70年代はバードのエレクトリック・ファンク時代です。多分、売上的には黄金時代だったはずです。新ジ談的には苦手な時代と言えます。ただ、最期にジャズに復帰して3枚を残してくれたことは嬉しいことです。(しげどん)
バードは、はっきり言うと、他の天才トランペッター達、具体的にはブラウニーやモーガンなどと比べると、トランペットは上手くないと思う。特に速い曲でのタンギングがあまりキレイではなく、荒っぽい。とはいえ、いい曲を作るのと、トランペットを吹き出すときの破裂的ないわゆるラッパ的な音は魅力的だ。この音がラスマイ盤「ゲッティング・ダウン・トゥー・ビジネス」のエリントン曲④アイ・ゴット・イット・バッド、でも聞かれたのは嬉しかった。最後期の復帰に感謝だ。(hand)
・新宿ジャズ談義の会 :ドナルド バード CDレビュー 目次
・Donald Byrd CDリーダー作⑤ ・・・このページ
Donald Byrd(tp,flg,el-tp,vo), Allan Curtis Barnes(fl,oboe sax), Roger Glenn(sax,fl), Fonce Mizell(tp,vo), Larry Mizell(vo), Kevin Toney(p), Freddie Perren(p,syn,vo), Dean Parks, David T. Walker, Barney Perry(gr), Joe Sample(p,el-p), Chuck Rainey, Wilton Felder, Joe Hill(el-b), Harvey Mason, Sr.Keith Killgo(ds), Bobbye Hall Porter, Perk Jacobs, Stephanie Spruill(perc), King Errisson(congas,bongos)
バードの教え子でもあるマイゼル兄弟との第1作。ベースとギターの絡んだリズムがフュージョンを感じさせる盤だ。メンバーを見ると、ジョー・サンプル、ウィルトン・フェルダーというクルセイダーズのメンバーが参加している。クルセイダーズはこの71年にジャズ・クルセイダーズからクルセイダーズに名前を変え、フュージョン化している。そのきっかけがこの盤だったのかもしれないが、クルセイダーズ初盤「パス・ザ・プレート」が71年5月発売なので、逆にバードがフュージョン的な2人を活用した可能性がある。ハロルド・ランドとボビー・ハッチャーソンは、60年代の新主流派的な傾向をこの後更に推し進めるていくことになるが、この時点ではフュージョン的なサウンドに貢献している。バードのトランペット自体は、ファンク的なリズムに乗って気持ち良さそうに吹いているが、そのプレイそのものにはあまり魅力を感じなかった。トータルなグルーヴを楽しむ音楽なのだろう。ソロイストはいいが、リズム隊は15分も同じことをやっていて楽しいのか、正直、あまり理解できない。(hand)
Donald Byrd(tp), Alan Barnes(sax,fl), Kevin Toney(keyb), Bernard Perry(gr), David Williams(b), Keith Killgo(ds), Ray Armando(perc)
録音から40年以上経った2014年の発掘盤。ブルーノートの公式盤ではなくFM音源の海賊盤だが、音は悪くない。ブラックバーズとの共演盤なので、店はジャズ・ワークショップでも、私にはジャズに聞こえない音楽だ。スタジオ録音に比べればシンプルなので、バードのソロなどジャズ的に多少は聞きやすい要素がある。(hand)
Donald Byrd(tp), Roger Glenn(fl), Fonce Mizell(clavinet,tp,vo), Fred Perren(syn,vo), David T. Walker(gr), Jerry Peters(p,el-p), Chuck Rainey(el-b), Harvey Mason(ds), Stephan Spruill(perc), King Errisson(congas,bongos), Larry Mizell(vo,arr, cond)
マイゼル兄弟との2作目。冒頭のイントロを聞いてジョージ・ベンソンの「メローなロスの週末」を思い出し、そして、バードの登場でチャック・マンジョーネの「フィール・ソー・グッド」を思い出した。その後のフュージョンのヒット盤の基礎にバードが貢献していたのは知らなかった。ジャズは面影もなく消えてしまった。(hand)
Donald Byrd(tp,flh,vo), Fonce Mizell(tp,vo), Allan Barnes(ts,fl), Nathan Davis(ts,ss), Kevin Toney(el-p), Larry Mizell(syn), Barney Perry(gr), Henry Franklin(el-b), Keith Killgo(ds,vo), Ray Armando(org,perc)
2022年にブルーノートから発掘発売された1973年7月5日にモントルー・フェスに出演したバードの演奏。この時期の他の演奏同様にマイゼル兄弟参加のブラックバーズとしての出演なので、やはりブラックファンクでジャズはほとんど感じない。バードのトランペットも想像どおりあまり活躍しない。その辺はどんなシチュエーションでも主役を譲らないマイルスとはかなり違う。プロデューサーも多少吹きます、みたいな感じなのかもしれない。いずれにしても、私好みの音楽ではない。(hand)
Donald Byrd(tp,flh,vo), Gary Bartz(as,ss,cl), James Carter(whistler:6), Mayuto Correa(congas), Margie Evans, Kay Haith, Freddie Perren(vo), Fonce Mizell(tp,cl,vo), Jerry Peters(org,p), John Rowin, David T. Walker(gr), Larry Mizell(Fender Rhodes,ARP syn,vo), Chuck Rainey(el-b), Harvey Mason(ds,bata ds), Roger Sainte(perc), Ronghea Southern(gr:4), Stephan Spruill(perc,vo)
マイゼル兄弟との3作目。裏声(ファルセット?)のボーカルコーラスまで入ったこの手の音楽を広義でもジャズと捉えることは私には困難だ。ソウル系の音楽に聞こえてしまう。(hand)
Donald Byrd(tp,flh,vo), Ray Brown(tp), George Bohanon(tb), Tyree Glenn Jr.(ts), James Carter(whistle), Fonce Mizell(tp,clavicord,cl,vo),
Larry Mizell(p,vo), Craig McMullen, John Rowin(gr), Skip Scarborough(p), Larry Dunn(syn), Chuck Rainey(el-b), Mayuto Correa(perc,conga), Harvey Mason(ds), King Errisson(conga), Kay Haith(vo)
マイゼル兄弟との4作目。バードには申し訳ないが、私の愛好する音楽とは大きくかけ離れてしまった。クラシックも苦手だが、反復によりグルーヴを生み出すような音楽も苦手だ。そして、なんでこんなに楽しそうなのかも理解できない。悲しみの裏返しと理解すべきなのか?そのあたりもわからない。(hand)
Donald Byrd(tp,flh,vo), Oscar Brashear(tp), George Bohanon(tb), Gary Bartz, Ernie Watts(sax), Jerry Peters, Patrice Rushen, Skip Scarborough(keyb), Fonce Mizell(keyb,tp,vo), John Rowin, Bernard Beloyd Taylor, David T. Walker(gr), Scott Edwards(el-b:2-8), James Jamerson(el-b:1), Alphonse Mouzon(ds:1-5), Harvey Mason(ds:1), Mayuto Correa, Stephan Spruill(perc), Mildred Lane(vo:2,5), Kay Haith(vo:3,7), Theresa Mitchell, Vernessa Mitchell, Larry Mizell(vo), Wade Marcus(string arr), Unidentified strings
マイゼル兄弟との5作目にして最終共同盤。レイニー&メイソンが変わり、リズムがタイトだがより無機的になった気がする。⑦のアルトのソロは、バーツかワッツか不明だが、もはや音色もフレージングもジャズのものではなく、サンボーンあたりに連なるものだ。長く在籍したブルーノートからのラスト・リーダー盤となるが、今後のバードの復古化を期待してしまう。(hand)
Donald Byrd(tp,vo), Greg Phillinganes(p), Paul Jackson Jr., Rick Littlefield, Wah Wah Watson(gr), Ed Watkins(el-b), Anthony Cox(ds), Jim Gilstrap, John Lehman, Art Posey, Josef Powell, Syreeta Wright, Ralph Turnbough, Stephan Spruill, John Lehman, Lisa Roberts, Patricia Henderson, Marlena Jeter, Maxine Anderson, Angela Winbush(vo)
ブルーノートを離れ、ワーナー系のエレクトラと契約したバード。第1作はブラックバーズの曲を取り上げ、チョッパーベースにボーカル、コーラス、さらにストリングスまで入り、リズム&ブルース、ディスコ志向の音楽になってしまった。バードはマイルスに先駆けて80年代マイルス的なエレクトリック・トランペットを使っている。ジャズ復帰はさらに遠のいた感がある。(hand)
Donald Byrd(tp.flh,arr), Clare Fischer(org:Yamaha EX-42 ARP Pro Soloist, Fender Rhodes), Dyno-My-Piano, as,p), Ronnie Garrett(el-b), William "Country" Duckett(gr), Pete Christlieb(sax), Ernie Watts(fl), Victor (Butch) Azevedo(ds,perc), Jim Gilstrap, John Lehman, Joyce Michael, Michael Campbell, Mitch Gordon, Zedric Turnbough(vo)
前作に引き続く路線の音楽。トランペットはエレクトリックから普通のトランペットに戻っている。とは言っても、偏狭なジャズファンの私には苦痛の音楽でしかない。(hand)
Donald Byrd(tp), Isaac Hayes(p,Fender Rhodes,vib,perc,syn), Ronnie Garrett(el-b), William Duckett(gr), Albert Crawford Jr.(p, Fender Rhodes,clavinet), Eric Hines(ds kit), Myra Walker(p), Rose Williams,
Diane Williams, Pat Lewis, Diane Evans(vo)
EW&Fの盤です、と言われれば信じてしまうと思われる盤。ジャズのカテにはどう考えても入らない。長いリズムイントロに続き出てくるのはボーカルやコーラスで、バードのトランペットは歌の間奏がメインとなる。ジャズ・トランぺッター、バードをラブな人が聞く盤ではない「ラブ・バード」(笑)。トランペッター、バードのリーダー盤ではなく、音楽プロデューサー、バードの盤だ。一応自ら楽器を吹いているだけクインシーよりマシだと言えるのだろうか。(hand)
Donald Byrd(tp), Isaac Hayes(p,Fender Rhodes,vib,perc,syn,concert bells), Ronnie Garrett(el-b), William "Country" Duckett(gr), Albert "Chip" Crawford Jr.(p,Fender Rhodes,clavinet,prophet), Eric Hines(ds), Glenn Davis(perc), Hot Buttered Soul Unlimited:Diane Evans, Diane Davis, Pat Lewis, Rose Williams(vo), Myra Walker(vo:6), Issac Hays, Bill Purse(arr)
どう考えても新宿「JAZZ 」談義の会のジャズ談義の対象とはならない盤(泣)。ハンコックが使っていたボコーダーのような音声まで遂に登場した。エレクトラ所属もこの盤までとなり、次のランドマークに期待するしかない。残すところあと3枚だ。(hand)
Donald Byrd(tp,flg), Kenny Garrett(as), Mulgrew Miller(p), Rufus Reid(b), Marvin "Smitty" Smith(ds), Michael Daugherty(syn:1,5)
“20年ぶりのストレートなジャズ盤”ストリングス風のバックのシンセ①⑤が気にならない訳ではないが、とにかくバードがジャズに戻ってきた。ランドマークに移籍し、67年の「クリーパー」以来と考えると20年ぶりのストレート・アヘッドなジャズ盤。メンバーもマルサリス出現以降のニューメインストリーム(日本では“新伝承派”)の素晴らしい面々。やっと盤の素晴らしさを云々できるようになった。そして、本盤はどうなのか?まずまずとしか言いようがない。この時期、既にアコースティックなハンコックやマルサリス兄弟の活躍は始まっているので、そうした流れの中にバードの復帰もあると思うが、残念ながら賛否の別れるマルサリス盤の方が私には魅力があると思う。タイトル曲①は、元のW.C.ハンディのブルースのエネルギーを感じない美しいバラードになってしまった。④ブルー・モンク、はバードがモンク曲を演奏するのはあまりないと思う(「2トランペット」やモンク盤くらい。)。バード作の⑥サー・マスター・クール・ガイ、はビバップを感じる好ましい曲と演奏だ。CDオマケのランディ・ウェストン曲⑦ハイ・フライ、は私のあまり好きではない曲だが、ここでの演奏は素晴らしい。全体にバードよりもギャレットの活躍に負うところが大きいと思う。ただ、復活のご祝儀ポイントは出したい気分だ。(hand)
70年代後半からハードバップリバイバルが起こり、特に日本では懐かしいメンバーによる懐古的な作品が多く録音されたが、バードはそのような流れにはのらなかったんだなぁ。この作品も一曲目のシンセでがっかりする。二曲目以降はリアルなジャズかもしれないが、ハードバップ的ではなく、あくまでも同時代的なジャズ。新しいジャズを聴いてきた向きにはすんなり受け入れられる作品かもしれない。(しげどん)
Donald Byrd(tp,flg), Kenny Garrett(as:1-3,5,7), Joe Henderson(ts), Bobby Hutcherson(vib), Donald Brown(p), Peter Washington(b), Al Foster(ds)
前作から2年が経ち、メンバーで残っているのはギャレットのみ。ギャレットとジョーヘンの二枚看板でフロントが強力だ。ジョーヘンとは同じブルーノートにいたが共演はなかった。同じトランペットのドーハム系のテナーだったことや、ジョーヘンが活躍し始めた頃にはバードが既にファンク化していたこともあると思う。ピアノのドナルド・ブラウンは日本ではあまり知られていないが、なかなかいいピアニストだと思う。ジャズファン的にはバードのジャズ回帰は歓迎だが、世間的にはファンクバードが意外と人気があり、またジャズファンは前期バードを愛好していることから、残念ながらラスト3枚の回帰盤はほとんど注目されていないようだ。3枚ともに悪くはないが、「ハーレム・ブルース」はシンセが、「シティ・コールド・ヘブン」はオペラボーカルが、私には減点ポイントだったので、この盤は、減点ポイントがなく、ブラウンのピアノが盤全体をいい感じで下支えして、クオリティを高めていると思った。(hand)
この作品は1990年リリースだから、ハードバップリバイバルも後半で、ペッパーやガーランドは死んでしまった後なのだ。でもこのころバードが来日したような記憶もあるが、私の記憶違いか?残念ながらライブは聴けなかったがマクリーンが「レフト・アローン」をもう一度やらされたように、「フュエゴ」をやったりはしなかったのだろうか?この作品も若いメンバーに囲まれてこの時代のジャズをやっている。私好みのジャズではないが、最後まで時代に前向きだったということだろう。(しげどん)
Donald Byrd(tp,flg), Joe Henderson(ts), Bobby Hutcherson(vib), Donald Brown(p), Rufus Reid(b), Carl Allen(ds), Lorice Stevens(vo:3,7)
前作から2年で、現時点(2022.8)でバードのラスト盤。JMのモーニンやブルース・マーチを思い出す、ファンキーな①キング・アーサーから始まる。この盤は、モダン・トランペッターのバードも復調はしているが、ジョーヘンとボビー・ハッチャーソンの活躍が目立つ。カール・アレンのブレイキー的なドラムもいい。ローリス・スティーブンスという人のボーカル③⑦、特に⑦はオペラのようで苦手だ。クラシックの知識が全くないので⑦の作者パーセルを調べてみるとバロックの作曲家だった。「ディドとエネアス」はバロック盛期のオペラの最高傑作とされていた。まさにオペラのようではなくそのものだった。バードがなぜオペラなのかはわからなかった。バードは2013年2月4日に80歳で亡くなっているので、亡くなるまで22年間の録音は出ていないことになる。この盤の録音時点では、まだ58歳とかなり若い。今後の発掘に期待するしかない。(hand)
ドナルド・バード、通し聞きしてみて、正直な感想は、バードには申し訳ないが、特別に大きな感動がなかった。新ジ談のためにこれまで通し聞きしてきたトランペッター達、ブラウニー、モーガン、ファーマー、ドーハム、そしてマイルス、いずれも大なり小なりならぬ大なり特大なりの感動と、個性に惹きつけられた。ところが今回のバードさん。そのトランペットに小から中なり、たまに大、程度の感動はあったが、吹き始めの破裂音的な音色の魅力を除き、大から特大にかけての感動と、その個性に惹きつけられることがあまりなかった。なんだかとても残念だ。私の聞く力が不足しているのかもしれない。ただ、作曲や編曲、そしてバンド表現などは、思っていた以上に素晴らしく、その辺りは再発見できたと思う。(hand)
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