東海岸に拠点を移したドルフィーは、初リーダー盤「アウトワード・バウンド」で衝撃的なデビューを飾っただけでなく、巨匠ミンガスの」バンドにも加わり、本格的に活躍する時期に入ります。アルトサックスの音色もオーソドックスなものから特異なものに変わり、フルートやバスクラも多用するようになります。そして、早くもブッカーリトルとの双頭で伝説の「ファイブ・スポット」でのライブを録音します。(しげどん)
・新宿ジャズ談義の会 :エリック・ドルフィー CDレビュー 目次
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1960.4.1
New Jazz
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Freddie Hubbard(tp), Jackie Byard(p), George Tucker(b), Roy Haynes(ds)
オーネット・コールマンの数作が58年から出ているが、60年4月という時期のデビュー盤のこの音は十分に衝撃的だ。当時フリーと言われたものが、今聞くとそれほどでもないものもあるが、ドルフィーの場合、フリーというよりも、音色やソロという楽器の演奏そのものがぶっ飛んでいるので、色あせることがない。フレディのトランペットもいい具合に適合している。(hand)
ドルフィの初リーダー盤だが、ソロのスタイルは完成形。ブラウニーより年上の彼はすでにベテラン。彼のいろいろな要素が全部コンパクトに詰まっている濃縮された傑作。ハバード、バイヤードも熱演。スタンダードナンバーは意外性があり、面白い。ドルフィはぶれないが、ハバードは曲調によって情感的になる。(しげどん)
荒々しいドルフィーと繊細なドルフィーを感じることのできる盤。フレディー・ハバードのトランペットも健やかに育った若い象のようにパオーンと溌剌としていて、ドルフィーとの2管のユニゾンがとても美しい。またglad to unhappyのフルートのドルフィーも軽やかに飛翔している蝶のようでとても綺麗だ。(ショーン)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl),
Roger Mson(tambura), Gina Lalli(tabla),
Ron Carter(b 3),
Bob James(p), Ron Brooks(b), Robert Pozar(perc), David Schwartz(vo)
ドルフィーの未発のリーダー録音を集めた発掘盤なので、収録曲は60〜64年と、リーダー録音のある全期間にわたる。①ジム・クロウ、は不思議な音楽だ。オペラのような能のような不思議な女性ボーカル(ボイス)とドルフィーのアルトの絡みから始まる。「アウト・トゥ・ランチ」直後の64年3月の録音だが、同盤に感じた苦手感はなかった。②〜④は60年11月の録音。フュージョンで活躍するボブ・ジェームスが初期のフリー寄りのピアノトリオでサポートしている。②④はフルートのソロ録音で、③のみロン・カーターとのデュオでアルト。フルートが篠笛のように聞こえてくる。⑤は60年7月の録音。フルートとタブラなどのインドのパーカッションとボイス入りでインドやネパールの音楽にしか聞こえない。フルート好きにはオススメできるかもしれない。(hand)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl,cl), Ron Carter(cello), George Duvivier(b), Roy Haynes(ds)
正規盤第2作。やはり、クオリティは高い。私が、ドルフィーをあまり聞かない理由として改めて思ったのは、3つの楽器の持ち替えが理由ではないかということだ、それぞれの楽器は嫌いではないが、1枚の中であまり持ち替えて欲しくないということなのだ。やはり、盤を聞くときは、できるだけ同じ楽器編成で1枚通して聞くのが好きなのだと思う。特にこの盤は、ドルフィーの通常使うアルト、フルート、バスクラに加えて普通のクラも使用して7曲を4種の楽器で演奏しており、ドルフィーカラーに染まってはいるが、なんだか集中しにくい。ドルフィーの②セレナ、は名曲でこの後、何度も演奏されることとなる。バスクラというのは不思議な楽器で、低音は不気味な音色、高音はサックスのような艶やかな音色になる。時にアルトと間違えそうになる。ロン・カーターのチェロがかなり活用され、盤のダークなカラーに効果をあげているが、その好き嫌いはあると思う。私は少なめがいい。(hand)
変則的なワンホーンというより、ロン・カーターのチェロはホーン奏者のようにドルフィにからみつく。デュビビエ=保守的なイメージの意外性。ドルフィのソロは自由奔放だが、チェロ入りの編成のせいか、やや抽象的な難解なイメージ。でもフルートなどは情緒的=ドルフィはエモーショナルなプレイヤーだと思う。作品としては素晴らしいが、やや疲れる。(しげどん)
ドルフィーのアルトは単調で面白みに欠ける。フルートの演奏も面白いが、いまいち主張が乏しい。(ショーン)
1960.11
Jazzway
Eric Dolphy(fl,b-cl), Ron Carter(b)
他の曲は別盤でCD化されており、A2トリプル・ミックス、のみがなぜか未CD化。デュオなのかもしれないが、ベースのピチカートとアルコが同時に聞こえる。タイトルどおりの三重録音なのかもしれない。ドルフィーはフルート中心だが、バスクラも吹いているようだ。というのもかなり音が悪い、海賊中の海賊ともいうべき音質だ。一度新宿ナルシスで聞き、その後N先輩にお借りした。(hand)
Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Booker Little(tp), Jaki Byard(p), Ron Carter(b), Roy Haynes(ds)
初期三部作と言われる中の第3作。なんとオーネットとの「フリー・ジャズ」と同日の録音。前2作に比べると、ドルフィーの屈折率は高まっているように感じる。そしてやはりブッカー・リトルとの相性の良さを感じる。ドルフィー=リトルというファイブ・スポットの2人の初盤ということで人気盤のようだが、ジャッキー・バイアードのピアノと作曲はマルに比べると難解で、親しみやすさはかなり違うように思う。特に前半は、パーカー=ガレスピー5のビバップのドルフィー的解釈を展開しているように感じる。それが難解で親しみにくいのでは?と思う。後半は、フルートも含めて親しみやすい内容だと思う。初心者は後半5曲目から聞いた方がいいかもしれない。⑧セイレーン、はCD追加曲だがとても素晴らしい。この後、ライブで何度も演奏されることになる。(hand)
A面のジャッキー・バイヤードの2曲よりも、ドルフィオリジナルとスタンダードのB面のほうが親しみやすく感じた。フルート、バスクラ、そしてアルトと、彼の魅力が味わえる構成。(しげどん)
アルバム全体としては、力強いドルフィーの演奏だが、前半はややメリハリに乏しい。ブッカー・リトルとの競演は、なかなか聴いていて心地良いのだが。後半テンダリーからイッツ・マジックのソロの展開はしっとりとして素晴らしい。(ショーン)
1961.7.16
New Jazz
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Booker Little(tp), Mal Waldron(p), Richard Davis(b), Ed Blackwell(ds)
ドルフィーの中で一番人気の盤。61年7月16日の録音で、その年12月にはリリースされている。改めて聞いてみても素晴らしかった。ただ、他の盤と比べてみると、このファイブ・スポットのシリーズはやや毛色が違う気がした。多分、ドルフィー自身はいつもと変わらないもののバンド演奏がいわゆるハードバップのコンボ形式の演奏で、フリー寄りの演奏が苦手な人にも聞きやすい内容なのだと思う。特にマルのピアノがその印象を強める要因になっている。後年のマルはややフリー寄りの録音も残してはいるが、この時期はプレスティジのハウスリズムセクションとして活躍していた頃なので個性的ではあるがオーソドックスな演奏をしていて、盤自体を聞きやすくしている。(hand)
圧倒的な迫力のライブで、おそらくモダンジャズ史上に残る最高のライブ作品の一枚だ。ドルフィのソロの魅力はもとより、ブッカー・リトルの輝かしいソロ、マル・ウォルドロンのピアノも特筆すべきもの。Five Spotの一連のライブ作品では、やはりこの一枚が図抜けている。(しげどん)
エリック・ドルフィーの心情溢れるアルトサックスの印象的なフレーズが、最初から素敵なセッションを予見させる。その期待どおりのブッカー・リトルのトランペットは澱みなく伸び伸びとして素晴らしく、ドルフィーのバスクラリネットも中々いい低音の味を出していて、この2管のアンサンブルがこのアルバムの聴きどころだ。the prophetの途中の中弛み感が惜しい。(ショーン)
Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Booker Little(tp), Mal Waldron(p), Richard Davis(b), Ed Blackwell(ds)
63年リリースのファイブスポットの第二集。アナログ時代は片面1曲の長尺。①アグレッション、はリトル曲で本人の熱いソロが素晴らしい。マルも最高速のプレイで頑張っている。素晴らしい盤だがバスクラとフルートの各1曲でアルトがないのが寂しい点だ。(hand)
VOL.1と同日の録音なので演奏内容はもちろんすばらしい。B面のフルートに印象づけられる一枚。(しげどん)
ブッカー・リトルの溢れる気持ちを絞り出すようなトランペットが素晴らしく、エド・ブラックウェルのテンポ良いリズムとマッチして、心地良くて新鮮なJAZZを堪能できる。多彩なドルフィーのフルートもまた哀愁めいていて、良い味を出している。(ショーン)
Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Booker Little(tp), Mal Waldron(p), Richard Davis(b), Ed Blackwell(ds)
65年にリリースされたファイブスポットの事実上の第三集。AB面各1曲の長尺でどちらも別テイクではなく未発曲。 マルとブラックウェルが活躍するのだが、ドラムソロが長いので発表が遅くなった原因かと想像する。(hand)
これもFive Spotのライブとして、一連の作品と言える。現在のCDではVol.2に、Memorial Albumの二曲が抱き合わせで収録されているものがある。(しげどん)
live at the 5 spotでの演奏とのことで、既出の2枚のアルバム同様、安定した良さが感じられる。この盤では、ブッカー・リトルの澱みないトランペットが堪能できる。ドルフィーもまた、自然体で自由にブローしており、聴衆もリラックスしているような様子が目に浮かぶ。この2管が、異なったフレーズで絡むシーンはライブで二人がノッている様子が手に取るように分かる。マル・ウォルドロンのピアノは繰り返しが多く、単調で残念。(ショーン)
Eric Dolphy(as,b-cl,fl),
①②:Booker Little(tp), Mal Waldron(p), Richard Davis(b), Ed Blackwell(ds)
③④:Freddie Hubbard(tp), Jaki Byard(p), George Tucker(b), Roy Haynes(ds)
⑤:Bent Axen(p), Erik Moseholm(b), Jorn Elniff(ds)
66年リリースの「ファイブ・スポット」の第四集。ファイブスポットの2曲だけでは不足したのか、デビュー盤「アウトワード・バウンド」時の③④、「イン・ヨーロッパ」時の⑤を追加(④はCD化で追加)。なので、タイトルが、こっちもあっちもみたいになったのかもしれない。①ステータス・シーキング、はアウトテイクとは全く言えないこの日の録音の1、2を争う素晴らしさで、スピード感も勢いもある演奏。ドルフィーの切れ味のいいアルトに驚く。マルの全録音の中でも最高速ではないかと思う。 ②ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド、はドルフィーのバスクラのソロバラード。③エイプリル・フール、はこの盤のみに収録されたフルート曲、フェイド・アウトなのでカットされたと思われる。④G.W.(12:11)は元盤「アウトワード・バウンド」より約5分長い別テイクで楽しめる。⑤ドント・ブレイム・ミー、はドルフィーのフルートがいい。(hand)
アナログ時代では、A面の2曲がFive Spotの未収録作品で、B面はOutward BoundとIn Europeからの寄せ集め別テイクで、それなりに面白い一枚だった。CDになって、各テイクがそれぞれのCDのボーナストラックとなり、アルバムとしての意味は薄れたが、それぞれのトラックは良い演奏が揃っている。(しげどん)
勢いのある1曲目のstatus seekingからドルフィーのぶっ飛ばしアルトが炸裂する。マル・ウォルドロンの曲だが、ピアノ、トランペットも高速プレイで追随、エド・ブラックウェルのドラミングが軽さを感じてしまうのが惜しい。もう少しここにズーンとしっかりした重みがあれば、更に良かっただろう。5スポットの熱気そのままだ。4曲目のG.W.もいい。(ショーン)
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