1931年7月31日生まれのケニー・バレル。このページを作成中の2022年8月現在、91歳で存命です。ネット上には少々痩せましたが元気そうな誕生日の写真が出ていて何よりです。
モダンギターの開祖チャーリー・クリスチャンの流れを汲む正統派のギタリストで、ウエス・モンゴメリーと双璧をなしていると思います。ウエスが短期燃焼型の天才肌なのに対し、バレルは長期安定型の職人肌なので、人気的にはウエスに譲ることが多いのですが、長生きで盤も多いので、新ジ談的に全部聞きして埋もれた価値ある盤を発掘するべき人として最適な人とも言えます。(しげどん)
バレルのリーダー盤と共同リーダー盤約80枚、サイド盤の主なもの約60枚から、オススメ名盤を選定した。ウエスの太く短くの生涯とは対照的に、細く長くとでも言うべきバレルの生涯だが、そこにはキラリと光る名盤がいくつもあった。新ジ談3人の意見は今回はいつもに比べてかなり一致し、「ミッドナイト・ブルー」が圧倒的な支持を得た。
人気盤の渋い「バンガードの夜」と熱い「ファイブ・スポット」が選ばれたが、一般的に評価の高い「全貌」はあまり評価されなかった。
後期の中で健闘したのは、「ティン・ティン・デオ」、「ムーン・アンド・サンド」、「プライム」と、これも未CD化の「グルービン・ハイ」だった。(hand)
・新宿ジャズ談義の会 :ケニー・バレル CDレビュー 目次
Kenny Burrell(gr), Stanley Turrentine(ts), Major Holley(b), Bill English(ds), Ray Barretto(conga)
ブルーノートのルディ・ヴァン・ゲルダー録音のおかげもあると思うが、冒頭の①チトリンス・コン・カーンから、メンバーが一体となって聞く者に迫ってくる感じがある。激しい演奏ではないが、何かを訴えてくる熱があるのだ。名盤とはそういうものだと思う。スタンリー・タレンタインはボスと言われることはあってもビッグネーム扱いされることはない。本人のインタビューを読んだことがあるが、小難しいことは嫌いなようだ。ビッグネームとされる人は、小難しいことをやっている場合が多いと思う。そんなスタンリーがバレルの相棒として演奏して、素晴らしい盤が生まれているのが、ジャズの面白いところだ。ピアノレスで、コンガ入りのリズム隊もバッチリハマっている。ウエスとは違うバレルならではのディープなブルース感覚が発揮された盤だと思う。ブルースの得意なグラント・グリーンとも違う感覚だ。CDおまけ2曲はあっても邪魔にならない感じだ。(hand)
ケニー・バレルを代表する名盤。なんといってもこの雰囲気がいかにもMidnightというタイトルにピッタリ。一曲づつはいい曲が並んでいて、それでいて全体の雰囲気もいい感じに統一されているので、最後まで飽きさせない。スタンレー・タレンタィンも大人のテナーとしてうまみを発揮して、このような雰囲気にバッチリはまっている。(しげどん)
素晴らしいアルバムだ。1 曲 1 曲に世界観があり、聞き惚れてしまう。スタンリー・タレンタインのテナーがケニーとしっかり同調して、熱いブルースを展開しており、アルバム全体に安心感を与えている。加えてレイ・バレットの乾いたコンガの音色がケニー・バレルのしっとりとしたブルースと不思議な融合をし、他では味わえない感覚の JAZZ がここにある。そのあたりがこのアルバムを手放せない魅力となっている。(ショーン)
Kenny Burrell(gr), Richard Davis(b), Roy Haynes(ds)
アーゴからの盤。バレルの名盤と言われてきたが、以前はその良さがわからなかった。ウエスの名盤とされる盤と比べるとかなり地味だからだ。何度も聞いていると耳に馴染んでくる内容だ。リチャード・デイビスとロイ・ヘインズというとヘビーな組合せに思えるが、ここではギターを盛り立てる役割に徹している。CDおまけを途中に入れて悪くなる例が多いが、この盤の⑤⑥はいい感じで定着している。最新盤にはさらに4曲がラストに追加されていて、これもいい。①オール・ナイト・ロングは、アルバム「オール・ナイト・ロング」のタイトル曲と同一曲のようだが、元々メロディのはっきりしないブルースのせいか、なかなか同じ曲とは思えない。どうもこの曲のイントロが特段カッコ良くないのが盤全体のイメージにマイナスに働いているように思う。(hand)
とても端正なジャズ感あふれるライブ。hand氏の選盤リストの最初の一枚だったので、とてもとまどった。特に悪くはないが、全編ギターのトリオ編成なので、わりと大人しく地味な印象で味わい深いんだろうがケニー・バレルが好きな上級者向けの作品のように思える。聴き返すほどよくなる作品かもしれない。(しげどん)
黒く重たいブルースアルバム。ベースソロ、ドラムソロとも無駄が無く、キレのある all night long や cheek to cheek の出来が良い。また i'm a fool to want you のようなウェッティなギターを聴かせるバラードもあり、ケニー・バレルの魅力を存分に味わうことができるアルバムだ。店の聴衆のざわめきも良い背景音源として機能している貴重なライブ盤だろう。(ショーン)
①-③:1963.3.27
④:1963.4.2
⑤-⑨:1964.10.22
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★★☆
ショーン ★★★★☆
①-④:Kenny Burrell(gr), Seldon Powell(ts), Hank Jones(p,org), Milt Hinton(b), Osie Johnson(ds)
⑤-⑨:Kenny Burrell(gr), Stanley Turrentine(ts), Herbie Hancock(p), Ben Tucker(b), Bill English(ds), Ray Barretto(conga)
未CD化。世界初登場シリーズとして79年に日本で出て、なぜCD化されないのか不思議な盤の代表のような盤。ブルーノートで、バレルで、ハンコック(前半のみ)なので、出せば売れるはずだ。前半はスタンリー・タレンタインのテナーで「ミッドナイト・ブルー」と同じ顔合わせだが、デビュー間もない時期のハンコックが加わることで雰囲気は全く違う。それはそれでいい感じなのだが、未公表となったということは、アルフレッド・ライオンは気に入らなかったのだろう。スタンダードのB①ラブ・ユア・スペルがいい。B②以降のピアノがハンク・ジョーンズに変わってからのセッションも親しみやすい。バレル作のB④名曲ロイエなど、とてもいい感じだ。(hand)
メンバー的にはMidnight Blueの続編のようなイメージだが、この作品はピアノが入っていて、私はその編成のほうが好きだ。しかも前半はハービー・ハンコックで、これによりよりモダンなイメージのかっこ良さが加わった。この部分だけで言えば「Midnight Blue」よりカッコいいかも。後半のハンク・ジョーンズとセルダン・パウエルのオーソドックスなプレイは、前半に比べるとやや存在感が薄いが悪くはない。(しげどん)
小気味良いドラムのリズムと溢れ出るギターとテナーアンサンブルでハードバップを身体で堪能できるアルバム。前半はハービー・ハンコックのピアノが裏でしっかりとギターを支えていて、曲にキレを与えている。また後半のセッションはハンク・ジョーンズのオルガンとともにセルダン・パウエルの管楽器が雰囲気の演出に一役買っていてこれも良い。どの演奏もたいへんバランス良く仕上がっており、自然体でスイングできる好盤だ。(ショーン)
Kenny Burrell(gr), Tina Brooks(ts), Bobby Timmons, Roland Hanna(p), Ben Tucker(b), Art Blakey(ds)
コンプリートCDでは、落穂拾い盤の「スインギン」に貸し出していた3曲も収録して全8曲となり、長い曲が多いので散漫な印象の盤になってしまった(コンプリート盤としての評価は、☆1つ下がる。)。やはりアルフレッド・ライオンが当初に出した5曲で聞くのが正解だと思う。ティモンズの進化が著しく、①バークス・ワークスではJM的な熱いソロが聞かれる。バレルは全体に元気が良く、快調そうだ。(hand)
もともとはローランド・ハナ(P)が入ったカルテットのライブだったのに、ティナ・ブルックスとボビー・ティモンズがスペシャル・ゲストとして参加したということだ。オリジナル盤ではこのスペシャルゲスト曲を3曲選んでいるが、私もこの編成の方に魅力を感じた。純粋なバレルファンには申し訳ないが、冒頭のBirks Worksは、まるでジャズ・メッセンジャーズにバレルが客演したような感じで、この全盛期のティモンズ節を聴けるのは楽しいことだ。(しげどん)
緊張感のあるフレーズが新鮮なバレルのギターとベン・タッカーの走るベースのリズムで展開されていく。ライブとは思えない工夫されたアレンジングがなかなか面白い。時に激しく音が絡み合い、ユニークで先進的なライブ演奏だ。(ショーン)
Kenny Burrell(gr), Richard Wyands(p,el-p), Joe Sample(el-p③), Reggie Johnson(b), Lennie McBrowne(ds), Paul Humphrey(ds③)
バレルの盤で、最も愛聴している盤。エレピ嫌いの私も、ここでのリチャード・ワイアンズのエレピはかなりいいと思っている。バレルの都会的なセンスの良さが盤全体で発揮されている。特に①欲望という名の電車、はあまり演奏されない曲だが、名曲の名演だと思う。③ラウンド・ミッドナイト、はピアノがこの曲のみジョー・サンプルに代わるが、この曲の名演の一つだ。CTIからの前作「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」からオーケストラをなくして渋い曲を揃えた、私には理想的な盤と言える。このファンタジー第1作からコンコード、ミューズといのがバレルの第二期黄金時代ではないだろうか。第一期はブルーノート&プレステッジだ。(hand)
冒頭から渋いっ!アコースティックなベースとオルガンチックな音色のエレピの組み合わせはとても新鮮だ。バレルのギターも冴え渡る。トリオの演奏も良いが、この Richard Wyands のエレキピアノが入ることで、バレル・ワールドが幾層にも重なり合って共鳴する。しっかりと地に足がついた価値のあるアルバムだ。(ショーン)
1972年という年代を象徴しているような雰囲気のジャズ。前作「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」よりはリアルなジャズに近づいてはいるが、やはり軽めの印象が強い。(しげどん)
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