ART PEPPER=アート・ペッパー リーダー作 CDレビュー  初期作品 1951年~1954年


このページでは、ペッパーの主要リーダー作の初期から服役までの作品をご紹介します。

彼はスタン・ケントン楽団入団前にベニー・カーターのバンドなどでもプロとして活動をしていたようですが、レコードは残っていません。

初レコーディングはスタン・ケントン楽団で、下記「ゾーズ・ケントン・デイズ」

で聴くことができます。彼の名前をフィチュアーした曲まで残っています。1951年のダウンビート誌の人気投票で彼はチャーリー・パーカーに次ぐ二位の人気のスター・プレイヤーになっていました。

スタン・ケントンを退団したのは1951年暮れで、直後にキャピトルにショーティ・ロジャースのバンドで吹き込んだ「Over The Rainbow」のソロはこの当時の名作と言われていて、多くのミュージシャンにカバーされました。

 モダン・サウンド=ウエスト・コーストジャズの原点のようなアルバム。上記ペッパーの「Over The Rainbow」を収録  1951年の録音

その後ハンプトン・ホーズをピアノにして初めて自分のコンボを編成し、ハリウッドのクラブ「サーフ」に出演。すでにスターだった彼の出演はダウンビート誌にも紹介され話題になったとのことです。

アート・ペッパーの自伝

この時にディスカバリーに録音した10インチLPが、彼の正規盤としては初のリーダーアルバムです。これは後年サヴォイから「サーフ・ライド」として翌年のクインテットの録音と合わせて一枚のLPにカップリングされ再発されました。また、この前後に非正規な私家録音でいくつかの音源が発掘されています。

このわずかな活動期間ののち、彼は1953年に麻薬の罪で逮捕、一時出獄するも仮出獄の際に再度麻薬所持で入獄してしまいます。上記自伝に詳しい経緯が述べられています。服役が終わり、本格的に再復帰するのは1956年になりました。



Those Kenton Day's  ゾーズ・ケントン・デイズ/アート・ペッパー

1943年~1951年

Capitol

おすすめ度

 hand     ★★★

しげどん ★★★☆

すでにスターだったケントン時代の作品を網羅

ケントン楽団のペッパー参加作だけ集めて一枚にした日本での企画盤で、やや資料的なアルバムだが、すでにスター・プレイヤーだったペッパーの初録音や、ケントン・プレゼンツでの名演「アート・ペッパー」など聴きどころは多い。ペッパーのつややかさはすでに表現されていて興味深い。(しげどん)

ペッパーのソロが多く入って素晴らしいが、やはりケントンのアルバム。ペッパー盤として楽しむのはなかなか難しい。(hand)

 

↑ペッパーをフィチュアーした「アート・ペッパー」が収録されている「スタン・ケントン・プレゼンツ」ジューン・クリスティ,メイナード・ファーガソンなど、当時のスター・プレイヤーたちのフィチャーナンバーも収録



Live At Lighthouse '52/Art Pepper ライブ・アット・ライトハウス/アート・ペッパー

1952年1月6日

Vantage

おすすめ度

  hand  ★★★☆

しげどん ★★★☆

Art Pepper(as),Shorty Rogers(tp),Jimmy Giuffre(ts),Milt Bernhart(tb),Frank Patchen(p),Haward Rumsey(b),Shelly Manne(ds)

音は悪いがライブとしてのまとまりある演奏

①ティックル・トゥ、この曲、こんなにカッコいい曲だった?と思うくらいのカッコよさ!ペッパーのアルトは鋭角的な音色で切れそうだ。東海岸から移ってきたばかりのシェリー・マンのドラムも激しくてカッコいい。ただし、やはり海賊なので音は悪い。それ以外の曲も悪くないがティックル・トゥが素晴らし過ぎて他は平均的に聞こえてしまう。⑤虹の彼方に、バラードでなくラテン風のミドルテンポだがこれもいい。(hand)

これもボブ・アンドリュースの音源。ライトハウスオールスターズは一応レギュラーバンドなので、そこにペッパーが客演した形のセッションなのだそうだ。だからまったくのジャムセッションではなく、西海岸らしいまとまりもあるし、若々しい熱いソロが展開される。(しげどん)



The Early Show/Art Pepper アーリィ・シヨウ/アート・ペッパー          The Late Show/Art Pepper レイト・シヨウ/アート・ペッパー

1952年2月12日

Xanadu

アーリィ・ショウ

レイト・ショウ

おすすめ度

 hand     ★★★

しげどん ★★★☆

 

Art Pepper(as,cl),Hampton Hawes(p),Joe Mondragon(b),Larry Bunker(ds,vib)

演奏は絶頂期のペッパーだが・・・

ペッパーのソロは良い出来だが、ザナドゥ盤はやはり海賊原盤なので、音が悪い。ペッパーは快調だが、この時期はまだ濃厚さが不足していると思う。レイトショーもアーリーショーと同日のライブなので、印象は変わらない。アップテンポのバップ曲のストレートライフ、スージーザプードルなどが好感だ。(hand)

 

スタン・ケントン退団後、初めての自己レギュラーグループを持ったペッパー。そのペッパー・カルテットの出演はダウンビートでも話題になっていたという。これはその時のライブ演奏で、ボブ・アンドリュースというアマチュア・ジャズファンが自分の機材を持ち込んで録音した私家録音。一月後に録音されたディスカバリー盤の初セッションと同一メンバーで、絶頂期のペッパーが聴ける歴史的な貴重盤なのだが、録音が悪くライブの臨場感なども味わえないので、一般的なおすすめ盤にはしにくい。(しげどん)



Surf Ride/Art Pepper サーフ・ライド/アート・ペッパー

Savoy

おすすめ度

 hand     ★★★☆

しげどん ★★★★☆

ショーン ★★★★☆

1952年3月4日     Art Pepper(as),Hampton Hawes(p),Joe Mondragon(b),Larry Bunker(ds,vib)

1953年3月29日   Art Pepper(as),Russ Freeman(p),Bob Whitlock(b),Bobby White(ds)

1954年8月25日   Art Pepper(as),Jack Montrose(ts),Claud Williamson(p),Monty Budwig(b),Larry Bunker(ds)

初期のレパートリーを網羅した必聴の重要作!

初期の3セッションを収録。「アーリー・ショー」などのライブでかなり吹いた曲をスタジオ録音したと思われる。録音のせいか、ペッパーの野太い感じが弱い気がする。サボイは野太い音が売りなのだが、この作品は元はディスカバリー原盤だからであろう。ウエストなのにイーストな感じもペッパーの魅力だが、ウエスト感が強いのも私好みの盤にならない原因だと思う。(hand)

初リーダー作及び第二弾作のディスカバリー盤10インチ2枚をカップリングしたもので、ケントン退団後の入獄前の唯一の正規リーダー盤。

天才児パッパーはすでにスタイルを完成させていると言っていい。A面のカルテットでのつややかなソロといい、B面のジャック・モントローズを加えたクインテットでのウエストコースト的なアレンジといい、後年の主要作に現れる要素が網羅されている。アップテンポからミディアムテンポの演奏が多く、後年に見られる陰影はあまりない。(しげどん)

ジャケットが気に入って最初は手にしたが、演奏も爽やかな南風といった感じで期待を裏切らない。ペッパーの見事なブローと3人のピアニストのプレイはどれもスピード感と緊張感に満ちて素晴らしい。またJack Montroseとの2管のハーモニーもノリ良く明るく元気が出る。Larry Bunkerのバスドラムのドスンドスン感がやや耳に煩く気になる。(ショーン)



Inglewood Jam/Art Pepper  イングルウッドジャム/アート・ペッパー

1952年8月18日

おすすめ度

  hand  ★★★

しげどん  ★★★

Art Pepper(as),Jack Montrose(ts),Jack Sheldon(tp),Harry Babasin(Cello),Russ Freeman(p),

Bob Whitlock(b),Al Haig(p),Chet Baker(tp) Others

記録としては重要だが、音質は悪い

トレード・ウインドというレストランでのライブ。まさにジャム・セッションという感じのとりとめない演奏。ペッパーのソロの切れ味はいいが、音も悪くあまりオススメできない。「ライトハウス’52」のほうがカッコいいティックル・トゥが入っているので音が悪くても我慢のしがいがある(笑)。ただし、ラス・フリーマンとアル・ヘイグのバップピアノは好感だ(hand)

誰がリーダーかもわからないジャムセッションで、だが、一曲は長いので、ソロは充分に聴くことができる。録音は悪く、熱心なファン向けの資料的な作品。(しげどん)



Holiday Flight(Art Pepper With Sonny Clark)ホリディ・フライト/アート・ペッパー

1953年3月30日

Straight Ahead

おすすめ度

 hand     ★★★

しげどん ★★★★

Art Pepper(as),Sonny Clark(p),Harry Babasin(b),Bpbby White(ds)

ソニー・クラークも素晴らしいこの時期の奇跡的な記録

ソニー・クラークと組んだ唯一の録音のCD2枚組。音は悪いが、以前ほどは気にならなくなった。年齢的に耳の敏感さが退化しているのかもしれない。ペッパーは好調だと思うが、録音バランスのせいか、あまり前に出て訴えかけてこない。2枚目後半の数曲は、特にペッパーの録音が悪く、バイオリンのような音色に聞こえる。ソニー・クラークはお気に入りのピアニストだが、ここでのバッキングは、鋭いコンピングが多用され、後年の粘りもなく、あまり好感が持てない。(hand)

  センチュリーから再発時のアナログ盤デザイン

アナログだとLP二枚。53年の非正規録音なので、音質もバランスも悪いが内容は素晴らしい。バディ・デフランコ時代の演奏を初期のスタイルと思っていたが、実は曲調やバンドカラーに合わせていただけで、すでにこの時点でソニー・クラークは完成していた。飛び入り参加のジャムセッションというエピソードも信じがたいが、クラークにとってもっとも初期の演奏なので貴重だ。(しげどん)