Lou Donaldson おすすめCD名盤&全リーダー作レビュー

ルー・ドナルドソン(1926年11月1日 – )は、モダンジャズの夜明けを象徴する歴史的な名盤、クリフォード・ブラウンも入ったアート・ブレイキーの「バードランドの夜」でいきなりシーンのスターとして登場しました。

歴史的名盤=バードランドの夜


パーカー派のバッパーとしてスタートし、その後、オルガンやコンガを多用したためソウル・ジャズ、ファンキー・ジャズと言われることもあります。

ファンキー・ジャズ時代のヒット作

アリゲーター・ブーガルー

そして、ジャズ・ロックやエレクトリック・ファンクに近い音楽に行ったこともありますが、80年代にはまたストレートアヘッドなジャズの世界に戻ってきました。サックスのスタイル自体はずっとバッパーだったとも言えると思います。そんなルウドナさんの全録音を可能な限り追ってみました。




アルト吹きにとっては、パーカーが凄すぎるので、パーカーと同じことをやる訳にいかないのがつらいところだと思う。選曲やアレンジに凝ったり、トロンボーンやコンガを入れたり、スティットはパーカーが生きている間はテナーを吹いていた。ルウドナの場合、オルガンと組んでブルージーかつソウルフルな路線になったのは、そういう理由もあると考える。ただ、ブルージー&ソウルフルと言っても、言葉のイメージから来る暗さはない。生涯を通じて明るくリラックスできる音楽を目指していたように感じる。

今回の新ジ談では、これまでジャズファンの間ではあまり注目されなかった後期に光を当てることができたと思うが、クラブ系で人気の中期盤は3人ともついていけなかった。

5021 初リーダー盤カルテット・クインテット
5021 初リーダー盤カルテット・クインテット

今回、1位となったのは、ルウドナが最もバッパーだった時期、最初期の「カルテット・クインテット・セクステット」だった。やはりバッパーのルウドナが3人とも好きなのだ。ただ、もしサイド盤をベスト5の対象としていたら、炎のようなルウドナのソロが聞かれるブレイキーの「バードランドの夜」が1位になっていたかもしれない。


3位「ウェイリング」、5位「LD+3」も初期のバッパー度の高い時期から選ばれた。


そして、後期から2位「バック・ストリート」、4位「ファイン・アンド・ダンディ」が選ばれた。これは、紆余曲折の末、バッパーのルウドナが20年ぶりに戻ってきた時期の盤だ。改めて聞いてみると、後期のルウドナも素晴らしかった。ただ、後期のルウドナ盤は初期のBN盤ほどきちんとCD化がなされていないのが残念な点。まずは、「バック・ストリート」のCD化をこの新ジ談として要望したい。

CD化が要望される後期の快演!Back Street


初期名盤とされる「ブルース・ウォーク」は一歩及ばず、最高に売れたと思われる「アリゲーター・ブーガルー」はロック好きのショーン氏の推薦はあったが圏外となった。後期では「ボローニャ」も健闘した。(hand)

初期のヒット作 ブルース・ウォーク

ファンキーヒット集のオムニバス盤

後期の佳作 ボローニャのライブ



おすすめ盤 1位:QUARTET/QUINTET/SEXTET / Lou Donaldson

1952.6.20(1-3)  1952.11.19(4-7)

1954.8.21(8,9)

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★☆

5021
5021
5055
5055

Lou Donaldson(as), Horace Silver(p:1-7), Elmo Hope(p:8,9), Blue Mitchell(tp:5-7), Kenny Dorham(tp:8,9), Matthew Gee(tb:8,9), Gene Ramey(b:1-3), Percy Heath(b:4-9), Art Taylor(ds:1-3), Art Blakey(ds:4-9)

初リーダーセッションを含む2枚の10インチ盤をまとめた盤

ブレイキーの「バードランドの夜」で、ハードボイルドなバッパーぶりを聞かせたルウドナが、初リーダー盤でバッパーとしての自らの音楽性を打ち出している。この盤は、3つのセッション(10インチ盤2枚)を1枚にまとめたので、盤としてのまとまりはあまりないのだが、印象は悪くない。特にアナログ時代と同じ10曲バージョンのCDは、別テイクも含めた15曲を録音順に収録したCDよりも数倍好印象だ。曲順がいかに大切かということだと思う。(hand)

初リーダーセッションを含む2枚の10インチ盤をまとめたもので、初期のルウドナ節が堪能できる好盤。A面にカルテット、クインテットの5021を、B面にセクステットの5055を収録しているが、時間の関係で一部B面にカルテットが入り、それぞれから一曲づつカットされている。A面は10インチ盤とほぼ同じ曲順だが、B面のセクステットは10インチ盤冒頭のAfter You've Goneがカットされていて、これが一枚を印象づける中々勢いのある演奏だったのでB面がやや印象薄な感じになった。メンバーのオリジナルを優先したためかも知れない。+5と表示されている現在のCDでは、別テイクも含めて、12インチ化の際にカットされた2曲も復活しているが、曲順が大きく変わってしまっている。A面カルテット、クインテットに於けるホレス・シルバーの硬派なサポートがなかなかはまっている。(しげどん)

ルードナルドソンの軽やかだけれども、決して薄っぺらくならないアルトは、マイナーキーを上手く使いこなしていて、 1950年代のパワーとお洒落な雰囲気が伝わってくる。貴重で大人を感じるいいアルバムだ。(ショーン)



おすすめ盤 2 位:BACK STREET / Lou Donaldson

1981.7.2

Muse

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★☆

Lou Donaldson(as), Herman Foster(p), Geoff Fuller(b), Victor Jones(ds) 

完全なCD化がされていない、後期イチオシの名盤 CD化を強く期待!

パリでのピアノトリオとのワンホーンでのご機嫌なライブ。ルウドナとフォスターがノリノリで、こんなライブなら行ってみたいと思うほどの内容だ。現状のCD化はややこしいのだが、同じミューズのソニー・スティット盤と4in2の2枚組でカムデンというレーベルから「キーパーズ・オブ・ザ・フレーム」という盤が出ていて、ルウドナ分は「スイート・ポッパ・ルー」とこの「バック・ストリート」の2in1なのだが、残念ながら時間の関係でこの盤の②チアー・チアーが1曲カットされている。なので完全にはCD化されていない。スティットのほうは「コンステレーション」と「チューン・アップ」で何度もCD化されており、こちらから削ってほしかった。というよりも、単独CD化してほしい作品だ。(hand)

正直なところ、ルウドナさんの傑作は前期ブルーノート時代に集中していて、後半は聴くべきものがほとんどないと思っていたが、ハードバップ路線に回帰してくれてからのルウドナさんは素晴らしい演奏が多いことをあらためて発見できた。このアルバムはその中でも出色の出来栄えのライブだと思う。オリジナル中心の選曲も良く、ハーマン・フォスターもルウドナさんも、自由に自分の音楽を表現している。後期イチオシの名盤だ!(しげどん)

淡々とリズムを刻むJeff fullerのベースの中、ピアノのHerman fosterが暴れまくっているBe my love。ルー・ドナルドソンのアルトがホッとさせてくれる。続くCheer, Cheerも緩急の差が激しいユニークな演奏。客をグイグイ引っ張り、活気に溢れるルーワールドが広がってゆく。(ショーン)

※hand氏紹介のMuseの4枚の LPを収録したKeeper Of The Flame アマゾンリンクあり

1.SWEET POPPA LOU  2.BACK STEET 3.CONSTELLATION 4.TUNE UP 3.4はSonny Stittの有名盤



おすすめ盤 3 位:WAILING WITH LOU / Lou Donaldson

1957.1.27

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★★

Lou Donaldson(as), Donald Byrd(tp), Herman Foster(p), Peck Morrison(b), Art Taylor(ds)

デビュー盤から3年後のバランスの良いハードバップ盤

デビュー12インチ盤から3年後の1957年の第2作。この年からルウドナは急に多作家になる。74年で一旦途切れるが、毎年1~4枚を吹き込んでいる。57年は時代がハードバップ期に入り、前作よりもメロディやアレンジを重視した典型的なハードバップ盤になっている。特に①キャラバンは圧巻で、ルウドナとドナルド・バードの2管に加え、アート・テイラーがブレイキー的な熱いドラムを聞かせ、初期JM的な興奮が味わえる。この後、オルガンと組むことが多くなるルウドナだが、ピアノのときは基本的にハーマン・フォスターで、この盤がフォスターとの最初の盤となる。(hand)

ドナルド・バードとの2管で、バランスの良いハードバップ盤。冒頭の”キャラバン”は名曲すぎる上に個性が強い曲なので、その印象が強く残る一枚だが、私はThat Old Fellin’のようなウタモノでのルウドナが好きだ。(しげどん)

いきなり、荒々しいcaravanに乗せられてハードバップの小旅行に出たような疾走感と異国情緒を味わうことのできる素晴らしいアルバム。Lou DonaldsonのアルトにDonald Byrdのトランペットが熱く絡み、更にHerman Fosterの硬質のピアノが後方支援することで、ファンキー度バリバリのアルバムとなっている。(ショーン)



おすすめ盤 4 位:FINE AND DANDY / Lou Donaldson With Red Garland

1980.2.6

ロブスター企画

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★★

Lou Donaldson(as), Red Garland(p), Jamil Nasser(b), Jimmy Cobb(ds)

バッパーのルウドナが20年ぶりに戻ってきた盤

快調スイスイなルードナルドソンのライブ。正確でスピード感溢れるレッド・ガーランドのピアノが、ルーのノリを助長させ、素晴らしい演奏となっている。中でもmistyの感情溢れるアルトに、美しいメロディを絡めてくるガーランドは完璧だ。繊細さと力強さの同居したとても完成度の高いライブ演奏といえる。(ショーン)

ジャズだ!80年代に入りバッパーのルウドナが突如戻ってきた。ウィントン・マルサリスらの活躍のおかげか?理由はともかく、 多分、初共演のガーランドのトリオ(ジャミール・ナッサー、ジミー・コブという素晴らしいメンバー。ナッサーは「ルー・テイクス・オフ」以来)をバックに吹きまくるルウドナ。20年ぶりだろうか?感涙ものだ。80年2月の来日公演の記録、しかも日本レーベル(ロブスター)なので、ルウドナのジャズへの再度のギアチェンジに日本人が貢献したこととなる。ルウドナは、この盤以降、ジャズに復帰することとなる。同じ来日時に録音したガーランド盤「スモール・アワーズ」にも2曲ゲスト参加している。(hand)

80年代からのハード・バップ・リバイバルは日本の功績だ。この盤も日本で録音された優れた純粋なジャズ作品で、ルウドナさんのリアルジャズへの復帰を方向づけた作品として意義深い。当時としては最新の録音技術が駆使され、アナログ盤のみずみずしい音が楽しめる。いソノてルヲさんの記載のライナーの裏面には細かく使用機材の技術的な情報(私にはチンプンカンプンだが)も記されている。ルウドナさんは相当にノリノリな感じで楽しそうに吹いているが、レッド・ガーランドがやや元気がなく感じる。(しげどん)



おすすめ盤 5 位:LD+3 / Lou Donaldson With The 3 Sounds

1959.2.18

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★

Lou Donaldson(as), Gene Harris(p), Andrew Simpkins(b), Bill Dowdy(ds)

ザ・スリー・サウンズとの共演盤はとてもジャジー

スリーサウンズのサポートを得たオーソドックスなワンホーン作。コンガが入っていないオーソドックスなカルテット作はあまりないので貴重だ。選曲もスタンダード中心でルウドナさんのウタモノ解釈が楽しめる文句なしの好盤。(しげどん)

ジーン・ハリス率いる人気ピアノトリオ、ザ・スリー・サウンズとルウドナの共演盤。3サウンズの音楽性からファンキーな感じを想像するが、意外にも純ビバップなスタート。トリオで、コンガもいないので、ジャズ度も高い。ハリスも元はやはりバッパーだったと再確認した。同じビバップ的な「ルー・テイクス・オフ」と比べるとこちらが親しみやすい。ワンホーンで曲もアドリブもメロディアスなのではないかと思う。(hand)

淀みなく流れるアルトの音色。安心して聴けるルードナルドソンの世界。アルバムの名の通り、プラスの3名は、ルーの演奏と世界観をしっかりサポート強化する役割に徹しており、アルバムのカラーは「地に足のついた軽快なハードバップ」として統一されている。(ショーン)