Anita O'Day アニタ・オディ  おすすめCD名盤 & 全リーダー作 レビュー

新ジ談として初めて取り上げるボーカルは、アニタ・オデイ(1919.10.18~2006.11.23)としました。白人女性ボーカルの中でも多分1、2の人気を争う人だと思います。特に日本での人気は高く、ジャズ誌『ジャズ批評』の表紙、和田誠シリーズに2度も登場しています。

「真夏の夜のジャズ」でのアニタを和田誠センセーがイラスト化


ジーン・クルーパ楽団、スタン・ケントン楽団などのバンドシンガーとしてスタートし、58年のニューポート・ジャズ・フェスの映画『真夏の夜のジャズ』によりアニタは重要なスターの1人として知られることになります。ハスキーボイスとノリのいいスイング感を特徴とします。また一方で、薬物で波乱の生涯を送ったとも言われています。今回は、生涯にわたり、アニタのオススメ盤を再確認しました。(しげどん)

大ヒットしたLet Me Off Uptownがアニタの原点

ケントン・ガールズ特集

アニタの歌唱がこの名画の人気場面


・新宿ジャズ談義の会 :アニタ オディ  CDレビュー 目次

・Anita O'Day  おすすめBest5・・・このページ

・Anita O'Day CDリーダー作① バンドシンガー時代(1941-1959)

・Anita O'Day CDリーダー作 黄金のヴァーブ期(1955-1962)

・Anita O'Day CDリーダー作 麻薬禍からの復活期(1963-1972)

・Anita O'Day CDリーダー作 第二の黄金期(1975-1979)

・Anita O'Day CDリーダー作 晩年を迎えるアニタ(1981-2005)


ジャズ映画といえば、『真夏の夜のジャズ』の帽子姿のアニタ像が浮かぶというくらいアニタはジャズという音楽を象徴するアイコンの1つになっていると思う。しかし、その音楽はどこまで聞かれているか、といえば、ヴァーブの「(ジス・イズ)アニタ」と「シングズ・ザ・モスト」の2枚だけ。さらには、クルーパ時代の音源がベスト盤などで聞かれる程度であり、悲劇の女王とも言えるビリー・ホリデイなどと比べても、全体像はあまり研究されてこなかったように思う。

人気の名盤 ANITA

白人女性ジャズ・ボーカルでは第一位の人気と実力はアニタではないか、と私は考えている。今回は、そんなアニタに関して再点検し、①黄金期とされるヴァーブ時代で2大名盤の次に聞くべきは何か?②切り捨てられているヴァーブ後の盤には聞くべき盤はないのか?という2大テーマで全部聞きに挑戦し、約60枚の参加盤を通し聞きした(多分、9割以上をカバー)。


初期の名盤集

その結果、ヴァーブ期が黄金期であることに間違いはないが、その中にも様々な良盤があること、そして60年代末に麻薬禍から復活したアニタが、75年以降に日本で認められることにより第2の黄金期を迎えたことも確認できた。


オスカー・ピータソンとの共演が粋な「SINGS THE MOST」

今回、新ジ談メンバー3人による談義の結果、第1位はダントツで「(ジス・イズ)アニタ」、そして第2位が「シングズ・ザ・モスト」かと思いきやまさかの第4位であった。handは強力にプッシュしたもののショーン氏の評価が得られなかったので仕方ない。


そんな中で健闘したのが「スリー・サウンズ」と「スィング・ロジャース&ハート」の2枚であった。そして、第2の黄金期は良盤が多く混戦となったが、「ライブ・イン・トーキョー1975」がなんと堂々の第2位となったことは大きな意義があると思う。(hand)

アニタ第二の黄金期のスタートは日本ライブから



おすすめ盤 1位:(THIS IS) ANITA / Anita O'Day

④⑥⑦⑫:1955.12.6 ③⑤⑨⑪:1955.12.7 ①②⑧⑩:1955.12.8

Verve

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Anita O'Day(vo),

④⑥⑦⑫:Pal Smith(p), Barney Kessel(g), Joe Mondragon(b), Alvin Stoller(ds)

①②⑧⑩:Pal Smith(p), Barney Kessel(g), Joe Mondragon(b), Alvin Stoller(ds), Milt Bernhart, Lloyd Elliot, Joe Howard, Si Zentner(tb)

③⑤⑨⑪:Pal Smith(p), Barney Kessel(g), Joe Mondragon(b), Alvin Stoller(ds), Corky Hale(harp) + Strings

黄金のヴァーブ時代のアニタの最高傑作

黄金のヴァーブ時代のしかもアニタの最高作とされている盤。この盤も4トロンボーンやストリングも入り一種のビッグバンド盤ではあるが、従前のようなスイング時代のバンドシンガーではなく、アニタとその伴奏をするのがモダンなポール・スミスのピアノを中心に、バーニー・ケッセルのギターも擁したリズム隊+バディ・ブレグマン指揮のジャズオーケストラになっているのが大きな変化だ。「イブニング」から1年足らずだが、録音も格段に進化し、アニタの表現力は微細から大胆まで幅が出て、声のツヤも最高の状態にある。スインギーな曲からバラードまで、名唱ぞろいだ。録音月日が従前は56年2月とされていたが、近年の盤では55年12月6~8日、ロス録音の前年作となっている。「ジス・イズ」は日本で追加されたタイトルで、元は単なる「アニタ」。ヴァーブのレーベルとしての初盤という記念すべき盤。(hand)

アニタ・オディといえば粋なカッコよさ。それが最大限に発揮された傑作盤。冒頭のYou're The Top!で後半歌詞を変えてYou're The Bop!と、サラ・ヴォーンやチャーリー・パーカー,マイルスまで登場させるあたりは、ジャズヴォーカルらしい粋なかっこ良さだ。伴奏はバディ・ブレグマン楽団ということだが、すべてがフルオーケストラではなく、ポール・スミス(p)、バーニー・ケッセル(gr)を擁するカルテット、それに4トロンボーンを加えたもの、そしてストリングスを加えたフルオーケストラと、曲調により編曲も工夫された変化に富んだ一枚。ポール・スミスのセンス良いバッキングが光り、特にカルテットによるWho Cares?でピアノがアニタのボーカルに絡むあたりのジャズ的な魅力などは素晴らしい。(しげどん)

素晴らしい!アニタのイキイキとした歌いっぷりは、色褪せることなく今でも聞き惚れてしまう。軽やかなノリとハスキーな声色は他の誰に変えることのできない彼女の武器で、このアルバムではそんなアニタの魅力を隅から隅まで感じることのできる名盤だろう。 (ショーン)



おすすめ盤 2 位:LIVE IN TOKYO 1975 / Anita O'Day

1975.6.19

Trio

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★☆

Anita O'Day(vo), Merrill Hoover(p), George Morrow(b), John Poole(ds)

日本での人気に気を良くしたアニタ完全復活のきっかけと言えるライブ。日本タイトルは変遷

75年4月に「1975」で復帰を遂げ、63&64年から久しぶりの2回目の来日公演。この時、この郵便貯金ホールでのライブ録音と、スタジオ録音で「マイ・シップ」の2枚の良質な録音を残している。盤は、この時期の外タレのライブでよく聞かれるイソノテルヲ氏のMCで始まる。ピアノトリオをバックに、激しくはないが温かみのある日本の声援に徐々にノッてくるアニタとバックの3人がいる。②ユビソなどヘレン・メリルの人気曲をアニタに歌わせたのは日本側ではないかと疑うが、アニタは物ともせずその後の得意曲にしてしまっているのはさすがだ。ラスト2曲⑩⑪が『真夏の夜のジャズ』と同じなのも日本人的なあざとい演出だ。この盤は、最初、日本のトリオ・レコードから同タイトルで出た後、米エビデンスから「アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー」、日アブソード・ミュージックから「ゴーン・ウィズ・ザ・ウインド」、独ストーリービルから「ア・ソング・フォー・ユー」とタイトルもジャケも変えて出された。現在は、日本のウルトラ・ヴァイブから元タイトルに戻って出ているのと同時にエミリーからも別ジャケ盤が出ている。こうした混乱はできれば避けてほしい。アニタは56才。アニタは生涯に10回来日しているが、これ以降、毎年のように来日し、素晴らしい録音を残していく。(hand)

楽しい雰囲気のライブ。前作も日本の企画らしいので、この来日によって日本が好きになってくれたのでは?と思う。良く知ったスタンダードもアニタらしい動きのあるフェイクぶりで、観客も乗っている感じだ。ファンサービスのリクエストはスィート・ジョージア・ブラウン&二人でお茶、を真夏の夜のジャズ的に演じているが、でも少し変化を持たせた感じで、こんなコンサートに居合わせたらファンは大喜びだと思う。(しげどん)

スタンダードばかりのライヴで聴きやすく楽しい。ただアニタが色々話しても、日本人は英語の理解が出来ていないので反応が悪く、日本人として申し訳ない気持ちになる。もう少し双方向に理解が深まれば、もっと盛り上がるライヴになったことだろう。それを差し引いても、アニタの明るく魅力的な歌声にアドリブとスキャットが冴える良いライヴアルバムだ。(ショーン)



おすすめ盤 3 位:ANITA O'DAY & THE THREE SOUNDS

1962.10.12-15

Verve

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★☆

2㏌1盤も入手しやすい

Anita O'Day(vo①③⑤⑦⑨⑩⑪), Gene Harris(p), Andrew Simpkins(b), Bill Dowdy(ds), Roy Eldridge(tp⑦⑪)

ヴァーブのラスト作はスリー・サウンズとの共演盤

ヴァーブのラスト作で、62年に録音・発売されている(ただし、60年録音の「インコンパラブル」が64年に発売)。アニタの登場が約半分のこの盤、そのせいか、いつ聞いても中途半端な感じが漂ってしまう。アニタもスリー・サウンズも決して悪い出来とは思えない。それぞれで1枚分録音して発売してくれたら、どちらもなかなかの盤になったと思える内容だ。アニタに限って言えば、⑦ウィスパー・ノットや⑩貴方と夜、のような、モダンジャズのヒット曲を中心にして欲しかった。この2曲は最高の出来だと思う。この2曲のような路線で行けば、モダンボーカリストとしてのアニタの新たな道を切り開けた気もする。ちなみに3サウンズでは⑧ブルース・バイ・ファイブが素晴らしく、両者ともに旧B面5曲がいい内容だ。旧A面5曲はアニタ入りの3曲が全てバラードで、アニタのスインギーな本領が発揮できていない。日本盤追加4曲のうちロイ・エルドリッジとの⑪レット・ミー・オフの再演は雰囲気が合わず絶対に入れないで欲しかったので、とりあえず没テイクにしたのは正解ではあるとは思うが…それでも私の苦手なプロデューサー、クリード・テイラーの盤作りは理解に苦しむ。(hand)

演奏は素晴らしいがアルバムの編集としてはどうか?という名盤がジャズ史には多く存在するが、この一枚もそのようなアルバムだ。アニタは、オーケストラを従えた盤が多かったので、ピーターソンがバックを勤めたSwings The Mostのような名盤を期待する。でも、アルバムとしてはかなり雰囲気が違うのだ。スリーサウンズのバッキングはすばらしく、アニタ・オディの新たな魅力を引き出している。でも10曲中4曲はスリーサウンズのインストナンバーなので、スリー・サウンズに耳が行ってしまう。というのはこの4曲がかなりいい感じなのだ。アルバムとしての統一感はどうかと思うが、スリーサウンズは、バッキングもトリオ演奏も良いので、この寄せ集め感もヴァーブらしく、ジャズらしい名盤だ。ロイ・エルドリッジが一部客演していて、CD追加テイクでは往年の「Let Me Off Uptown」もやっている。なぜこの企画でこの曲を、しかも当時のルーティンでさせるのか?理解に苦しむがどうせ没にするなら、最初からさせずに普通のスタンダードをさせたら良かったのにと思うが、エルドリッジがそうしたかったのか?(しげどん)

しっとりと歌い上げるアニタ。このアルバムでは、アニタが歌っていない曲が半分あるが、Gene Harrisのピアノ、Roy Eldridgeのトランペットが奮闘していて、jazzのアルバムとしてのまとまりは良い。でもやっぱりアニタが歌った方が圧倒的に曲は引き締まる。(ショーン)



おすすめ盤 4 位:ANITA SINGS THE MOST / Anita O'Day

1957.1.31

Verve

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★☆

Anita O'Day(vo), Oscar Peterson(p), Herb Ellis(g), Ray Brown(b), John Poole(ds)

モダン・ジャズ・ボーカルのお手本とも言える大名盤

「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」とともに、ジャズを聞き始めた当初から聞いている愛聴盤。古いLPやCDでは録音が56年5月10日となっていたが、近年のCDでは57年1月31日となっていて、56年12月の「ピック・ユアセルフ・アップ」の前から後ろとなった。ハーブ・エリスのギターとレイ・ブラウンのベース入りのオスカー・ピーターソン4というヴァーブ最強かつシンプルなリズム隊とバンドシンガー的な唱法から脱した絶頂期のアニタの組合せ、そしてアニタ向きの名曲11曲がうまく選曲・配置され、どの曲も、歌謡曲のヒットシングル盤のように耳に残る。モダンジャズボーカルのお手本とも言える大名盤だと思う。(hand)

オスカー・ピータソン・カルテットという最重量級のバックを得て、聞きなれたスタンダードをジャズらしく唄うアニタ。有名スタンダードでもテンポなどを工夫し、アニタらしいオリジナリティあふれる味付けがされていて、冒頭のS’WondefulなどもThey Cant Take Awayが間に挟まり変化に富んでいる。ピーターソンの凄腕テクニックは安定感抜群だ。(しげどん)

まとまりのない雑多な印象のアルバム。録音があまり良くないのせいなのか、アニタの声はがさついて重苦しく感じる。重い低音ばかりが耳についてしまい、厳しめに言うと、あまり長く聴いていられない。ジャケットの写真も微妙。(ショーン)



おすすめ盤 5 位:SWING RODGERS & HART / Anita O'Day & Billy May

1960.6.6-8

Verve

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★☆

Anita O'Day(vo) with Billy May and His Orchestra

ポーター集の続編だがロジャース&ハート集は好盤

ストリングスを多用したビリー・メイのかなりスイートなビッグバンドとの再共演。「コール・ポーター」、「クール・ヒート」というこの時期の似た盤3枚の中では、この盤が出来がいいと感じた。アニタの気に入った編成と、ロジャース&ハートの曲が合っているのか、とてもイキイキした歌声になっている。「ジス・イズ」に近い好調さも感じる。(hand)

ビリー・メイとのコール・ポーター集の続編的なロジャース&ハート集。ストリングスも使っている一般受け寄りのアレンジで、曲調のせいもあろうが、ポーター集の歯切れの良いジャズらしいカッコ良さに比べてややしっとりとした歌唱が多い印象。アニタのボーカルはつややかだ。(しげどん)

アニタの可愛らしい歌声が満喫できる楽しいアルバム。バックにビッグバンドを従えたアニタの歌いっぷりはレトロな雰囲気の中、小気味良くリズムに乗って、心がぽっと明るくなる。(ショーン)



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・Anita O'Day CDリーダー作① バンドシンガー時代(1941-1959)

・Anita O'Day CDリーダー作 黄金のヴァーブ期(1955-1962)

・Anita O'Day CDリーダー作 麻薬禍からの復活期(1963-1972)

・Anita O'Day CDリーダー作 第二の黄金期(1975-1979)

・Anita O'Day CDリーダー作 晩年を迎えるアニタ(1981-2005)