モダン・ジャズでバリトン・サックスと言えば、普通は最初に出てくるのはジェリー・マリガンだと思います。ところが、ここ新ジ談では、最初のバリ奏者がペッパー・アダムス(1930.10.8~1986.9.10)となりました。やはり、3人ともモダンジャズ=ハードバップが好き!というのが第一の理由ではないでしょうか。重厚なバリを軽々と吹き、激しいソロを聞かせてくれる熱いバリ奏者、アダムスについて談義してみました。
アダムスは、ミシガン州デトロイトの出身です。デトロイト出身のジャスメンは多く、デトロイターと呼ばれています。ジョーンズ3兄弟、ドナルド・バード、トミフラ、ポール・チェンバースなどそうそうたる面々がいて、後にニューヨークに出てジャズシーンの中心人物となっています。アダムスもその1人と考えていいでしょう。初期にはスタン・ケントン楽団に入ったり、西海岸で活動したりしていましたが、中期からはニューヨークに拠点を置き、サド=メル楽団等でも活躍しました。後期には、ワンホーンのリーダー盤を数多く発表するようになりましたが、肺がんのため55歳の若さで亡くなってしまいました。そんな生涯のあらゆる時期からオススメ盤を談義して選びました。(しげどん)
今回はメンバー3人の意見が大きく分かれたように思う。特に第1位が3人とも違う盤を推薦した。その結果、3人が2位推薦した「クリティックス・チョイス」が結果的に第1位となった。2位には、後期のワンホーン盤の中から3人の評価が比較的高かった「ライブ」(ライブ・イン・ダグラス)が選ばれた。3位はショーン氏イチ押しのハンコックの入ったアダムス=バードの「アウト・オブ・ジス・ワールド」。4位には、Vol.1,2ともに高い評価となったが僅差で「ジャズ・フォー・ア・サンディ・アフタヌーンVol.1」が選ばれた。ラスト5位には、低音が魅力の「ペッパー=ネッパー・クインテット」が滑り込んだ。その他は、私handイチ押しの「ライブ・イン・ヨーロッパ」、しげどんイチ押しの「ライブ・フロム・ザ・トップ」という後期のライブが健闘した。アダムス=バードの初期ライブ「10・トゥー・4・アット・ザ・5スポット」も評価が高かった。(hand)
・新宿ジャズ談義の会 :ペッパー・アダムス CDレビュー 目次
Pepper Adams(bs),
Lee Katzman(tp:1,3-6), Jimmy Rowles(p), Doug Watkins(b), Mel Lewis(ds)
ワールド・パシフィックという西海岸レーベルからのリーダー盤ながら、イーストのハードバップ盤の感じがする。録音はロサンゼルスだが、東海岸を感じる音だ。トミフラの①マイナー・ミスハップなど選曲のせいか、メンバーのせいかわからないが、きっとその両方のせいだろう。特にダグ・ワトキンスのベースが東海岸を色濃く感じさせる音なのだろう。アダムスと同じデトロイターだが、既に20歳の1954年にはニューヨークに進出している。別テイク前のラスト曲、サド・ジョーンズ作の⑥5021は名曲で、トミフラ盤「バラード&ブルース」や「コンファーメーション」にも入っていて、特に前者は私の愛聴盤だ。この曲がコンボでやっても名曲だとわかった。CDには⑦フォー・ファンキー・フォークが収録されている。元々はワールド・パシフィックのオムニバス盤「ブローイン・ザ・ブルース」に分散収録されていた同時期(10日前)の録音。フォー・ファンキー・ピープルと誤記された盤がある(私の所有するマイティ・クイン盤)。この日の録音は、まだ3曲が未発表ある。この3曲には、テナーでハービー・スチュワードが入っている。是非、発掘してほしい。(hand)
クールで端正なマリガン、保守的にメロディアスなチャロフに対し、アダムスはハードバップ的にバリバリ吹くのが彼の真骨頂ではないかと思う。この作品はそのような彼の良さが良く出始めていている。フリーキーには流れていないこの時期の典型的なハードバップ作品という感じで、愛聴に値するとても聴きやすいいい作品だ。(しげどん)
いきなり管楽器のハーモニーで力強く駆け上がるスタート。緩急織り交ぜた曲構成は聴く者を惹きつける力を持つ。ややもたつき気味なところもあるペッパーだが、それも味だ。(ショーン)
Pepper Adams(bs),
John Marabuto(p), Bob Maize(b), Ron Marabuto(ds)
冒頭からパーカーの曲で始まるが、マリガンやチャロフと違って、バリトンをバップ的にバリバリ吹くのがアダムスの真骨頂だと思うので、このようなバップチューンは彼の魅力をよく表現していると思う。「Bossa Nouveau」は、より熱く演奏されている。(しげどん)
ゆったりとした時を感じる大人の演奏。特にバラードは、メロディアスなピアノと畝るベースラインのサポートにより、完成されたハイレベルで聴き応えのある曲に仕上がっている(ショーン)
「ライブ」(ライブ・イン・ダグラス)は、海賊的な超マイナーレーベルの盤で、米カリフォルニア州ハーフムーンベイのダグラス・ビーチハウスでの録音。単なる「ライブ」は、タイトルとしてひどすぎると思う(ジャスト・ジャズからは、フレディ、ブルー・ミッチェルなども「ライブ」が出されている)。ただ、内容はとても素晴らしく、エンヤ盤「ジュリアン」の紹介文に書かれていた『カミソリ並みの切れ味でバリバリと切れ込むアダムス』は、この盤にこそ似合っていると思う。勢いのある熱い演奏が好きな私には、「ライブ・イン・ヨーロッパ」に次ぐライブだと思っている。特に②身も心も、は迫力がある。ラスト⑤ブルース・アウトは短いが、私好みのベースから始まるカッコイイ演奏だ。(hand)
Pepper Adams(bs), Donald Byrd(tp),
Herbie Hancock(p), Raymon Jackson(b), Jimmy Cobb(ds), Teddy Charles(vib)
冒頭のアウト・オブ・ジス・ワールドから、ドナルド・バードの語るような情緒溢れるトランペットと、ペッパー・アダムスの力感のある豊かなバリトンの響きがメロディアスに交差して、独自の世界を作っており素晴らしい。アルバムを通して、どの曲も完成度は高く、寛ぎを感じることができる秀逸盤だ。(ショーン)
とにかくカッコいい盤。名盤と言っていいと思う。バード=アダムスではなく、アダムス=バード名義だが、2人ともそれには関係なくいつものコンビネーションで演奏している。アダムスに注目して聞いてみると、エッジの立ったハードボイルドでカッコいい演奏をしていおり、バードの回より☆を追加することにした。新人ハンコックの加入も盤のクオリティを高めている。タイトル曲①はもちろんいいが、バード曲②クロスがファンキーなハードバップでカッコいい。デビュー録音のハンコックは、ややエバンス的なピアノで、カッコよさに貢献している。ベースはレイモン・ジャクソン、ドラムはジミー・コブ。③のみバイブでテディ・チャールズが参加。メンバーがいいだけでなく、曲もいいので、とてもいい盤に仕上がっていると思う。2010年発売のフレッシュサウンド盤は、未発曲おいらは老カウボーイ、が入ってはいるが、曲順がガラガラポンされてしまったのは共感できない。やはり冒頭はアウト・オブ・ジス・ワールドから始まるのがいい。老カウボーイは、ハンコック名義にして、テープを切り貼りしてしまった盤「ジャミン・ウィズ・ハービー」に唯一ハサミなく収録されていた曲だ。(hand)
ドナルド・バードとは3年ほどレギュラーで活躍しており、ブルーノートにも作品が多く残されている。ハービー・ハンコックの入った盤もブルーノトのLTシリーズであり、この作品でおまけ音源になった「老カウボーイ」も、そのLTシリーズ「Chant」でも演じていた。テーマ曲は録音にエコーがかかり凝りすぎな印象だが、全体的には普通にスタンダードも多く交えたハードバップ盤。逆に強い印象は残らなかった。(しげどん)
Pepper Adams(bs), Dizzy Gillespie(tp), Ray Nance(vln),
Chick Corea(p), Richard Davis(b), Mel Lewis(ds:1,3,4), Elvin Jones(ds:2)
ヴァイオリンの弦楽器と、バリトンサックス、トランペットの管楽器の音競演が、JAZZを超えた独特の緊張感のある音楽世界を構築している。日曜の昼下がり、少し暗い部屋から外の眩しい光を感じながら、軽く昼呑みしたくなるような、そんな気だるい感覚を味わうことのできるとてもユニーク無二の1枚だ。(ショーン)
厳密にはアダムスのリーダー盤ではないと思うが、リーダー的立場の1人として参加したセッションではあると思う。やはり先輩格のディジーが目立つことは事実で、ディジー盤として発売されたこともある。①ブルース・フォー・マックスのマックスは、ローチかゴードンだろう。ディジーのトランペット、レイ・ナンスのバイオリンとソロが続く。雰囲気は、なぜかミンガス、そしてエリントンだ。再びディジーとなり、次にアダムスがやっと出てきて安心する。アダムスにしては、ゆったりしたソロだ。②以降もソロオーダーはほぼ同じで、フロント3人のソロ回しを楽しむ盤になっている。④はナンスがとても良く、エリントンバンドではなかなか聞かれない素晴らしさだ。その後のディジーのソロでは、どんどんファンキーになり、JMのアー・ユー・リアルのような雰囲気となる。レイ・ナンスは、スイング時代の人と思っていたし、実際そうなのだろうが、ここでのモダンジャズへの適合度は、とてつもなくて、モダンを超えてフリーの領域にまで達しようかとするほどだと思う。アダムスのソロは、②③④がいい。スタンダードはあまりやらない人だか、アダムスのスタンダードが私は好きだ。④はCD追加テイクで、他曲もハサミを入れられていたようなので、CDが絶対にオススメだ。(hand)
レイ・ナンスは懐かしい名前。ガレスピーといい、ふつうにソロを楽しめれば充分だと思える良いメンバーで、退屈しないで聴ける楽しいライブ盤。ジャケットのイラストはテナーサックス、クラリネット、ギターと、演奏で出てこない楽器が描かれていて、どうでもいい話かもしれないが、テキトーすぎるな~、と気になるのだ。(しげどん)
Pepper Adams(bs), Jimmy Knepper(tb),
Wynton Kelly(p), Doug Watkins(b), Elvin Jones(ds)
トロンボーンとバリトンサックス、ノリが良いのに落ち着きがある、そんな大人のコンピネーションが素晴らしいアルバムだ。そこはウィントン・ケリーのピアノが大きく貢献している。メロディアスであり叙情的なお膳立てをしているのだ。オルガンの評価は分かれるかもしれないが、私はアリだ。(ショーン)
セールスを意識すれば、名盤請負人のウイントン・ケリーのケリー節が全開の感じなので、この点だけでも一聴の価値がある作品だとアピールするべきだと思う。リズムセクションも完全にウエストコースト派から離れたハード・バップ作だ。彼のソロの個性は際立っているが、デビュー作からアルバム作品としては一作づつ方向を模索しているようにも思える。(しげどん)
ミンガスつながりなのか、低音コンビがフロントのペッパー=ネッパー・クインテット。なかなか食指の動かない組合せで、ジャケもそれほど魅力的ではない。ただ、聞いてみると、それほど悪くないし、むしろ、なかなかいい。ミンガスほどの緊張感はないが、そのぶん2人ともくつろいだ伸び伸びとしたソロになっている。ケリーの参加も嬉しく、ワトキンスとエルビンもいい。⑥では珍しいケリーのオルガンが聞かれる。あまり知られていないが、良質なハードバップ盤だと思う。なお、Fresh Sound盤はLPと同じ7曲だが、American Jazz Classicsというレーベル盤にはオマケ3曲が入っている。ただ、これはサボイのソニー・レッド入りの盤「ジャズ・イズ・バースティング・オーバー」と「2アルトズ」収録の3曲と同じものだ。2024年8月1日猛暑の午後に聞いているが、冷房の中で、破壊力のある低音コンビの2人の音が快適に感じられる。(hand)
・新宿ジャズ談義の会 :ペッパー・アダムス CDレビュー 目次
ジャズCD 15000枚所蔵しているモダンジャズマニアhand氏、高校生の頃からジャズにはまり40年以上聴き続けているアナログ&トラディショナル派のしげどん、元々はビートルズマニアだったのが二人に巻き込まれてジャズファンに染まったショーン氏。三人それぞれの視点でジャズを楽しく論じているページです。
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