第二次黄金のクインテットのまさに黄金時代です。「プラグド・ニッケル」の怒涛のライブに始まり、四部作の「スマイルズ」、「ソーサラー」、「ネフェルティティ」が次々と吹き込まれます。最後はヨーロッパツアーで締めくくられ、その後はメンバーを少しずつ変えながらエレクトリック・マイルスに向かいます。
・新宿ジャズ談義の会 :マイルス・ディビス CDレビュー 目次
・Miles Davis マイルス・ディビス おすすめBest5
・Miles Davis CDリーダー作 ⑥・・・このページ
↓これ以降はエレクトリック期
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
65年の録音だが76年にアナログでこの盤とVol.2が日本発売され、アメリカでは2枚組となって82年に発売された。1992年には2日間のコンプリートCD7枚組が出た(米盤は曲数は同じだがカットがなく8枚組。音は日本盤がいいらしい。私の所有は日本盤)。さらに米盤収録のカットのない10曲が日本で「クッキン・アット・ザ・プラグド・ニッケル」「ハイライト・フロム・ザ・プラグド・ニッケル」「モア・クッキン・アット・ザ・プラグド・ニッケル」として分散発売されていてややこしい。CD化で最近はVol.1とVol.2ではなく、2枚組が通常のようなので、ここでは2枚組として扱いたい。ただ、聞いてみると、Disc1は激しく、Disc2はやや甘口ということで、「フォア&モア」と「マイ・ファニー」を意識してテオ・マセロが編集したようにも思える。プラグドニッケル=怒涛というイメージなので、2は日本人などの甘口好きを狙った感じで、プラグドニッケル全体から言えば特殊な選曲かもしれない。ただ、2③オールブルースのショーターのソロはぶっ飛んでいる。(hand)
保守的な耳の私でのコメントはすべきではないかも知れない。でもこの時期のコルトレーンやオーネットの諸作品は勢いを感じて愛聴すべき作品も多いが、このライブではそれを感じない。ソロイストとしてのマイルスはおとなしめで 、ショーターもそれに合わせているようだ。1965年という時点ではフリーキーな表現として勢いも新鮮味もない作品なので、マイルスとしては次のエレクトリックに向かわざるを得なかったと思う。(しげどん)
1965年のマイルスほ、手術や怪我のため、ほとんど演奏活動ができなかったが、このクリスマス前のPLUGGED NICKELで復帰。ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムス等の援護で、活気ある演奏となった。特にagitationでの、ハンコックのピアノとウィリアムスのドラムの絡みはとても前衛的でユニーク。また定番のso whatでのマイルスはとても自由で、キレ味という点では完全復調とは言い難いが、テナーのウェイン・ショーターとトニーの絡みが素晴らしく、曲の出来は最高だ。ここでマイルスのフリーなジャズは、新たな境地を見せており、他のメンバーも触発されて、引き締まった筋肉質なセッションになった。特にall bluesのショーターは圧巻!安心して聴ける曲から緊張感のある曲へとマイルス5重奏団は進化しており、この脱皮こそが、新たなJAZZの世界を予感させるもので、このアルバムの価値だろう。(ショーン)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
編集盤とされる日本盤が全47曲8時間58分という膨大な長さ。これが2日間の計6ステージ分というから驚く。特にトランペットは口への負荷が大きく、長時間の演奏に適さない楽器と言われている楽器だが、病み上がりのマイルスのこの熱演は本当にすごい。しかも、2日目のほうがトランペットもよく鳴っていると思う。いつも冷静で燃え尽きないショーターがこのライブでは時折熱くなる瞬間があるのは私的には好感だ。約9時間のライブを集中して聞くのは困難に近いが、どの曲も聞く価値がある。(hand)※ジャケ写は米盤
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Richard Davis(b),Tony Williams(ds)
元々は海賊LP「ジンジャーブレッド・ボーイ」で、なかなかCD化されなかった音源だが、近年海賊レーベルからのCD化が進み次々と曲が増えコンプリート化が進んでいる。私の聞いたのは「オリエンタル・シアター」という2枚組で4曲追加になっている。このライブの特徴は、ロン・カーターの代わりにリチャード・デイビスが入っていること。意外だが、ロンはギャラのいい仕事があるとそちらを優先していたそうで、リチャード・デイビスのほか数人トラ要員がいたらしい。そういうつもりで聞くと、ロンではなくても演奏に支障は感じないし、MCのリチャード・デイビスというコールが録音されていなければ気がつかないレベルかもしれない。録音場所も長い間、ポートランド州立大とされてきたが、オリエンタルシアターという劇場が正しいらしい。演奏ではステラの激しさが印象に残るが、全体として音が悪い。(hand)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
プラグドニッケルでの怒涛のライブを経た後のスタジオ第2作。雰囲気としては「E.S.P. 」の延長線上にある作品。音のバランスの問題かもしれないが、メンバーが均等に活躍している気がして、「E.S.P. 」よりもクオリティは高いと思う。③フットプリンツが印象に残る。この時期のクインテットは、一般的には黄金のクインテットといわれ、高く評価されている。特に4部作は最高の評価を得ている。ただ、マイルス盤の中で愛聴されているのかについては疑問だし、私自身の愛聴盤ではない。(hand)
無機質なトーンのソロの連続で、古い耳の私には限界に近い退屈さ。ウェイン・ショーターのカラーが強い。でもこれがカッコイイと思う人がいるからマイルスは人気なんだろうな。(しげどん)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
「スマイルズ」、「ソーサラー」、「ネフェルティティ」、「ウォーター・ベイビーズ」4枚の収録曲のリハーサル録音を中心とした盤でコレクター以外にはつらい内容だと思う。リズム・セクションだけのリハーサル曲3⑥カントリーサンはハンコック好きには嬉しいとは思う。(hand)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
クインテットのスタジオ第3作。前2作の流れを汲む作品。各曲も各演奏もいいのだが、あまり耳に残るものがない。ただ、ハンコック作のタイトル曲④ソーサラーは割と気に入っている。もっと聞き込めば理解できるのかもしれないが、暗くてなかなかその気になれない。物悲しい暗さは好きだが、冷たい暗さはあまり好みではない。ラスト⑦ナッシングライクユーは5年前のボブ・ドローの明るいバップボーカル入りでなぜそこにあるのか理解不能だ。(hand)
この作品も評論家的な評価は高いが、色彩感覚がない感じの抽象的で難解なソロが続く。ジャズファンがどの程度この作品を評価しているのかと思うが、マイルスの場合ほかのアーティストと違うのは、私がつまらないと思っている盤が高評価されている点だ。この盤のようなクールな感覚にかっこよさを感じるファンがいるという事なのだろう。あくまでも自分の好みなので変えようがないが。最後にボブ・ドローのボーカル曲が挿入されているのは不可解だ。(しげどん)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
4部作の4作目。ショーター作のタイトル曲①ネフェルティティは8分近い曲だがアドリブがないことで有名。確かに管楽器やピアノのソロはないが、トニーのドラムがずっとソロをとっていると理解すれば不思議ではない。メロディは嫌いではない。⑤ライオット、⑥ピノキオもいい。(hand)
タイトル曲のネフェルティティはテーマを2管で延々と繰り返し、リズムセクションが主役になる。この時期のマイルスの先取性を象徴する曲で、ハービー・ハンコックが「VSOPニューポートの追想」で取り上げていた。ほかの曲もテーマの繰り返しにはさんだ短いソロなど、構成は複雑なので聴き込めば発見がありそうだが、このように聴く側に緊張感を強いられる音楽は、私のように古臭いジャズを愛する身には長すぎて最後まで聴き通すのがつらい。(しげどん)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Chick Corea(keyb),Ron Carter,Dave Holland(b),Tony Williams(ds)
76年発表の盤。67年の「ネフェルティティ」と同日を含む3曲と、翌68年のエレクトリック期に入ったマイルスがチック・コリアのキーボードとデイブ・ホランドのベースを加えたセプテットの演奏2曲からなる。アナログ盤では A B面になっている。当然ながら盤としての統一性はない。 A面のショーター曲に特段の魅力を感じないが、これがアコースティック・マイルスの最後のスタジオ録音になる。(hand)
私がジャズを聴き始めた頃発表された盤。スィングジャーナルなどで大きく取り上げられていたので、いつかは聴こうと思っていたが、聴かなくてよかった。でも今回聴いてみて意外だったのは後半のエレクトリック期の演奏はそれほどつまらなくはなく、A面のアコースティック演奏と大差ない感じで聴けた。もちろんどちらも私の好みではない。(しげどん)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
67年秋の欧州公演3ヶ所のベスト。全体は3枚組プラスDVDで出ている。次作の「イン・ザ・スカイ」からハンコックがエレピを弾き、バンドの雰囲気はロック方向に急展開していくので、この盤がアコースティック・マイルスの最後の盤となる。夏のニューポートでは倦怠感を感じたが、秋のヨーロッパでは、何かが吹っ切れたような快活さを感じる。65年の「プラグドニッケル」のような激しさは消え、各人が自由に演奏しているが、それでもまとまっているというもの凄さがある。曲が終わりそうになると次の曲をマイルスが吹き始め、メンバーが即応するのもすごい。(hand)
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
67年秋のヨーロッパ公演アントワープ、コペンハーゲン、パリの3枚組プラス、ドイツのカールスルーエとストックホルムのDVD1枚。何かが吹っ切れたような快活なライブで、しかもメンバーの自由度が高く神がかり的な凄さも感じる素晴らしいライブだ。ただ、同じ曲が多いのでマニア以外はベスト盤を聞けば十分な気もする。DVDは、内容はCD3枚と選曲も曲順もほとんど同じだが、彼らがあまりに若いのに驚く。想像はしていたが5人ともニコリともしない。次作はエレクトリック・マイルスの「イン・ザ・スカイ」なので、アコースティック・マイルスの最終作となる。エレクトリック・マイルスの定義ははっきりとは決まっていないと思うが、4ビートから8ビート、16ビートなどのロック的なものになり、いわゆるスイングは消える。特に、ピアノがキーボードに変わり、単に音色が変わるだけでなく、鍵盤を押している間は音が出ているという電気楽器の特性を使う音楽となる。エレキギターやエレベも多用されるようになっていく。という訳で、純ジャズ好きの人間(私)には、この辺りがマイルスの最後となり、今まではこの後の盤はあまり聞いていない(ただ、80年復帰後の「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」などは多少は聞きやすいので聞いている。)。(hand)
1967.11.3
Tempo Di Jazz
おすすめ度
hand ★★★
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
67年秋のアコースティック・マイルスのラストとなる欧州公演の記録は7日分が残されており、コロンビアのブートレッグ・シリーズVol.1で5日分がCDとDVDになった。残るのは11月3日のこの盤(ストックホルム)と4日「ライブ・イン・ヨーロッパ」(ベルリン)が海賊盤のままだ。この盤は、「テンポ・ディ・ジャズ」と呼ばれているが、タイトルがなく、「マイルス・デイビス」とレーベル名しか表示がないので仕方がない。内容はブートシリーズ同様に素晴らしい最後のアコースティックライブなのだが、音が悪い。多分、いい音の音源がなくブートシリーズには入れられなかったのが残り2枚なのだと思う。ラストにスティットが同行した60年9月の1曲(フォア)が入っている。(hand)
1967.11.4
New Jazz Planet
おすすめ度
hand ★★★
Miles Davis(tp),Wayne Shorter(ts),Herbie Hancock(p),Ron Carter(b),Tony Williams(ds)
67年秋のアコースティック・マイルスのラストとなる欧州公演の記録は7日分が残されており、コロンビアのブートレッグ・シリーズVol.1で5日分がCDとDVDになった。残る11月3日「テンポ・ディ・ジャズ」(スウェーデン)と4日(ドイツ)のこの盤が海賊盤のままだ。この盤は5曲メドレー形式の前半とスティットが同行した60年10月6日の1曲(オール・オブ・ユー)が追加で入っている。
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