キャノンボール・アダレイは 1975年8月8日になくなりました。死因は脳梗塞と言われていますが、太っていたための糖尿病も原因と言われています。突然死に近いものだったようです。
このページでは④に引き続き彼の最後期である1970年~1975年の作品を、hand氏レビュー中心に紹介します。
新宿JAZZ談義の会 キャノンボール・アダレイ CDレビュー 目次
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ①デビューから1958年まで
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ②1959年~1960年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ③1961年~1965年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ④1966年~1969年
1970年6月
Capitol
おすすめ度
hand)★★★★
Cannonball Adderley (as),Nat Adderley(cor),Joe Zawinul(p, el p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds),orchestra
70年6月のスタジオ録音で未CD化作品。69年のパリのライブでは演奏されていたザビヌル作の①エクスペリエンス・インEが初スタジオ録音。20分近い長尺で、印象としてはプログレッシブロックだ。壮大な物語のような作りで、オーケストラまで入っている(「ドミネ―ション」のおまけでこの曲のみCD化されている。)。②テンシティもプログレ的だが、格調は高い。マイルスの発掘盤として聞かされれば、信じてしまうかもしれない。③ダイアローグフォーは、フリージャズ的な要素も持つ進歩的な感覚を持つ曲だ。②③はこの盤以外では聞かれない。ザビヌルが参加したマイルスの「ビッチェズ・ブリュー」(1969.8,1970.1)は世紀の問題作とされ、歴史的な価値が認められているが、正直言って、マイルス好きの私にもあまり聞く気になれない作品だ。それに比べればこちらのほうが聞きやすい問題作だと思う。マイルスだけでなく、キャノンボールも時代の流れに合った作品を作っていた証拠だ。この手の音楽は好きな人はいると思うので、CD化が望まれる。(hand)
1970年9月19日, 10月 5 & 6日
Capitol
おすすめ度
hand ★★★☆
Cannonball Adderley (as,ss, vo),Nat Adderley(cor, vo)
Joe Zawinul (p, el p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds)
Nat Adderley, Jr. (p, el p, g,vo)
Bob West(b)
70年9月と10月のアナログ2枚組ライブがCDでは1枚に。短い曲が多く、20曲も入っている。タイトル曲⑥ザプライスは、ナットJr.の曲とボーカルで、ロックンロールに聞こえる。ミルトン・ナシメントの⑰橋まで出てくる。ジャズ、ファンク、プログレ、ワールドまで何でもありのごった煮的な盤。聞きようによっては楽しい盤と言えなくもないが、ここまで来ると「マーシー、マーシー、マーシー」などが普通のジャズに思えてくる。61年から9年間行動を共にしてきたザビヌルがこの盤を最後にバンドを離れる。(hand)
1970年
おすすめ度
hand ★★
しげどん ★
Cannonball Adderley(as),Nat Adderley(cor),Hal Galper(el p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds),George Duke(clavi, synth)
Jimmy Jones(p),Rick Holmes(narration)
この盤からピアノ(エレピ)がハル・ギャルパーに変わる。ギャルパーはこの1枚でジョージ・デュークに代わるが、また73年の「インサイド・ストレート」と74年「ピラミッド」でも参加する。ゲストでジョージ・デュークがクラヴィネットとシンセ、ジミー・ジョーンズがピアノで加わる。全編にリック・ホルムズのナレーションが入る。カテゴリーとしてはソウルに近いのかもしれない。ZODIAC(星座)をテーマにした作品は、メリー・ルー・ウィリアムスやセシル・ペイン、近年ではジェリ・アレンも出している。日本の星占いとは違い呪術的なもののようで、日本人にはなかなか理解しにくいものだ。クラブ系には評価されているようだが、私には理解不能な盤だ。(hand)
リック・ホルムズのナレーションが主役で、演奏はBGMのように聴こえ、なぜか途中でフェイドアウトしたりなんだかよくわからない企画で、キャノンボールのリーダー作に聴こえない。この時期Soul Zodiacという同じように占星術をテーマにしたアルバムをナット・アダレイをリーダーにしてほとんど同じようなメンバーで録音しているので、このような世界観に凝っていたのかも。音楽的には多様性が感じれれるが、ジャズファンとしては面白いとは思えない盤だ。(しげどん)
Julian "Cannonball" Adderley (as),George Duke(p, el p, arr),
Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds),Nat Adderley(cor),Airto Moreira,Olga James,Flora Purim(vo),David T. Walker(g),Chuck Rainey(el b)
MCの後、サンバ曲のタイトル曲①ハッピーピープルが元気に始まるライブ盤。お洒落なボサノバではなく、激しいジャズサンバだ。62年の「キャノンボールズ・ボサノバ」とは全く雰囲気が違う。全体にアイアートやフローラ・プリムのブラジル色が濃いのだと思う。ボーカルの割合が高いが、キャノンボールが久々にアルトを吹きまくるのはうれしい。ジョージ・デュークが正式メンバーとなる。(hand)
Cannonball Adderley(as, ss),Nat Adderley(cor, vo),George Duke(p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds),Airto Moreira(perc),Mike Deasy(g, vo),Ernie Watts(ts),Alvin Batiste(cl),Buck Clarke(perc)
アイアート・モレイラ、バック・クラークのパーカッションのほか、アーニー・ワッツのテナー、マイク・ディージーの(ロック)ギター&ボーカルらをゲストに迎えた2枚組ライブ。4ビートジャズからはかなり遠ざかり、8ビートや16ビートなどロックやいわゆるブラックミュージック、エスニックなども含まれると思う。1①MCに続くタイトル曲1②ブラックメサイアでキャノンボールの長めのソロはあるが、その後はロック作品によくあるようにエレキギターがかなり目立つ。了見が狭いと言われそうだが、モダンジャズを愛好する人の聞く盤ではないと思う。ちなみに、この時期のナットは、この時期のマイルスのスタイルに似ている気がする。(hand)
Cannonball Adderley(as),George Duke(p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds),Nat Adderley(cor),Airto Moreira (perc),Mike Deasy(el g),Ernie Watts(ts)
キャノンボールもナットも吹きまくるのは久しぶりな気がする。これがオーソドックスなジャズだったらなーと思うのは、真のアダレイ兄弟の理解者ではないのであろう。「ブラック・メサイア」と同じく、アイアート・モレイラ、アーニー・ワッツ、マイク・ディージーがゲスト参加している。ディージーのロックギターは嫌いではないが、キャノンボールのバンドで聞きたいとは思えない。(hand)
1973年6月4日
Fantasy
おすすめ度
hand ★★★☆
Cannonball Adderley(as),Nat Adderley(cor),Hal Galper(el p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds),King Errisson(perc)
ハル・ギャルパーがジョージ・デュークに代わり参加したスタジオライブ。ギャルパーが時々入る理由は不明だが、デュークのエレピがソウル・ファンクな感じなのに対し、ギャルパーのエレピはクラブジャズのラウンジの感じがある。いつもよりジャズっぽく、キャノンボールもナットも久々に激しくソロを吹くが、やはり60年代前半のクインテットやセクステットとは全く違う演奏だ。(hand)
1974年
Fantasy
おすすめ度
hand ★★☆
Cannonball Adderley(as),Nat Adderley(cor),Hal Galper(el p),Walter Booker(b),Roy McCurdy(ds),Phil Upchurch(g),George Duke(clvt, synth)
Jimmy Jones(p)
遂に16ビートにエレベにシンセ。ファンク・フュージョンという感じだ。ここまでベースだけはアコースティックで頑張ってきていたのに(泣)、ついにここまで来てしまった。底を打って反転してほしいが、残された時間は少ない。ガーシュウィンの「ベスよ、お前はどこに」、は美しい。(hand)
Cannonball Adderley(as, ss),Nat Adderley(cor), George Duke( key, synth),Michael Wolff(key),Sam Jones(b),Walter Booker(b,el b),
Louis Hayes(ds),Roy McCurdy(ds),Airto Moreira (perc)
ワークソングなどバンドの過去のヒット曲をエレピにシンセも加えてクラブ系にアレンジしたスタジオ録音。アナログ2枚組がCD1枚に。前半は、その曲がヒットした当時のメンバー、サム・ジョーンズとルイス・ヘイズが参加。旧メンバーのザビヌルをデュークに変え、アイアートを加えて踊りやすい軽い雰囲気になっている。後半は、現メンバーのデュークをマイク・ウルフに変えてハードなフュージョンという感じの曲が多く、踊りにくそうだ。ラスマイ⑪星降るアラバマは、アコースティックにワルツタイムでピアノ伴奏でアルトが歌う。往年のファンにはうれしい内容。ラスト⑫ウォークトール/マーシーのメドレーに後半はやはりアコースティックでキャノンボールのラストを示唆しているような印象(hand)
おすすめ度
hand ★
パーソネル 省略
アナログ2枚組がCD1枚になった盤。ジョン・ヘンリーというアフリカ系アメリカ人の英雄にちなんだミュージカルで、ジョー・ウィリアムスとランディ・クロフォードの語りと歌が中心。キャノンボールの存在を感じることができなかった。生前最後の年の録音なのに残念なことだ。(hand)
ESSENTIAL
おすすめ度
hand ★★★☆
Cannonball Adderley(as),Walter Booker(b),Mike Wolf(key),Roy McCurdy(perc)
Nat Adderley(tp)
75年5月3日のモントリオールの発掘ライブ。タイトルからすると今後、VOL.2が出るかもしれない。ピアノはマイク・ウルフ。①カントリープリーチャーは、9分以上あるがMCが8分以上で曲は1分程度のテーマしかないというひどい代物。②以降も長めのMCはあるものの、曲はきちんと入っている。②ウォバムは、アコースティックなピアノトリオ演奏。③ファイブオブアカインドは、兄弟2人のビバップに根差したソロが素晴らしい。④ファーストトリップは、実際はハンコックのスピークライクアチャイルドでウルフのピアノトリオ演奏でなかなかいい。⑤マーシーはエレクトリックだ。(hand)
1975年6月24日,25日,10月31日
Fantasy
おすすめ度
hand ★★★
Cannonball Adderley(as, ss),Nat Adderley(cor),Alvin Batiste ( cl, fl, ts)
George Duke(el p, synth, vo),Nat Adderley Jr. (el p),Al Johnson(b),
Ron Carter(b),Jack DeJohnette(ds),Airto Moreira(perc),Flora Purim(vo)
未CD化。75年6月24と25日の現時点でのラストかつ正規録音が5曲(1曲はキャノンボールは吹いていない。)。その後8月8日に脳梗塞で46歳の若さで亡くなっている。ナットが追悼曲B②ラバーズを 10月31日追加録音して完成したのがこの盤。内容はかなりロック寄りのフュージョン。アルフォンソ・ジョンソンのエレベ音が私には気になってしまう。キャノンボール自身の艶やかなアルトの音は少ない。クラブ系ジャズ好きにはメローなファンクとして人気らしいが頭の堅い私には良さがわからない。(hand)
新宿JAZZ談義の会 キャノンボール・アダレイ CDレビュー 目次
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ①デビューから1958年まで
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ②1959年~1960年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ③1961年~1965年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ④1966年~1969年
・キャノンボール・アダレイ リーダー作 ⑤1970年~ このページ