新ジ談では、キャノンボールのジャズとしての最盛期を、デビューした1955年からファンクが強まる前の65年までの前期とし、この時期に絞ってオススメ盤を検討しました。66年から最終録音の75年までについては、hand氏が個人研究としてコメントし、私しげどんが盤によってはコメントするスタイルとしました。この時期のキャノンボールさん、ジャズと言えるのか微妙な作品が増えてきます。hand氏も若干苦痛を感じながら聞き通したことがうかがえるコメントが多いと思います。ここでは1969年までの作品をレビューいたします。
・JAZZ談義の会 キャノンボール・アダレイ CDレビュー 目次
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ①デビューから1958年まで
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ②1959年~1960年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ③1961年~1965年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ④1966年~1969年・・・このページ
1966年 3月18, 19 & 20日 Capitol
おすすめ度
hand ★★★★
Cannonball Adderley(as),Nat Adderley(cor),Joe Zawinul(p),Herbie Lewis(b),Roy McCurdy(ds)
発掘盤だが人気の出たライブ盤。ジャズファンクのタイトル曲①マネーインザポケットから勢いよく始まる。会場もノリノリで、多分、踊っているのだと思う。②スターダスト、バラード演奏が先程の興奮をクールダウンするためのものに思えてしまう。会場が一度ノリノリの雰囲気になってしまうと、普通のジャズ曲だと満足できなくなるのではないかと想像する。その結果、バンドもよりファンクになっていく。リズム隊の交替もその推進役となったと思う。⑧屋根上バイオリンも、4ビートの激しい高速演奏だが、オーディエンスの反応はイマイチだと思う。多分、皆、踊りたいのだ。(hand)
1966年4月6日,7日
Capitol
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★
Nat Adderley(tp),Cannonball Adderley(as),Joe Zawinul(p),Herbie Lewis(b),Roy McCurdy(ds)、Ray Ellis(cond),&Strings
4ビートのファンキージャズを極めたキャノンボールは66年からベースとドラムをヴィクター・ガスキン(当初はハービー・ルイス)とロイ・マッカーディに変え、ジャズファンクへと舵を切っていく。ところが、新メンバーによる最初の盤にあたるこの盤は、なぜかストリングスをバックにした作品。多分、CTI的な売れ行きを期待したプロデューサーの意向ではないかと思う。というのも、聞いていて、バンドがストリングス不要!と言っているように感じるからだ。「サムシン・エルス」と似たアレンジの③枯葉が聞かれる貴重な盤ではある。ナットがマイルス役で、キャノンボールはソロだけ吹く。(hand)
ストリングス物はデビュー直後の55年のエマーシー盤があるが、それはキャノンボールのワンホーンで、完全なストリングス物だった。それに対し、この盤はレギュラークインテットが全員出動している上にストリングスと共演させているという形で、コーラスまでついている。曲はよく耳に馴染んだ名曲揃いでキャノンボールの音色はいつもながらつややかだが、ストリングスのためにジャズ的なスリルは失われ、イージーリズニング的になっているのはなんとももったいない感じだ。(しげどん)
1966年6月15,22日,1967年10月6日,13日
Reel to Real
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★☆
Cannonball Adderley(as),Nat Adderley(cor),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Roy McCurdy(ds)
ビル・エバンスやウエス・モンゴメリーの最新の発掘盤で知られるレゾナンスが、若手を中心に元気のいい盤をリリースしているセラーライブと共同で始めたリールトゥリールからの発掘盤。66、67年のファンクに舵を切った時期のキャノンボールバンドがいい音で聞かれる。ただ、この時期の盤は、従来型のジャズとファンク的な曲が同時に演奏されたものが多く、その割合と聴衆の反応により盤の印象も変わってくる。この盤は、66年だけでなく67年の録音も含めて、比較的、従来型の曲が多いように思う。キャノンボール本人がMC好きで知られるが、ここまでたくさん入れる必要はないと思う。全19トラック中曲は8トラックのみなのだ。(hand)
かなりノリのいい臨場感あるライブ。この時期のバンドのファンキーぶりは過熱気味で、この作品の全体的な雰囲気はその通りなのだが、ソロはこの時期としてはジャズ的に比較的充実しているように思える。(しげどん)
1966年8月26日
Capitol
おすすめ度
hand ★★★☆
Cannonball Adderley(as),Nat Adderley(cor),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Roy McCurdy(ds)
日本の招聘元の意向か、従来型のファンキージャズ①ワークソングからスタートする。②マーシー、マーシーの新しい感覚が当日、受け入れられていたのかどうかは微妙だ。翌々月に録音する「マーシー、マーシー、マーシー」は当然、まだ、発売されていない。ソロは短くピアノだけで、基本的に繰り返しによるグルーヴを感じる曲だと思う。ダンスミュージックにつながるものだ。③ジスヒアは、ファンキージャズのヒット曲、④マネーインザポケット、⑤スティックス、⑥ジャイブサンバと新旧を3曲ずつ演奏して、古い日本と最新の曲の折り合いをつけている。(hand)
1966年10月20日
Capitol
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★☆
Nat Adderley(cor),Cannonball Adderley(as),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Roy Mccurdy(ds)
後期の最人気盤。ザ・クラブのライブと書かれているがスタジオライブらしい。内容は、ファンクとロックのテイストが満載の盤だ。アダレイ兄弟のソロはジャズとしか言いようがないものだが、リズム隊と曲よって盤のカラーは全く違うものとなる。タイトル曲③マーシーは、アダレイ兄弟のソロはなく、短いピアノソロだけで、基本的に繰り返しによるグルーヴを感じる曲で、ダンスミュージックにつながるものだと思う。(hand)
ファンキーなノリが過熱しているスタジオライブ。耳になじみやすい曲が多く、全体的にヒット要因満載の一枚だが、その中でもタイトル曲はヒットチャートの上位に入ったらしい。でもタイトル曲は特にジャズ的な魅力がなく、なぜこれがヒットしたのかジャズファン的には理解に苦しむところだ。(しげどん)
1967年3月6日23日
Capitol
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★
Nat Adderley(cor),Cannonball Adderley(as),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Roy Mccurdy(ds)
67年のノリノリのライブ盤。新しい曲は、ピアノはエレピになる。ベースはアコースティックだが、ドラムは叩き方はロックだ。この雰囲気にキャノンボール以上にナットが適合している気がする。ソウル・ファンクという感じの黒っぽいノリの盤で、会場は多分、踊っているのだと思う。ラスト⑨⑩はCD追加曲で、従来型のジャズ曲だ。(hand)
これもスタジオライブらしい。「Mercy Mercy Mercy!」以上のノリノリ感で、キャッチーな曲が多いので、こちらのほうがさらにヒット要素満載のように聴ける。(しげどん)
1967年6月12日7月24日
おすすめ度
hand ★★★
しげどん ★★★
Nat Adderley(cor),Cannonball Adderley(as),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Roy Mccurdy(ds)
この時期は、非正規だけでなく正規録音も皆ライブだ。66年の「グレート・ラブ・テーマ」から68年の「アクセント・オン・アフリカ」までスタジオ録音がない。この盤は、よりファンク色が強くなり、サックスの吹き方が少しフュージョンっぽくなった感じがする。50年代のキャノンボールのファンには耐え難い内容かもしれない。ワークソングもコール&レスポンスを活用したジャズ曲だったが、⑤オーベイブは、コール&レスポンスそのもののゴスペル、ブルースのようなナットのボーカル入りの曲だ。私はあまり(ほとんど)楽しめない。(hand)
ノリノリの過熱感はそのままに、ファンキーなジャズからフュージョンに移行している一枚。キャノンボールの器用さはこのような演奏にもマッチしているが、ジャズ的な魅力は少なくなっているのは否めない。私のようなガチガチのジャズファン的には好みではないが、こういう音楽が好きな向きには聞きやすい一枚かもしれない。(しげどん)
The Half Note Club, New York City, December 1967年12月, 1968年1月
おすすめ度
hand ★★★★☆
Cannonball Adderley(as),Nat Adderley(cor),Joe Zawinul(p,Key),Sam Jones(b),Roy McCurdy, Louis Hayes(ds),Charles Lloyd(ts)
1991年発表のナイトという聞いたことのないレーベルからのキャピトル時代の発掘盤。ジャケはダサいが、音はいい。67年12月から68年1月のハーフノートの録音と記載されているが、チャールス・ロイドなどのメンバーと屋根バイオリンなどの選曲から考えて、当該時期の録音と思われるのはラスト⑧のみで、①〜④65年4〜5月、⑤〜⑦64年10月〜65年2月頃と思われるロイド在団時の貴重な音源だ。③星降るアラバマは、59年の「イン・シカゴ」以来のワンホーンの名演だと思う。(hand)
Cannonball Adderley (as, ss),Nat Adderley(cor), with H.B. Barnum's Orchestra
キャノンボールがアフリカ音楽への接近を試みた盤で、全新曲のスタジオ録音で気合いの入った作品。パーカッションとブラスアンサンブルが多用される。ジャケ写のようにキャノンボールはソプラノを多用するようになる。ジャズというよりもフュージョンに近い内容だと思う。クラブ系には人気の盤らしいが、どジャズファンにはつらい内容だ。(hand)
オーケストラを率いた企画盤。アフリカ音楽の要素を取り入れ、単に売れ線狙いではなく、彼らしいやり方でシリアスに前進意欲を表現した作品なのだと思う。でも残念ながら純粋なジャズファンとしてはなかなか評価する気にはならない作品だ。(しげどん)
Nat Adderley(cor),Cannonball Adderley (ss,as),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Roy McCurdy(ds),Lou Rawls ,Nancy Wilson(vo)
「アクセント・オン・アフリカ」の3か月後のライブ。アフリカ色は特になく、新曲も数曲ある。ボーカルに、②ルー・ロウルズ、③ナンシー・ウィルソンが入っている。会場がキャノンボールのMCで大きく盛り上がるので、人気があることはわかる。ファンクを中心にした楽しいライブだが、ラスト⑧ゾルバのソプラノを吹く場面では、ただ楽しいだけでなく、硬派の新主流派的な感覚も感じさせるなど幅広い音楽性を持つ盤だ。後のザビヌルのウェザー・リポートも、ウェイン・ショーターはソプラノを多用しており、この時代に起源があるようにも思う。(hand)
曲のボーカル曲も含めノリのいい演奏でファンキー感満載の前半は楽しく聴けるライブ。でも後半は新主流派的なモーダルな曲もあり、キャノンボールもソプラノも独特の雰囲気でがらっと違った雰囲気になる。この時期のクインテットが充実ていた事がわかる一枚だが、音楽的にはいろいろな方向性が交錯している考えさせられる一枚だ。(しげどん)
1969年3月20日
Jazzhaus
おすすめ度
hand ★★★☆
Nat Adderley(cor),Cannonball Adderley(as),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Roy Mccurdy(ds)
69年3月20日のドイツ、ストゥットガルトの海賊ライブ。アメリカのクラブでのノリノリの演奏とは違い、ヨーロッパの大ホールでのコンサートなので、幅広い音楽性を出そうとしている感じがする。音は割といい。69年はザビヌルが大化けした年だと思う。ソロに大物感が漂い始めている。既に69年2月にはマイルスの「イン・ア・サイレント・ウェイ」に参加しており、8月にはにはマイルスの問題作「ビッチェズ・ブリュー」を生み出す原動力となっている。(hand)
1969年3月24日,27日 Gambit
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★☆
Nat Adderley(cor),Cannonball Adderley(as),Joe Zawinul(p),Victor Gaskin(b),Louis Hayes(ds)
①〜⑥は69年3月24日、ローマでの録音。海賊レーベル・ジョーカーから「アルト・ジャイアント」として出ていたものと同じ。⑦〜⑪は27日のパリ録音で「パリ・コンサート1969」の全8曲中の後半5曲とかぶっている。ビバップからファンク、モードと幅広い音楽性を持つ強力なバンドであった。ザビヌルのピアノによる③バラードメドレーは、サム・ジョーンズ、ルイス・ヘイズが居た63年以来だと思う。久々の④ジスヒアは、ファンサービスだと思うが、いい演奏だ。(hand)
ディス・ヒアのようなヒット曲はライブならではの選曲だが、そのほかの曲も、このバンドのいろいろな方向性がでている作品。必ずしもファンキー一辺倒ではない多様性もありながら、作品としてはどの程度評価できるかは意見が別れるだろう。(しげどん)
1969年3月27日
Malaco
おすすめ度
hand ★★★☆
Cannonball Adderley (as); Nat Adderley (cor); Joe Zawinul (key); Victor Gaskin (b); Roy McCurdy (perc).
69年3月27日のパリ録音で記録のあるこの年のヨーロッパツアー4回の中では最終日。4回以外に公演や録音があるのかはわからない。この日の録音は、CDでも色々な海賊レーベルから出ている。エアチェックだとすると音質が違うのかもしれない。ツアー最終日なのか、各メンバーが本領を発揮して、充実した演奏が聞かれる。(hand)
1969年10月
Capitol
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★
Cannonball Adderley(as),Nat Addrley(cor),Joe Zawinul(p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds)
69年10月のシカゴの教会でのライブ。キング牧師の後継とされるジェシー・ジャクソンの演説から始まる。教会なのでゴスペル臭が強いのかと思うと、ロックやファンクを強く感じる演奏。ベースがガスキンからウォルター・ブッカーに変わり、キャノンボールが亡くなるまで在団する。ザビヌルは全編キイボード。春の欧州ツアーのようなジャズファン向けの選曲はない。(hand)
ファンキーなテイストが強く、フユージョンぽくもあるサウンドだ。音楽としてはノリがよく聞きやすいので、このようなタイプの音楽が好きな人には人気が出そうな作品だ。私のような保守的なジャズファンにはあまりむいていない作品だが、こういう傾向の音楽が好きな向きにはいい演奏だと思う。(しげどん)
JAZZ談義の会 キャノンボール・アダレイ CDレビュー 目次
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ①デビューから1958年まで
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ②1959年~1960年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ③1961年~1965年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ④1966年~1969年・・・このページ