Curtis Fuller カーティス・フラー サイド参加作 CDレビュー ②

ここでは1959年から61年のサイド作を取り上げます。ベニー・ゴルソンとの共演が増えますが、ジャズテットとしての最初の盤はフラーがリーダーとして録音されているので、リーダー項を参照ください。



Brass Shout/Art Farmer ブラス・シャウト/アート・ファーマー

1959年5月14日

United Artists

hand  ★★★☆

しげどん  ★★★

ショーン  ★★★★

 

Art Farmer, Lee Morgan, Ernie Royal(tp),Julius Watkins(French horn),Jimmy Cleveland, Curtis Fuller(tb),James Haughton(baritone horn),Don Butterfield(tuba),Percy Heath(b),Philly Joe Jones(ds),Benny Golson(arr,conductor)

ファーマーのゴルソン・アレンジの大編成盤にジミー・クリーブランドとの2トロンボンで参加

ファーマー研究のときは、いい盤と思い★★★★としたが、今回聞いて、甘口でジャズ度が低く感じた。ジャズのスリルがやや弱い盤だ。★を半分減らすことにした。フラーとクリーブランドの違いを聞き比べられないがトロンボーンは割と目立つ。(hand)

メンバーのソロよりもベニーゴルソンのアレンジに重きを置いた作品。有名スタンダードと当時のヒット作であったゴルソンオリジナルやモーニンなどの有名曲揃いで、ポピュラーな人気を狙った作品か。(しげどん)

ブラス大編成の厚みが、心地良く響くアルバム。ベニーゴルソンのアレンジが冴える。スタンダード曲が大半を占め、誰でもすんなり聴き込めるように思う。惜しむらくは、リーダーのアートファーマーの出番が意外と少ないところか?2曲めの「枯葉」が良い。(ショーン)



Gone With Golson/Benny Golson ゴーン・ウィズ・ゴルソン/ベニー・ゴルソン

1959年6月20日

New Jazz

おすすめ度

hand★★★☆

しげどん ★★★☆

Benny Golson(ts),Curtis Fuller(tb),Ray Bryant(p),Tommy Bryant(b),Al Harewood(ds)

ゴルソンのin’三部作の1枚目。通称、傘のゴルソン。フラーは重要な相手役

ゴルソンのin’三部作の1枚目。通称、傘のゴルソン。3枚ともゴルソンとフラーの2管は変わらず。ピアノはレイ・ブライアント2枚とトミフラが1枚。フラーは重要なソロイスト&ゴルソンハーモニーの相手として参加している。ゴルソンハーモニーはキレイだがスリルがないのが弱点だと思う。フラーは、いいソロをとる。②枯葉は割と平凡。⑤ジャスト・フォー・ボビーでのゴルソンのソロは熱い。トミー・ブライアントはレイ・ブライアントの弟で早逝している。(hand)

フラー&ゴルソンのコンビネージョンの出発点と言える作品。Savoy盤Jazztetは、この約2カ月後の録音になる。トロンボーンとのコンビはアレンジャーとしてのゴルソン氏の59年時点でのこだわりだったのか。レイ・ブライアントのピアノも格調高いが、アルバム全体としてはやや大人しい印象で、もっと暴れる系のピアノのほうが面白かったのでは?などと思う。ブライアントは冒頭のオリジナルStaccato Swingでも存在感を発揮。なかなか面白い曲調でこのアルバムのベストトラックだ。フラーはいい感じを維持したソロ。(しげどん)



Groovin’ With Golson グルーヴィン・ウィズ・ゴルソン/ベニー・ゴルソン

1959年8月28日

New Jazz

おすすめ度

hand★★★★

しげどん ★★★★

Benny Golson(ts),Curtis Fuller(tb),Ray Bryant(p),Paul Chambers(b),Art Blakey(ds)

ゴルソンin’三部作の2枚目。ブレイキーの参加でJM的な躍動感

ゴルソンin’三部作の2枚目。ドラムにブレイキーを迎え、トランペット抜きのJMになり、ブレイキーのおかげか前作よりも躍動感を感じる。ブライアントもエレガントさよりもブルージーな面が出ている。(hand)

これも2管なのでフラーの出番も多く、なかなかいいソロが聴ける。オリジナルの2曲はなかなかよいけど、ゴルソンらしいヒット要因のある曲調ではない。2曲目のドラムブギはブレイキーをフューチャーするための曲と思うが、ブレイキーのソロは意外にもそんなに長くないのが不思議だ。 でも全般的には聴きやすい愛着がもてるアルバムだ。(しげどん)

 

ブルーノート東京でサインをもらいました。

ここに至る思い出話は「The Other Side of Benny Golson」 の項を参照ください。



Blue Soul/Blue Mitchell ブルー・ソウル/ブルー・ミッチェル

1959年9月

Riverside

おすすめ度

hand★★★☆

Blue Mitchell(tp),Curtis Fuller(tb:except③④⑦),Jimmy Heath(ts:except③④⑦),Wynton Kelly(p),Sam Jones(b),Philly Joe Jones(ds) 

「ビッグ・シックス」に続き、ブルー・ミッチェルのリーダー盤に参加

ブルー・ミッチェルのリーダー第3作。シルバー・クインテットで「ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ」を吹き込んで1月後の絶好調時の録音。この盤は、ゴルソン作の①マイナー・バンプから始まる。ミッチェル、フラー、ジミー・ヒースの3管で迫力ある幕開けだ。直前録音のファーマーの「ブラス・シャウト」、フラーの「ブルース・エット」にも入っている曲で、3回ともフラー入りなのだが、冒頭曲にするには、かっこいい曲だが、多少、手垢感はある。ゴルソン曲を2曲も入れ、ゴルソンのアレンジ曲も2曲入っているのは、ミッチェルがゴルソンのアレンジを気に入っていたかららしい。3曲がケリーのトリオとのワンホーンだが、「ブルース・ムーズ」までの魅力は感じなかった。3管ともに控えめな人たちで、その中ではフラーが一番目立つ気がする。(hand)



Opus De Blues/Frank Wess オパス・デ・ブルース/フランク・ウェス

1959年12月8日

Savoy

おすすめ度

hand★★★

Frank Wess(fl,ts),Thad Jones(tp),Curtis Fuller(tb),Charlie Fowlkes(bs),Hank Jones(p),Eddie Jones(b),Gus Johnson(ds)

フランク・ウェスの発掘盤に参加

タイトルの似たミルト・ジャクソンの「オパス・デ・ジャズ」はこの会のミルトのオススメ盤第一位となった有力盤。そこで強力なフルートを聞かせたのがフランク・ウェスだ。ウェスはテナーを主楽器にしたフルートの名手でもある。ビッグバンドアレンジも得意でベイシー亡き後にベイシー楽団を率いたこともある。この盤は、録音から20年以上後の84年に今とは違う超ダサいジャケでLPが発売された。何と私はこの盤を新譜として買い、失敗したと思い棚にしまった記憶がある。ウェスは、ここでテナーもフルートも吹いていて、CD化でジャケもマシになり、改めて聞くと内容はまずまずというところか。フラーは自作曲③ブープ・ぺ・ドゥープでのソロがいい。(hand)



Gettin’ With It/Benny Golson ゲティン・ウィズ・イット/ベニー・ゴルソン

1959年12月23日

New Jazz

おすすめ度

hand★★★★

Benny Golson(ts),Curtis Fuller(tb),Tommy Flanagan(p),Doug Watkins(b),Art Taylor(ds)

ゴルソンin’三部作の3枚目。絶頂期のゴルソンをフラーが好サポート

in’三部作の3枚目。ゴルソンのソロイストとして絶頂期の盤だと思う。威勢のいいソロを展開している。フラーもそれに応えている。(hand)



Meet The Jazztet/Art Farmer & Benny Golson ミート・ザ・ジャズテット/アート・ファーマー & ベニー・ゴルソン

1960年2月6,9,10日

Argo

おすすめ度

hand★★★☆

しげどん ★★★☆

Art Farmer(tp),Benny Golson(ts),Curtis Fuller(tb),McCoy Tyner(p),Addison Farmer(b),Lex Humphries(ds)

ファーマー&ゴルソンのジャズテットのデビュー盤に参加

2020年現在、91歳でも元気なゴルソンだが、30歳の1959年は録音数も多く、この盤は演奏内容も元気だと思う。ゴルソンは早生まれでファーマーは同級生。フラーは5学年下だ。ファーマーは亡くなったが、2人現役なのはすごいことだ。フラーはジャズテットのデビュー作のこの盤のみ参加し、次作からはトム・マッキントッシュに代わる。(hand)

ファーマーのソロは素晴らしいが、全体的には普通のセッションの域を出ていない気がする。ジャズテットは賛否両論があるグループだが、良くも悪くもアレンジャー兼音楽監督であるベニーゴルソンらしさがでているので、このデビュー盤がグループの代表作として紹介されることが多いんだと思う。(しげどん)



Take A Number From 1 to 10/Benny Golson テイク・ア・ナンバー・フロム1トゥ10/ベニー・ゴルソン

1960年12月13,14日,1961年4月11日

New Jazz

おすすめ度

hand★★★☆

しげどん ★★★☆

Benny Golson(ts),Art Farmer(tp10),Bernie Glow(tp 9,10),Freddie Hubbard(tp 5–7),Nick Travis(tp 8–10),Willie Ruff(french horn 8–10),Bill Elton(tb 8–10), Curtis Fuller(tb 6,7),Hal McKusick(as 8–10),Sol Schlinger(bs 8–10), Sahib Shihab(bs 7),Cedar Walton(p 4–7),Tommy Williams(b 2–10),Albert Heath(ds 3–10)

1曲ずつ人数が10人編成まで増えていくゴルソンの企画物に参加

最初ゴルソンのソロテナーに始まり、2曲目はベースとのデュオと、人数が10人編成まで1曲ずつ増えていくタイトルどおりの企画物の盤。フラーは6、7曲目に参加していて、⑥スイング・イットではソロもある。内容はお遊びではなく、まともなジャズだ。(hand)

ソロから始まり10人編成までつなげる企画は、なにかゲテモノ的な印象があったが、内容はまともなジャズ。ソロ、デュオなどの演奏だけなら、アルバムとして通して聴くのはしんどいのだが、一曲づつなら変化を感じながら面白く聴ける。そのあとでカルテット、クインテット、と順次広がっていく感じは悪くないと思う。楽しく聴ける一枚だ。(しげどん)



Rights of Swing/Phil Woods ライツ・オブ・スイング/フィル・ウッズ

1961年1月26日,2月10日

Candid

おすすめ度

hand★★★★

Phil Woods(as),Benny Bailey(tp),Julius Watkins(french horn),Willie Dennis(tb 5),Curtis Fuller(tb 1-4),Sahib Shihab(bs),Tommy Flanagan(p),Buddy Catlett(b),Osie Johnson(ds 1-4),Mickey Roker(ds 5)

フィルウッズの力作に重要なソロイストとして参加するフラー

ストラヴィンスキーの「春(Spring)の祭典」をもじった「スイングの祭典」。フィル・ウッズが盤1枚組曲として作った力作。この手の盤は気負い過ぎて疲れるものが多いのだが、この盤は程よい気負いで(笑)、最後まで飽きずに聞ける。8人編成なのでフラーは多くのソロイストがいる中の重要なソロイストの1人として活躍する。(hand)



複数タイトルをまとめたお買い得盤↓



Great Wide World Of Quincy Jones :Live! グレート・ワイド・ワールド・オブ・クインシー・ジョーンズ・ライヴ!

1961年3月10日

Mercury

おすすめ度

hand★★★★

Quincy Jones(arr, conductor),Benny Bailey, Freddie Hubbard, Paul Cohen, Rolf Ericson(tp),Curtis Fuller, Melba Liston, Åke Persson(tb),Julius Watkins(french horn),Phil Woods,Joe Lopes(as),Budd Johnson, Eric Dixon(ts),Sahib Shihab(bs),Les Spann(ac-gr,fl),Patty Brown(p),Buddy Catllet(b),Stu Martin(ds)

豪華メンバーによるクインシーの欧州公演に参加

同名タイトルでジャケも似たスタジオ盤があり、こちらはタイトルに「ライブ!」の付いたライブ盤。フラーはライブ盤のみ参加。スタジオ盤がジャジーでなかったのに対し、ライブ盤はとてもジャジーで、ベイシー楽団のようにスイングするからジャズは不思議だ。クインシーの監視が厳しいスタジオより、単なる指揮者のクインシーのほうがみんな伸び伸びしているのかもしれない。フラーは②バンジャルカでソロをとる。(hand)



Jazz Messengers(A La Mode)/Art Blakey ア・ラ・モード/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1961年6月13,14日

Impulse

おすすめ度

hand★★★☆

しげどん ★★★☆

Art Blakey(ds),Lee Morgan(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Bobby Timmons(p),Jymie Merritt(b) 

フラーがJMに加わった記念すべき盤。しかも冒頭曲ア・ラ・モードはフラー作

当時、想像だが、JMはマイルスバンドに次ぐ人気バンドだったと思う。そのJMにフラーが招かれ3管編成となった記念すべき盤。この後約2年間在団し、10枚以上の録音を残している。この盤まではトランペットはモーガンだが次盤からハバードになり、テナー&音楽監督はゴルソンがショーターになっているので、バンドカラーが大幅に変わりモーダルな演奏が増えてくる。モーダルとブレイキーの相性ってどうなの?という疑念はあるがショーター人気ゆえか人気は高い。個人的にはブレイキーの暴れ太鼓的な要素がもう少しあってもいいと思う。フラー作の①ア・ラ・モードは名曲。盤の英タイトルは「ジャズ・メッセンジャーズ」だが日本タイトルは「ア・ラ・モード」となっているくらいだ。(hand)

冒頭の曲=アラモードはJMにトロンボーンとして初加入したフラーのオリジナルで、シンプルながら勢いのあるいい曲、いい演奏なので、これだけでも聴く価値がある一枚だ。アラモードは正式タイトルではなく、ジャケットには「Impurse!!!!!Art Blakey!!!!!Jazzmessengers」とだけ記載されている。なんともテキトーな感じだが、ブルーノート専属のブレイキーがインパルスに録音したのが「!」な事だったのだろうか?2曲め以降は聴きなれない曲もあるがオリジナルは一曲もなく、ウエイン・ショーターのカラーもあまり出ていない。ソロとしては悪くないが、普通のハードバップになっている。(しげどん)



At Newport '61/Quincy Jones クインシー・ジョーンズ・アット・ニューポート’61

1961年7月3日

Mercury

おすすめ度

hand★★★★

Quincy Jones(arr,conductor),Phil Woods,Joe Lopes(as),Jerome Richardson,Eric Dixon(fl,ts),Pat Patrick(bs),Jimmy Nottingham,Jimmy Maxwell,John Bello,Joe Newman(tp),Julius Watkins(french horn),Curtis Fuller,Melba Liston,Britt Woodman,Paul Faulise(tb),Les Spann(fl,gr),Patty Brown(p)Art Davis(b),Stu Martin(ds)

クインシーの大編成バンドでニューポートに参加

④エアメール・スペシャルにフラーのソロはあるが、それほど長くはない。このバンドのスターはフィル・ウッズのアルトだ。クインシーの名曲③イブニング・イン・パリのウッズのソロは泣ける!それ以外は、「グレート・ワールド・ライブ」とあまり変わらない。(hand)



3 Blind Mice/Art Blakey & The Jazz Messengers スリー・ブラインド・マイス/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1962年3月18日,1961年8月17日

United Artists

おすすめ度

hand★★★★☆

しげどん★★★★

Art Blakey(ds),Freddie Hubbard(tp),Curtis Fuller(tb),Wayne Shorter(ts),Cedar Walton(p),Jymie Merritt(b) 

モーダルになったJMの62年のライブで活躍するフラー

モーダルになったJMの62年のライブ2枚組。ライブなので余りキッカリとした音づくりにならず、ブレイキーらしいドラムの本領が発揮されている。Disc1⑥ホエン・ライツ・アー・ロウなどでフラーの素晴らしいソロが聞かれる。コンプリート化で追加されたDisc2もなかなか良く、⑥プロミスド・ランドはフラーのソロがいい。ブレイキーのフロントを煽るようなドラムがDisc2のほうが聞かれる。2⑥⑦は1年前の61年録音(hand)

ライブだが端正なイメージの作品で、拍手の部分がないとスタジオ録音のようだ。出番としてはフレディ・ハバードのほうが目立つが、フラーもいいソロをしている。Vol.2の音源はかって「live at renaissance club」というタイトルでアナログ盤がキング・レコードから発売されていた。(しげどん)



Bash!/Dave Bailey バッシュ!/デイブ・ベイリー

1961年10月4日

Jazz Line

おすすめ度

hand★★★☆

Dave Bailey(ds),Kenny Dorham(tp),Curtis Fuller(tb),Frank Haynes(ts),

Tommy Flanagan(p - trio 4,7,10),Ben Tucker(b)

ドラムのデイブ・ベイリーのリーダー盤に参加

マリガンのピアノレスカルテットで知られるデイブ・ベイリーのリーダー盤。この時期、何枚かリーダー盤を出していて、どれも水準以上の出来だ。ベイリーのドラム自体は強烈な個性はないが、フロントをうまく盛り立てるタイプだ。この盤は、ドーハム、フラーにテナーのフランク・ヘインズの3管だ。ヘインズだけがあまり知られぬ人だ。この盤ではテナーがかなりフィーチャーされ、ヘインズもいいプレイはしているのだが個性は今一つだと思う。フラーのプレイはまずまずで、弾けるようなプレイは聞かれない。ベイリーの知名度が低いのか、ドーハム「オスモシス」、トミフラ「トリオ&セクステット」として発売されたこともあるかわいそうな盤。(hand)