ハンク・モブレーのサイド参加作はたくさんあり、実は彼の楽歴を考えると、重要な作品も多いのですが、同時にそのリーダーにとっても重要作だったりします。
それらリーダープレイヤーのページで評価している作品もありますし、チョイ参加もあります。ここではデビューから1950年代末までの前半のサイド盤を取り上げました。
1953年4月10日,21日
Debut
おすすめ度
hand ★★★
しげどん ★★★
Idrees Sulieman(tp),Leon Comegys(tb),Gigi Gryce(as,fl),Hank Mobley(ts),Walter Davis Jr.(p),Franklin Skeete(b),Max Roach(ds)
モブレー初録音とされる演奏だが、資料的な意味合いだけでなく、ワンホーンの演奏もありモブレーの作品として聴ける編成なので見逃せない一枚だ。かなり生硬な感じのソロで、アルバムとして高い評価はできないが初期のスタイルを知る上では興味深い録音だと思う。(しげどん)
マックス・ローチがモブレーをフィーチャーした、モブレーの初録音。別テイクを除き全10曲中4曲はセプテットで、6曲はカルテットだ。それだけ、ローチはモブレーを新人として重要視したということだ。レスター・ヤングの香りも残しながら、モダンなスタイルで吹くモブレーは確かに有望だったのだろうと思う。モブレー曲も3曲入っている。(hand)
Dizzy Gillespie(tp,vo),Hank Mobley(ts:CD2 10-17),Wade Legge(p:CD2 10-17),Lou Hackney (b:CD2 10-17),Charlie Persip(ds:CD2 10-17),Jimmy Cleveland(tb:CD2 14-16)
元々はヴァーブ盤「ジャズ・リサイタル」だが、CD化されず、現在、ディジーの「クインテット・コンプリート・スタジオ・レコーディングス」というアメリカン・ジャズ・クラシックスという発掘盤のおまけ8曲としてCD収録されている。モブレーは7曲に参加していて、初期のソロを聞くことができる。一部にトロンボーンのジミー・クリーブランドが加わる。そしてこの日の1曲ワン・アローンが「ディズ・アンド・ゲッツ」のはずの一部にディズ・アンド・モブレーで収録されている。なぜそこに持って行ったのか理由は分からないが、モブレーが一番フューチャーされた曲ではある。ただし、クレジットは、なぜかEarl Mableyとなっている。(hand)
Kenny Doham(tp),Hank Mobley(ts),Horace Silver(p),Doug Watkins(b),Art Blakey(ds)
ドーハム,モブレー主体に聴くと面白いアルバムだと思う。ザ・プリーチャーに代表されるシルバー主体のアルバムとして評価されてきたが、正直なところこの曲を「心に染みる名曲」と思っている日本のジャズファンはほとんどいないと思う。確かに耳にはなじみやすい曲だが、アルフレッド・ライオンも「コーニーだ!」と評していたらしい。全曲がシルバーオリジナルなので彼の作曲中心に聴いてしまいそうだが、ドーハム,モブレーの共演アルバムとして、ソロを楽しむ視点で聴くとなかなか聴きごたえがあるのだ。(しげどん)
①1955年1月30日
②1955年3月29日
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
①Kenny Dorham(tp),Hank Mobley(ts),Cecil Payne(bs),Horace Silver(p), Percy Heath(b),Art Blakey(ds)
②Oscar Pettiford(b) replaces Heath, add J.J.Johnson(tb),Carlos Valdes(conga)
コンガのラテンな感じで、熱く、しかし、クールに始まる①アフロディジア。ドーハムもモブレーもJ.J.も超カッコいい。録音から25年後の1980年代にこの曲で踊り始めたロンドンの若者たち。クラブ・ジャズの始まりだと思う。ドーハムとブルーノートとロンドンのDJはすごい。(hand)
最初はレコードで聴いたが、A面はコンガ が加わることで、全く新しいジャンルのラ テン系ジャズの世界が創り出され、その オリジナリティに驚き、その創作力に感動した。B面も、ケニードーハムの明るく 伸びやかなトランペットが存分に味わえ、 ハンクモブレーらとの競演も楽しめ、終始勢いが感じられる素晴らしいアルバムとなっている。アートブレイキー御大のド ラムが牽引してくれているのだろう。この ような独自性の強いアルバムは、ジャズ の奥行きと底辺拡大に大きく寄与している。ショーンとしても大好きな1枚だ。 (ショーン)
Julius Watkins(french horn),Hank Mobley(ts),Perry Lopez(gr),Duke Jordan(p),Oscar Pettiford(b),Art Blakey(ds)
フレンチホルンのジュリアス・ワトキンスのブルーノートの10インチ盤2枚を1枚にしたCD。いずれもテナーとギターを迎えたセクステットで、Vol.1のテナーがフランク・フォスターで、後半Vol.2がモブレー。フレンチホルンはジャズではゲテ物扱いされている気がするが、私は嫌いではない。マクリーン盤やフラー盤でいい味を出していると思う。⑧B&Bでのモブレーのソロはいい。ただ、この曲、ベニー・ハリス作となっているが、バドのストリクトリーコンフィデンシャルと似ている。ラスト⑨ジョードゥは、作者デューク・ジョーダンも参加しているが、モブレーのこの曲の珍しい演奏とソロが聞かれる。(hand)
Kenny Doham(tp),Hank Mobley(ts),Horace Silver(p),Doug Watkins(b),Art Blakey(ds)
初期メッセンジャーズの傑作盤だ。ホレス・シルバー名義のジャズメッセンジャーズ(BLP1518)と同一メンバー。「モーニン」のような必殺ヒット曲がないのでやや地味な印象かも知れないが、ドーハム,モブレーという二管のフロントラインは、私にはモーガン,ゴルソンより魅力的に感じる。じっくり聴けば味わい深いライブなのだ。二人とも音楽監督的な素養もあり作曲にも才能があるのは明らかで、Vol.1はドーハムのマイナーズホリディ(→アフロ・キューバン),Vol.2はモブレーのアヴィーラアンドテキーラ(初リーダー作)と、それぞれのリーダー盤で演奏している名曲を熱演しており、聞き比べも楽しい。(しげどん)
JMの名盤中の名盤。「バードランドの夜」にはクリフォード・ブラウンがいた、「モーニン」にはリー・モーガンがいた。そしてこの盤には、私は好きだが大スターではないケニー・ドーハムがいる。ドーハムとハンク・モブレーがフロントを務めるこの盤。2人とも一流だと思うが世間の扱いは1.5流的な場合がほとんどだと思う。しかしながら、この盤はどう考えても一流だ。総合力の勝利といったところだろうか。ドーハムもモブレーも、そしてシルバーも、ダグ・ワトキンスもブレイキーもみんな若くて絶好調だ。シルバーとブレイキーの蜜月もあと半年ほどで終わってしまう前の絶妙にいいコンビネーションの時期を捉えた記録だと思う。スタンダードもいいが、ドーハムのオリジナル(マイナーズホリディ、プリンスアルバートなど)やモブレーのオリジナル(スポーティンクラウド、アヴィラ&テキーラなど)が曲も演奏もとてもカッコいい。シルバーのオリジナルがないのは別れの予兆かもしれない。アナログ時代のVol.1&2は各5曲だったが、CDで各3曲追加で全16曲のコンプリート盤となった。捨て曲なしの素晴らしい2枚だ(2枚組も別売もある。)。(hand)
Donald Byrd(tp),Joe Gordon(tp:1,2,4,6),Hank Mobley(ts:1,3-5),Horace Silver(p),Doug Watkins(b),Art Blakey(ds)
ボストンの超マイナーレーベル、トランディジョンに録音したドナルド・バードの初期作品。後年プロデューサー的になってしまうバードが、トランペット1本で勝負していた初期の盤で、私好みのベースから始まる盤だ。ダグ・ワトキンスのベースがいい音で鳴り響いている。ホレス・シルバーのピアノもいい。この頃のモブレーは風圧が弱い感じで少しストレスを感じてしまう。ドラムはブレイキーなので、メンバー的にはJMなのだが、ブレイキーは抑え気味だ。(hand)
Jackie Mclean(as),Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),Mal Waldron(p),Doug Watkins(b),Art Taylor(ds)
4曲目ではセクステットになって、ハンクモブレーも参加!ホーンの掛け合いは見事だ。全体を通して、スピード感いっぱいのノリノリな印象のアルバムだ。(ショーン)
タイトル通りカルテット、クインテット、セクステットによる演奏が混在している。セクステットの曲も、バード、モブレーとのからみはハードバップらしくて好きだ。この日のセッションは「モブレーズ・メッセージ」にも収録されている。(しげどん)
Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),John Coltrane(ts),Elmo Hope(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds)
エルモ・ホープがリーダーで、オリジナルも二曲提供しているがいずれもシンプルなリフ曲であり、全体的にはジャム・セッションと言っていいアルバム。コルトレーンの参加に興味ある向きがあると思うが、モブレーとの対比は容易に聞き分けられる。(しげどん)
パウエルの幼馴染と言われるエルモ・ホープの盤。ドナルド・バード、コルトレーンとの3管でモブレーが参加。ドラムのフィリーが煽るのと、2テナーということで、モブレーの風圧が多少強まるといういい結果になっている。ホープはバド的なバップスタイルでそれ自体は好ましいが、日本人が好むような憂いが感じられないのが人気があまりない理由だと思う。(hand)
Al Cohn, Hank Mobley, John Coltrane, Zoot Sims(ts),Red Garland(p),Paul Chambers (b),Art Taylor(ds)
4人のテナー奏者の競演盤。ズートとコーンは、ハードバッパーといっても中間派的なニュアンスを感じるので、モブレー、コルトレーンとの競演は??と思ってしまう。4人とも悪くはないが、ブローインセッションなので、盤としての感動はあまりない。(hand)
めまぐるしくソロ担当が変わるのでブラインドテストの練習になりそうな盤だ。でも誰のソロか?そればっかり気になってしまい、味わう余裕がなくなるのだが・・・。ジャズ的にはフツーにいい演奏かも。(しげどん)
Art Farmer(tp),Hank Mobley(ts),Kenny Drew(p),Addison Farmer(b),Elvin Jones(ds)
グライスがモブレーに代わり、ハードバップらしい盤になった。ケニードリューのピアノの溌剌感はいい。エルビンの初期の演奏が聴ける。(hand)
1956年というまさにハードバップ全盛期らしいまとまりのある作品。ここでの注目はハンク・モブレーの参加。ファンにはそれだけで充分だろう。曲も良く、愛聴に耐える名盤だ・・・(しげどん)
Lee Morgan(tp),Kenny Rogers(as),Hank Mobley(ts),Horace Silver(p),Paul Chambers(b),Charlie Persip(ds)
名盤とされるVOL.3が、ゴルソン色が強く、モーガンのリーダー色が意外に弱いのに対し、VOL.2は、ゴルソン色も強いが、モーガン色もそこそこ出ていると思う。冒頭のウィスパーノット、JMの濃い味付けとは別のサッパリした魅力ある演奏。このアルバムの価値を高めている。レックス・ハンフリーズも大活躍している。(hand)
モーガンは若干18歳のだったが、若々しさ全開というよりも、ストーリーがある展開の陰影あるソロは、まるで何十年もやってきたベテランのよう。名曲ウィスパーノットは、この曲のベストと言える味わいがある。初期の代表作として、VOL3が有名だが、このVOL2もかなりの名盤と言えそうだ。(しげどん)
名曲Whisper Notからのスタート。リーモーガンはミュート等も駆使して、頑張っているが、その存在感は微妙だ。まだ若く他のメンバーに遠慮しているのか?リーモーガンのトランペットはメロディアスなのだが、前に出て来ない感じだ。元気いっぱいのリーモーガンが好きな私には物足りないアルバム。(ショーン)
Doug Watkins(b),Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),Duke Jordan(p),Kenny Burrell(gr),Art Taylor(ds)
ドナルド・バードと同じトランディジョンにバード盤とほぼ同じメンバーでワトキンスをリーダーに録音した盤。違いはケニー・バレルのギターだ。ワトキンスはポール・チェンバースの従兄弟で高校の同級生だ。62年に27歳で交通事故で亡くなってしまう。トランジションの音は独特だがキレが良く、私好みの音だ。(hand)
Kenny Drew(p),Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts:1–4),Wilbur Ware(b),G.T. Hogan(ds)
若い頃、同じリバーサイドの「ケニー・ドリュー・トリオ」に感動して、同時期の盤として聞いたが、その時は全くいいと思えなかかった。今はどうか?そこまで悪くはないが、いいとまでは思えない。リバーサイドは、ブルーノートやプレステッジに比べて、純正ハードバップの録音はあまり得意ではない気がする。何だか全体にノリのようなもの(グルーヴ)が不足していると思う。バードは全面参加で頑張っているが、モブレーは半分参加。遅刻したのだろうか?ドラムがG.T.ホーガンではなく、フィリーだったらもっと名盤になったと思う。(hand)
Art Farmer(tp),Curtis Fuller(tb),Hank Mobley(ts),Sonny Clark(p),Wilber Ware(b),Louis Hayes(ds)
録音状態はそれ程良くないが、演奏のノリと完成度は高く、ホンモノ感のあるJAZZを堪能できるアルバムだ。(ショーン)
知られざる名盤。クールストラッティンを別格として、ソニーズクリブがコルトレーン入りのために名盤扱いされることが多いが、聞き比べるとこちらのほうが愛着が湧く。(hand)
スタンダードも悪くはないが、この時期のクラークは自分のオリジナルでの演奏が素晴らしいと思う。ハンク・モブレーも地味に頑張っている。(しげどん)
Lee Morgan(tp) Hank Mobley(ts) Bobby Timmons(p) Jimmy Merritt(b) Art Blakey(ds)
このライブは演奏の質ではサンジェルマンを超えるJM最高作かもしれない。JMのライブはやたらとあるので、この2枚組まで手が伸びず、しかもモーニンのような当時のヒット曲が入っていないので見過ごされてきたんだと思う。JMこのメンバーでの唯一の作品だし、ゴルソンやショーターよりモブレーが好きな私好みの作品だ。もちろんリーモーガンも出色の出来栄え。(しげどん)
モブレーとモーガンが相性よく共演した隠れ名盤。バードランド、ボヘミア、サン=ジェルマンなどブレイキーのライブ名盤の陰に隠れ、あまり聞かれていないと思う。2枚組だし!お腹一杯でここまで到達する人は少ないはず。あえて今、おススメしたい!(hand)
Hip Sippy Blues、モブレーのノリの良いソロ、モーガンのつんざくメロディラインで完成度が高い。JUSTICE、ドラムに続き、鉄人28号登場シーンの様に、ジャズの巨人が近づいて来る不気味な感じが期待感を抱かせる。2枚組なのに、あっという間に聞き終わってしまう魅力盤(ショーン)
Dizzy Reece(tp),Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Art Taylor(ds)
ジャマイカ出身のディジー・リースはイギリスで活躍した後に渡米し、ブルーノート、プレステッジから数枚のアルバムを残してパリに渡る。この盤はアメリカでの2枚目。よく鳴るブリリアントな音色のトランペットで、モブレーの眠気を覚ましてくれた気がする。初期のモブレーは、録音のせいかもしれないが、風圧が弱くモゴモゴして、私にはストレスフルなテナーだったが、この頃からプレイに余裕が出てきて、60年代にはテナーの魅力を感じさせてくれるようになる。(hand)
ウィントン・ケリーのサイド盤としても高い評価の人気傑作盤。アイル・クローズ・マイ・アイズは、ブルー・ミッチェル盤と双璧の地味なる名演にして人気盤。(しげどん)