世紀のジャズ名盤「カインド・オブ・ブルー」から始まる時期です。エバンス、キャノンボールが退団し、コルトレーンもヨーロッパ・ツアー後に退団します。モブレー、ケリーらのメンバーと「サムディ・マイ・プリンス」をスタジオ録音した後、「ブラックホーク」などのライブに力を入れ始めた時期です。
・新宿ジャズ談義の会 :マイルス・ディビス CDレビュー 目次
・Miles Davis マイルス・ディビス おすすめBest5
・Miles Davis CDリーダー作 ④・・・このページ
↓これ以降はエレクトリック期
①-④:May 17, 1958
⑤-⑦:Aug 9, 1958
⑧-⑩:Nov 1, 1958
⑪,⑫:Jan 3, 1959
JMY
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おすすめ度
hand ★★★☆
Miles Davis(tp),Cannonball Adderley(as:⑤-⑫),John Coltrane(ts),Bill Evans(p:①-⑦),,Red Garland(p:⑧-⑩),Wynton Kelly(p:⑪,⑫),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds:①-④),Jimmy Cobb(ds:⑤-⑫)
ビル・エバンス在団時の貴重な記録の1つ。ただ、この時期は、エバンスは入ったものの選曲、アレンジは従来からのものが多く、エバンスらしいモーダルな雰囲気は期待できない。バドの流れは汲むものの、個性的な初期のエバンスは楽しめる。後半はガーランドとケリーだ。(hand)
Miles Davis(tp), Cannonball Adderley(as), John Coltrane(ts), Wynton Kelly, Bill Evans(p), Paul Chambers(b), Jimmy Cobb(ds)
私としてはジャズ史上の最高名盤だと思っている。初めて聞いたときは難解で理解できなかったが、ジャズを聞き始めてしばらくしてから聞いたときに、衝撃的に素晴らしさが伝わってきた。今は、あまりに大事な盤なので基本的に年1回しか聞かないようにしている。それでも時折、耳の中で音が鳴り始めてしまう。それくらいすごい盤だ。エバンスとキャノンボール脱退後のメンバー、マイルス、コルトレーン、ケリー、チェンバース、コブというメンバーで1年後に欧州ツアーを行うが、「カインド」の面影は全くない演奏となっている。この録音が、進化する多種多才なメンバーにより一分の隙もない作品となったのは、まさに最高の一瞬を天才マイルスが切り取ったということなのだと思う。(hand)
高校生の頃初めて聴いたのは図書館で借りた日本盤で「トランペット・ブルー」というタイトルのペラジャケだった。当時は有名なマイルス作品だと思って期待してカセットに録音したが、曲がいいとは思えなく、あまり深く聴きこまなかった。今では純粋に良い作品、好きな作品と言い切れるんだが、どこがどう良いのか?何十年もジャズを聴いてきても、この作品の価値を理解した感じがしない難しい気持ちがある。曲がいいとか歌心があるといった説明とは一切無縁の緊張感。裏面ライナーでビル・エヴァンスが言っている墨絵の世界のような感じ取り方が一番いいのかもしれない。でも、この後ジャズはどんどん無機質になっていき、私にとってはまったく聴く気にならない音楽になっていく出発点の作品でもある。かって粟村政明さんはビッチズブリューでジャズは終わったと言ったが、私にはカインド・オブ・ブルーで愛するジャズは終わってしまったのだ。モード的なジャズでの愛聴盤はいまだに一枚もないのだから。(しげどん)
静謐なベースラインからのスタート。最初に聴いた時にワクワクした感覚が蘇る。そして期待通りの演奏。キャノンボール、コルトレーン、ビル・エヴァンスという最高のメンバーとの熱演はいつの時代でも色褪せることはないだろう。キャノンボールの澱みない音の流れにコルトレーンの力強く芯に重みのあるテナー、エヴァンスの音階の美しさが加わる。そこにマイルスの情緒溢れるトランペットの響きで、芸術的に美しいJAZZが仕上がった。超必聴盤だ。(ショーン)
Miles Davis(tp,flh),Gil Evans(arr,cond),and orchestra
マイルスのオーケストラ盤は何枚もあるが、この盤は正真正銘のスペインのクラシックで、ジャズではない。過去のジャズ評論家さんの評価は最高に高く、ジャズ評論家なのに何故?と思う。マイルス自身には白人層も含め評価が高まるという効果はあったのかもしれない。「マイルス・アヘッド」や「ポギーとベス」が多少なりともジャズであったのに、この盤にはジャズがない。ジャズ盤としての私の評価は低くならざるを得ない。余談だが、久しぶりにアランフェスのメロディを聞いたら、チック・コリアのスペインのイントロに聞こえてしまった。スペインが始まることを耳が期待してしまっているのだ。有名曲を自作のイントロにするのは良くないと思う。(hand)
これもギル・エバンスとの共作。組曲的な大作なのだが、前作以上にジャズではない。ジャズの枠を超えた音楽性を評価する評論家や音楽家が多いけど、ジャズファンには理解できない作品で、正直なところ私には何がいいのかサッパリ理解できない。アナログ盤を買って後悔した作品だ。こうなってくると好みの問題だろうが、ジャズではないこのような音楽も好きだという人がいるので売れているんだろうと思う。(しげどん)
Miles Davis(tp),John Coltrane(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
元々海賊盤で出ていたものを、コロンビアが正規にブートレグ(海賊盤)・シリーズとして出すことになったコルトレーンの脱退直前の欧州ツアーの記録。数多くの海賊盤が出ているが、この4枚で約半分が収録された。若い頃にLPで買ったドラゴン→DIW盤の3月分が3枚組のうちの2枚となっている。4月の2回のライブが収録されていないのは中途半端な気がする。ソニー・スティットに変わった同じ60年の秋のヨーロッパもまだ全て海賊盤のままだ。コルトレーンのテナーがいいのは速いフレーズでも全力でブローしているところだ。ショーターとはそこが違うと思う。この盤では、モーダルな方向に突っ走っているコルトレーンと従来型のケリーのミスマッチが気になる。ソーホワットのようなモーダルな曲では問題ないが、オールオブユーのような歌物でミスマッチを感じる。ケリーは私の好きなピアニストだが、発展を続けるマイルスやコルトレーンとはスタイルの適合する期間に共演してこそ名演が生まれることがわかる。マイルスバンドとしてはこの後スティットやモブレー加入で揺り戻しがあるのでケリーの適合期間は延びることになる。下手ということで加入を反対されたコルトレーンが5年間で物凄い変貌・成長し、マイルスバンドの枠をはみ出すまでになったことが実感できる。(hand)
Miles Davis(tp),John Coltrane(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
コルトレーンとのラストとなる60年春のヨーロッパツアーのうち3月のパリとストックホルムはコロンビアのブートレッグ・シリーズVol.6に収録されたが、4月のこのチューリッヒとオランダ2ヶ所は同シリーズに入らなかった。音は悪くない。(hand)
Miles Davis(tp),John Coltrane(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
オランダのスヘフェニンゲンという街での昼間のライブ。この日は約60キロ離れたアムステルダムで真夜中のライブもあり強行軍だ。①ソーホワットでのコルトレーンの長〜いソロがブーイングの対象となったらしい。「カインド・オブ・ブルー」もまだ発売されていなくて、新しくて過激で長いソロが嫌われたのだと思う。その後のコルトレーンを知っていて聞くと単にコルトレーンらしいソロにしか聞こえないが初めて聞くと、衝撃や拒否感があると思う。コロンビアのブートレッグ・シリーズVol.6に入っているパリでもブーイングがあったようだ。この盤は日本ではヴィーナスから出たこともあるが、音がウリのヴィーナスとは違う海賊音質だ。(hand)
Miles Davis(tp),Sonny Stitt(as,ts),John Coltrane(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
2012年にCD化された海賊音源。2枚組で1枚目は同じ日の昼の同じオランダのスヘフェニンゲンでのライブは早くからCD化されていたが、こちらはコンセルトゲボーで収録し国営放送された様々なアーチストの音源のCD化のなかで出てきたもので、音もいい。1④ソーホワットでのコルトレーンのソロは昼と違って長くない。「ソロが止められない」というコルトレーンに、「マウスピースから口を離せばいい」とマイルスが言ったという笑い話のような話があるらしい。Disc1最後の⑦ウィスパーノット、⑧イーズイットは秋のケリーのトリオ演奏で、ファンには嬉しい。2枚目は同年秋のソニー・スティット入りの演奏。アルトを中心にスティットも頑張っているが、コルトレーンのぶっ飛んだ感じがなくなり、マイルスの進歩(必ずしも必要とは思わないが)は一時ストップしたと思う。次の黄金のクインテットまでの間は進歩を好むマイルスや評論家には停滞期かもしれないが、ハードバップを楽しみたいファンには楽しめるマイルス盤が増えたとも言えると思う。(hand)
Miles Davis(tp),Sonny Stitt(as,ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
コルトレーンが退団し、後任に一旦ジミー・ヒースが決まったが麻薬の執行猶予中ということでツアーに出られず、欧州公演にはソニー・スティットがテナー&アルトで参加した。特にアルトの比重が高いと思う。生来のバッパーなので、選曲もモーダルなものが減っている。この盤では、オールブルースとソーホワットは演奏しているが、オールブルースは、アルトでキャノンボール的なノリでなんとかクリアしている。Vol.1は特にアナログ起こし的なプチノイズが入る。現在は2枚組の「マンチェスター・コンサート」になっているようだ。(hand)
Miles Davis(tp),Sonny Stitt(as,ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
60年秋のスティットを伴った欧州公演は、マンチェスター(フリートレードホール)とアムステルダム、そしてこのストックホルムの記録が残っている。スティットとの音源もブートレッグ・シリーズとしてコロンビアはまとめてほしい。マイルス好きにはスティットは人気がないのかもしれないが、決して悪い内容ではない。(hand)
Miles Davis (tp),Hank Mobley, John Coltrane (ts),Wynton Kelly (p),Paul Chambers (b),Jimmy Cobb,Philly Joe Jones (ds)
最高名盤「カインド・オブ・ブルー」の次のコンボによる盤というつらい立ち位置にいる盤。エバンス、キャノンボールが抜けて、ケリーが全曲になり、モブレーが入り、コルトレーンは2曲にゲストだ。カインドとの関係性を抜きに聞けば、かなりクオリティの高い盤であることは間違いない。ケリーもモブレーも悪くない。ケリーのプレイに注目して聞いてみるとモーダルな側面が出て、プレイの幅が広いと思う。モブレーはコルトレーンと比較され芋テナー呼ばわりされる原因となったが、加入直後の違和感があるのだと思う。次のブラックホークからは期待に応えるプレイになっている。①王子様の印象が強いが、よく聞くとカインドの流れを汲む曲もあり、スタンダード歌物の王子様が「1958」の流れの曲だと思う。同じくラスト曲、スタンダードの⑥アイソートは中間くらいか。(hand)
ハンク・モブレーがマイルスグループとコンセプトが合わず、急遽コルトレーンを呼んだなどという話もあるが、好みの問題からすると、コルトレーンよりモブレーのほうが好きなのだ。モブレーはモブレーらしく、彼らしいソロをとっているし、ウィントン・ケリーもしっかりケリー節を聴かせてくれている。そんなところが惹かれる一枚。もちろんこれもかなりの名盤だ。(しげどん)
Miles Davis (tp), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)
モブレー加入時のシスコ、ブラックホークでのライブ。この「フライデー・ナイト」6曲がVol.1 で、「サタデー・ナイト」7曲がVol.2となっている。今はこの形のCDのほかに、コンプリート4枚組29曲もある。モブレーは「サムディ」録音時よりもバンドに溶け込み、いいソロをとっている。ケリーを中心にしたリズム隊も絶好調だ。ショーター加入後は、激しくても温かみのある演奏がなくなるので、私としてはこの時期の演奏が好みに合っている。(hand)
マイルスの60年代のライブ諸作の中では50年代からのレパートリー中心の親しみやすい素晴らしいライブ。印象としてはウィントン・ケリーの好演が目立つが、アナログ盤では編集でハンク・モブレーのソロがほとんどカットされている。これから聴く方はぜひCDの特にコンプリート盤から聴く事を強くお勧めしたい。LP時代の時間の制約から、収録曲を減らすのは仕方ないが、作品の一部をカットしてしまうのはいただけない。ケリー、モブレーともにこの日のライブは絶好調とも言えるいいソロを行っているのはCDのコンプリート盤を聴けばよくわかるので、内容的には★★★★★評価だが、上記の理由で★★★★評価にしたい。(しげどん)
ハンク・モブレーが単調で、曲が締まらない。たくさんの音符を吹き込んでいるだけのように聞こえるのだ。対してウィントン・ケリーは、個性あるフレーズでメリハリのあるソロで楽しませてくれる。特にバイバイブラックバードでマイルスと絡むケリーは小洒落ていて良い。またジミー・コブのドラムスはチューニングが悪いのか録音の仕方なのか、ドスドス響いてやや興醒め。(ショーン)
Miles Davis (tp), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)
このアナログ中古盤を若い頃に買い、愛着のある演奏だ。③ソーホワット、④グリーンドルフィンなど私のお気に入りのマイルス曲が入っているのもいい。ドルフィンでのモブレーはとても調子が良さそうだ。ケリーも好調だ。(hand)
アナログ盤だと印象に残るのはA面のSo Whatだろう。そのほかの曲はかなり編集でカットされているが、この曲だけはフルに収録されているようで、メンバーのソロが充分堪能できる。全体的にはVol.1同様に、やはりCDのコンプリート盤が良い。(しげどん)
最初のwell you needn'tからマイルスは絶好調。伸びやかでノリの良い演奏が心地良い。ライブらしい速いスピードで展開されるso whatも、スキャットを口ずさむようなマイルスのフレーズが新鮮で迫力がある。ここではコルトレーンではなくハンクモブレーがテナーで参加しているが、よりマイルスカラーを感じるライブになっており、それはそれでまとまりを感じるアルバムとなっている。私はレコードでの試聴だったが、コンプリート盤のCDも発売されており、それも興味深い。(ショーン)
1961年4月21日,22日
Columibia
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★★★
Miles Davis (tp), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)
この盤のお気に入りは、なんと言っても3⑥ラウンドミッドナイトだ。オリジナルに次いで気に入っているこの曲の演奏だ。以前は落穂拾い盤の「ディレクションズ」に入っていた。テーマを吹き終わり、モブレーに交代する場面で、マイルスがなかなか去らず、モブレーに対し「燃えろ、燃えろ!」と言うように吹き続けるのが最高で、引き受けたモブレーも熱いソロで応える。4①枯葉も名演なのだが、フェイドインなのが残念なところ。他曲も名演揃いだ。4⑧ソフトリーは、マイルスがソフトリー?かと思ったが、ケリーのトリオ演奏。これが彼の代表作「ケリー・ブルー」②ソフトリーに対抗できる素晴らしさだ。(hand)
普通コンプリート盤などと言うと、ボツになったテイクなどで水増しされたようなものが多いが、このコンプリート盤はオリジナル盤以上に素晴らしい。オリジナルのアナログで編集カットされていた部分が復活し、モブレー、ケリーのソロが最後まで楽しめる。その上追加収録されているトラックも、オリジナル採用曲にまったく劣らない演奏なのだ。(しげどん)
Miles Davis(tp),Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
Gil Evans Orchestra
ギル・エバンス・オーケストラとクインテットとのカーネギーホールのライブ。「スケッチ・オブ・スペイン」のようにオーケストラにソロイストとしてマイルスだけ入るのではなく、クインテットのバックにオーケストラが多少入る感じだ。しかも、クインテットだけの曲もある。①ソーホワットは、クインテットは素晴らしいが、合わせなければいけないオーケストラが多少遅れるのは、何やってんだーという感じで、いらない感が満載だ。盤全体の印象は悪くない。(hand)
マイルス クインテットとギル・エバンス オーケストラとの共演。完全なオーケストラ作品ではなく、クインテットのソロが前面にでている場面が多く、ウィントン・ケリーやハンク・モブレーのソロなども白熱した感じで、オーケストラの作品は多少入る程度なので、我慢して聴ける。(しげどん)
Miles Davis(tp),Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)
Gil Evans Orchestra
「カーネギーホール」の残り曲。①アランフェスから始まり、正編に比べオーケストラが色濃く感じられ、あまり好ましくない。後半③④⑤はクインッテットだけなのでなかなかいい。(hand)
2枚組の「コンプリート・カーネギーホール」では、前作と本作合わせて当日のコンサート順に並べ替えられている。それによるとこの盤では冒頭に収録されている「アランフェス」は最後の曲だったようだ。それ以外はジャズとして楽しめるクインテット演奏なのだが、このアランフェスが長くて退屈だ。(しげどん)
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