ズート・シムズの初リーダー録音から初期の作品をレビューします。すでにウディ・ハーマン楽団でスタープレイヤーとなっていたズート。初期の作品も彼らしいスタイルの完成度が高い演奏が聴かれます。
初期の作品はアナログ盤では10インチ盤など、そのままの仕様では入手困難なので、CDとして入手しやすい編集盤の情報を掲載し、アナログ盤の画像を同時に掲げました。
・新宿ジャズ談義の会 :ズート・シムズ CDレビュー 目次
・Zoot Sims CDリーダー作 ①・・・このページ
1950年4月23-24日
1953年8月25日
Prestige
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★
Zoot Sims(ts),Toots Thielemans(hca),Jimmy Woode(p),Simon Brehn(b),Jack Noren(ds)
Lars Gullin American Stars:Conte Candli(tp),Frank Rosolino(tb),Lee Konitz(as),Zoot Sims(ts),Lars Gullin(bs),Don Bagley(b),Stan Levey(ds)
1950年のファースト・レコーディングにあたる録音は、かなり私好みの演奏だ。というのも、最初の3曲のピアノのジミー・ウッドがバド系の硬質なバップ的な演奏をしているだけでなく、ズートもバッパー的なプレイをしている。スウェーデン録音の素晴らしい初期の記録だと思う。ただし、この形ではCD化されていない。(hand)
1950年の録音は、リーダー作としては初録音で、初期のスタイルからすでにズートらしさがある。ウディ・ハーマン時代ですでにスターだったのだが、後年の厚みのある雰囲気よりも初期のスタン・ゲッツに似た透明感のあるやや硬質な感じだ。B面はVogue盤のカルテットと同じ音源で、①Linger AwhileはCrystalという曲と同じ。(しげどん)
1950年6月16日
Vogue
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★☆
Zoot Sims(ts),Gerry Wiggins(p),Pierre Michelot(b),Kenny Clarke(ds)
フランスVogueに吹き込まれた10インチ盤で、いろいろな形で復刻はされているワンホーンカルテット。スタンダードのテーマからかなりフェイクされていて、オリジナルも曲的にはとっつきにくいかもしれないが、ソロは演奏は素晴らしく、若々しい力がありながら老練な完成度を感じさせるすごい演奏だ。(しげどん)
ベニー・グッドマン楽団で渡仏した際に親分に秘密で録音したらしい。バッパーを目指していたと思われる時期のズートは好感だ。リズム隊もいい。(hand)
1953年11月18日
Vogue
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★
Zoot Sims(ts),Frank Rosolino(ts),Hennri Rwnaud(p),Jimmy Gourley(g),Don Bagley(b),Jean-Louis Viale(ds)
これもフランスVogueに吹き込んだ10インチ盤で、フランク・ロソリーノが入ったセクステット。テーマ部分がウエストコースト風のアンサンブルでなじみやすいが、それぞれのソロイストにも充分時間を与えられていて、ズートのソロは短めなのでいつものような汲めども尽きぬアドリブまでの時間がなくやや物足りない。B面の何曲かは時間の制約からかエンディングのテーマ部分がいきなり終わる編集になっていてその部分もやや不完全な音源のように聴こえる。(しげどん)
前作の3年後に同じヴォーグにフランク・ロソリーノとの2管セクステットでの録音。時代的、メンバー的、アレンジ的にウエストコースト風な感じが出てきている。(hand)
ズート・シムズの初期盤はオリジナルの10インチアナログ形式でのCD化はされていないので、主な編集盤をご紹介。アマゾンのリンクも貼りました。
ズートの初期演奏をまとめた編集盤CD。ウディ・ハーマンのセカンド・ハードによる歴史的な演奏や、プレスティジの初リーダーセッション→上記:First Recordings Prestige 7641、チャビー・ジャクソン名義のセッションPR7641など、アナログLP時代に複数に分散収録されていた音源をズート・シムス中心にまとめたもの。残念ながらフォアブラザーズはオリジナル音源ではない。またチャビー・ジャクソンの音源は「Good Old Zoot 」に収録された音源と同じもの。一部曲順もおかしい箇所があるが、オリジナル音源はSPなのでLPフォーマットにこだわる必要はないので、このような編集盤は歓迎すべきだろう。ヴォーグの2枚の10インチ盤Zoot Sims Goes To Townおよびプレスティジ盤The BrothersやZoot Sims Quartetsも収録されているお買い得CDだ。(しげどん)
Zoot Sims(ts),John Lewis(p),Curley Russell(b),Don Lamond(ds)
Zoot Sims(ts),Harry Biss(p),Clyde Lombardi(b),Art Blakey(ds)
たいへんな力強い作品だ!50年~51年という古さを感じない。特に51年のZoot Swings The Bluesは圧巻のソロ。この時期からすでにワンホーンを得意にしていてすでにベテランの境地。名盤だ。(しげどん)
もしかしたらバッパーになろうとしていたのかもしれないと思わせるズートの初期1950と51年の録音の初リーダー盤。ブレイキー、ジョン・ルイス、カーリー・ラッセルなどのバップ的なリズム隊のメンバーを用意してバッパーにしようとしたのは、プレステッジのボブ・ワインストックなのかもしれない。①⑩のみが8〜10分の長尺で、それ以外の10曲が2〜3分と短い不思議な録音だ。ただ、バッパー的なズートは私好みだ。正規録音だが、マイルスの「ディグ」同様に音が今ひとつだ。(hand)
Zoot Sims(ts),Stu Williamson(tp、Vtb),Kenny Drew(p),Ralph Pena(b),Jimmy Pratt(ds)
未CD化。1954年のクインテットと1950年のスモールビッグバンドからなる盤。アナログ各面の前後半を分けたので、続けて聞くと2曲毎に54→50→54→50となってしまう構成だ。54年はドリューのピアノとステュ・ウィリアムソンのトランペットで多少ビバップ的な内容となり好ましい。50年はズートのリーダーではなく、ベースのチャビー・ジャクソンのバンドだ。マリガンやJ&Kなど、こちらもスイングではなくビバップに近い。(hand)
タイトルからとても古い時期の録音みたいだが、54年と50年の録音が収録されている。ズートを聴くなら54年のカルテット4曲。常に彼らしいソロを聴ける。50年のものはチャビー・ジャクソン名義の12人編成のビッグバンドで、この時の8曲はPR7641:Chubby Jackcon Sextet and Big Bandとして発売された。その中からズートがソロをとっている4曲を選んで収録されている。また、この4曲は前記Swing Kingにも収録されている。ジェリー・マリガンのCDにもカップリングされたものがあり安価に入手できる。(このCDには全8曲収録)またConception(PRLP7013)にもこのチャビー・ジャクソン・ビッグバンドの演奏が一部収録されていた。
(しげどん)
1954年(月日不明):Zoot Sims(ts),Marvin Hall(tp),John Dorman(btp),Timmy Inocencio(p),Jim Wolf(b),Gary Hale(ds)
1954年3月9日:Zoot Sims(ts),Bob Cooper(ts),Bud Shank(as),Stu Williamson(tp),Frank Rosolino(tb),Claude Williamson(p), Howard Rumsey(b),Stan Levey(ds)
54年のロスでのジャムセッションのCD化。海賊音質で音はあまり良くないが、内容は悪くない。曲によってはズートが主導的な活躍をしないものもあるが、ジャムなので仕方ない。(hand)
ウエストコーストでアート・ペッパーなど、数多くの貴重な音源を録音したボブ・アンドリュースによる音源。ズート・シムスの自宅に於ける地元ミュージシャンとのセッションで、同日の録音で歌手ピンキー・ウィンターズ入りのものは、別途PinkyというCDに収録されている。無名のメンバーも力演しているが音は当然ながら良いとは言えず、マニア向けの音源だ。最後に一曲同じくアンドリュースの録音によるライトハウスオールスターズの演奏が入っており、これはバド・シャンク、フランク・ロソリーノはじめ文字通りのオールスターによるセッションで聴きごたえある演奏だ。(しげどん)
Zoot Sims(ts), Bob Cooper(ts), Bud Shank(as),Frank Roslino(tb),Stu Williamison(tp),Claude Williamson(p),Howard Rumsey(b),Stan Levey(ds)
これもボブ・アンドリュースによる音源。バド・シャンクやフランク・ロソリーノを擁するライトハウスオールスターズにズート・シムズが客演した時の貴重な記録だ。「Lover Man」に入っていた最後の一曲はこの一日前の記録で、この日の録音は3曲。すべてジャムセッション的な演奏でオクテット編成だがアレンジも凝っていない。順番にソロをとるがズートは全曲で冒頭のソロ。この時のメンバーは、リーダーのハワード・ラムゼイ以外は全員20代の若さ。ラムゼイも30歳を過ぎたばかりの若々しいジャムセッションで、記録として貴重な一枚。(しげどん)
かなり音が悪いが内容がいいビバップ演奏。テナーがボブ・クーパーも入っていて聞き分けが難しいが、ズートもバッパー的なソロを吹いているようだ。トロンボーンのフランク・ロソリーノがいい。西海岸派とは思えないハードなソロを吹く。「ラバー・マン」収録のラスト曲⑥ライトハウス・デイズは前日の録音だ。(hand)
1954/12/14:Zoot Sims(ts),Bob Brookmeyer(tb),Red Mitchell(b),Larry Banker(ds)
1959/3/1:Zoot Sims(ts),Russ Freeman(p),Billy Bean(b),Monte Budwig(b),Mel Lewis(ds)
厳密にはズートのリーダーセッションではなく、ジェリー・マリガンの「カリフォルニア・コンサーツ」とアニー・ロス「ア・ギャザー」の残りテイクで、ズートをフィーチャーして録音されたものの組合せなのだが、言われなければ、ズートのリーダー盤にしか聞こえない。後半のギター入りのリズム隊がスイングスタイルなので、ズートがレスターになってしまい、中間派的な私好みでない感じなのは残念なところだ。(hand)
ジェリー・マリガンのカリフォルニアコンサートとアーニー・ロスのセッションでの録音から集めたのでこのタイトル。むりやり編集してズートの演奏を切り出したような形がはっきり見えてしまってはいるが、ズートのソロは悪くないし、なんとなくズートの作品として聴けるようにはなっているので、曲によっては愛聴に耐える作品かもしれない。(しげどん)
Zoot Sims(ts),Bob Gordon(bs),Hall Daniels(tp),Dick Nash(tb),Tony Rizzi(g),Paul Atkerson(p),Rolly Bundock(b),Jack Sperling(ds)
CDでは別テイクが入っているが、オリジナルは4曲入りのホール・ダニエルズ・セプテット(8人編成だが)という10インチ盤でズートがリーダーじゃなかったようだ。→画像参照
ズート・シムスが入っているので希少盤扱いになったが、内容は普通の中間派的なジャズ。ズートのソロはいつものペースで快調で、ボブ・ゴードン、ディック・ナシュなど渋めのメンバーも堅実なプレイを聴かせている。全曲でズートのソロだけに焦点が当たっているわけではない。(しげどん)
私のあまり得意でないウエストコースト感が満載の雰囲気。ズートはレスター派のプレイそのまんまという感じだ。トランペットのホール・ダニエルズという人の10インチのリーダー盤に同じ曲の別テイクを加えてCD化したもの。ウエスト系の作品としては良質なアレンジなのかもしれない。(hand)
Zoot Sims(ts),Bob Brookmeyer(vtb),John Williams(p),Milt Hinton(b),Gus Johnson(ds)
Bob Brookmeyerとのコンビでは、これがもっとも人気作なのは、やはり冒頭の「九月の雨」の印象か。リズムセクションとの息もぴったりで、ジョン・ウイリアムスのやや硬質なテイストが、ブルックマイヤーとズートの茫洋たる雰囲気に対するアクセントになっている。全体的に密度の濃い充実した作品だ。(しげどん)
たまたまロリンズを聞いた後に聞いたら、同じテナー?と思うくらいに滑らかだ。ブレスも違うが、特にタンギングが違うのだろう。この盤は、ボブ・ブルックマイヤーのヴァルブトロンボーンも入って2人して中間派的なニュアンスで吹いている。ヴァルブTBは、スライドではなくピストン式のTBだ。私自身は、中間派的なニュアンスはあまり得意ではない。ジョン・ウィリアムス、ミルト・ヒントン、ガス・ジョンソンのリズム隊はモダンな感じで割といい。録音があまり良くないのも残念な点。最新CDでは2曲追加されているが未聴。(hand)
Al Cohn,Zoot Sims(ts),Dick Sherman(tp), Dave McKenna(p),Milt Hinton(b),Osie Johnson(ds)
アルとズートは、ウディ・ハーマン楽団(セカンド・ハード)の同僚だった。残念ながら、アルはフォア・ブラザーズには入っていない。アーリー・オータムはゲッツ、ズートとともにアルも3テナーで入っている。この盤は、アル&ズート名義での初の盤だと思うが、ウエストコーストの雰囲気が漂い、私のあまり得意な雰囲気ではない。ただ、AトゥZとは、盤の内容とは関係ないが、タイトルとしてはいいネーミングだと思う。(hand)
アル&ズートの第一作という点では注目すべき作品だが、二人のテナーに焦点を絞るよりも、ウエスト・コースト的なアレンジが強く意識されている作品だと感じる。ズート・シムズの伸びやかなソロを楽しむには、一曲の長さも短く物足りない。(しげどん)
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