Sonny Rollins ソニー・ロリンズ 主要作品CDディスクガイド:リーダー作編 5(後期1)1972年から1981年まで

72年の「ネクスト・アルバム」でロリンズは3度目の雲隠れから復活します。その後、2017年に正式に引退宣言し、現在に至ります。後期前半のこの時期は、世間ではフュージョンが大流行し、ロリンズもその波に乗ろうとしますが、うまく乗れたかどうかは微妙なといえます。このページでは、フュージョン化に突き進む時期のロリンズをhand氏がコメントします。


中期ロリンズは、まさに食わず嫌いで、聞いてみたら、悪くないことがわかった。正規盤はイマイチでも、海賊盤には好調なロリンズがいた。そして、エレクトリック・マイルスと同様に聞く気になれなかったのが後期ロリンズだ。重過ぎるロックとわかっていたマイルスとは逆に、軽過ぎるフュージョンのロリンズを聞きたくなかったのだ。しかし、今回、もしかしたら新たな発見があるかもしれない、という微かな期待を持って、後期の全部聞きに挑戦した。(hand)


NEXT ALBUM/Sonny Rollins  ネクスト アルバム/ソニー・ロリンズ

1972.7.14 & 27

Milestone

おすすめ度

hand   ★★★☆

Sonny Rollins(ts,ss), George Cables(p,el-p), Bob Cranshaw(b,el-b), Jack DeJohnette,David Lee(ds), Arthur Jenkins(conga,perc)

マイルストーンに移籍し、意欲的な後期の1枚目

マイルストーンに所属したロリンズ。正規録音で6年ぶり、非正規でも4年ぶりの後期の1作目は、コンガ入りの8ビート曲①プレイン・イン・ザ・ヤードから始まる。ジョージ・ケイブルスのエレピと、ボブ・クランショウはこの曲のみエレベだ。スタンダード②ポインシアーナは、ロリンズ初のソプラノだ。③エブリホエア・カリプソは、ロリンズらしいカリプソで、セント・トーマスから続くロリンズの路線のひとつでなかなかいい。④キープ・ホールド・オブ・ユアセルフは、正統派4ビート。ピアノもベースもアコースティックだ。ジャズの雰囲気が濃くなりうれしい。スタンダード⑤スカイラークは、ジャジーではあるが、過去のロリンズと比べるとポップな感じがする。全体にロリンズらしいゴツゴツしたカドがとれマイルドな感じがする。(hand)



HORN CULTURE/Sonny Rollins  ホーン・カルチャー/ソニー・ロリンズ

1973.6 & 7

Milestone

おすすめ度

hand   ★★★☆

Sonny Rollins(ts,ss), Walter Davis Jr.(p,el-p), Yoshiaki Masuo(gr), Bob Cranshaw(el-b), David Lee(ds), Mtume(perc,p)

後期2作目から増尾好秋が加入し、しばらく在団する。

増尾好秋が加入した最初の盤。マイルストーン移籍してから、ロリンズのプレイそのものはあまり変わってはいないのだが、何となくポップな雰囲気が漂い、サックスの音色からゴツゴツ、ガリガリとした感じが消え、多少マイルドになっていると思う。録音のせいか、フュージョン時代に合わせたか、両方かもしれない。増尾のギターは、なかなか捉え所のないスタイルだと思う。チャーリー・クリスチャンから続くジャズギターの正統派には思えず、かと言ってロックを感じる訳でもない。前作のディジョネットや本作のエムトゥーメの加入など、もしロリンズがマイルス的な音作りをしようとしていたなら、増尾はジョン・マクラフリンやピート・コージー又はレジー・ルーカスのようでなければならなかった。マイルドなマイルストーンの録音はこれに応えていない音作りだと思う。②サイスは途中からソプラノになる。ロリンズのソプラノは悪くはないが特段良くもない。⑤ラブ・マンはこの盤では熱くて私好みだが、フェイド・アウトは私の嫌いな終わり方で残念。(hand)



NEWPORT JAZZ FESTIVAL 1973/Sonny Rollins(bootleg)

1973.6.30

Equinox

おすすめ度

hand   ★★★★

Sonny Rollins(ts,ss), Walter Davis Jr.(p,el-p), Yoshiaki Masuo(gr), Bob Cranshaw(el-b), David Lee(ds)

「ホーン・カルチャー」録音中にニューポートに出演

「ホーン・カルチャー」録音中の同メンバーでのニューポート出演の海賊記録。豪雨のような最初の拍手でロリンズの人気の凄さがわかる。スタンダードの①ラブ・レターから始まる。過去に近い感じで私には好感だ。②サイアスは「ホーン・カルチャー」からで、始めからソプラノを吹いている。スタジオ盤よりもロックっぽい感じがする。③アルフィーのテーマと④グレーター・ラブは、60年代とあまり変わらないロリンズがいる。この時期のロリンズが目指していたのは②的な音かと思うが、①③④のような従来型がうれしい。音は若干悪いが、許容範囲だと思う。(hand)



IN CONCERT CHATEAUVALLON, 1973/Sonny Rollins・Jackie McLean(bootleg)

1973.8.21

The Jazz Collection

おすすめ度

hand   ★★★☆

Sonny Rollins(ts,ss), Walter Davis Jr.(p,el-p), Yoshiaki Masuo(gr), Bob Cranshaw(el-b), David Lee(ds)

ニューポートに続き同メンバーで欧州に渡った模様

ロリンズ2曲、ジャッキー・マクリーン1曲の南仏シャトーヴァロンでのフェスの海賊録音。「ニューポート」同様に「ホーン・カルチャー」のメンバーだ。曲は①セント・トーマスと②アルフィーのテーマ。内容はニューポートとあまり変わらないいい出来だが、音は少し悪い。入手困難と思われる。さらに入手困難な「ザ・ミーティング」という海賊盤CD(未聴)には8月25日のオランダでの2曲が収録されているようだ。(hand)



IN JAPAN/Sonny Rollins  ソニー・ロリンズ・イン・ジャパン

1973.9.30

Milestone

おすすめ度

hand   ★★★★

Sonny Rollins(ts,ss), Yoshiaki Masuo(gr), Bob Cranshaw(el-b), David Lee(ds), Mtume(perc)

増尾の凱旋公演と位置付けられた来日公演

「ホーン・カルチャー」メンバーからウォルター・デイビスが抜けたピアノレスでの来日公演。中野サンプラザでの録音。現在はDisc 2が追加されコンプリート化したCD2枚組。ピアノレスで増尾のギターが重要になっただけでなく、増尾の凱旋公演とされたらしく、ギターが燃えている。1①ポワイは多分、この盤だけなので価値がある。 1②セント・トーマスや1④モリタートを演奏しているが、日本人へのサービスだと思われる。2①サイアスは「ホーン・カルチャー」からの曲でソプラノでの熱演だ。途中に出てくるフリーキーなトーンは、今聞くと違和感だが、時代には合っていたのだろう。(hand)



THE CUTTING EDGE/Sonny Rollins  ザ・カッティング・エッジ/ソニー・ロリンズ

1974.7.6

Milestone

おすすめ度

hand   ★★★☆

Sonny Rollins(ts), Stanley Cowell(p), Yoshiaki Masuo(gr), Bob Cranshaw(el-b), David Lee(ds), Mtume(conga,perc), Rufas Harley(bagpipes:⑤)

74年モントルー・フェスに出演した公式記録

74年のモントルー・フェスでの録音。前作までとあまり雰囲気は変わらない。ピアノにスタンリー・カウエルが入っているが、ロリンズがワンマンなので、カウエルらしい新しさはあまり出せていないと思う。新曲③ファーストムーヴスは8ビートで、後期のロリンズを象徴するような曲と演奏だ。マイルストーンのプロデューサーはリバーサイドで知られるオリン・キープニューズだ。リバーサイドの音はブルーノートやプレステッジに比べてワンホーンがあまり前に出てくる感じがしない。マイルストーンも同じで、ロリンズのワンマンでグイグイくる感じがうまく捉えられていないと感じる。ロリンズ自身は熱演しているのに、もったいないと思う。ラスト曲⑥スイングロースイートシャリオットは珍しいバグパイプとの共演だが、趣旨はわからない。イギリスよりもエスニックな感じがして、マイルスがシタールやタブラを入れたのに対抗したのだろうか。演奏に違和感はない。(hand)



FIRST MOVES/Sonny Rollins(bootleg)

1974.11.12

Jazz Door

おすすめ度

hand   ★★★☆

Sonny Rollins(ts,ss), Yoshiaki Masuo(gr), Rufas Harley(ss,bagpipes), Gene Perla(el-b), David Lee(ds)

旧ユーゴスラビア・ベオグラードへの遠征記録

「カッティング・エッジ」から4か月後のユーゴスラビア(現・セルビア)のベオグラードでのライブ海賊盤。ピアノレスに戻っている。「カッティング」でバグパイプを吹いていたルーファス・ハーレーがソプラノも兼任で入っている。ということは「カッティング」もゲストではなくメンバーだったのかもしれない。 ロリンズ自身もテナーだけでなくソプラノも吹いているので、判別は難しい。「カッティング」からの曲①ファーストムーヴスが重要ナンバーになっている。音はまずまずだ。バグパイプはラスト④アルフィーのテーマで吹かれる。意外性があり面白い。そして、クランショウから変わったジーン・パーラがベースソロもとる。増尾はこの盤がラストのようだ。(hand)



NUCLEUS/Sonny Rollins  ニュークリアス/ソニー・ロリンズ

1975.9.2-5

Milestone

おすすめ度

hand   ★★☆

Sonny Rollins(ts), Raul De Souza(tb), Bennie Maupin(ts,etc), George Duke(key), Blackbyrd McKnight, David Amaro(gr), Bob Cranshaw, Chuck Rainey(el-b), Eddie Moore, Roy McCurdy(ds), Mtume(conga,perc)

遂に100%フュージョン化したロリンズ

遂にフュージョンになってしまった。マイルストーンに移籍してからエレベが常用されるなど薄々その気配はあったが、この盤で100%フュージョン化してしまった。エレクトリック・マイルスのようなハードなフュージョンではなく軽いフュージョンだ。シンセのストリングス効果もより一層、盤を甘口にしている。辛口でいがらっぽいロリンズの音色にフュージョンは似合わないと私は思う。この盤では、私の知らない2人のギタリストがフュージョンというよりもロック的なギターを弾いている。ブラジルのラウル・ジ・スーザは私の好きなトロンボーンだが、なかなかいいプレイをしている。エムトゥーメ作のタイトル曲⑤はかなりのファンク度で、ジョージ・デュークがノリノリで、フュージョンからも飛び出している感じだ。(hand)



THE WAY I FEEL/Sonny Rollins  ザ・ウエイ・アイ・フィール/ソニー・ロリンズ

1976.8 & 10

Milestone

おすすめ度

hand   ★☆

Sonny Rollins(ts), Patrice Rushen(key), Lee Ritenour(gr), Alex Blake(b), Charles Meeks(el-b), Billy Cobham(ds), Bill Summers(conga,perc),

Oscar Brashear, Gene Coe, Chuck Findley(tp),George Bohanon, Lew McCreary(tb),Alan Robinson, Marilyn Robinson(French horn), Don Waldrop(tuba), Bill Green(piccolo,fl,ss)

完全なフュージョンのメンバーと演奏するロリンズ

40年以上前のフュージョン好きだった時代に、リー・リトナーが入っているということで聞いたが、全くいいと思えなかった記憶がある盤だ。今、聞き直してどうか。なぜこんな似合わない音楽をやっているのかとやはり思ってしまう。本人の意向なのか、プロデューサーのキープニューズの意向なのかわからない。フュージョン=融合のはずなのに、ロリンズだけがバックと融合していないように聞こえてしまう。中ではラスト⑦チャーム・ベイビーが一番融合していると感じた。次回聞くのが40年後だったら、もう生きてないと思うので、多分、今回が聞き納めだ。(hand)



ISLAND LADY/Sonny Rollins(未CD化・bootleg)

1976.11.12

Joker

おすすめ度

hand   ★★★☆

Sonny Rollins(ts), Mike Wolff(p), Aurell Ray(gr), Don Pate(b), Eddie Moore(ds)

フュージョン期でもライブではストレートなジャズを演奏

直前作「ザ・ウェイ・アイ・フィール」の冒頭に入っていた曲をタイトルにした海賊ライブ。未CD化だが、以前、日本盤LPがテイチクから出ていたのは驚きだ。中期の62年「ホワッツ・ニュー」に入っていた①ドント・ストップ・ザ・カーニバルから始まる。後期の重要レパートリーだ。カリブの血が入ったロリンズに合った自作曲で短めだが熱い演奏だ。②⑥は「ザ・ウェイ」から、タイトル曲も熱演している。③は「ネクスト・アルバム」から、④は次作となる「イージー・リビング」の先取り、⑤は前々作「ニュークリアス」から、そして⑦ストロードロードは超名盤「サキコロ」からで、素晴らしい。正規盤ではフュージョン期にあたるが、ライブでは比較的アコースティックな演奏をしていたのだと思う。多少音は悪いが、保守派には向いている内容だ。8ビート曲でもロリンズのグイグイくる感じの演奏をすれば、聞く方は惹きつけられるのだ。(hand)



EASY LIVING/Sonny Rollins  イージー・リビング/ソニー・ロリンズ

1979.8.3-6

Milestone

おすすめ度

hand   ★★

Sonny Rollins(ts,ss), George Duke(p,el-p), Charles Icarus Johnson(gr), Byron Miller, Paul Jackson(el-b), Tony Williams(ds), Bill Summers(conga)

スティービー・ワンダーのイズント・シー・ラブリーが聞けるフュージョン盤

やはり何と言っても曲がいいのだろう。スティービー・ワンダーの名曲①イズント・シー・ラブリーは、フュージョンというよりもほとんどポップスだが、この盤をこの時期の人気盤にしたと思う。ジョージ・デューク、ポール・ジャクソン、トニー・ウィリアムスという一流のメンツを集めた甲斐はあったのだろう。私自身はロリンズもこの曲も大好きだが、この演奏自体は昔も今も特段いいとは思えない。演奏全体がフュージョン的なスムースな感じになる中、ロリンズの音色はあえてかどうかわからないが、逆にいがらっぽく、美しさと反対に向かっている気がする。マイルスと違い、製作面で主導権を持たなかったと思われるロリンズなりの抵抗なのかな?とか思ってしまう。(hand)



DON'T STOP THE CARNIVAL/Sonny Rollins ドント・ストップ・ザ・カーニバル/ソニー・ロリンズ

1978.4.13-15

Milestone

おすすめ度

hand   ★★

Sonny Rollins(ts,ss), Mark Soskin(p,el-p), Aurell Ray(gr), Jerome Harris(el-b), Tony Williams(ds), Donald Byrd(tp,flh:5-10)

ドナルド・バードも参加しファンク化したロリンズ

ついにファンクになってしまった。ジョージ・デュークのせいかと思うと、キイボードはマーク・ソスキンだ。私の知るソスキンは真面目ピアノの感じだが、この頃は流行に乗っていたのかもしれない。2枚組ライブで、後半にはドナルド・バードが入りトランペットとの2管だ。バードとの共演はブルーノートの「ロリンズVol.1」(1956年)以来の22年ぶりになる。バードはこの時期、「ブラック・バード」(1972年) などジャズ・ファンクの先導的存在だったのだ。バードのせいかどうかわからないが、ロリンズがこんなファンクのライブをしていたのは事実だ。バラードもあるがあまり魅力を感じなかった。バードはこの時期、ほとんどストレートアヘッドなジャズをやっていなくて、自作もトランペッター兼プロデューサーみたいな状態で、昔のようなペット1本でモーガンと競い合っていた時代の面影はない。ただ、ライブのせいか、ロリンズの音が自然体な感じがするのは救いな点だ。(hand)



MILESTONE JAZZSTARS IN CONCERT  マイルストーン・ジャズスターズ・イン・コンサート

1978.9.22,10.15 & 22

Milestone

おすすめ度

hand   ★★★★

Sonny Rollins(ts), McCoy Tyner(p), Ron Carter(b), Al Foster(ds)

オールスターバンドで蘇ったジャズ魂

マイルストーン所属のリーダー4人による特別編成のオールスターバンドの78年秋のアメリカ・ツアーの記録の2枚組だ。この時期、同じマイルストーンというレーベルに所属したという理由で、ビッグネーム同士がオールスターバンドを組んでライブをするという、ファンにとってはとてもありがたい状況の出現だ。特にフュージョン、ジャズロック、ファンクなどが流行し、保守的なファンにはつらい時代だったが、自己バンドのメンバー以外のビッグネーム同士の共演には、共通語であるジャズを演奏するしかないという歓迎すべき状況が生まれてたのだと思う。ライブのせいかロリンズの音がとてもいい。フュージョン盤でのいがらっぽい音とは違う。前作のタイトル曲2⑤ドント・ストップ・ザ・カーニバルなどは、こちらのほうがずっと親しめる。ロリンズの参加は別テイクも含め約半分の7曲だが、十分に楽しめる内容だ。(hand)



DON'T ASK/Sonny Rollins  ドント・アスク/ソニー・ロリンズ

1979.5.15-18

Milestone

おすすめ度

hand   ★★☆

Sonny Rollins(ts,lyricon,p), Mark Soskin(p,el-p,syn), Larry Coryell(gr), Jerome Harris(el-b), Al Foster(ds), Bill Summers(conga,perc)

ラリー・コリエルと共演したフュージョン盤

「マイルストーン・ジャズスターズ」という保守的ジャズファンにとってオアシスのような盤の後は、またフュージョン盤に戻ってしまった。この盤のウリはラリー・コリエルとの共演だ。コリエルはアコギの参加が2曲で残りのエレキもあまりアタッチメントを付けていないようでその点は好ましい。逆にロリンズはテナーの音はいいのだが、一部エコーをかけたり、リリコンまで吹くなどちょい好ましくないところもある。テナーとアコギのデュオの③マイアイデアルは、今聞いても新鮮で素晴らしい。(hand)



LOVE AT FIRST SIGHT/Sonny Rollins  ラブ・アット・ファースト・サイト/ソニー・ロリンズ

1980.5.9-12

Milestone

おすすめ度

hand   ★★★

刺青の男/ローリング・ストーンズ

Sonny Rollins(ts,lyricon), George Duke(p,el-p), Stanley Clarke(el-b), Al Foster(ds), Bill Summers(conga,perc) 

フュージョン度が少し低下した感のある盤

80年代に入り、①リトル・ルーがカリプソで、もしかしたらフュージョンが終わったかと期待するが、②ドリーム・ザット・ウィがフュージョンで、しかもリリコンで諦めの境地となる。しかし、続く「サキコロ」からの③ストロード・ロードや、バラード④ソート・オブ・ユーはジャジーで好感となる。スタンリー・クラークがギター不在の代わりにギターライクなベースを張り切って弾いている。全体に引き続きフュージョン路線ではあるが、ギターがいなくなり、シンプルになった気はする。この盤でキープニューズのプロデュースが終わる。なお、この時期この盤とは全く関係ないロックのローリング・ストーンズの「刺青の男」(1979〜80)に、オーバーダブのソロでロリンズが3曲参加している。ハードな音色のロリンズは滑らかさの要求されるフュージョンよりもストーンズに適合しているように聞こえた。ただ、主役ではないので、前に出てくる録音ではない。(hand)



LIVE UNDER THE SKY '81/Sonny Rollins

1981.7.22

Equinox

おすすめ度

hand   ★★★★

Sonny Rollins(ts), George Duke(key), Stanley Clarke(b), Al Foster(ds)

ライブ・アンダー・ザ・スカイでのオールスター・ライブ

ジョージ・デューク、スタンリー・クラーク、アル・フォスターとオール・スターのライブ・アンダー・ザ・スカイでの来日公演。場所は、田園コロシアム。メンバーから見て、エレクトリックなリズム隊を想像したが、冒頭1①リトル・ルーはアコースティックから始まりまずはほっとする。ロリンズはかなり熱く燃えていて、19分近い長尺のカリプソ曲をソロを誰にも回さず1人で吹き切る。そのエネルギーはすさまじい。1②ストロード・ロードは残念ながらエレピに変わる。エレピとベースの長いソロが前半にある。後半はドラムの長いソロがあり、ラストをテナーで締める。1③ザ・ドリーム・ザットは、ソプラノとエレピの漂う感じの不思議な曲。2①ドント・ストップ・ザ・カーニバルは、いつもの感じでアコースティックで演奏される。2②イズント・シー・ラブリーは、ソプラノで始まるがテナーに持ち替えソロを吹く。デュークのピアノもいい。会場は盛り上がっている。2③セント・トーマス、2④モリタートと多分ファンサービスと思われる選曲で、会場は大喜びだ。最後に不要と思われる2④リトル・ルーが入っている。Amazonカスタマーレビューによれば、この音源はエアチェックで余った放送時間にレコードを流したものらしい。



NO PROBLEM/Sonny Rollins  ノー・プロブレム/ソニー・ロリンズ

1981.12.9-15

Milestone

おすすめ度

hand   ★★★

Sonny Rollins(ts), Bobby Hutcherson(vib), Bobby Broom(gr), Bob Cranshaw(el-b), Tony Williams(ds)

ボビー・ハッチャーソンとの共演でジャズ度が高まる。

ボビー・ハッチャーソンとの初共演。バイブとの共演は、初期のMJQとの2枚以来。ハッチャーソンのクールなバイブで、甘口のフュージョン感が弱まり、ジャズ度が高まったと思う。ハッチャーソン自身もブルーノートの新主流派時代の冷た過ぎる時期が終わり、ちょうどいい感じになっている。ドルフィの「アウト・トゥ・ランチ」での冷たいバイブと、とロリンズのカリブの熱い血はどう考えても合わない気がする。本作も基本的にフュージョン盤だが、フュージョン的演奏はカリプソ曲が多いので違和感が少ない。ボビー・ブルームは増尾と似たタイプのギターだと思う。ボブ・クランショウとトニーも戻っている。この盤からプロデュースがロリンズ自身と奥さんのルシール・ロリンズとなる。(hand)