コロンビア時代の中期(1965年~)以降の作品を紹介しています。この時期もモンクは引き続き好調で、多くのライブを行っています。あまり多いせいか、CD化されていないものもあります。
しかし、ライブは多いもののコロンビアへの正式なスタジオ録音は多くなく、ストレート・ノー・チェイサーは64年のソロ・モンク以来2年ぶりの正式スタジオ録音になります。正規盤だけをみると録音数が少ないので不調のような印象も受けます。一説によるとコロンビア側はビートルズ集やロックバンドとの共演などの売れ線狙いの企画を提案していたようで、自由に自分の音楽がやりたかったモンクはアルバム化にこだわらずライブに注力していたのかもしれません。
また、セロニアス・モンクは、死後もかなりの量の発掘音源が発売されています。主にライブ音源が多いですが、作品として注目すべきものも多いです。発掘音源に関してはhand氏のマニアックな研究に負うところが大きいです。可能な限り網羅的に掲載していきますので、参考にしてください。入手困難盤は画像だけの掲載になりますので、中古レコード店やオークションで調べてみてください。
セロニアス・モンク CDレビュー目次
①リーダー作 その1 初リーダー作からリバーサイド時代前半1957年まで
②リーダー作 その2 リバーサイ時代続き 1957年~1958年
④リーダー作 その4 後期 コロンビア移籍後 1962年~63年
⑤リーダー作 その5 後期 コロンビア時代 1964年~65年
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
フランスでの放送用録音の海賊盤2枚組。どのように放送したかはわからないが、演奏自体は短めの放送用ではなく十分な長さを演奏している。このメンバーでの演奏が成熟しており、各人のソロもいい。65年5月23日の録音とされているが、3月6日(Disc 1)と7日(Disc 2)ではないかと思われる。(hand)
1965年8月21日
Hi-Hat
hand ★★★
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
カナダの海賊レーベルCan-Amから出ていたアナログをHi-HatがCD化したもの。好調なカルテットの記録だが、海賊音質だ。(hand)
1966年3月27日
Disc 2⑦⑧:1956年11月17日
SOLAR
hand ★★★☆
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
Disc 2⑦⑧:Thelonious Monk(p),Ernie Henry(as),Paul Chambers(b),Willie Jones(ds)
66年ジュネーブでの海賊2枚組。絶好調のカルテットで4人ともしっかりとソロをとる。ゲイルズも以前のようにランニング・ベースばかりのソロではない。ただ、4人とも元気なのはいいのだが、2③ラウンド・ミッドナイトは少し元気過ぎだと思う。また、この盤にはおまけに56年11月17日のフィラデルフィアでの貴重なライブが入っている。アルトのアーニー・ヘンリー、ベースがポール・チェンバース、ドラムがウィリー・ジョーンズ。まさに「ブリリアント・コーナーズ」をヘンリー、チェンバースらと録音していた時期の演奏だ。(hand)
1966年3月20日(or18)
BYG
未CD化 リンクはありません。
hand ★★★☆
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
「スフィア」、「エピストロフィ」の2日後の66年3月20日(又は18日)の演奏と思われる(5月20日説もある。)。同じBYG盤で未CD化。前2枚よりも音質はやや悪く、同じ人が同じ機材で録ったとは思われない。ドラムとベースが大きめで、テナーとピアノがやや小さめでバランスがあまり良くない。内容は、前2枚と同様に好内容だ。(hand)
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
2枚をBYGのアナログ盤で聞いた。CD化はAffinity盤の「ザ・パリ・コンサート」(「スフィア」冒頭のアイ・ラブ・ユーをカット)。盤の表記は70年11月14日だが、70年にはラウズはもうメンバーから外れている(ライナーで評論家のI氏はラウズをフランスツアーのために戻したのだろうと書いているが、違うと思う。)。66年3月18日(又は20日)のパリのライブと思われる。演奏は、大ホールだがくつろいだ感じの演奏で、パリの午後という雰囲気だ。「スフィア」の②ルルとラスト曲③センチメンタル・オーバー・ユーにはベースとドラムの長めのソロも入っている。この時期のベースのゲイルズは音色も内容もいいと思う。「エピストロフィー」は、「スフィア」の続編。A面は①スイート&ラブリー1曲。18分を超える長尺で、ラウズとモンクの長めのソロだけでなく、ベースとドラムのソロもある。(hand)
1966年4月15日&18日
S.S.J.
hand ★★★
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
オスロとコペンハーゲンでのTV用録音を組み合わせた海賊盤。放送用なので音はいい。どちらも無観客ライブ録音で、DVDもあるらしい。前後半で曲が重なるのは①④ルルのみそれぞれで演奏され、2回入っている。内容は、好調だったこの時期を捉えているが、観客なしで熱気に欠けると思う。ただし、2度目のルルのラウズは比較的エキサイティングだ。(hand)
①:1967年11月3日
②③:1966年7月2日
④⑤:1960年2月
hand ★★★☆
①:Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds),
Clark Terry, Ray Copeland(tp),Jimmy Cleveland(tb),Phil Woods(as),Johnny Griffin(ts)
②③:Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
④⑤:Max Roach(ds),Tommy Turrentine(tp),Julian Priester(tb),Stanley Turrentine(ts),Bob Boswell(b)
①ブルーモンクは67年11月3日「ノネット・ライブ・イン・パリ」と同じ。②ライトブルーと③エビデンスの2曲がこの盤のみで聞かれる66年7月3日のニューポートのライブで貴重。④⑤マックス・ローチのピアノレス5の60年のパリのライブ。スタンレー・タレンタインが自リーダー盤の鷹揚に構えた感じではなく、高速ソロを吹くので驚く。弟のトミーもいい感じで、ローチに煽られるとバッパーの本領を発揮せざるを得ないのだろう。ジュリアン・プリースターのトロンボーンもいい。(hand)
1966年11月14日, 1967年1月10日
Columbia
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★☆
Charlie Rouse(ts),Thelonious Monk(p),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
コロンビアのスタジオ録音6作目。スタジオ録音は2年ぶり。①ロコモティブや③ストレートノーチェイサーなどいつものモンクオリジナルの中に本作独自の17分近い大曲④荒城の月が入っている。日本の名曲をメロディを生かしながらモンクのジャズとして調理。30年以上前に初めて聞いたときは、日本曲のジャズ化に驚いた記憶があるが、今聞いても新鮮だ。スタンダードの②アイディドントノウアバウトユーもモンク風の名バラード演奏。グリーンチムニーズは新曲なのだが追加曲としてCD化される1996年まで発売されなかった。(hand)
コロムビア時代のモンクのスタジオ盤は、ジャケットデザインはいちいち凝っていて個性的だが、内容は定番のレパートリーが多いので似たようなイメージの作品になっている。その中でもこの作品は「荒城の月」が印象深く、それに象徴される一枚だ。やはり新曲や、今までに演奏していなかったスタンダードがないと、よほどのファンでない限り中々愛聴盤にはならないと思う。(しげどん)