Anita O’Day アニタ・オディ リーダー作③黄金のヴァーブ期に引き続く60年代

黄金のヴァーブ期に続く60年代の残りの時期です。この時期、アニタは薬物中毒と闘いながら歌手活動をしていたようです。66年には薬物と縁を切る覚悟でしばし引退し、無事に縁を切って70年に復活したと思われます。復活後の回復期はややエネルギーが不足しているようにも感じますが、歌唱上の問題は言われているほどはないと思います。(しげどん)

・新宿ジャズ談義の会 :アニタ オディ  CDレビュー 目次

・Anita O'Day  おすすめBest5

・Anita O'Day CDリーダー作① バンドシンガー時代(1941-1959)

・Anita O'Day CDリーダー作 黄金のヴァーブ期(1955-1962)

・Anita O'Day CDリーダー作 麻薬禍からの復活期(1963-1972)・・・このページ

・Anita O'Day CDリーダー作 第二の黄金期(1975-1979)

・Anita O'Day CDリーダー作 晩年を迎えるアニタ(1981-2005)

アニタは、50〜60年代のヴァーブ期(1952〜62年の11年間)が黄金時代として知られている。ヴァーブ後の盤については、アニタ好き以外には顧みられてこなかったのが現状だと思う。そのようなアニタについて、ヴァーブ期後には聞くべき盤はないのか、改めて通し聞きして確認してみた。結果は、薬禍から立ち直るために60年代末の数年を費やし、その間の録音の欠落は多少あるが、歌唱自体はほぼ衰えることなく継続していたことが分かった。(hand)


ONCE UPON A SUMMERTIME / Anita O'Day

①⑤⑥⑫:1963.6

⑦⑧⑪:1970 or 1971

③④:不明(late 1960’s?)

②⑩:不明(late 1960’s?)

⑨:不明(late 1960’s?)

Jasmine

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'Day(vo), John Poole(ds),

①⑤⑥⑫:George Ingdahl(p), Ramon Dylang(b)

⑦⑧⑪:Kirk Lightsey(p), John Dana(b)

③④:Stan Tracey(p), Lenny Bush(b),

②⑩:George Morrow(b)

⑨:Ray Dewey(p), Red Wooten(b)

60~70年代にかけての貴重な録音

60年代末(late 1960’s)というデータのみのジャスミンからのCD。調べてみると、エミリー・レーベルの元レーベルであるアニタ・オデイ・レーベルの2作目で、レコード番号AOD-2の白っぽいジャケだ(AOD-1の「リズム・セクション」は1971年盤で2022年現在、未CD化。このレーベルは2枚で終了してエミリー・プロダクションに衣替えし、現在に続いている。)。この同じジャケで72年にトリオから日本盤LPが出ている。その後、82年に米グレンデールと英ジャスミンが青っぽいジャケのLPを出し、92年にジャスミンが同じジャケでCD化している。海賊風のジャケなので海賊盤と勘違いしていたが、正規音源だったのだ。また、60年代後半から70年代初頭の録音とされる数少ない音源の一つだ。前半はストックホルムのサマーコンサートとの表示が白LP裏にある。タワレコHPでの米評論家スコット・ヤナウの解説では、4曲(①スイート・ジョージア・ブラウン、⑤ブギー・ブルース、⑥ティー・フォー・トゥー、⑫バークレースクエア)が1963年6月のストックホルム録音で、残りは75年から76年までのものとされている。しかし、日本盤が72年に発売されており、このコメントの後半は間違いであろう。70年代としても70又は71年と思われる。実際、アニタの60年代末は、ヤク抜きのために費やされたとされており、録音は少ない。海賊レーベル、ムーンの「ティー・フォー・トゥー」は66年7月26,27日に仏アンティーブのジャズ・フェスに出演した記録で、これがラストだとされており、残り曲も60年代のものであるなら、この時期までのもののはずだ。アナログ盤とCDでは収録曲が微妙に違うのも謎だ。5つのセッションが混在して収録されており、ピアノがステイシー・ケントの2曲③④は英国録音と想像され、他の3セッションは米国録音と思われる。ブラウン=ローチで知られるベースのジョージ・モロウとジョン・プールのピアノレスの2曲②⑩も面白い。他はカーク・ライトシー3との3曲⑦⑧⑪、聞いたことないレイ・デューイ3との1曲⑨が入っており、それぞれは魅力的な音源だ。⑥ティー・フォー・トゥーなどはノリノリで、いい感じだ。アニタのボサ⑧イパネマは珍しく、ガールをボーイに変えて歌っている。ただ、ジャスミン盤はチェコでプレスした粗悪品が多く、最初買ったものは再生中に止まってしまい、買い直した。(hand)



LIVE IN TOKYO 1963 / Anita O'Day

1963.12.30

Kayo Stereophonic

おすすめ度

hand      ★★★★

Anita O'Day(vo), Bob Corwin(p), Buddy Bregman(arr),

①-④,⑪-⑮:宮間利之とオール・スター・オーケストラ(ニューハード)

⑤-⑩:猪俣猛とウェスト・ライナーズ

初来日時にTBSがテレビ番組用に録音(録画)

アニタの初来日(1963.12〜64.1)を捉えて、TBSがテレビ番組用にスタジオで録音・録画したもの。なので、最初にDVD が2007年に出て、後からCD化されている。ビッグバンド(宮間利之とニューハード)とコンボ(猪俣猛とウエストライナーズ)の2種類の組合せで豪華だ。日本人演奏者の水準は高いと思うが、余裕のあるアニタにいいように牛耳られているようにも感じる。60年代アニタ不調説が間違いであると言える好調さで、②トラヴェリン・ライトなどは元の61年ヴァーブ盤よりもトラヴェリン感は出ていると思った。曲が短いのと、DVDは画素が粗いので、内容が素晴らしいだけに、とても残念だ。(hand)



LIVE IN TOKYO 1964 / Anita O'Day

①-⑧:1964.1.12

⑨⑩:1956.11.12

⑪-⑬:1957.7.1

S.S.J.

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'day(vo),

①-⑧:Bob Corwin(p), 伏見哲夫(tp), 鈴木重男(as), 原田忠幸(bs), 滝本達郎(b), 猪俣猛(ds) 

⑨⑩:Curtis Counce(b), Jack Sheldon(tp), Harold Land(ts), Carl Perkins(p), Frank Butler(ds) 

⑪-⑬:Diz Mullin(tp), Dave Wells(b-tp,tb), Bob Young(ts), Alan Marlowe(p), Jimmy Crutcher(b), John Poole(ds) 

初来日時に年越ししたアニタのライブ

63年12月に初来日したアニタが、日本で年越しをして、64年1月12日に有楽町のビデオ・ホールでのライヴを収録した音源8曲。テナー入りのピアノトリオが歌伴で、12月のテレビ同様に好調なアニタの記録だが、12月のほうがバンドシンガー的でアニタは楽しそうに感じた。後半オマケ5曲は、米TV番組『スターズ・オブ・ジャズ』にアニタが出演した記録(1956年11月12日・1957年7月1日録音)。⑨ユア・ザ・トップ、は大名盤「ジス・イズ」以来で珍しい。⑨⑩はハロルド・ランドなどのメンバーも素晴らしい。(hand)



SO NICE SAMBA(SERIA DEL ARTE) / Anita O'Day

①-④:1964?

⑤-⑧:1969?

⑨⑩:1981.12.21(Misty同)

⑪-⑬:不明

⑭-⑯:不明

Emily Productions

おすすめ度

hand      ★★★★

Anita O'day(vo),

①-④:Gene Krupa 7

⑤-⑧:p,b.ds,fl

⑨⑩:Don Abney(p)

⑪-⑬:p,b,ds,sax

⑭-⑯:Bob Harrington(p), Bob Whitlock(b), John Poole(ds)

1997年の米ジャズ・マスターズ賞を受賞記念盤

2012年エミリーから出された発掘盤CD。当初「セリア・デル・アルテ」として出され、現在は、表ジャケのみ「ソー・ナイス・サンバ〜サンフランシスコ1969」としてタイトル変更されているが、盤そのものや裏ジャケ、背タイトルは「セリア・デル・アルテ」のままだ(2022年5月エミリーから私が個人輸入した盤)。Seria Del Arteとは、Would Be Art、芸術に該当、のような意味で、アニタが1997年に米ジャズ・マスターズ賞を受賞したので、このタイトルを付けたようだ(同時受賞はミルト・ジャクソンとビリー・ヒギンズ)。CDには、ディスコグラフィー的な記載は全くなく、Amazonカスタマー・レビューのパトリック・O・ムーア氏のコメントが唯一の頼りで、信頼できると思う。①〜④は1964年のラスベガスでのジーン・クルーパとセプテットとのクラブ15での再共演。⑤〜⑧は1969年のサンフランシスコのライブでフルート入り。新タイトル曲⑤サマーサンバ(ソー・ナイス・サンバ)が入っている。⑨⑩は1981年12月21日の日本でのスタジオ録音盤「ミスティ」からの再収録でドン・アブニーとのデュオ。⑪〜⑬はピアノトリオにサックスが加わったライブで録音データ不明。⑭〜⑯は多分イギリスでのライブ。メンバーはジョン・プールのドラム、ボブ・ウィットロックのベース、ボブ・ハリントンのピアノ。と推定されている。ありがたいコメントだ。見た目は海賊的な作りで、録音も約20年間にわたるものだが、音も比較的良く、エミリーがディスコグラファーが怒るのを覚悟で年月不明の盤を発売したことが理解できるくらいの楽しめる内容になっている。(hand)



THE BREAKFAST SHOW / Anita O'Day

1964.12.16

Emily Productions

おすすめ度

hand      ★★★★

Anita O'day(vo), Al Plank(p), Al Obidinski(b), John Poole(ds) 

1964年のクリスマス・ライブ・ショー

1964年のクリスマス・ライブ・ショーの記録。同じエミリーの「エッセンス」に第二部が収録されている。エミリー盤は、見た目は海賊風だが、正規ライブ録音なのか音はいい。この録音を聞くと、ヴァーブ後の不調説は間違いだと実感する。⑥クリア・デイなどは絶好調そのものだ。ラスト⑭イエスタデイは、後年はジャズのイエスタデイズとメドレーで歌うが、この時はポップ・ロックつながりか、表記はないがウォーク・オン・バイとのメドレーになっている。この曲は、64年4月リリースでディオンヌ・ワーウィックがヒットさせていて、アニタはクリスマスにはこれをフォローしているという素早さだ。(hand)



THE ESSENCE OF O'DAY / Anita O'Day

①-⑧:1964.12.16

⑨-⑭:1984

Emily Productions

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'day(vo), John Poole(ds)

①-⑧:Al Plank(p), Al Obidinski(b)

⑨-⑭:Joe Castro(p), Carson Smith(b) 

1964年のクリスマス・ライブ続編+α

2014年の発掘盤。同じエミリーの「ブレックファースト」が同日の早い時間のショーで、こちらが遅い時間のショーだ。この頃、アニタは45歳だが、声がとても若々しく感じる。また、この盤には1984年クリスマス録音のオマケが6曲入っている。続けて聞くと、20年で多少の声の衰えは感じるが、よく頑張っていて、許容範囲だと思う。(hand)



TEA FOR TWO / Anita O'Day

①-⑩:1958.7.7

⑪-⑯:1966.7.26 & 27

Moon

おすすめ度

hand      ★★★★

Anita O'day(vo), John Poole(ds)

①-⑩:Jimmy Jones(p), Red Mitchell(b)

⑪-⑯:Tete Montoliu(p), Erik Peter(b)

『真夏の夜のジャズ』のニューポート音源と一時引退前のラストライブ

前半①〜⑩は、1958年のニューポート・ジャズフェス出演時の音源で、映画『真夏の夜のジャズ』のアニタ出演分の全体像で、ピアノがジミー・ジョーンズ、ベースがレッド・ミッチェル、ドラムはジョン・プール。映画では2曲(スウィート・ジョージア・ブラウンとティー・フォー・トゥー)だが、実際には10曲だったようだ。後半6曲⑪~⑯が、仏アンティーブ・ジャズフェスに出演したアニタ。ドラムは前半と同じプールだが、ピアノにテテ・モントリュー、ベースにエリック・ペーターという欧州の面々が入り、強力なリズムが聞かれる。ピーターソン、ジーン・ハリスなど、単なる伴奏ではなく強力なリズム隊と組んだアニタは燃えて、いいアドリブをすることが多いと思う。フェスは1966年7月26日と27日の2日間にわたり行われ、アニタはこのライブをもって薬物と縁を切る決意で出演していたらしい。この時の画像がYouTubeにあるが、アニタの体調は、特に悪そうには見えない。歌のほうも、最も好調であった58年ニューポートと比べると声質が多少低くなり荒れた気もするが、歌の好調は継続していると思う。ただ実際には、ボロボロの状態であったのであろう。

※CDの表記は、前後半のメンバーと日時が逆になっている。アンティーブと70年にベルリンで復活した時のパリでの5曲を収録した「アンティーブ1966」(未所有)というレーベル不明の海賊盤も出ている。(hand)



LIVE AT THE BERLIN JAZZ FESTIVAL(LP) / Anita O'Day

1970.11.7

MPS

おすすめ度

hand      ★★★

Anita O'day(vo), George Arvanitas(p), Jacky Samson(b), Charles Saudrais(ds) 

復帰したアニタの欧州ツアーの記録

未CD化。正式録音という意味では、62年の「スリー・サウンズ」以来8年ぶりの復帰作だと思うが、次作が75年で、そこからは録音が増えるので、人気のあった欧州に招かれての一時的な公演を行っただけなのかもしれない(本作はベルリンだが、YouTubeには数日前の10月28日のパリでのライブ映像もある。)。内容は、よく言えばエレガントに歌っている感じなのだが、鉄火肌とも言われたアニタがやや体力が衰えているのか、エネルギーがやや不足していると思ったというのが正直な印象だ。後半は徐々に持ち直した感じもあるが、60年代末の苦しいヤク抜きで体力が落ちてしまっていた時期からの回復期なのかもしれない。75年録音では体力の戻った感があるので、復帰はしたが復活には至らない過渡期の録音なのだと思う。この盤のせいで、アニタの後期はダメ!と決めつけられる原因となった盤かもしれない。(hand)



ANITA AND RHYTHM SECTION(LP)  / Anita O'Day 未CD化

1971?

Anita O'Day

おすすめ度

hand      ★★★

Anita O'Day(vo),

A1,A4,A5:Ray Dewey(p), Red Wootten(b), John Poole(ds):late 1960’s?

A2,A6:Betty Loo(p), Kenny Siefert(el-b), John Poole(ds):録音年不明

A3,A7,B2:Kirk Lightsey(p), John Dana(b), John Poole(ds):1970 or 1971

B1,B3:George Ingdahl(p), Ramon Dylang(b), John Poole(ds):1963.6

B4:Gene Krupa 4:録音年不明

B5:Stan Tracey(p), Lennie Bush(b), John Poole(ds):late 1960’s?

アニタ・オデイ・レーベルの記念すべき初盤

アナログ蒐集家のN先輩にお借りして聞くことができた。パーソネルが詳細な割に録音月日の記載が全くないアニタ・オデイ・レーベルの2枚のうちの未CD化の1枚目。全12曲で37分足らずなので短い曲が多いのが残念なライブ録音集。アニタの歌自体は好調だ。メンバーから見ると、同じアニタ・オデイ・レーベルの第2作「ワンス・アポン・ア・サマータイム」と同日のセッションが多いようだ。(hand)



ESSENTIAL O'DAY BASIN STREET WEST 1972 / Anita O'Day

1972 or 1964

Emily Productions

72ジャケ

64ジャケ

おすすめ度

hand      ★★★★

Anita O'day(vo), Al Plank(p), Al Obidinski(b), John Poole(ds) 

当初1964だったが、いつの間にか1972となった謎盤

エミリーからの発掘盤で音がいい。録音月日は1964年か1972年かは不明だが、アニタが好調であることは間違いない。1964年というボサの最盛期にアニタは⑧クワイエット・ナイトを歌っていて、最新の曲をキチンとフォローしている、と思った。しかしこのCD、私が2022年3月にエミリー・レーベルから直接購入した盤のジャケはデザインは同じまま1964ではなく1972となっている。CDをPCに読ませると1964というタイトルが出てくる。メンバーは64年のクリスマスのライブ2枚と全く同じで64年っぽい。ライナーには72年のことが書いてあり、当初64年として発売したが本当は72年だったというようなことは全く書かれていない。英語力の低い私でも文中に1972以外の数字がないのはわかる(笑)。ネット上では64盤はあるが、72盤はない。ベイズン・ストリート・ウエストは、1964年にオープンし、73年に閉店している。67年からはロック、ソウル、R&Bなどが多かったようだ。録音年が謎の盤で、メンバー的には64年だが、音がとてもいいので72年のような気もしてくる。(hand)



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