引き続き70年代後半以降の作品をご紹介します。パブロとの契約は継続していますが、同時にライブ音源などがかなり残っており、死後発掘音源として発売されたものも多いです。
ライブ音源の中にはスタジオ盤以上にすばらしい演奏が記録されている作品も少なくありません。無名の現地ミュージシャンとの初顔合わせ的なライブでも素晴らしいパフォーマンスを見せることが多々あるところが、ズート・シムズの凄さと言えます。
・新宿ジャズ談義の会 :ズート・シムズ CDレビュー 目次
・Zoot Sims CDリーダー作 ⑥・・・このページ
Zoot Sims(ts),Jimmy Rowles(p),George Mraz(b),Jackie Williams(ds)
この時期らしいくつろぎ盤。どの盤もクオリティは高いので、ソプラノの有無、選曲、リズム隊のメンバーなどにより好みが分かれるだけだと思う。私の好みは、ソプラノは1曲以内、なくてもいい。ピアノは中間派的でないこと。ベースは木質感があることなどだ。この盤はまずまずの好み度だ。(hand)
ワンホーンによるビリー・ホリディの名唱集という事で、ズート得意のウタモノでメンバーも申し分がない。内容もなかなか聴かせるので、ディープなズートファンには愛聴する向きがあると思う。でも一般的にはこのような演奏がアルバムの一曲としてならば充分味わえる演奏だが、全曲聞き通すのはやや一本調子に聴こえてしまう。(しげどん)
Zoot Sims(ts),Kenny Drew(p),Niels Henning Pedersen(b),Ed Thigpen(ds)
「イン・コペンハーゲン」の20日前のドリュー3との共演記録。海賊盤ながら日本ではジャケやタイトルを変えて何度も出ているので、こちらの方が出回っている気がする。正規盤は、権利関係がきちんとしているので、かえってなかなか出ないのだろう。内容はこちらのほうがややスインギーな中間派に近い感じがする。ラスト⑧キャラバンはソプラノ。音は正規盤より少し劣る?(hand)
ワンホーンによるライブ作品でなかなか良い内容だ。当時のデクスター・ゴードンのリズム・セクションをそのまま使ったサポートも万全。タイトル曲「フラワー・ワルツ」は、If I'm Lucky で演じていたShadow Waltzと同じ曲で、ここではズート作になっているが、実はビング・クロスビーも歌った古いスタンダード。原曲はワルツなんだが、ズートはボサノバ調に変えてちゃっかり自分のオリジナルにしている。 ズートらしいくつろぎとジャズ感満載のライブだ。私の持っているLPは1990年発売の日本盤で、ドラムの表記はアレックス・リールになっているが、その後の発売盤はエド・シグペンになっているので、そちらのほうが正しいのだろう。タイトルも変えた形で何パターンかで発売されているが、曲名をよく確認して購入しないと、In Copenhagenと曲名のだぶりもありややこしい。(しげどん)
Zoot Sims(ts),Kenny Drew(p),Niels Henning Pedersen(b),Ed Thigpen(ds)
ケニー・ドリュー、ニールス・ペデルセン、エド・シグペンとの共演がいい感じの化学反応したのだろう。アメリカ本国ではドリューのトリオとの共演はなかなか考えられないので、単身で現地リズムとの共演は面白い。シムズの①グルービン・ハイは珍しいと思う。ズート本来の魅力は減っているのかもしれないが、私にはこのほうが聞いて楽しい。78.8.4の「イン・デンマーク」又は「ウィズ・ケニー・ドリュー」は同じメンバーだが、海賊盤なので、音はこちらがいい?ドリューのハードバップ演奏はとてもいい。⑦ベリーソートオブユーはソプラノ。(hand)
これも同じくドリューとの共演の素晴らしいライブ。2005年にデンマークのストリービルレーベル(米国のジョージ・ウエイン主催のストーリービルレーベルとは関係ない)から発売された。同一メンバーによる素晴らしいライブで、選曲も緩急あって飽きさせない。録音はこちらのほうがいいかもしれない。(しげどん)
Zoot Sims(ts),Jimmy Rowles(p),George Mraz(b),Mousie Alexander(ds)
メンバーを見ただけで、悪い盤ではないことはわかってしまう。後はその盤が自分に訴えるものがあるかどうかだ。全体として穏やかな感じで進行し、私のあまり得意でない曲④ジターバグ・ワルツで少し賑やかになる。次からの後半⑤ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッドから以降、とてもいい感じになる。寺島さんが好きそうな美メロ曲のオンパレードで終わる。(hand)
「If I'm Lucky」の続編だ。ゆったりと始まり、なかなかエンジンがかからないような出だしで、ベースとのデュオなどのくつろぎ系の演奏が続く。同一メンバーによる前作「If I'm Lucky」に比べ、ややメリハリがなくソロの魅力度も弱い気がする。(しげどん)
Zoot Sims (ts),Rune Gustafsson,Bucky Pizzarelli(g),George Mraz(b),Peter Donald(ds)
未CD化。スウェーデンのギタリスト、ルネ・グスタフソンとの双頭リーダー盤。なぜかギターのバッキー・ピザレリが入りツインギターになっている。そのバッキーのリズムギターとジョージ・ムラーツのベースがいい感じで盛り上げていると思う。エルトン・ジョンの②グッバイ・イエロー・ブリック・ロードなどポップな選曲が珍しいので、意外と楽しめる。⑥インデンテーションはウエス・モンゴメリー的なカッコいい演奏だ。グスタフソンはズートのラスト盤「イン・ア・センチメンタル・ムード」にも参加している。(hand)
スウェーデンの一流ギタリストであるルネ・グスタフソンとの作品で、何度も共演しているバッキー・ピザレリも入った2本ギターの変則的なクインテット。ズートのたくさんの作品の中には、このような変則的な編成も多いし、いろいろな顔合わせ的な企画も多い。当然想定されるように、まったり系の味わいあるサウンドで、ジャズ的な激しいスリルはあまりない。リラックスしてゆったり聴ける作品ではあると思う。(しげどん)
Zoot Sims(ts),Harry "Sweets" Edison(tp),Roger Kellaway(el-p),John Heard(b),Jimmie Smith(ds)
1925年生まれのズートと10歳上のトランペットのハリー・スウィーツ・エディソンとの共演盤。当然、スイングか中間派の内容だろうと想像して聞くと、ロジャー・ケラウェイのエレピからムーディに①ネーチャー・ボーイが始まり驚く。スウィーツのスタイルは予想どおり古臭いが、選曲も演奏もモダンで、楽しめる盤ではある。(hand)
大ベテランのハリー・エディソンとの共演は、ズートとコンセプトの親和性があるので期待していたのである。でも冒頭のNature Boyが変わった雰囲気で、Roger Kellawayのエレキ・ピアノはこの二人の共演にはマッチしていないと思ったのが第一印象だ。エレピはB面一曲目でも使われている。でもほかの曲はスタンダードナンバーばかりで、往年のスターの演奏を味わうのにはいい素材だ。(しげどん)
Zoot Sims (ts),Noel Kelehan(p),Jimmy McKay(b),John Wadham(ds)
場所が珍しくアイルランドのダブリン録音のナゲルヘイヤーからの30年後の発掘盤。①ソフトリー、ソプラノだがアグレッシブで私好みの感じで始まる。現地リズム隊のサポートで(多分、若手でズートをあおるので)、全体としてノリがよく気持ちのいいライブになっている。(hand)
アイルランドのダブリンでのライブで、地元のミュージシャンとの共演によるワンホーン。地元ミュージシャンと言っても優れたメンバーであり、とてもリラックスした演奏が聴ける素晴らしいライブ作品。曲もZoot at Easeで演奏したスタンダード中心の選曲でかっこいい。エリントンのDo Nothin~を演りはじめてすぐに止めてIn a Mellow Toneに移るあたりなど、打ち解けた感じも中々いい。(しげどん)
Zoot Sims(ts)
Orchestra:Al Aarons, Bobby Bryant, Earl Gardner, Oscar Brashear(tp)
Benny Powell, Britt Woodman, Grover Mitchell, J.J. Johnson(tb)
Marshall Royal, Frank Wess(as),Buddy Collette, Plas Johnson(ts)
Jimmy Rowles(p),Andy Simpkins(b),Grady Tate (ds)
Quartet: Jimmy Rowles(p),John Heard(b),Shelly Manne(ds)
:Michael Moore (b),John Clay(ds),B4Replace Heard&Manne
ベニー・カーターがアレンジ&指揮のビッグバンドがズートをフィーチャーして、エリントン特集という豪華な企画盤。ズートは中間派ではなくスイング派になってしまっているが、スイングビッグバンド作品なので違和感なく楽しめる。(hand)
ズート・シムスによるエリントンの名曲集。A面は重鎮ベニー・カーターがアレンジしたオーケストラで、シンプルに楽しめるノリのよいスィングジャズ的なビッグバンドだ。B面はカルテットで、これもこの時期のズートらしい落ち着いた演奏。(しげどん)
Zoot Sims (ts),Ray Sims(tb),Jimmy Rowles(p),John Heard(b),
Shelly Manne(ds)
兄であるトロンボーンのレイ・シムズとの共演盤。ビッグバンドを中心に活動し、録音機会の少なかった兄の記録を残そうとしたのではないかと思う。素晴らしいリズム隊を迎えた、穏やかな兄のトロンボーンと共演し、いつもより控えめな感じのズートの演奏だ。(hand)
ズートの兄のトロンボーン奏者レイ・シムズとの珍しい共演盤。レイ・シムズはスィング時代からビッグバンドで経歴のあるトロンボーン奏者ということだが、今日的にはほとんど聴く機会がないので、この盤が一般のジャズファンにとって彼の演奏を聴ける唯一の作品といえる。保守的で中間派的なスタイルで、ストレートの音色が美しく、ズートとの共演は違和感なく溶け込んでいる。この時期のベストパートナーであるジミー・ロウルズとの息もピッタリ。(しげどん)
Zoot Sims(ts,ss),Benny Aronow(p),Major Holley(b),Micky Roker(ds)
くつろいだ演奏で、海賊録音ながらテナーもいい音で録られている。③イフユーグッドはメジャー・ホリーのベースとユニゾンボーカル。④ゴーストオブアチャンスはソプラノ。ベン・アーノフのピアノが楽しい。「イン・ロンドン」とジャケが似ていて、買う時に間違えやすい。よく見ると違うのだが、印象だけで覚えていると危ない(笑)。(hand)
タイトル通りのフィラデルフィアでのライブという事だけで、詳しいデータは不明。1980年という事で、このころのズートはあまりテンポの早いアグレッシブな演奏は行っていない。ゆったりした演奏で、夜一杯やりながら聴くには素晴らしい味わい深い演奏だ。(しげどん)
Zoot Sims(ss、ts) ,Bucky Pizzarelli(g)
バッキー・ピザレリとの4年ぶり3度目の共演盤。デュオは2度目となる。今回はビジュアルアート学校でのライブということで、少なめの拍手が入っている。若い人には、この渋過ぎるデュオはあまり受けないと思うが、年季が入るとこの手は最高になる。ジャケは最悪だが、生徒作なのかもしれない。(hand)
再びバッキー・ピザレリとの息のあったデュオ。そして今回はライブで前作With Bucky Pizzalleryに較べて倍近い長時間のアルバムだ。テナーとギターのだけのデュエットによるライブをこれだけ長時間聴かせ続けるのは大変なことだ。曲は良く知られているスタンダードで、タイトルの通りのエレジー調ばかりなら退屈しそうだが、実際は曲調もいろいろ変えながら飽きさせない工夫は感じるが、一時間以上のアルバムなので、なかなか聴き通すのがしんどいのだ。(しげどん)
Zoot Sims(ss、ts),Jimmy Rowles(p),Frank Tate(b),Akira Tana(ds)
新しい選曲が多く、多少、意欲的なワンホーンのスタジオ録音だと思う。ベースとドラムに若手を迎えたのだから、ピアノもジミー・ロウルズではなくもう少し新しい人に変えて、ズートにも少し冒険して欲しかった。ただ、ロウルズのかわいらしいプレイが悪い訳ではない。オリジナルと思われる⑤フィッシュ・ホーンのみはソプラノだ。(hand)
ジミー・ロウルズを従えた本格的なワンホーン作品で、ロウルズとはカルテットだけでも3作め。選曲はやや聴きなれないスタンダードが多く、好み的にはズート特有のテーマ解釈のかっこよさを味わうには難易度が高い=とっつきにくいかもしれない。でもワンホーン作としてズートの素晴らしいソロが味わえる滋味深い作品ではある。私的には聴き返すほど愛着を感じる作品だ。(しげどん)
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