hand)

ブルーノートの12インチLPのBLP1509番は、オリジナルの10インチ盤(1952年録音)にモンクのリーダー作からBLP1510,1511(genius of modern music)に入らなかった曲をB面にカップリングしたもの。BLP1510,1511に関しては、→セロニアス・モンクの項を参照ください。

また、BLP1509~1511までの3枚の各セットの未発表曲がBNJ61011、BNJ61012として発売されたことがあります。  



Bird & Diz  バード&ディズ                                                                                       チャーリー・パーカー&ディジー・ガレスピー

1950年6月6日

Verve

おすすめ度

hand     ★★★★

しげどん★★★★☆

Dizzy Gillespie(tp),Charlie Parker(as),Thelonious Monk(p),Curley Russell(b),Buddy Rich(ds)

ビ・バップの定番名作。パーカーを聴く作品だが、モンクはモンクらしさを発揮している。

①モンクの短いイントロから始まるが個性はない。パーカーのソロが天才過ぎて、他の人も十分に天才なのだが霞んでしまう。ただ、モンクのソロはきちんと個性を発揮して、ただのバッパーのソロとは違う。②以降も同じ。(hand)

チャーリー・パーカーの数ある作品の中で、メンバーのユニークさで有名な作品。バディ・リッチをドラムに採用したミスキャストぶりが話題になるが、この時期のモンクがサイド参加している事のほうが興味を引く。1950年の録音なのですでにブルーノートでの初録音を終えた自分の個性を確立した時期。パーカー、ガレスピーのバックでは目立たず協調していながらも自分の出番では個性を発揮しているモンクのソロはたいへん興味深い。アナログ盤では「リープ・フロッグ」の別テイクが誤って同じテイクが収録されていたがCDではどうなったんだろう。(しげどん)



Moving Out/Sonny Rollins ムービング・アウト/ソニー・ロリンズ

1954年8月18日

1954年10月25日

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★☆

Kenny Dorham(tp),Sonny Rollins(ts),Elmo Hope(p),Percy Heath(b),Art  Blakey(ds)

Rollins (ts),Thelonious Monk(p),Tommy Potter(b),Art Taylor(ds)

モンク・ウィズ・ロリンズのセッションで未収録だった一曲だけを収録

ロリンズ盤にドーハムが共演している意味が感じられない盤。ブラウン亡き後のローチ5のメンバーというだけだ。リバーサイドのドーハム盤にロリンズが入ったことの返礼かもしれない。①②はローチ5風で少し慌たゞしい。③シルクNサテンは、ドーハムが遠くで小さく吹くだけのロリンズ中心のバラード。ドーハムの入らないモンクとの⑤モアザンユーノウが一番いいと思う。(hand)

モンクの参加は、ロリンズのワンホーンの「モア・ザン・ユー・ノウ」1曲だけ。このワンホーンのメンバーで、2曲が「Monk With Rollins」に収録されているが、いずれもモンクとロリンズの対比が面白い素晴らしい作品で、両盤ともそのセッションが一番の聴きどころになっている。 このロリンズ+モンクのワンホーンだけで一枚作って欲しかった。(しげどん)

 

モンク+ロリンズの同日のカルテット演奏を収めたMonk With Rollins



Bags Groove/Miles Davis                                                                                            バグス・グルーブ/マイルス・デイビス

1954年6月29日   Miles Davis(tp),Sonny Rollins(ts),Horace Silver(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds)

Airegin, Oleo, But Not For Me,Doxy

1954年12月24日  Miles Davis(tp),Milt Jackson(vib),Thelonious Monk(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds) :Bags Groove(take 1),Bags Groove(Take 2)

おすすめ度

hand     ★★★★★

しげどん★★★★★

有名なエピソードでおなじみのクリスマスセッション。鬼気迫る名演でモンクの最高作。

タイトル曲の10分前後の2テイクのみがLPのA面に収録という過激な編集なのに、2テイクを続けて聞いても全く苦痛ではない、素晴らしい盤。マイルス、モンク、ミルトの共演は、正式にはこの盤のみ。マイルスがバックでモンクに弾かないように言ったのは、私にはベースとドラムだけで吹きたいという演出効果ではないかと思われる。マイルス盤は、基本的に全てが素晴らしいので、モンク選、ミルト選からは除外する。B面は、ロリンズ 、シルバーらとの録音で、これはこれで最高の内容。(hand)

有名なクリスマスの喧嘩セッション。独特の緊張感あるピアノは、私がモンクという個性的なピアニストを最初に好きになった一曲なので、どうしてもこだわりたい。モンクのソロの最高峰としてだけでなく、ジャズピアノの最高峰として評価されている名ソロ。多くのジャズファンが口ずさめるのでは?(しげどん)



Miles Davis and Modern Jazz Giants                                                                              マイルス・デイビスとモダン・ジャズ・ジャイアンツ

1954年12月24日  Miles Davis(tp),Milt Jackson(vib),Thelonious Monk(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds) :Bemsha Swing,Swing Spring,The Man I Love

1956年5月11日 Miles Davis(tp),John Coltrane(ts),Red Garland(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds):Round Midnight

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★☆

これも有名なクリスマスの「喧嘩」がさらにわかりやすく録音されている。興味尽きない一枚だ!

ザ・マン・アイ・ラブは、若い頃によく聞いた名曲の名演で、心に沁みるマイルスのテーマ演奏。ピアノもバイブもどちらもコードを弾ける楽器なので、同時に弾くのは、普通に考えれば好ましくない。なので、マイルスは、ピアノのコード弾きはバイブソロのバックを中心にすることにしただけだと思う。ニュークインテットのラウンドミッドナイトは、コロンビア盤より荒削りでこれはこれで悪くない。(hand)

この「The Man I Love」も必聴盤から外せない。本当にケンカをしたのか真相は不明だが、モンクは途中で演奏をやめてしまうところが録音されているんだから面白いったらない。そのやめた方のテイクをA面の冒頭にもって来て、B面冒頭は二年も後の有名なマラソンセッション時期の録音を一曲だけ入れるという、ワインストック氏の露骨な売らんかな主義もすごい。(しげどん)



Nica’s Tempo/Gigi Gryce  ニカズ テンポ/ジジ・グライス

1955年10月10日

Savoy

おすすめ度

hand      ★★★☆

Gigi Gryce(as),Thelonious Monk(p), Percy Heath(b), Art Blakey(ds)

アルトのジジ・グライス盤に4曲のみ参加しモンク色を発揮

モンクには珍しいサボイ録音。ジジ・グライスは地味なアルトだがよく聞くと味わい深い人。作編曲も得意だ。「ブリリアント・コーナーズ」にもやはり地味に参加している。全10曲中、ラスト4曲がモンク入りのカルテット。それ以外はホレス・シルバーでボーカル入りの曲もある。この4曲だけは完全にモンクの色が出ている。盤全体としてはまずまずの盤だと思う。(hand)



Sonny Rollins Vol.2  ソニー・ロリンズ 第二集

1957年4月14日

Blue Note

おすすめ度

hand     ★★★★☆

しげどん ★★★★★

ショーン ★★★★★

J.J. Johnson(tb)、Sonny Rollins(ts)、Horace Silver, Thelonious Monk(p)、Paul Chambers(b),Art Blakey(ds)

生々しく迫力ある名盤。大御所が揃って技を競い合っており、聴いていて息を抜けない。特に3曲目のMisteriosoでは、何とセロニアスモンクとホレスシルバー、2人の天才ピアニストが共演!途中で交代して演奏しているらしい?!そんな事があり得るのか?よくセロニアスが「文句」を言わなかったものだ。このアルバムでのロリンズは、テナーを幅広い音域で縦横無尽に吹きまくり、迷いがなく好調な様子に見てとれる。アートブレイキーの勢いのあるドラミングに支えられて、J.J.ジョンソンのトロンボーン、ポールチェンバースのベースも好プレイを連発!凄い化学反応を起こしたアルバム。(ショーン)

アート・ブレイキーはなんて素晴らしいドラマーなのだ!と思える作品。1曲目から爆発的にジャズらしい乗りのある動きがある。モンクも素晴らしいので、聴きごたえある一枚。(しげどん)

J.J.は、2管の意味を理解して演奏している。そこにいることが必然と思わせる演奏だ。シルバーもノリがいい。ロリンズにはプレイキーが合っている。モンク参加の2曲も、違和感なく溶け込んでいる。(hand)



In Orbit/Clark Terry イン・オービット/クラーク・テリー

1958年5月7日,12日

Riverside

おすすめ度

hand   ★★★★

Clark Terry (flh),Thelonious Monk (p),Sam Jones (b),Philly Joe Jones (ds)

トランペットカルテットのサイドマンとしてのモンクが楽しめる盤

OJC盤のCDが嶋護(しま・もり)氏「嶋護の一枚」により高音質と推薦されている。確かにいい音だ。各楽器がイキイキと鳴っている。クラーク・テリーは中間派的でスイングの香りがして、あまり好みではないのだが、この盤は高音質に加え、モンクも張り切ってサポートして、モンクらしいソロもとるなど、モンク盤に近い感じなので、割と楽しめた。(hand)



SUMMIT SESSIONS/Dave Brubeck(LP)

1967年6月17日

Columbia

未CD化 リンクはありません。

hand ★★★

Dave Brubeck,Thelonious Monk(p),Unknown(b),Unknown(ds),etc

デイブ・ブルーベックのトリオにモンクが1曲ゲスト参加

未CD化。デイブ・ブルーベックのトリオにゲストが1曲ずつ加わる形の企画盤。モンクはA④Cジャムブルースに参加。モンクらしいソロをとる。他ジャンルとの共演曲が多く、他に楽しめたのはB②チャールズ・ミンガスなど数曲のみ。(hand)