Eric Dolphy エリック・ドルフィー  おすすめCD名盤 & 全リーダー作 レビュー



これまでオーソドックスなモダンジャズのジャズマン(ウーマン)を中心に取り上げてきたこの会で初めてアブストラクトな要素の強いエリック・ドルフィー(1928-1964)について談義しました。ドルフィーはフリージャズではなく、オーソドックスなジャズの範疇で演奏したとされていますが、それでもそのフレーズや音色は、いわゆるモダンジャズのハードバッパーと比べるとかなりぶっ飛んだ内容に聞こえます。西海岸ロスで生まれ、チコ・ハミルトンなどで活動を開始しますが、50年代末に東海岸に移り、特に60年以降、ミンガスと活動を共にしたあたりから個性が花開きます。ブッカー・リトルとの伝説のファイブ・スポットでのライブはモダンジャズの歴史上の重要盤となっています。とはいえ、生前にドルフィーはなかなか受け入れられず、36歳で早逝したため、死後に評価が定まったミュージシャンといえる思います。(しげどん)


これまで取り上げたミュージシャンとは毛色の違うドルフィーの演奏。新ジ談3人の評価はやはり微妙に分かれた。当然1位と思われた「ファイブ・スポットVol.1」だが、「Vol.2」に票が割れたこともあり僅差でファーストアルバムの「アウトワード・バウンド(惑星)」に1位を奪われることとなった。3位~5位はなんと全てヨーロッパでの演奏が占めることとなった。私hand推奨の「ヒア・アンド・ゼア」はファイブスポット等の落穂盤のためかランクインはかなわなかった。世評の高い「アウト・トゥ・ランチ」もショーン氏のプッシュはあったものの選外となった。(hand)


おすすめ盤 1位:OUTWARD BOUND 惑星 / Eric Dolphy

1960.4.1

New Jazz

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Freddie Hubbard(tp), Jackie Byard(p), George Tucker(b), Roy Haynes(ds)

衝撃的なデビュー・リーダー盤

オーネット・コールマンの数作が58年から出ているが、60年4月という時期のデビュー盤のこの音は十分に衝撃的だ。当時フリーと言われたものが、今聞くとそれほどでもないものもあるが、ドルフィーの場合、フリーというよりも、音色やソロという楽器の演奏そのものがぶっ飛んでいるので、色あせることがない。フレディのトランペットもいい具合に適合している。(hand)

荒々しいドルフィーと繊細なドルフィーを感じることのできる盤。フレディー・ハバードのトランペットも健やかに育った若い象のようにパオーンと溌剌としていて、ドルフィーとの2管のユニゾンがとても美しい。またglad to unhappyのフルートのドルフィーも軽やかに飛翔している蝶のようでとても綺麗だ。(ショーン)

ドルフィの初リーダー盤だが、ソロのスタイルは完成形。ブラウニーより年上の彼はすでにベテラン。彼のいろいろな要素が全部コンパクトに詰まっている濃縮された傑作。ハバード、バイヤードも熱演。スタンダードナンバーは意外性があり、面白い。ドルフィはぶれないが、ハバードは曲調によって情感的になる。(しげどん)



おすすめ盤 2 位:AT THE FIVE SPOT VOL.1 / Eric Dolphy

1961.7.16

New Jazz

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Booker Little(tp), Mal Waldron(p), Richard Davis(b), Ed Blackwell(ds)

ドルフィー=リトル5によるモダンジャズ史上最高のライブ作品の一枚

圧倒的な迫力のライブで、おそらくモダンジャズ史上に残る最高のライブ作品の一枚だ。ドルフィのソロの魅力はもとより、ブッカー・リトルの輝かしいソロ、マル・ウォルドロンのピアノも特筆すべきもの。Five Spotの一連のライブ作品では、やはりこの一枚が図抜けている。(しげどん)

ドルフィーの中で一番人気の盤。61年7月16日の録音で、その年12月にはリリースされている。改めて聞いてみても素晴らしかった。ただ、他の盤と比べてみると、このファイブ・スポットのシリーズはやや毛色が違う気がした。多分、ドルフィー自身はいつもと変わらないもののバンド演奏がいわゆるハードバップのコンボ形式の演奏で、フリー寄りの演奏が苦手な人にも聞きやすい内容なのだと思う。特にマルのピアノがその印象を強める要因になっている。後年のマルはややフリー寄りの録音も残してはいるが、この時期はプレスティジのハウスリズムセクションとして活躍していた頃なので個性的ではあるがオーソドックスな演奏をしていて、盤自体を聞きやすくしている。(hand)

エリック・ドルフィーの心情溢れるアルトサックスの印象的なフレーズが、最初から素敵なセッションを予見させる。その期待どおりのブッカー・リトルのトランペットは澱みなく伸び伸びとして素晴らしく、ドルフィーのバスクラリネットも中々いい低音の味を出していて、この2管のアンサンブルがこのアルバムの聴きどころだ。the prophetの途中の中弛み感が惜しい。(ショーン)



おすすめ盤 3 位:LAST DATE / Eric Dolphy

1964.6.2

Limelight, Fonatana

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Misha Mengelberg(p), Jacques Schols(b), Han Bennink(ds)

研ぎ澄まされた緊張感のある魅力的なライブ

ドルフィーの一瞬難解なブローイングは、聴き進めて行くにつれ、ドルフィーマジックの沼にハマっていく心地よさがある。芸術性の高い作品といえる。他のメンバーすらも圧倒するようなドルフィーの演奏は凄みを感じる。(ショーン)

これほどまでに緊張感のあるライブは中々ないと思う。研ぎ澄まされた緊張感がありながら、冒頭から引きずりこまれる魅力がある素晴らしさ。全曲素晴らしいがYou Don't Knowは彼のフルート演奏中最高のもの。名曲Miss Annもこの演奏が私は一番好きだ。(しげどん)

おどろおどろしい感じのバスクラから始まるが、モンク曲①エピストロフィー、なので親しみを感じることができた。私の聞き方は、やはり曲の良し悪しによる部分が大きい。ジャズなので、アドリブソロの良し悪しはもちろん重要だが、アドリブの元となる曲が良くないと楽しみも半減すると思う。②サウス・ストリート・イグジット、はフルートでのスピード感のある曲。③④のオリジナルは、テンポは微妙に違うが似通った曲だと思う。⑤君は恋を知らない、名曲の名演として定評のあるフルート演奏。そのとおりだと思う。 ⑥ミス・アン、何度も録音のあるドルフィーのオリジナル。いつもどおりにアルト。リズム隊のせいかスインギーに演奏される。(hand)



おすすめ盤 4 位:IN EUROPE VOL.1 / Eric Dolphy

1961.9.8

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Bent Axen(p), Chuck Israels(b①), Erik Moseholm(b②-④), Jorn Elniff(ds)

コペンハーゲンでの公式ライブ録音の第1集

イン・ヨーロッパ3部作はアルバムとしては選曲に偏りがある。Five SpotはVol.1を代表の一枚にしてよいが、In Europeは3枚全部聴かないとこのライブの面白さはわからないと思う。その中でもこの第一集はユニークな編成の一枚になっている。一曲目はベースとのフルートでのデュオ。チャック・イスラエルが参加したのはこの一曲だけ。どのような経緯なのか私は知らないが、強いインパクトがあり、この一枚の価値を高めている。続く曲もフルートで、B面に入ってようやくバスクラが登場するが、これがなんとソロ。最後はワンホーンカルテットのバスクラ。と様々な形態のドルフィが味わえる実験性がある。でも、コンサートの曲順から考えると、この収録順はやや疑問。変化に富んだ価値ある作品とは言えるが・・・(しげどん)

アルトサックスも素晴らしいが、2曲目のsorinoでのドルフィーのバスクラリネットの音色は、独特の哀愁を帯び、どことなく懐かしさを感じて、素晴らしい。ジミー・ウッドのベースも語るようなメロディラインで、良い雰囲気だ。フルートのleft aloneも泣かせる演奏で、多彩な天才の魅力が満載の素晴らしいアルバムだ。(ショーン)

「ファイブ・スポット」と雰囲気は全く違うが、「ファイブ・スポット」と同様にあるいはそれ以上に聞きやすい3枚。この渡欧時の録音はどれも比較的いい内容だが、プレステッジの正規盤3枚は内容も音も一頭地飛び抜けている。多分、発売を前提のコンパクトな演奏で、録音機材もきちんとセッティングされたのだろう。「イン・ヨーロッパ」の3枚はVol.2が61年9月6日、Vol.1が9月8日、Vol.3が6日と8日のミックスとなっていて、日付け順を重視するディスコグラフィー的にはややこしい状況にある。Vol.1は偶々?現地にいたチャック・イスラエルが1曲だけドルフィーのフルートと共演した①ハイ・フライ、と③ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド、のバスクラのソロ演奏が有名な盤だ。他の2曲のトリオ入り演奏も②フルート、④バスクラでアルトがないのが私には残念な点だ。(hand)



おすすめ盤 5 位:STOCKHOLM SESSIONS / Eric Dolphy

1961.9 & 11

Enja

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Idrees Sulieman(tp), Knud Jorgensen, Rune Ofwerman(p), Jimmy Woode(b), Sture Kallin(ds)

ストックホルムでの61年9,11月の2つのセッション

初期の頃からのオリジナル曲や、よく演奏しているスタンダードなど、選曲がバランス良く組まれて、聴きやすい作品になっている。地元ミュージシャンもいい演奏している。(しげどん)

アルトサックスも素晴らしいが、2曲目のsorinoでのドルフィーのバスクラリネットの音色は、独特の哀愁を帯び、どことなく懐かしさを感じて、素晴らしい。ジミー・ウッドのベースも語るようなメロディラインで、良い雰囲気だ。フルートのleft aloneも泣かせる演奏で、多彩な天才の魅力が満載の素晴らしいアルバムだ。(ショーン)

この時期の8〜9月の一連の録音と少し離れた11月の録音を含む。11月の録音はトランペットのアイドリス・スリーマンが③⑥に参加している。「ベルリン」よりも親しみやすく聞こえる。選曲とメンバーのせいだろう。アルトから始まるのもいい。(hand)