Curtis Fuller カーティス・フラー  リーダー作CDレビュー1

カーティス・フラーはモダンジャズトロンボーンで一番の人気者で、作品数も多いです。ここではリーダーとしてのデビュー作であるプレスティジ盤から1959年までを取り上げます。1959年作品はページの都合上レビュー2にも分散して掲載しました。


New Trombone/Curtis Fuller  ニュー・トロンボーン/カーティス・フラー

1957年5月11日         Prestige

hand       ★★★☆

しげどん   ★★★☆

Curtis Fuller(tb),Sonny Red(as),Hank Jones(p),Doug Watkins(b),Louis Hayes(ds)

フラーのデビュー盤は、アルトのソニー・レッドとの2管ハードバップだ。ピアノのハンク・ジョーンズはサボイ盤が多いが珍しくプレステッジに参加。④ネイムリー・ユー、⑤恋とは何でしょうなどスタンダードも上手く調理されている。(hand)

フラーのオリジナル主体で構成された端正なハードバップ作品として、まとまりのあるいい一枚だと思う。ジャケットにはRed Kynerと記載されているソニー・レッドもいい味を出している。この時期のプレスティジはダサいジャケットが多いが、これはリード・マイルスによるセンスのいいジャケットだ。(しげどん)



Curtis Fuller With Red Garland  カーティス・フラー・ウィズ・レッド・ガーランド

1957年5月14日

Prestige

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★★

Curtis Fuller(tb:except track 5),Red Garland(p),Sonny Red(as:except track 2),Paul Chambers(b),Louis Hayes(ds)

フラーのセカンドアルバムは、レッド・ガーランドとの共演。ガーランドが意外にも、辛口のプレイをしている。ガーランド自身のリーダー盤やマイルス盤、コルトレーン盤に比べてバド・パウエル的な硬質なプレイだ。ラスト⑥ロック&トロルは本来のガーランドらしい。ファーストに引き続きソニー・レッドが参加。フラー得意の豪快で粗削りなプレイはまだ聞かれない。器用なJ.J.ジョンソンのいるトロンボーン界で生きていくには、個性の確立が必要だ。この盤ではまだ形成過程に思える。(hand)

レッド・ガーランドとの共演盤だが、内容的には前作同様にソニー・レッドの個性が強く出ている。この一枚もガーランドとの共演というよりWith Sonny Redというタイトルのほうが適切なのではと思えるくらいレッドが前面に出ていて、それが聴きどころ。彼のギスギスしたテイストはハード・バップ時期のパーカー派を象徴するような味がある。ソニー・レッドは評価としてはあまり恵まれなかったと思うが、この作品は彼のアルトを味わうには前作同様に聴くべきものがある。(しげどん)



Curtis Fuller and Hampton Hawes With French Horns  カーティス・フラー&ハンプトン・ホーズ・ウィズ・フレンチ・ホーンズ

1957年5月18日Status

hand      ★★★★

しげどん  ★★★☆

ショーン  ★★★

Curtis Fuller(tb),Teddy Charles (track 4), Hampton Hawes (tracks 1-3, 5 & 6) (p),Sahib Shihab(as),David Amram, Julius Watkins(Fh),Addison Farmer(b),Jerry Segal(ds)

テディ・チャールズのアレンジを生かした興味深い作品。サヒブ・シハブのアルトも活躍

パーソネルや曲を見て実験的な盤かと思うと、意外にもカッコいいハードバップ盤だ。バリサクで有名なサヒブ・シハブもパーカー派のアルトとして切れ味鋭いソロを聞かせる。ホーズは全曲参加ではなく、④リリステは、バイブで知られるテディ・チャールズがピアノを弾いている。チャールズの曲が全6曲中3曲あり、プロデュースもしている。2人のフレンチホルンがいい感じで入っていて、私の愛聴盤ジャッキー・マクリーンの「ストレンジ・ブルース」を思い出させる。(hand)

プレスティジの傍系ブランド「ステイタス」からの発売。アレンジャーであるテディ・チャールズ色が強くでており、独特の抽象的なテーマや掛け合いのアレンジが面白い。ハンプトン・ホーズがサイドリーダーとして扱われているが、ソロイストとしてはサヒブ・シハブのアルトが準主役級で目立っている。アルバムとしては面白い作品だが、必ずしも彼のトロンボーンだけに焦点があたっているわけではない。(しげどん)

スタート曲のAddison Farmerのベースソロに期待感があったが、その後の展開が単調でメリハリが無く、ちょっと残念。その後の曲もややもの足りない。Sahib Shihabのアルトのキレが悪く、心なしかCurtis Fullerも元気がなく聞こえる。ベースのラインが単調なのが、影響しているのか?(ショーン)



The Opener/Curtis Fuller  ジ・オープナー/カーティス・フラー

1957年6月16日

Blue Note

hand      ★★★★

しげどん  ★★★☆

Curtis Fuller(tb),Hank Mobley(ts:tracks 2, 3, 5 & 6),Bobby Timmons(p)

Paul Chambers(b),Art Taylor(ds)

ブルーノート第一作は、落ち着いた緩やかな印象の一枚

ブルーノートからの最初の作品。BNらしく激しい演奏から始まるのかと思うと、穏やかな①ラブリー・ウェイ…から始まる。おおらかでたおやかな音色だが期待どおりでないのは確かだ。③オスカリプソは、カリプソのリズムながらメロディーはマイナー調でかっこいいオスカー・ペティフォードの曲。フラー、モブレーのソロはどちらも好感を覚える。ピアノのボビー・ティモンズの最初期の演奏は、全般にケリーライクで、いい感じのバッキングを聞かせる。(hand)

冒頭の曲がゆったりしたバラード調で始まるのは、フラーの緩やかな味わい深いテイストをアピールするためだったと思う。確かにカーティス・フラーの魅力なのだと思うが好みが分かれるところではないか?ボビー・ティモンズのピアノは彼らしい黒っぽい個性が発露されていない印象で、まだ未完成期と思うが、そこが資料的には面白い。(しげどん)



Bone & Bari/Curtis Fuller  ボーン&バリ/カーティス・フラー

1957年8月4日

Blue Note

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★☆

Curtis Fuller(tb),Tate Houston(bs),Sonny Clark(p),Paul Chambers(b),Art Taylor(ds)

力強いバリトンとの共演で、熱い元気のある一枚。ソニー・クラークも好演

ブルーノート第2作はバリサクとの2大低音管の共演盤。バリのテイト・ヒューストンはこの盤以外では見かけたことはない人。調べてみると、サイドマンとしては、それなりに活躍していいて、ビリー・エクスタイン楽団などに入っている。この盤でも⑤アゲインなど頑張っているが、ペッパー・アダムスが入っていたほうが良かったかな?と思ってしまう。ソニー・クラークがワン&オンリーな憂いのあるしっとりしたピアノを聞かせる。(hand)

ブルーノート2作目は一転して力強いブルースからはじまる。かっこいい出だしに引き込まれ、バリトンもクセがなくなめらかで聴きやすい。ボーン&バリと聞いて、なんとなく低音楽器による特殊な作品みたいなイメージがあるが、内容は極めてオーソドックスなハード・バップ。バリトンのテイト・ヒューストンの熱演が光る。彼の名前はリードセクションのメンバーとしては見たことがあるが、共同リーダー並みの扱いをされた作品はこれが唯一かも知れない。AGAINという曲で50年の彼の人生のクライマックスといえるソロが聴ける。感涙ものなのでぜひ聴くべし!(しげどん)

2曲目のNita's Waltz トロンボーンとバリトンサックスのユニゾンは、メロディに新鮮味が無く、若干間延びして聞こえる。次曲のBone & Bariのようにそれぞれがソロを競い合う方が聴きやすい。可もなく不可もない少し地味なアルバム。最後のPic Upはリズムがブレるが、ノリノリの快演だ。(ショーン)



Jazz…It’s Magic/Curtis Fuller  ジャズ・イッツ・マジック/カーティス・フラー

1957年9月5日

Regent

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★☆

Curtis Fuller(tb),Sonny Redd(as),Tommy Flanagan(p),                    George Tucker(b),Louis Hayes(ds)

ソニー・レッドと再共演したハードバップの佳作

ブルーノート盤に挟まれた、リージェント(後にサボイ)からの盤。アルトのソニー・レッドとの双頭盤だと思う。サボイによくあるブローインセッション的な感じではなく、BN的なプロデュースされた感じのある盤。レッドは上手いが、個性の際立ちが今一なのが残念なところ。(hand)

リーダーが誰だかはっきりしない盤だが、やはりフラーが曲の提供もあり、ソロ的にも主役だと思う。ソニー・レッドは、この盤ではアグレッシブに存在感が大きく、彼のギスギスした音はアナログ向きの魅力がある。リズム・セクションも一流で、トミー・フラナガンもいい味を出しているので、聴きどころだ。オリジナル発売のリージェントはサボイの傍系レーベルで、ジャケデザインもCDではピアノキーのデザインになっているが、この辺の経緯は不明。(しげどん)



Curtis Fuller Vol.3/カーティス・フラー 第3集

1957年12月1日

Blue Note

hand       ★★★★★

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Art Farmer(tp),Curtis Fuller(yb),Sonny Clark(p),George Tucker(b),Louis Hayes(ds)

ソニー・クラーク、アート・ファーマーの共演も光るフラー初期を代表する名盤

リーダー3作目のようなタイトルだが、ブルーノートでの3作目という意味。それにしても、なぜ急にこんないい盤が作れたのだろう。フラーは、リーダー7作目にして傑作を生んだと思う。ソニー・クラークとアート・ファーマーというクール・ストラッティン的なメンバーも功を奏している。フラーのオリジナル5曲とスタンダード1曲も、皆、いい出来だ。(hand)

ラテンテイストの一曲からブルーノート1500番台らしいカッコ良さ。そしてソロの先頭はソニー・クラーク。彼らしいクラーク節全開でかっこよくノリのいい演奏の割には哀愁もチョッピリ感じる素晴らしさ。雰囲気もそのままに50年代のパワーを感じながらフラー、ファーマーのソロも楽しめる愛すべき一枚。(しげどん)

アートファーマーのトランペットとカーティスフラーのトロンボーンが息の合った素晴らしいコンビネーションを聴かせる。フラーの美しいメロディラインには無駄が無く、落ち着いた大人のJAZZを堪能できる素晴らしいアルバムだ。(ショーン)



Two Bones/Curtis Fuller   トゥー・ボーンズ/カーティス・フラー

1958年1月22日

Blue Note

hand       ★★★☆

しげどん  ★★★★

Curtis Fuller,Slide Hampton(tb),Sonny Clark(p),George Tucker(b),Charlie Pership(ds)

スライド・ハンプトンとのスタイルの違いが面白い共演盤。ソニー・クラークのサポートも秀逸。

同じトロンボーンのスライド・ハンプトンとの共演盤でブルーノートの発掘盤。フラー(1934生)のほうが年長かと思っていたが、調べるとハンプトン(1932生)のほうが2歳上だった。2人とも80歳代で頑張っている。2人のソロの競演を、ソニー・クラークがサポートする感じのいい盤だ。バトルというよりも協調を感じる。(hand)

鋭角的な濃度のあるハンプトンが先行する曲が多いが、、まろやかな音色のフラーとの対比が面白い。ソニー・クラーク目当てで聴くのも充分価値があると思う。なぜお蔵入りしていたのか不明だが、ブルーノートにはこのような優れた演奏の発掘盤が多い。全体的に力強い演奏が多く楽しく聴ける作品だ。(しげどん)



Blues-ette/Curtis Fuller  ブルース・エット/カーティス・フラー

1959年5月21日

Savoy

hand       ★★★★☆

しげどん  ★★★★★

ショーン  ★★★★★

Curtis Fuller(tb),Benny Golson(ts),Tomy Flanagan(p),Jimmy Garrison(b),Al Harewood(ds)

テレビCMにもしばしば取り上げられた「Five Spot After Dark」に代表されるトロンボーンの音色が心に響く名盤

フラーといえばコレ!とされてきた盤。フラー名義の盤ながら、ベニー・ゴルソンのカラーが強く、いわゆるゴルソン・ハーモニーを楽しむ盤だと思う。ゴルソンの同時期のプレステッジ盤よりもゴルソン的に良くできた盤だと思う(笑)。※同デザインで似たタイトルの「ブルース・エットVol.2」という93年発売盤がある。オリジナル盤の別テイクばかりを元盤と同じ曲順で並べたものなので、アドリブが違うバリエーションとして楽しめる。「ブルース・エットPart2」は93年録音の全く違うリバイバル盤だ。(hand)

トロンボーンという楽器が、これほど素晴らしく心に響くとは正直思っていなかった。少なくともこのアルバムを聴くまでは。カーティスフラーのトロンボーンには、トランペットやサックスのような花形プレーヤー以上の優しさと温もりがある。この盤のセッションにはテナーのベニーゴルソンとピアノはトミーフラナガンが参加しているが、このジェントルな2人がまた、フラーの指向とマッチングして、心底寛げる音の空間を創り出している。聴き惚れているうちに、アルバムは終わってしまい、余韻だけが残る。名盤である。(ショーン)

テレビCMにも使われた有名曲「Five Spot After Dark」!いまさら説明は不要の人気盤。評価は良し悪しを超えてますのでまずは聴いてもらうしかありません。カーティス・フラー氏のライブを大阪のライブスポットで聴いた際に、フレンドリーに話をしてくれてこのアルバムにサインをしてもらいました。そのジャケットは私の宝物です。(しげどん)



The Curtis Fuller Jazztett  ザ・カーティス・フラー・ジャズテット

1959年8月25日          Savoy

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★☆

Curtis Fuller(tb),Lee Morgan(tp),Benny Golson(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Charlie Persip(ds) 

豪華メンバーのジャズテット第一作はフラーが主役のハード・バップ盤

ジャズテットといえば、アート・ファーマー&ベニー・ゴルソンで、フラーはメンバーに入っていても名前を出してもらえなかった。サボイやブルーノートのアーチストだからなのか?弟分的な位置づけだからか?その辺は不明だが、この盤はフラー&ゴルソンのジャズテットだ。リー・モーガン、ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、チャーリー・パーシップと豪華メンバーで、ゴルソンもいるがソロイストに徹している感じで、「ブルースエット」に比べてゴルソン・ハーモニーは弱いと思う。フラーもリーダーとして好きなように演奏している気がする。ジャズテットというゴルソンっぽいタイトルの盤がゴルソンっぽくないのだ(笑)。ジャケやタイトルはダサいが、良質なハードバップ盤だ。(hand)

ジャズテットのほかの諸作とは方向性が違う作品だ。ジャズテットはてっきりゴルソンとファーマーの双頭バンドでスタートしたと思っていたが、このアルバムが第一弾だった。フラーはすぐにジャズテットから離れてしまうが、自分の音楽的主張と乖離があったのかもしれない。この作品ではゴルソン的な要素は少なく、フラーはオリジナル曲も提供していて、オーソドックスなハードバップ盤になっている。私にはこの作品の方がその後のジャズテット諸作よりも良く感じる。リー・モーガン、ウィントン・ケリーというスター級のサイドマン参加も魅力をアップさせている。(しげどん)

テナーにベニーゴルソン、トランペットにリーモーガンを迎えての演奏だが、どうも主役がハッキリしない。そのためか、印象の薄い曲ばかりになってしまっているように感じる。1曲目のIt's Alright With Meはノリも良く、リーモーガンがキレ良く引き締めている。(ショーン)