Zoot Sims  ズート・シムズ  CDレビュー  リーダー作⑦

このページでは、ズート・シムズの最後期の作品を紹介しています。最晩年まで積極的に録音を残してくれています。 

死の直前の映像記録

ズートといえば酒豪として有名ですが、ウィスキーのボトル2本を空けていたという大酒呑みで、ライブ中にも酒を飲み続けたといいますが、演奏にはまったく影響しなかったといいます。でも彼はそのせいでしょうか?肝臓ガンになり、1985年3月に60歳になる前で亡くなってしまいます。まだまだ安定した円熟の演奏を残してくれていましたので、早すぎる死が今でも惜しまれます。

 



Live at E.J’s/Zoot Sims  ライブ アット E.J’s/ズート・シムズ

1981年8月9日

Storyville

おすすめ度

hand  ★★★★

しげどん ★★★★☆

Zoot Sims (ts,ss), Yancey Korosi (p), Dewey Sampson (b), James Martin (ds), Rick Bell (ts:8-10only)

録音がいいのでズートの音色を迫力いっぱいで楽しめる勢いのあるライブ

発掘盤だが音がいい。サックスの音が生々しい。ジョージア州アトランタのE.J'Sという店でのライブ。なぜかルーマニアのヤンシー・キョロシーがピアノを弾いている。初顔合わせのズートはいい演奏が多く、この盤もそうなっている。ズートのソプラノはあまり好みではないが③ソフトリーと⑦キャラバンは熱くてなかなかいい。⑧グルービンハイからは地元?テナーが加わり2テナーとなる。エリントンの有名曲があり割と楽しめる盤だ。(hand)

素晴らしい勢いのあるライブ作品で、録音状態もいい。アトランタでのライブでこれもローカル・ミュージシャンとの共演。ピアノのヤンシー・キョロシーはルーマニア出身のミュージシャンとの事で、最後の3曲はリック・ベルという独特の音色のテナーが加わっている。ズート自身はこの時期のスタジオ盤はやや精彩を欠く感じがする作品があるが、ライブは打って変わって元気なのはなぜなんだろうか。このライブも若々しいエネルギーに満ち溢れていて、聴衆の盛り上がりも伝わってくる。ズートを目の前にしたライブハウスの雰囲気が伝わってきそうな一枚だ。(しげどん)



Art and Zoot/Art Pepper&Zoot Sims アート & ズート/アート・ペッパー&ズート・シムズ

1981年9月27日

Pablo

おすすめ度

hand  ★★★☆

しげどん ★★★

Zoot Sims(ts),Victor Feldman(p),Barney Kessel(g),Ray Brown, Charlie Haden(b),Billy Higgins(ds)

アート・ペッパーとの貴重な共演を記録したライブ

若い頃のセッション仲間ペッパーとの共演盤。リズム隊は、ヴィクター・フェルドマン、レイ・ブラウン、ビリー・ヒギンズに一部バーニー・ケッセルが加わる。U.C.L.A.でのライブで、2人が一緒に吹いているのは全6曲中①⑥の2曲のみ。ズートが所属するパブロなのでペッパー単独は②のみ。ペッパーに続けてズートを聞くと、ずっと大人の音楽に聞こえる。最初から老成タイプのズートと、いつまでも若者気質のペッパーの違いが音に出ている。(hand)

すごい豪華メンバーのライブだ。ペッパーとの共演は2曲のみで、アレンジも特に工夫があるわけではないが、それぞれのソロを充分楽しめる。ズートの曲3曲も有名曲のオンパレードでライブらしいファンサービスでこれも文句なく楽しめる演奏だ。(しげどん)



Blues for Two/Zoot Sims & Joe Pass ブルース フォー トゥー/ズート シムズ &ジョー パス

1982年3月6日

Pablo

おすすめ度

hand  ★★★☆

しげどん ★★★☆

Zoot Sims(ts),Joe Pass(g)

ジョー・パスとのくつろぎのデュオ作品。スタンダードの解釈は味わい深い。

バッキー・ピザレリとのデュオと比べると時代的にソプラノが入ったのと、どちらが良い悪いではなく、テナーの音色の滑らか度は低くなったように感じる。ラスト⑧リメンバー、はハンク・モブレーとはまた別のくつろいだ親しみやすさがある。(hand)

バッキー・ピザレリとは2枚のデュオアルバムを残しているが、今回は大物中の大物であるジョー・パスとの共演。ズートのテイストに合ったくつろぎ盤で、夜一杯のみながらゆっくり聴くのに良いような一枚。くつろぎ基調が続くのでやや単調に聴こえたが、有名スタンダード曲中心で、ズート得意なウタモノ素材での味わい深いテイストはすばらしい。(しげどん)



The Innocent Years/Zoot Sims ジイ ノセント イヤーズ/ズート・シムズ

1982年3月9日

pablo

おすすめ度

おすすめ度

hand  ★★★☆

しげどん ★★★★

Zoot Sims(ts,ss),Richard Wyans(p),Frank Tate(b),Akira Tana(ds)

耳になじみやすい名曲スタンダード中心で、ワンホーンでのズートを楽しめる親しみやすい作品

最後期に近い録音。私のお気に入りのピアニスト、リチャード・ワイアンズが参加している。この人は、リーダー盤もサイド盤もあまり多くないが、渋くて素敵なピアニスト。ベースはフランク・テイト。ドラムは日系アキラ・タナ。タナ=リードで知られる名ドラムだ。タナがズートと共演したのは晩年の3作品「アイ・ウィッシュ・アイ・ワー・ツインズ」、本作、「サドンリー・イッツ・スプリング」。(hand)

これもズートの得意なワンホーン・カルテット作品。ピアノがリチャード・ワイアンズに代わっている。あまり知名度はないが、多くのミュージシャンとの共演歴があるベテランで、ここでのサポートぶりも申し分ない。選曲は一転して耳になじみのある名曲スタンダード中心で、10分を超える「虹の彼方に」など、楽しめるとっつきやすい一枚だと思う。(しげどん)



Zoot Case/Zoot Sims ズート ケース/ズート・シムズ

1982年6月8日

Gazell

おすすめ度

hand   ★★★★

しげどん ★★★★

Zoot Sims, Al Cohn (ts),Claes Crona(p),Balls Danielsson(b), Petur Island Ostlund(ds)

アル&ズートの最終作となった元気いっぱいのスウェーデンでのライブ

アル&ズートのラスト盤だと思われる。ドラムとベースの元気がいい。ズートもアルも音色が太くてカッコいい。ピアノはクラエス・クロナ。ベースはキース・ジャレット御用達のパレ・ダニエルソン。素晴らしいはずだ。(hand)

スウェーデンでのライブ音源で、アル アンド ズートとしてはおそらく最後の作品。リズムセクションは地元ミュージシャンだが、スウェーデンの一流どころ。ズートはまだまだ充分元気で、往年のようなアルコーンとの小節交換などライブならではの盛り上がりを見せている。(しげどん)



Zoot Sims In Florida フロリダのズート・シムズ

1982年2月6日,8日

 Jazzbank

おすすめ度

hand     ★★★

しげどん ★★★★

Zoot Sims(ts),Bubba Kolb(p),Louis Davis(b),Harvey Lang(ds)

アレン・イーガーの参加が貴重な発掘ライブ

アレン・イーガーとの2テナーのライブ。イーガーって82年にまだ活動していたことに失礼ながら驚いてしまった。イーガーといえば40年代末にワーデル・グレイとのテナーチームで有名だった人。その後、名前を見なかったので、引退か亡くなったと勝手に思っていた。改めて調べてみると、2003年に76歳で亡くなっていて、82年にアップタウンから「ルネサンス」というリーダー盤まで出していた。そのイーガーとズートの共演は、バトルではなくゆるい協調だ。リズム隊は多分フロリダの地元ミュージシャン。海賊音質で音があまり良くない。(hand)

録音状態はイマイチだが、この時期にしては元気なズートが味わえるライブ。でもなんといってもバップ・テナーの雄アレン・イーガーの参加は貴重だ。イーガーの参加は最初の3曲だけだが、レスター・リープスインとマイ・ファニーはソロの受け渡しが不自然な感じで編集されているように思える。1982年の録音だがモノラルでの音源で状態は良いとは言えず仕方がない。ピアノのババ・コルブも知名度は低いが優れたミュージシャンで、ボサノバの「フラワーワルツ」でのソロなどは楽しさ全開で聴衆もノリにのった感じで素晴らしい。(しげどん)



On The Korner/Zoot Sims  オン ザ コーナー

1983年3月20日

Pablo

おすすめ度

hand     ★★★★

しげどん ★★★★

Zoot Sims(ss、ts),Frank Collett(p),Monty Budwig(b),Shelly Manne(ds)

元気いっぱいのズートをワンホーンで聴けるライブ作

「オン・ザ・コーナー」はマイルスの有名な70年代のロック盤のタイトルと同じだが、スペルが違う。こちらはライブハウスのキイストーン・コーナーなのでKのコーナーだ。ズートは85年3月に59歳の若さで亡くなっていので、このライブはそのちょうど2年前。かなり元気そうで、快調に飛ばしている。ピアノのコレット以外は、若い頃から馴染みのシェリー・マンとモンティ・バドウィックということで、ズートもくつろいでいるのだろう。(hand)

元気いっぱいのライブで、しかもワンホーンである。70年代後半からのズートは、すこしゆったり目の演奏が多い印象で、特にスタジオ盤はそのような演奏が多く、やはり年齢による衰えもあるのかなと思ったのだが、スタジオ正規盤に較べライブではかなり元気いっぱいなの作品が残っていると思う。このような演奏をする人が2年後に亡くなるとは信じられない。勢いのあるズートを聴ける最終作品かもしれない。(しげどん)



Suddenly It's Spring/Zoot Sims サダンリィ イッツ スプリング/ズート シムズ

1983年5月26日

Pablo

hand  ★★★★☆

しげどん ★★★☆

Zoot Sims(ts),Jimmy Rowles(p),George Mraz(b),Akira Tana(ds)

ゆったりとした円熟を感じるスタジオ録音によるワンホーン作

ズートの最後期の録音の一つ。プレイにはゆっくりしたくつろぎがあり、枯れたところや肺活量の不足もなく、晩年とは思えず、円熟という感じだと思う。リズム隊3人ともに、素晴らしいサポートだ。(hand)

ズートの独特の音色やフレーズの味を感じながら、しんみりと味わえる演奏で、特に後半(B面)の諸スタンダード作にそれを感じる。しかしソプラノはややけたたましいし、全般的には往年の汲めど尽きぬアドリブがなく、ソロも短めになっている。ファンとしてはそれでもズートらしさを失わないこの時期の演奏として味わいたい作品だ。(しげどん)



Quietly There/Zoot Sims Plays Johnny Mandel  クワイエットリィ ゼア/ズート シムズ プレイズ ジョニー マンデル

1984年3月20,21日

Pablo

hand  ★★★★

しげどん ★★★☆

Zoot Sims(ts),Mike Wofford(p),Chuck Berghofer(b),Nick Ceroli(ds),Victor Feldman(Vib,Perc)

しっとりと美しいジョニー・マンデルの作品集。ビクター・フェルドマンのヴァイブも味わい深い。

アナログ7曲なのにCD6曲の不思議な盤。さらに調べてみると最新のアナログには8曲入りもあった。ジョニー・マンデルの美しい曲をズートが丁寧に美しく演奏している。ストリングスが入ってもおかしくないくらい美しい曲もあるが、入ったら嫌いな盤になっただろう。後半に聞けるフェルドマンのバイブもムードがあっていい。ウォフォードは一部エレピを弾いている。(hand)

ズートによるジョニー・マンデルの作品集として紹介されているが、有名な「いそしぎ」は演じていない。渋い曲ばかりだ。ビクター・フェルドマンがバイブラフォンとパーカッションで参加しているのが眼をひく。ズートはいつもどおり味わい深くしっとりとした一枚。(しげどん)



In a Sentimental Mood/Zoot Sims  イン ア センチメンタル ムード/ズート・シムズ

1984年11月21日

King Video

Zoot Sims(ts),Rune Gustafsson(g),Red Mitchell(b)

死の数か月前、ファンの心に永遠に刻まれる映像記録

死の数か月前の遺作とも言える録音。というより映像記録と言える。おとなしめの演奏に終始するのは、彼は自分の余命を知っていたのだろうか?彼の思い出話も交えての演奏風景は、演奏のレベルを超えた記録として、ズートファンの心に永遠に残る評価を超えた映像だ。(しげどん)

CDではなく映像で見た。レッド・ミッチェルとの昔語りと演奏が交互に出る構成。演奏になるとなぜかルネ・グスタフソンが入った3人になる。穏やかな演奏で、鑑賞用としては会話がないほうがいいが、ズートの人柄を映像から感じることができる。先頃見た映画「ジャズ・ロフト」では、ズートがロフトで終夜演奏し皆が疲れて寝て起きてもまだ演奏し続けていたという若い頃のタフな側面が紹介されていて印象的だった。(hand)



It Had To Be You/Zoot Sims イット ハド トゥー ビー ユー/ズート シムズ

1984年11月24日

Gemini

おすすめ度

hand    ★★★

しげどん ★★★★

Zoot Sims,Scott Hamilton(ts),Claes Crona(p),Arne Wilhemsson(b),Per Hulten(ds)

スウェーデン訪問中のスコット・ハミルトンのグループに客演したズート。現時点での最終作品

現時点でのズートのラスト作は、同じテナーのスコット・ハミルトンとの共演盤。ハミルトンと言えば、80年代にスイング系テナーとして登場し、話題になったが、私はあまり興味が湧かなかった。しかし、現在もベテランとして活躍しているということは、それなりの支持を得てきたということであろう。さらにその後継とも言えるハリー・アレンも2000年頃から活躍しているようだ。どちらも私はほとんど聞いていない。そのハミルトンとズートがラスト録音したということは、後継宣言盤なのかもしれないと思って解説を読むとスウェーデンでの偶然の共演らしい。聞いてみると滑らかテナーの滑らかな共演という感じで、好きな人は好きだろうと思った。ラスト作は残念ながら、私好みではない。(hand)

1984年の北欧への訪問は彼の最後の音歴になるが、グスタフソン、レッド・ミッチェルと記録した映像のさらに数日後に、スコット・ハミルトンのグループに客演していた。これが最終録音になるであろうライブだ。有名なスタンダード中心の手慣れたレパートリーだが、スコット・ハミルトンはもともとスイング寄りのスタイルなので、ズートも違和感なく溶け込んでいて、普通に楽しめるライブになっている。お客さんを前にしたライブだとジャズ魂に火がつくのか意外なほど元気なズートで、最終作とは思えない。(しげどん)



最後に・・・

今回このHPで取り上げたリーダー作は約90作品ですが、彼の場合は同じ内容でのタイトル違い、ジャケ違いなどもいろいろあり、まだ漏れがあるかもしれません。

また、今後発掘音源がある可能性もまだありますので、新しい音源が見つかったら順次追加していきたいと思います。

引き続きサイド参加盤もご覧ください。