Kenny Dorham ケニー・ドーハム      おすすめCD 名盤 主要作 レビュー


革新性とアグレッシブな魅力を持つ音楽性。              「静かなる」という形容詞は彼の本質を表していない。


ケニー・ドーハム(1924-1972)は、ビバップ時代からモダンまで活躍したトランぺッター。48歳で病没している。マイルスと同時代の人だが、その後の人気につながらなかったのは残念なところだ。

ドーハム初期の名盤集

40年代はパーカーとの共演、50年代は名門ジャズ・メッセンジャーズの初代トランペット、そして自己のバンド、ジャズ・プロフェッツの結成と進み、クリフォード・ブラウンが事故死したローチに請われてバンドに入ってしまう。コルトレーン後のモブレーのようにあまり評価が得られない原因となってしまったと思う。

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60年代に入り、バリトンのチャールズ・デイビスとのバンド結成や、ジャッキー・マクリーンと組んで活動したが、人気にはつながっていない。その後、ジャズ・ロックの先駆けとなる「ウナマス」や・・・

人気盤にしてヒット作=ウナマス

ジョー・ヘンダーソンの「ページ・ワン」も小ヒットとなったようだ。ドーハム作曲の最高傑作曲といわれるブルー・ボサがジョーヘン盤に入っていることがドーハムの人の好さを表わしていると思う。

これもヒット要因満載の人気作 Page One


そしてドーハムの没後、80年代になって旧作「アフロ・キューバン」でロンドンの若者たちが踊り始めたのだ。クラブ・ジャズの始まりだ。ロンドンのDJの審美眼はすごい。この盤のハードボイルドでダンサブルな雰囲気を再発見したのだ!今回、我ら新ジ談もこの盤を1位に推奨することとなった。80年代に若者だった3人の感性に合ったのかもしれない。

これが大ヒット作!?


2位は表記はないがドーハムのリーダーバンド、ジャズ・プロフェッツの名ライブ=ラウンド・ミッドナイト・アット・カフェ・ボヘミア

評論家イチオシの「静かなるケニー」は静かなので3位に落ち着いた。



ケニー・ドーハム おすすめCD 名盤BEST5

おすすめ盤1:Afro-Cuban/Kenny Dorham    アフロ・キューバン/ケニー・ドーハム

①-④,⑨1955年1月30日

⑤-⑧1955年3月29日

Blue Note 

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん ★★★★★

ショーン ★★★★★

Kenny Dorham(tp),Hank Mobley(ts),Cecil Payne(bs),Horace Silver(p), Percy Heath(b),Art Blakey(ds)

⑤-⑧:Oscar Pettiford(b) replaces Heath

add①-④,⑨:J.J.Johnson(tb),Carlos Valdes(conga),Richie Goldberg(cowbell)

後年ロンドンのクラブで大ヒットした!ほとばしる熱気の若さあふれる名演

コンガのラテンな感じで、熱く、しかし、クールに始まる①アフロディジア。ドーハムもモブレーもJ.J.も超カッコいい。録音から25年後の1980年代にこの曲で踊り始めたロンドンの若者たち。クラブ・ジャズの始まりだと思う。ドーハムとブルーノートとロンドンのDJはすごい。③マイナーズ・ホリデー、ドーハム作のカフェ・ボヘミアのJMでも演奏された曲。1曲目と同じアフロ・キューバンな感じで演奏される。②ロータス・フラワーだけがバラードで、この盤のハードボイルドでダンサブルな雰囲気に合っていないと思う。(hand)

炎のようにほとばしる若々しい爆発力にいまさらながら感動できる決定的な名演集。 A面はBN5065で発売された10インチ盤のオクテット演奏でブルーノート5000番台のなかでも突出した傑作だと思う。B面は12インチ化の際に加えられたセクステットによる演奏。どちらも素晴らしいAランクの名演。この高揚感は尋常ではない。(しげどん)

最初はレコードで聴いたが、A面はコンガ が加わることで、全く新しいジャンルのラ テン系ジャズの世界が創り出され、その オリジナリティに驚き、その創作力に感 動した。B面も、ケニードーハムの明るく 伸びやかなトランペットが存分に味わえ、 ハンクモブレーらとの競演も楽しめ、終 始勢いが感じられる素晴らしいアルバム となっている。アートブレイキー御大のド ラムが牽引してくれているのだろう。この ような独自性の強いアルバムは、ジャズ の奥行きと底辺拡大に大きく寄与している。ショーンとしても大好きな1枚だ。 (ショーン)



おすすめ盤2:’Round about Midnight at The Cafe Bohemia/Kenny Dorham  カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム

1956年5月31日

Blue Note 

おすすめ度

Hand     ★★★★★

しげどん ★★★★

ショーン ★★★★★

Kenny Dorham(tp),J.R.Monterose(ts),Bobby Timmons(p),Kenny Burrell(g),Sam Jones(b),Arthur Edghill(ds)

ジャズ的なグルーブ感が充実したケニー・バレル参加のセクステットによる名演ライブ。

ピアノがディック・カッツからボビー・ティモンズに変わってのライブ。正式か臨時か分からないが、とにかくティモンズ参加でグルーヴ感のあるバンドになっている。なんとティモンズは19歳でニューヨーク・デビュー録音だ。⑥エッジ・ヒルズは、ドーハムがドラムのアーサー・エッジヒルズにちなんで作った曲らしいが、どう聞いても、マイルスのチューン・アップだ。いい演奏なので、こだわる点ではないのだが念のため。この日の残りの演奏は、③メキシコ・シティの別テイクが「ケニー・バレルVol.2」として当初から出ていた。その他曲は、80年代に、Vol.2、Vol.3 として発掘され、現在は2枚組CDにまとめたものや、オリジナル+4曲CDも出ているが、当初発表の形で聞くのがやはりオススメだ。(hand)

ジェントルな雰囲気の漂う大人の演奏 だ。枯れた音色のドーハムのトランペット が、哀愁を感じさせる「モナコ」と「ラウン ドアバウトミッドナイト」。続く「メキシコシ ティ」にテンポ良く繋ぎ、どんどんアップテ ンポになって行く。そして「チュニジアの 夜」。ドーハムの速吹きペットの聞き応え は十分で、JRモントローズのテナーも、 独特のアレンジで素晴らしい。更に追い 討ちをかけるかのように、「ニューヨーク の秋」からの最後は「ヒルズエッジ」名曲 を名人達が磨き上げたら、こうなるという 見本だ。CDでコンプリート盤もあるので、 その日の雰囲気をしっかり味わうのも素敵だが、当時発売されたレコードはの6 曲。このスキが一切ない濃厚でアダルト な1枚の完成度は凄すぎる! (ショーン)

ケニー・バレルが加わったセクステットのライブで、ジャズファンならよく知っている名演。各人のソロは素晴らしいのでライブとしてはいい作品だと思うが劇的な臨場感は残念ながらなく、ケニー・バレルの参加の効果も一時的な感じである。(しげどん)



おすすめ盤3:Quiet Kenny/Kenny Dorham  静かなるケニー/ケニー・ドーハム

1959年11月13日

Prestige=New Jazz

おすすめ度

hand     ★★★★☆

しげどん ★★★★★

ショーン ★★★★☆

Kenny Dorham(tp),Tommy Flanagan(p),Paul Chambers(b)、Art Tylor(ds)

いぶし銀的なドーハムのイメージを定着させてしまったが、オリジナル曲にも魅力を感じる人気盤。

すばらしい一枚だが、この作品が代表作とされてしまった事がドーハムの不幸の始まり。蓮の花+マイ・アイデアルと続くA面の二曲が素晴らしいので、多様な才能を持つドーハムを「いぶし銀の職人」的な地味なイメージにしてしまったのは残念だ。でもこの作品ではA面3曲めのオリジナル「Blue Friday」をまずは全面的に押したい。ブルースながら前衛的で知的な構成を感じる面白さがあり、この曲だけを何度も繰り返して聴きたくなる。評論家の久保田高司氏はサキコロのブルーセブンとの対比を説明されておられ、なるほどと感心した。次に素晴らしいのはB面一曲目の「Blue Spring」で、この曲をタイトルにしたアルバムもある。もちろんそのほかのスタンダードも味わいが深く、人気盤であるのは必然なのだ。(しげどん)

(傍系のニュー・ジャズだが、)プレスティッジへの唯一の録音。過去の評論家さん達がドーハムといえばこの盤、という感じでNo.1オススメ盤として誉めたたえてきた盤。サキコロを先頭に、トミフラは名盤請負人、的な流れでそうなっている場合が多い。確かにいい盤ではあるが、ほのぼのとした曲が多く、ドーハムのこの盤でのほのぼのとした音色と相まって、ドーハムをほのぼのオジサン的に印象づけてしまった。ドーハムは、フロンティア精神も持つミュージシャンなので、2枚目以降に聞く盤としてはいいが最高盤とするのはミスリードだ。①蓮の花は、2年前の「2ホーンズ、2リズム」(1957年11月13日)の再演。⑤ブルー・スプリング・シャッフルも、10カ月前の「ブルー・スプリング」(1959年1月20日)の①タイトル曲に、シャッフルを付けて改題しているが、同曲の再演だ。この曲は、初演と同じ59年4月に仏映画「彼奴を殺せ」のバルネ・ウィランのリーダー盤サントラにドーハムも参加してにバルネ作?のタイトル曲として吹き込まれている(笑)。ジャズにはそういう謎が多い。ただ、いずれも名演だ。(hand)

軽やかに歌うケニーのトランペットが、美 しいメロディを紡ぎ、情感溢れる素敵なアルバムに仕上がっている。1 曲目lotus blossomの輝き感からの2曲目my idealの 落ち着きが堪らない。ケニードーハムの 演出のうまさが滲む。quietでありnobleな 落ち着いた大人のJAZZを楽しめる。元 気な時に聴くと物足りなさを感じる人がいるかも知れないが、ゆったりとした時間を楽しみたいときに向くアルバムなのだ。(ショーン) 



おすすめ盤4:Una Mas/Kenny Dorham  ウナ・マス/ケニー・ドーハム

1963年4月1日

Blue Note

hand      ★★★★

しげどん ★★★★☆

ショーン ★★★★★ 

Kenny Dorham(tp),Joe Henderson(ts),Harbie Hancock(p),Butch Warren(b),Anthony Williams(ds)

ジャズロックテイストだが、本格感ある親しみやすい作品。ハービー・ハンコックの存在も光る。

タイトル曲①ウナマスは、ジャズロックにカテゴライズされるのかもしれないが、どちらかといえばラテン風の曲だ。ドーハムの早過ぎる晩年を盛り立てるテナー、ジョー・ヘンダーソンの初登場だ。ジョーヘン自身もドーハムに活用されて人気が出ていく。ジョーヘンのウネウネした蛇のようなテナーは以前は苦手であったが、今は苦手という程ではなくなった。ジャズロックを得意とする若手ハンコックにより、引き締まった盤に仕上がっている。17歳のトニー・ウィリアムスのドラムは天才は分かるが、好みではない。多分、モダンジャズから次の時代に変わる感じがするのだと思う。63年4月録音だが、その後の60年代を先取りしていて、サイドワインダー(63.12)とリカード・ボサノバ(65.6)の中間くらいの印象の曲だ。②以降の曲も全体が似たトーンで作られており、アルバムとしての統一感はある。(hand)

聴きやすいいい曲が揃っていてなじみやすい作品で、人気の名盤としておすすめできるアルバムだ。60年代的なロックテイストも入った作品のようでもあるがジャズらしい芯の太さがあり、ハービー・ハンコックのソロも、ジャズファンじゃない人も巻き込まれるような魅力がある。このすぐ後にジョー・ヘンダーソンの「ペーシ・ワン」が吹き込まれたが、姉妹盤のような作品で、どちらもポピュラーなヒット要素のある魅力的な作品だ。(しげどん)

ピアノにハービーハンコック、テナーサックスにジョーヘンダーソンを迎えて、ドーハムが小粋に吹きまくるアルバムタイトルのUNAMASは、スペイン語で「もう一回」という意味だが、その名の通りもう一回聴きたくなる麻薬的で癖になるリズムだ。straight aheadでは、各楽器がピタッと合って曲が盛り上がる感覚がとても気持ち良い。ハービーハンコックの「合いの手ピアノ」がポイントゲッターだ!(ショーン)



おすすめ盤5:Swedish Session 1964/Kenny Dorham  スウェディシュ・セッション1964/ケニー・ドーハム

1964年1月3日,6日

 

hand      ★★★★☆

しげどん ★★★★

ショーン ★★★★☆

Kenny Doham(tp),Sahib Shihab(fl,Bs),Lars Sjosten(p),Bjorn Alke(b),Bosse Skoglund(ds),Goran Lindberg(p),Goran Pettersson(b),Leif Wennerstrom(ds)

発掘盤ながら音も内容も一級品。サヒブ・シハブの咆哮するバリトンが聞き物。

スウェーデンでの1964年1月の2セッションで、ドラゴンからの2019年発掘盤だ。正規盤に分類してもおかしくないくらい音も内容もいい。①~③にサヒブ・シハブが入っている以外は地元ミュージシャンだ。①ショート・ストーリーのアレンジがとてつもなくかっこよくてハードボイルドだ。特に現地ベースの活躍とシハブのバリサクもいい。シハブのアレンジではないかと推測する。①〜④と⑤〜⑩の3日違いの2ライブを放送局が収録したものなので音がいい。④ショート・ストーリーはワン・ホーンで①と比べるとさびしい。後半は、全てワン・ホーンで、まずまずの出来だ。(hand)

発掘音源だが、演奏はハリのある優れた作品。特に優れているのは前半の3曲で、サヒブ・シハブのバリトンが活躍するのだが、これが力強く演奏を魅力的なものにしている。地元ミュージシャンのリズムセクションもまずまずの好演だ。(しげどん)

1964年スウェーデン、ストックホルムでの2回に渡るセッション。前半3曲は伸び伸びとしたKenny dorhamのトランペットと重戦車級のSahib  shihabのバリトンサックスが、荒々しく絡み、ハードバップを全身で感じることができる。Bjorn alkeのベースラインが、なかなか攻撃的でgood!後半5曲は、ドーハムのメロディアスでシリアスな部分が際立つ。剛柔しっかり押さえられたメリハリのあるアルバムに仕上がっている。両日ともに演奏されたshort storyを聴き比べると面白い。(ショーン)