新宿ジャズ談義の会:カーティス・フラー CDレビュー 目次
Curtis Fuller(tb),Pepper Adams(bs),James Williams(p),Dennis Irwin(b),John Yarling(ds)
オランダのレーベル、タイムレス盤だが録音はニューヨークだ。バリサクのペッパー・アダムスと組んでハード・バップに回帰している。タイトル曲①などやや新主流派的な固さがあるが全体としては聞きやすい盤。タイムレスからは、タイムレス・オールスターズとして、ハロルド・ランドやボビー・ハッチャーソンと組んで新主流派的な傾向の盤を数枚出している。(hand)
リズム・セクションは若い世代だが、演奏はオーソドックスなハード・バップで勢いがある作品だ。ペッパー・アダムスの炸裂ぶりもイイ感じ。もっと早く自然にハードバップをやってストレートにソロを聴かせて欲しかったと思わざるを得ない再起後の最初の快作だと思う。Hello Yong Lovers などSouth American Cookin で演じたお気に入り曲でのソロも楽しい。(しげどん)
フラーのトロンボーンとペッパーアダムスのバリトンサックスのコンビネーションは、新鮮で心地良い。速吹きの正確さと緩急付けた演奏に加え、ピアノのジェームスウィリアムが、アルバム全体を明るく色付けする役割を担っており、まとまっている。なかなか良い通好みの面白いアルバムだ。(ショーン)
1978年12月6日
Bee Hive Records
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★☆
Curtis Fuller(tb),Sal Nistico(ts),Walter Bishop, Jr.(p),Sam Jones(b),Freddie Waits(ds)
シカゴのマイナーレーベル、ビーハイブからのリーダー盤。テナーで入っているサル・ニスティコのつながりと思われる。フラーのリーダー盤で唯一CD化されていない盤だ(モザイクのコンプリート・ビーハイブ・レコーディングスとして12枚組の一部には入っている。)。前作くらいからがフラーの第二期黄金期ではないか?とても、調子が良さそうだ。④ザ・エジプティアンは、JMの「インデストラクティブル」の冒頭を飾ったフラー曲の再演でカッコいい。ただ、③ハロー・ヤング・ラバーズは、「サウス・アメリカン・クッキン」、前作「フォー・オン・ジ・アウトサイド」に続き3回目で2作連続で同じ曲のスタジオ録音でなかなか珍しく理解不能だ。アレンジも速さもそれほど変わらず、フラー自身の出来は、どれもそう変わらないと思う。(hand)
50年代~60年代のハード・バップ全盛期は三管でアレンジにもこだわっていたフラーだが、この作品はクインテット編成で、自然体のフラーのソロが堪能できる作品。のびのびと変化に富んだソロを聴かせるカーティス・フラーは、この時期まだ40代の活躍ざかりで、演奏もハリがありかっこよさ満開だ。共演者のSal Nisticoは知名度が低いが、ウディ・ハーマン楽団で長年活躍したキャリアを持つプレイヤーで、中々の好演ぶりだ。(しげどん)
Curtis Fuller (tb),Danilo Rea(p),Enzo Pietropaoli (b),Roberto Gatto (ds)
カイ・ウィンディングとの双頭バンド、ジャイアント・ボーンズの2枚を経て、再びタイムレスからの1982年の盤(48歳)。ピアノのダニーロ・レアのローマ・ジャズ・トリオとのイタリア録音。イタリアの元気なピアノトリオと共演して、フラーも元気に吹いている。(hand)
ワンホーン作品であることが印象深いフラーのソロが堪能できる作品。当時はハードバップリバイバル最中で、働きざかりのフラーなのだ。コルトレーンの曲を2曲も選んでいるが、特にそこに漸進的な意図はあまりなく、むしろ開き直った感じで自然体のフラーのソロが感じられる。(しげどん)
イタリアのジャズトリオとの共演だが、なかなか息のあった演奏だ。Danilo Reaのピアノは表現力に富み、ベースのEnzo Pietropaoliもとてもメロディアスなベースラインで聴く者を魅了させる。全体を通して無駄が無く、フラーのトロンボーンの様々な顔をしっかり堪能できる。ショーン的にはカリビアンの雰囲気漂うJazz Islandが、アルバムの明るいカラーを決定づけているように感じ、とても好感が持てる。しかもラストの曲は、ケニードーハムのBlue Bossa だ!(ショーン)
Curtis Fuller(tb), Benny Golson(ts), Tommy Flanagan(p), Ray Drummond(b), Al Harewood(ds)
11年ぶりの1993年の単独リーダー盤(59歳)。亡くなったジミー・ギャリソンをレイ・ドラモンドに変えて、他の4人は前回そのままに人気盤を34年後に一部同曲で再吹込みしたもの。ジャケも背景色を黒にしただけで同じデザイン。同じサボイだが90年代に日本コロンビアが権利を買い取り日本のレーベルになっている。矢野沙織などもここからCDを出している。プロデュースは私の苦手なK氏ではなく、正統派のO氏だ。ただ、パート2として類似内容の盤を出す意義はあまり理解できない。アート・ブレイキーが何度もモーニンを演奏しているのとは訳が違うと思う。生きているメンバーでモーニン・パート2は多分吹き込まなかったと思うし、JM曲のアロング・ケイム・ベティを入れた意味もわからない。フラーもゴルソンも脂が乗ったの逆で脂が抜け始めてきている気がする。トミフラは好調だ。※元ジャケと同デザインでこの盤と似たタイトルの「ブルース・エットVol.2」という93年に発売された盤がある。オリジナル盤の別テイクばかりを元盤と同じ曲順で並べたものなので、アドリブの違いを楽しめる。(hand)
Curtis Fuller(tb), Simon Rigter(ts), Peter Beets(p), Fran van Geest(b), Joost van Schaik(ds)
オランダの若手人気ピアニストとの1999年(65歳)の共演ライブ。フラーのリーダー盤というよりも、ビーツ4(トリオ+テナー)にフラーがゲストの感じの盤で、フラーは全曲には参加していない。フラーの音色は茫洋とした感じで、迫力がない。ビーツ4のイキがいいだけに、残念な感じだ。(hand)
Maurice Brown(tp), Curtis Fuller(tb), Javon Jackson(ts), Peter Martin(p), Bill Huntington(b), Jason Marsalis(ds)
2002年録音だが、発表は2018年で最新に出た盤。ニューオルリンズ録音だが、内容はニューオルリンズ・スタイルではない。当時68歳のフラーは、若手の元気な演奏のおかげで盤の水準を保っている感じだ。(hand)
Brad Goode(tp), Curtis Fuller(tb), Karl Montzka(p), Larry Gray(b-1-3,9), Stewart Miller(b-5-8,10,11), Tim Davis(ds), Jacey Falk(vo-10)
2003年シカゴ録音のデルマーク盤。69歳のフラーは、驚くことに前盤より元気な音を出している。シカゴ・ジャズフェス参加時に地元ミュージシャンとの吹き込みらしい。この盤で活躍するトランペットのブラッド・グッドは、シカゴで音楽教師をしている人らしい。知らない人だったが、CDもかなり出してて、なかなかいい演奏をする。あまりジャズロックが得意でない私も愛好するハンコックの①カンタロープアイランドのフラーの大胆なソロで始まる。タイトルのフレディの名曲②アップ・ジャンプド・スプリングは、この時期のフラーの好きな曲なのか4盤もある(他は、ピーター・ビーツ、ポール・ジェフリー、ニューオルリンズ)。コルトレーンの⑥エキノックスもいい感じだ。ただ、ブルースボーカルのような曲⑩ブラック・ナイトだけは苦手だ。シカゴ・ブルースなのだろうか?(hand)
フラーの真骨頂である歌心あるトロンボーンが2003年という新しい音で味わえる事に感心、感動してしまった。一曲めからジャズロック風テイストで驚くが、いろんな味わいの曲を合わせて、トロンボーンという楽器での情感表現をしている円熟の味わい。昔の曲やなぜかボーカル入りのブルースもあるが、そこにストーリー性はあまり感じなかった。でもこの年齢でのフラーさんの音を聞くだけでファンは満足かもしれない。ローレンス・ブラウンやジャック・ティーガーデンなどの歴史的な巨匠に比肩する彼はモダン時代で唯一感情表現をトロンボーンでやれた人かもしれない。(しげどん)
Curtis Fuller(tb-except7&10), Javon Jackson(ts-2,3,5,6,8-11), Doug Carn(p), Rodney Jordan(b), Fritz Wise(ds)
前作と同じ2003年、1カ月後の盤 (69歳)。ジャヴォン・ジャクソンら若手に囲まれ、フラーは元気だ。さすがに過去2回と比べることはできないが、3回目の好調期だと思う。(hand)
このKeep It Simple というタイトルはフラーさんがイントロで宣言している通り彼の意思なのではないか?そのように思えるシンプルな作品だ。昔のジャズアルバムのタイトルはいい加減なものが多かったが、このタイトルはフラーさんの気持ちがこもっている。共演のジャヴォン・ジャクソンもダグ・カーンも優れた経歴を持つ次世代ミュージシャンだが、ややフリーキーなトーンよりも重鎮フラー氏の歌心が優っている感じがとても素晴らしい。(しげどん)
Al Hood(tp), Curtis Fuller(tb), Keith Oxman(ts), Chip Stephens(p), Ken Walker(b), Todd Reid(ds)
2009年録音の6年ぶりのリーダー盤(75歳)で2010年発表。スタジオ盤とライブ盤の2枚組で、ジャケはブルーノートVol.3と似ている。ハーとは、録音と発表の間に亡くなった奥さん、キャシーのことだ。若手トランペット、テナーとの3管のハードバップの好ましい内容だ。ケニー・ドーハムの名曲マイナーズ・ホリデー、フラーの曲アイ・ウィル・テル・ハー、メイズ、ザ・コートの4曲は、スタジオとライブの両方に入っている。聞き比べ用か?いずれもいい演奏だ。75歳でこんなカッコいいライブができるなんて、ジャズは素晴らしい!(hand)
CD二枚組で、しかも各1時間くらいの収録時間なので、LPだったら3枚か4枚に相当する力作だ。当時75歳のフラー氏はさすがにもりもりな元気はないが、重みを持った受け止め方ができる味わい深い作品だ。若い共演メンバーは多少フリーキーで抽象的な感覚もあるが、フラーらしい特有の歌心は衰えずという感じで聴かせる味わいの作品になっている。(しげどん)
スタジオ録音とライブの2枚組だが、いずれも完成度の高いアルバムとして仕上がっている。流れるようなリズムセクションに煽られ、素晴らしい演奏が続く。スタジオ盤の曲の流れ的には、勢いのあるMinor's HolidayからのしっとりとしたアルバムタイトルでもあるI Will Tell Herへの繋がりで、身も心も惹き込まれてしまう。またトランペットのAl Hoodの演奏が光っている。その高音域での掠れ具合がメンバーを高揚させる。ライブ盤のI Will Tell HerではChip Stephensのピアノの繊細なタッチが煌めいている。(ショーン)
Lester Walker(tp), Curtis Fuller(tb), Daniel Bauerkemper(ts),Akeem Marable(ts-1,3,4,8,9,14), Nick Rosen Carn(p), Kenny Banks Jr.(p-1,3,5,9,14), Brandy Brewer(b), Kevin Smith(b4,5,8) Henry Cornerway(ds), Clarence Levy(perc-4,8,10), Tia Michelle Rouse(vo-5,11)
亡くなった奥さんキャシーに捧げた作品(76歳)。幼い頃にジャマイカ出身の両親を亡くし、デトロイトの孤児院で育ったと言われるフラー。人一倍、奥さんを大事にしていたようだ。フラーの語りを所々に①インタールードとして挟みながら、2人の生涯を1枚の盤に美しく描いた全体として組曲のような作品。女性ボーカルも2曲入る。メンバーの活躍で水準は保っているが、トロンボーン演奏自体には少々衰えを感じる。キャシーのスペルが「フォー・オン・ジ・アウトサイド」のときはKathyだったのはよくわからない。(hand)
Al Hood(tp,flh), Curtis Fuller(tb), Keith Oxman(ts), Chip Stephens(p), Ken Walker(b), Todd Reid(ds)
2011年(77歳)録音の現時点での最新盤だ。タイトル曲①ダウン・ホームは、「スライディング・イージー」収録のフラーのオリジナル。私好みではないが、明るく調子のよいシャッフルリズムの曲で人気がある。ホレス・シルバーのプリーチャーと似ている気がする。75歳を超え、日本でいう後期高齢者の録音にしては、トロンボーンは比較的よく鳴っていると思う。だが、若手のソロは多めにすることで、フラー自身のソロを少なめにし、盤のクオリティを維持しているようにも思える。2020年3月現在存命だが2019年12月15日で85歳になっているので、なかなかこの盤以降の新録音は難しいのかもしれない。(hand)
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