55~56年は故郷デトロイトでの初リーダー録音からニューヨークに出て一躍引っ張りだことなった時期です。ジョージ・ウォーリントン5やブレイキーのJM、ホレス・シルバー5にも参加しています。57年にはアルトのジジ・グライスとジャズ・ラブ(ジャズ研究所)という双頭バンドを短期間ですが結成していました。このジャズ・ラブをディスコグラフィー(Jazz Lab Discography)にまとめてみました。(しげどん)
バードはデビュー時から恵まれていたと言われる。才能以上に評価されていたという人もいる。しかし、聞き通してみると、やはりサムシングを持っていたからこそ、ブルーノート時代に花を咲かせ、私自身は興味がないが、その後ブラックファンクの先導役にもなったのだろう。トランペッターとしての評価には微妙な点もあるが、バードなりの魅力と、作曲家、プロデューサーとしてのポイントを加えれば、満点以上であることは間違いない。(hand)
・新宿ジャズ談義の会 :ドナルド バード CDレビュー 目次
Donald Byrd(tp), Bernard McKinney(euphonium), Yusef Lateef(ts), Barry Harris(p), Alvin Jackson(b), Frank Gant(ds)
バードの最初のリーダー盤は、55年8月23日のデトロイトのライブ録音でトランジションから出ている。1965年にデルマークからユゼフ・ラティーフのリーダー盤「ユゼフ」としても出ていて、同じデルマークは90年のCD化時には、バード盤「ファースト・フライト」にもなっている。買う方には迷惑でしかない。内容は、若くて元気なバードが聞かれ、ユーフォニウムのバーナード・マッキーニーが盤のカラーを独特なものにしている。ユゼフやバリー・ハリスもフレッシュだ。特にユゼフは、まだマルチリードではなく、ホーク的なテナー奏者時代だ。デルマーク盤ではAB面が入れ替わり、現在に至っているようなのだが、盤での確認はできていない。(hand)
Donald Byrd(tp), Frank Foster(ts), Hank Jones(p), Paul Chambers(b), Kenny Clarke(ds)
トランジションの初録音の翌9月のサボイ録音。前作に比べてハードバップ感のある作品だと思う。スタジオ録音のせいかバードのトランペットも、よりブリリアントに感じる。中間派的な色合いも持つフランク・フォスターも盤の雰囲気に合ったモダンなプレイをしている。多分、チェンバースのモダンなプレイがハンク・ジョーンズやケニー・クラークをよりモダンにしてくれているのだと思う。ソロ回しはあるが、テーマ合奏がないのは残念なところ。同日録音のイフ・アイ・ラブ・アゲインがサボイの「モンタージュ」(未CD化)に収録されている。2018年発売のジャズ・イメージというレーベルから出た別ジャケの「バーズ・ワード」には同日録音の全6曲とトランジションの「ビーコン・ヒル」からの4曲が収録されている。ビーコン・ヒルを中途半端に入れるくらいなら、同時期の未CD化曲、ABCパラマウントのオムニバス盤「ノウ・ユア・ジャズ」からのビリー・テイラーとの1曲、星影のステラを収録してほしかった。(hand)
Donald Byrd(tp), Joe Gordon(tp:1,2,4,6), Hank Mobley(ts:1,3-5), Horace Silver(p), Doug Watkins(b), Art Blakey(ds)
前月に「カフェ・ボヘミア」を録音し、JMとしてデビューしたばかりのブレイキーらを迎えた盤。バード自身、翌年4月にはJMメンバーとして「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」を録音している。この盤は、バードも張り切ってはいるが、ダグ・ワトキンスの太いベースが盤全体を引き締めてカッコいい盤にしていると思う。ただ、新人トランペッターのバードの盤にもう1人トランペット、ジョー・ゴードン (1,2,4,6)をなぜ入れたのかは理解に苦しむ。この時期のハンク・モブレー(1,3-5)は息の吹き込み圧には不満を感じることが多いが、オリジナルを2曲提供するなど、意気込みを持って参加していたようだ。トランジションからは「バード・ジャズ」よりも先に発売されたらしい。⑥クレイジー・リズムは、元はオムニバス盤「ジャズ・イン・トランジション」に収録されていた曲。慌たゞしい感じで雰囲気が合わないので、追加しなくてよかったと思う。(hand)
Donald Byrd(tp), Ray Santisi(p), Doug Watkins(b), Jimmy Zitano(ds)
ボストンのビーコン・ヒルという丘?のスティーブ・ファセットという人の家で録音されたのでこのタイトルとなったらしい。ジャケ写の家がそうなのかもしれない。バードの初、そして盤単位では、唯一のワンホーン盤。破裂するようなバードのトランペットの音色が気に入り、若い頃に愛聴した記憶がある。日本では、ワンホーンがもてはやされ、管楽器奏者毎にワンホーンの定番の盤が紹介されていたと思う。ベースのダグ・ワトキンス以外は、トランジションの本拠地ボストンのミュージシャンと思われるが、演奏が見劣りすることはない。ピアノのレイ・サンティシはサージ・チャロフの「ボストン・ブローアップ」などにも参加している人で、この盤でも、③⑤の2曲はバード抜きのピアノトリオ演奏になっている。トランジション盤は、ブルーノートとはまた別のジャズらしい骨太の録音で、CDで聞いても好感の持てる音だ。(hand)
ドナルド・バードの貴重なワンホーン作。名曲もいっぱい書いてアレンジャー、バンドリーダー的な能力もある人だが、この作品ではトランペッターとしてワンホーンで通し全曲スタンダード。必然的に彼のトランペットの魅力に焦点を当てた企画と思いきや、6曲中2曲がピアノトリオ。それも悪くないできで、アルバムとしては端正に出来上がっている。トランペットのワンホーン作品はそれだけ難しいのかもしれない。(しげどん)
Byrdのトランペットはメロディアスで、寛いで聴ける。ただ、全体を通して真面目でやや面白味に欠けるアルバムだ。ショーン的にはもっと冒険をしてメリハリをつけて欲しかった。(ショーン)
Art Farmer, Donald Byrd(tp), Jackie McLean(as), Barry Harris(p), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds)
50年代のハードバップの雰囲気が味わえるジャズらしさ全開の作品。バードのトランペットはメロディアスで上品。アート・ファーマーもホットな熱演をしており彼を静的なトランペットと思ったら間違いだ。ほかのメンバーの存在感も十分に楽しめる。今回はCDで聞いたが、アナログが欲しくなった。(しげどん)
プレスティッジお得意のジャムセッション的なタイトルだが、ジャム盤ではなく、きちんとアレンジされたハードバップ盤だ。アート・ファーマーとバードの二枚看板に、好調なジャッキー・マクリーンも加わった隠れ名盤だと思う。バード曲①ザ・サード、からかっこいい各人のソロの共演が聞かれる。この曲のみバード先発だ。②コントゥアー、④ディグ、での2人のチェイスは聞き応えがある。③ホエン・ユア・ラブ、のファーマー、⑤ラウンド・ミッドナイト、のバード単独も素晴らしい。(hand)
バードとアート・ファーマーの2人のトランペッターが競演する贅沢なアルバムだが、テンポの速い曲が多く、ハリキッタ2人が疾走すると、ごちゃごちゃしてしまい、やや聞き辛くなるところもある。最後のラウンド・ミッドナイトは、バードの快活なトランペットの雰囲気が良い。(ショーン)
Donald Byrd(tp), Phil Woods(as), Al Haig(p), Teddy Kotick(b), Charlie Persip(ds)
ジャケにはウッズ/バードの順になっており、ウッズ曲も多いので、ウッズが主導している盤と考えられる。ジョージ・ウォーリントン・クインテットのリーダー、ウォーリントンを外してアル・ヘイグを加えたメンバーだ(ドラムも違う。)。ウッズが師と仰ぐパーカー・クインテットのようにやりたかった盤だと思う。(hand)
Kenny Burrell(gr), Donald Byrd(tp), Hank Mobley(ts), Jerome Richardson(fl,ts), Mal Waldron(p), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds)
プレステッジお得意のジャムセッション盤。人気の高さから、バレルとバードを共同リーダーにして発売しているようだが、バレル作の長尺タイトル曲①がバレルのソロから始まり、バレルがこのセッションの主導的役割を果たしている雰囲気がある。内容は、さすがハードバップ御三家のプレステッジ、ピシッとカッコいいハードバップになっている。CD追加の2曲⑤身も心も、⑥チューンアップ、もなかなかいい。(hand)
この一連のジャムセッションシリーズでは、この「ナイト」が一番の出来だと思う。曲にも変化があり、単にだらだらしたジャムセッションではない作品としての締まりがある。ケニー・バレルの存在感が光るが、ハンク・モブレーの参加もうれしい。マル・ウォルドロンの曲「フリッカーズ」は、ジャッキー・マクリーン&カンパニーの冒頭で演奏していた印象深い曲で、違うメンバーでのテイストの違いも面白い。(しげどん)
Kenny Burrell(gr), Donald Byrd(tp), Frank Foster(ts), Tommy Flanagan(p), Doug Watkins(b), Art Taylor(ds)
「オール・ナイト・ロング」から年を越して1週間後のセッション。モブレー、リチャードソン、マルがフランク・フォスターとトミフラに交替している。バード、ワトキンス、テイラーは同じ。バレルもバードも両盤ともに好調なので、他のメンバーや選曲により好みは分かれる。フォスターはコルトレーン?と思わせるような勢いのあるソロをとる。私は「ナイト」が好みだ。バレル作のタイトル曲①オール・デイ・ロング、はいい感じだと思う。(hand)
年明け後に録音されたジャム・セッション・シリーズの続編。ケニー・バレルのブルージーなソロは相変わらずいい感じだが、この二枚で共通しているダグ・ワトキンスの重厚な雰囲気は、全体を支えていてすばらしいベースだ。(しげどん)
Gigi Gryce(as), Donald Byrd(tp), Jimmy Cleveland(tb:5,7),
Benny Powell(tb:1,3), Julius Watkins(French horn:1,3,5,7), Don Butterfield(tuba:1,3,5,7), Sahib Shihab(bs:1,3,5,7), Tommy Flanagan(p:1-3,6), Wade Legge(p:4,5,7), Wendell Marshall(b), Art Taylor(ds)
バードはアルトとのコンビが好きなようだ。これまで共演してきたウッズ、マクリーンそしてこの後のジェンキンスらのような熱情的で濃いアルトとは違う学究タイプのジジ・グライスとバンドとして結成したジャズ・ラブの初盤。約8か月の短い期間であったが、レーベルは様々ながら6枚もの録音を残している。グライスはソロに魅力がない訳ではないがアドリブ一発というような奏者ではなく、アレンジや作曲に重点を置いた人だ。ジャズ・ラブ後、バードはブルーノートに移り看板アーチストの1人となって行くが、このバンドでの経験は、曲作り、アレンジに活かされていると思う。70年前後から総合音楽家に変わっていくのもこの辺に原点はあるはずだ。この盤は、トロンボーン、フレンチホルン、チューバ、バリサクという低音管を加え、グライスのアレンジが冴えた内容になっている。バード版⑦アイ・リメンバー・クリフォードも知られざる名演だと思う。残念ながら②虹の彼方のアレンジはカッコいいとは思えない。「ジャズ・オムニバス」収録のスモーク・シグナルはこの時の録音だ。(hand)
アルトのジジ・グライスとドナルド・バードが組んだバンド、"ジャズ・ラブ”=ジャズの研究所と訳すべき?は、1957年2月4日に第1作を発表し、7か月後の9月5日までの短期間に、リズム隊とレーベルを変えながら6枚のアルバムを精力的に録音していました。ジャズ・ラブのディスコグラフィーを掲載します。
注:ジャズ・ラブの作品は入手困難盤もあり、画像のみの表示のものがあります。
①Jazz Lab (Columbia) 1957.2.4 & 5, 3.14
Donald Byrd(tp), Gigi Gryce(as), Wade Legge(p), Tommy Flanagan(p), Wendell Marshall(b), Art Taylor(ds),
Jimmy Cleveland, Benny Powell(tb), Julius Watkins(frh), Sahib Shihab(bs), Don Butterfield(tuba)
②Gigi Gryce And The Jazz Lab Quintet (Riverside) 1957.2.27 & 3.7
Donald Byrd(tp), Gigi Gryce(as), Wade Legge(p), Wendell Marshall(b), Art Taylor(ds)
③Jazz Laboratory At Newport (Verve) 1957.7.5
Donald Byrd(tp), Gigi Gryce(as), Hank Jones(p), Wendell Marshall(b), Osie Johnson(ds)
④New Formulas From The Jazz Lab (RCA-Victor) 1957.7.30 & 31
Donald Byrd(tp), Gigi Gryce(as), Hank Jones(p), Paul Chambers(b), Art Taylor(ds)
⑤Jazz Lab. (Jubilee) 1957.8.9
Donald Byrd(tp), Gigi Gryce(as), Hank Jones(p), Paul Chambers(b), Art Taylor(ds)
⑥Modern Jazz Perspective (Columbia) 1957.8.30, 9.3 & 5
Donald Byrd(tp), Gigi Gryce(as),Wynton Kelly(p), Wendell Marshall(b), Art Taylor(ds),
Jackie Paris(vo), Jimmy Cleveland(tb), Julius Watkins(frh), Sahib Shihab(bs), Don Butterfield(tuba)
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