Sonny Rollins ソニー・ロリンズ 主要作品ディスクガイド:リーダー作編 1       デビューから1956年まで

ここでは、ロリンズ前期のうち、さらに前半の作品群を紹介していきます。

40年代からソロ録音の記録はありますが、自身のスタイルを確立させたこの時期の最初の傑作は初リーダー作であるSonny Rollins With MJQといわれています。この時期のマイルスやモンクの作品へのサイド参加作にも注目すべきものがありますが、直後に最初の雲隠れをしてしまいます。

前期の代表作を集めたお買い得盤

その後55年に復帰し、ローチ・ブラウンのコンボへの参加を経て、傑作サキソフォン・コロッサスなど、モダンジャズのアドリブの極地と言われる絶頂期を迎えます。ここではその絶頂期である1956年までの作品から主なものをピックアップしています。


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タイトル下の日付は録音日です。  パーソネルも記載しています。


Sonny Rollins With MJQ                                                                                ソニーロリンズ ウィズ モダンジャズカルテット

1951年1月17日

※1951年12月17日

※※1953年10月7日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★★★

しげどん ★★★★☆

ショーン ★★★★★

Sonny Rollins(ts)、Miles Davis(p),Percy Heath(b),Roy Haynes(ds)

※Sonny Rollins(ts)、Kenny Drew(p)、Percy Heath(b)、Art Blakey(ds)

※※Sonny Rollins(ts)、Milt Jackson(vib)、John Lewis(p)、Percy Heath(b)、Kenny Clark(ds)

驚異的な完成度に驚く堂々たる初リーダー作

冒頭からロリンズが快調に吹きまくり、気合いの入ったデビュー盤であることを感じる。MJQのドラムスがケニー・クラーク時代で正解、この荒々しい感じがいい。センチメンタル・ムードのくつろいだ演奏もデビュー盤とは思えない余裕ぶり。後半は、リズム隊がドリュー・トリオに交替し、演奏もビバップ風になるが、いい出来であることに変わりはない。(hand)

小気味良くキレの良いリズムに乗って、ロリンズが軽快に飛ばしている。短めの曲が多いが、逆に無駄が無く感じられて、完成度が高いアルバムだ。これが初リーダー作とは恐れ入る。どうしてこうもメロディアスなフレーズがポンポンと出てくるのだろう!やはり巨人とは初めからこういうものなのか? In the sentimental mood の落ち着いたスローなバラードはバイブレーションの効いた息遣いの秀曲で、アップテンポの曲に挟まれて、より惹き立つ。またOn a Slow Boat to Chinaの淀みなく流れる美しいメロディーも大好きだ。(ショーン)

初リーダー作を含む録音だが堂々とした作品。メロディアスなアドリブの特徴がよく現れていて、スタンダードもロリンズのオリジナルも、彼のアドリブの素晴らしさを味わう格好の素材になっている。(しげどん)



Moving Out/Sonny Rollins ムーヴィング アウト/ソニー・ロリンズ

1954年8月18日

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★

しげどん  ★★★☆

Kenny Dorham(tp),Sonny Rollins(ts),Elmo Hope(p),Percy Heath,Art  Blakey(ds)

ロリンズの初期作に参加したドーハムは早くも自己表現を確立。

ロリンズ盤にドーハムが共演している意味が感じられない盤。ブラウン亡き後のローチ5のメンバーというだけだ。リバーサイドのドーハム盤にロリンズが入ったことの返礼かもしれない。①②はローチ5風で少し慌たゞしい。③シルクNサテンは、ドーハムが遠くで小さく吹くだけのロリンズ中心のバラード。ドーハムの入らないモンクとの⑤モアザンユーノウが一番いいと思う。(hand)

54年という録音を考えるとビバップの香りがするのは仕方がない。若々しさがあふれるロリンズに対し、ドーハムはすでに老成されたベテランのような味わいがある。(しげどん)



Work Time/Sonny Rollins      ワークタイム    ソニーロリンズ

1955年12月2日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★★☆

しげどん ★★★★

ショーン ★★★★

Sonny Rollins(ts),Ray Bryant(p),George Morrow(b),Max Roach(ds)

ロリンズらしいアドリブ芸術の完成形に到達

ドラムソロに続き快調に滑り出すロリンズ。10インチの作品をカップリングした前作と異なり、12インチ時代となり1曲の長さが伸び、ロリンズは長めのアドリブをするようになっている。大名盤サキコロに連なる尾根にたどり着いた感がある。イッツオーライトウィズミーは必聴(hand)

軽やかでキャッチーなフレーズを駆使して、メロディアスに歌うロリンズ、特に4曲目のthere are such thingsでのストーリーを感じさせるプレイは素晴らしく、9分以上のバラードだが、全く飽きずに聴き込める。(ショーン)

完成形になったロリンズが、暗い感情表現を廃して、あくまでもドライにロリンズの真骨頂であるスタンダードでの歌心あるアドリブを展開する。このユーモラスな明るさは好みが分かれるところ ジャケットデザインが拙いのが残念。(しげどん)



Sonny Rollins Plus 4     ソニーロリンズ プラス フォア

1956年3月22日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★

しげどん ★★★★

ショーン ★★★★

Clifford Brown(tp),Sonny Rollins(ts),Richie Powell(p),George Morrow(b),Max Roach(ds)

ロリンズらしいオリジナルでブラウニーとの共演を楽しめる

ヴァルス・ホットはロリンズらしい耳になじみやすいメロディなのでジャズファン以外にも受けそうだ。クリフォード・ブラウンとの共演時のロリンズは不調と言われるが、この作品ではそんな感じはしないし、ロリンズの曲とスタンダードが適度にレイアウトされた楽しめる盤。(しげどん)

天才クリフォードブラウンとソニーロリンズの競演は、kiss  and run〜I feel a song comin' onとスピードに溢れる演奏だが、ブラスハーモニーはやや雑に聴こえる。最後のpent-up houseは、それぞれのソロパートで、雰囲気の違いを出して、これはこれで面白い。(ショーン)

1曲目のワルツがあまり好感を持てないので、盤自体の好感度もあまり高くならない。ロリンズ・プラス・フォーとはなってはいるが、実際にはブラウン=ローチ盤なので、ローチのドラムが耳につくのも原因だと思う。(hand)



Tenor Madness   テナー・マッドネス

1956年5月24日

Prestige

おすすめ度

hand     ★★★

しげどん ★★★

ショーン ★★★★

Sonny Rollins(ts)、Red Garland(p)、Paul Chambers(b)、Philly Joe Jones(ds)、John Coltrane(ts)

コルトレーンとの生涯唯一の共演記録

あくまでもロリンズがマイルスのレギュラーコンボのリズムセクションを借りたワンホーン作で、B面の方がジャズ的には魅力がある。表題曲は両巨頭唯一の共演という歴史的な価値はあるが、タイトル名から想像するような強烈なバトル感はない。(しげどん)

まず、アルバム題名曲の1曲目のtenor madnessでは、ソニーロリンズとあのジョンコルトレーンという、テナー夢の共演が聴ける。まだ、当時駆け出しのコルトレーンとの才能のほとばしりは必聴。一転して次の曲は、恋の哀しみをロリンズが、情感たっぷりと歌いあげる。my reverieでのロリンズのアドリヴは本当に素晴らしく、絶妙の間の取り方で、聴き手をロリンズワールドへとグイグイ引き込む。(ショーン)



Saxophone Colossus/Sonny Rollins                                                                        サキソフォン・コロッサス/ソニー・ロリンズ

1956年6月22日

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん ★★★★★

ショーン ★★★★★

Sonny Rollins(ts),Tommy Flanagan(p),Doug Watkins(b),Max Roach(ds)

モダンジャズ最高の文句なしの名盤中の名盤。全曲が完璧な素晴らしさ。

高校生の時に生まれて初めて買ったLPがコレ。収録曲が全曲名演で完璧な作品。2曲目のYou don’t know what love is に高校の時はまり、何度も何度も聴いたものだった。本格的にジャズにのめり込んでいった思い出のレコード。

盟友クリフォード・ブラウンの交通事故死はこの録音の三日後の出来事だった。

(しげどん)

ジャズの最高名盤の文句ない一枚。緊張感もくつろぎも併せ持った素晴らしい内容。全曲ともに必聴盤(hand)

ロリンズのベストアルバム、というか、モダンジャズのNo.1アルバム。A①独創的で印象深いフレーズで始まるSt.Thomas。ローチのドラミングが兎に角素晴らしい。曲の展開とロリンズのアトリヴが完璧に織りなす名曲名演。②うって変わって官能的なYou don't know what love is。エンディングが特に素晴らしく、感動する。③Strode Rodeもアップテンポの中に独創性満載。ここでもローチの活躍が目立つ。B①Moritatインプロビゼーションのお手本とも言えるロリンズのプレイ。意外性がありながらも必然性のあるフレーズがピタリとハマっていて、堪らない。②最後は、新鮮味と独創性に満ちた作品。静謐な中にしっかりとした骨を感じる。ベースのワトキンスがいい仕事をし、フラナガンのピアノとローチのドラムは、優しく語りかける。余韻を残し、最後に相応しい。(ショーン)



Plays For Bird/Sonny Rollins/ソニー・ロリンズ・フォー・バード

1956年10月5日

Prestige

おすすめ度

hand  ★★★★

Kenny Doham(tp),Sonny Rollins(ts),Wade Legge(P),George Morrow(b),Max Roach(ds)

ドーハムが参加したマックス・ローチ・クインテット

ロリンズのリーダー盤ではあるが、実際にはマックス・ローチ・クインテットだ。ローチ=ブラウンのブラウンが亡くなり、ケニー・ドーハムが加入している。この時期、エマーシーからはローチ名義、プレスティッジからはロリンズ名義で盤が出ている。アナログ時のA面全体がパーカー愛奏曲の①メドレーで7曲でできている。ロリンズ~ドーハム~ピアノのウェイド・レグ~ロリンズ~ドーハム~レグ~全員と3人のソロイストが交替でいい演奏をする。以前聞いたときはぴんと来なかったが、久々に聞いていいと思った。アナログB面は特段パーカー関連とは思われない。②キッズ・ノウはロリンズ作のワルツ。ローチ5はワルツ曲が好きだが私はあまり好みではない。③貴方の顔にはマイ・フェア・レディの素晴らしいバラード。④ハウス・アイ・リブ・インは、ゆったりした曲で「ソニー・ボーイ」に収録されていたが、CDでは同日録音のこの盤にプラス1として収録された。(hand)



Sonny Boy/Sonny Rollins ソニー・ボーイ/ソニー・ロリンズ

1956年10月5日

1956年12月7日

Prestige

hand  ★★★☆

Kenny Doham(tp),Sonny Rollins(ts),Wade Legge(p),George Morrow(b),Max Roach(ds)

「トゥア・デ・フォース」からアール・コールマンのボーカル入り2曲を除いた4曲に、1つ前のセッション「プレイズ・フォー・バード」のアウトテイク1曲(ザ・ハウス・アイ・リブ・イン)を追加した全5曲のインスト盤。発売は6年後の62年。ロリンズの中では多分最高速度吹き曲の②ビー・クイックが入っている。ピアノはケニー・ドリューだが、クリフォード・ブラウンとリッチー・パウエル亡き後のローチ・クインテット的なバンドだ。ローチがロリンズと速度に挑戦したのだと思う。調べてみたら、56年のロリンズは、「テナー・マッドネス」以外は全てローチと組んでいる。「サキコロ」とモンク「ブリリアント・コーナーズ」だけは奇跡的な超名盤だが、後は少しドラムのうるささが気になる。「プレイズ・フォー・バード」からの④ザ・ハウス・アイ・リブ・インのくつろぎのある演奏は盤に落ち着きをもたらしている。(hand)



Tour de Force/Sonny Rollins  トゥア・デ・フォース/ソニー・ロリンズ

1956年12月7日

Prestige

hand   ★★★

Sonny Rollins(ts),Kenny Drew(p),George Morrow(b),Max Roach(ds)

プレステッジのラスト・セッション。アール・コールマンのボーカルが2曲入っている。「ソニー・ボーイ」と4曲がかぶる盤。この4曲は慌たゞしい急速調の曲が多いので、コールマンのバラード2曲は悪くなく、落ち着く材料にはなるが、この部分をテナーで吹いてくれていたらなぁ、と思ってしまう。(hand)



Sonny Rollins Vol.1     ソニー・ロリンズ 第一集

1956年12月16日

Blue note

Sonny Rollins(ts)、Donald Byrd(tp)、Wynton Kelly(p),Gene Ramey(b),Max Roach(ds)


おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん ★★★☆

ショーン ★★★★

いきなりロリンズらしからぬブルーノート風なイントロから始まるが、ソロはいつものロリンズになる。ただ、レーベルのカラーなのか、ソロに印影がある気がする。ロリンズは、悪くはないが前後の名盤に比べると、気合いが不足している。ドナルド・バードは悪くはないが、この盤での必然性は感じない。(hand)

ブルージーな曲decisionから始まるロリンズのテナーは渋く唄い、抜けの良いドナルドバードのトランペットと、うまくマッチングしている。3曲目のhow are things in では、ピアノのウィントンケリーがいいアシスタント業務をこなしている。このようなしっとりとしたバラードもロリンズの大きな魅力なのだ。(ショーン)

リンズのオリジナルが多くて彼の特色が出た作品と思いきや、印象はVol.2より劣る。一人一人の演奏は悪くないのに、ジャズ的な爆発感が最後までない。マックス・ローチノ全体を鼓舞するパワーにやや不満を感じる。(しげどん)