このページでは1956年~57年ごろ。ズートが全盛期にさしかかった頃の時期をとりあげます。
デュクレテ・トムソンのパリ吹き込み、ブルーノートのユタ・ヒップ盤、そしてアーゴ盤と、人気盤が量産された時代です。
・新宿ジャズ談義の会 :ズート・シムズ CDレビュー 目次
・Zoot Sims CDリーダー作 ②・・・このページ
1956年2月
Storyville
おすすめ度
hand ★★☆
しげどん ★★★★
Zoot Sims(ts),Bob Brookmeyer(vtb),Hank Jones(p),Wyatt Ruther(b),Gun Johnson(ds)
ブルックマイヤーとのコンビでは二週間ほどしかたっていないが今度はストーリービルへの録音。ズートのソロはいつも通り充実しているが、印象が薄いのは前作の「九月の雨」のような強いインパクトの曲がないからか。唄も披露していて、後年良く歌うようになり、来日公演でも渋い声を聴かせていたが、これが唄の初演かも?(しげどん)
トロンボーンのボブ・ブルックマイヤーとの双頭リーダー盤。ブルックマイヤーのトロンボーンはスライド式のトロンボーンではなく、ピストン式のバルブ・トロンボーン。スライド式よりも速吹きに適している。その特徴がこの盤では裏目に出ていると思う。私好みでない西海岸的な慌たゞしい演奏が多くなっているのだ。録音は東海岸だが、マリガンと西海岸で活動していたブルックマイヤーと元々は西海岸派だったズートが組んで出てくる必然的なサウンドなのかもしれない。ピアノのハンク・ジョーンズは東海岸派だ。(hand)
1956年8月
Storyville
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★★
Zoot Sims(ts),Bob Brookmeyer(vtb),Hank Jones(p),Bill Crow(b),Joe Jones(ds)
「トゥナイト・ミュージック・トゥデイ」の8日後にベースとドラムだけ交代して吹き込まれたボブ・ブルックマイヤーとの双頭作品。不思議なことに西海岸的な慌たゞしさがかなり消えて落ち着きが出てきている。ベースとドラムのせいとも思えず、不思議なことだ。(hand)
ドーン盤に較べストーリービルの二作は、ハンク・ジョーンズの保守的なテイストのためか、やや中間派寄りのリラックスした印象になっている。CDではモーニングファンというタイトルになり、デザインも大きく変わったので、アルバムとしての認知度がやや低いかも知れないが、内容はこれもドーン盤に劣らない。(しげどん)
現在上記ストリービル2作品は、単独では発売されていないようですが、左の2in1盤が入手しやすいようなのでご紹介しておきます。アマゾンのリンクを貼っています。
このCD ”Whooeee” はモーニング・ファンというタイトルでもCD発売されていたので、内容は同じなのでご注意を・・・
Zoot Sims(as),Joe Castro(p),Leroy Vinnegar(b),Ron Jefferson(ds)
ファルコン・レアでのライブとなっているが、そもそもファルコン・レアなんてライブ・スポットがあったのか?実はビバリーヒルズにあった豪邸の名前で、ドリス・デュークという大富豪の女性の邸宅のひとつだったそうだ。このセッションのピアニストであるジョー・カストロはその当時彼女と愛人関係にあったらしいとか、いろいろなジャズメンが関係してくる映画みたいな話があるようだ。でもアルバムレビューには関係ないので、そのへんでやめておこう。とにかく演奏はなぜかズートはアルトサックスで通している。Pennies From Heavenのような耳慣れたスタンダードがズートらしさ全開で良かったけど、ライブと言ってる割には観客の声は一切しないので、豪邸の中で録音されたプライベートなセッションなんだろう。この豪邸には多くのミュージシャンが出入りしていたらしいので、そのうち驚くような音源が発見されるかもしれない。(しげどん)
勢いのある演奏に好感が持てる盤。ただし、ズートは全曲アルトを吹いている。タイプとしては、当時、ウエストコーストで仲の良かったアート・ペッパーに近いと思う。ジョー・カストロというピアニスト、この盤以外で名前を見た記憶がないので調べてみると、ライトハウスオールスターズに参加したり、アトランティックからリーダー盤も出している。この盤は、2004年の発掘盤で、ファルコン・レアというジョーの自宅アパートで録音されたようだが、音は決して悪くない。ベースとドラムも名手リロイ・ヴィネガーとロン・ジェファーソンと強力なメンバーだ。(hand)
Zoot Sims(ts),Jon Eardley(tp),Henri Renaud(p),Benoit Quersin(b),Charles Saudrais(ds)
作品として優れているにもかかわらず、一時は超がつく入手困難盤だったため、さらにその価値が吊り上がった感のある名盤。復刻された国内盤ですらほとんど見たことがなかったが澤野が10インチで復刻。またCDではオリジナルの7曲に加え、今では前日録音のさらなる幻の4曲まで含めて手軽に手に入るのはうれしいことだ。ズートのソロももちろん最高に充実していて、とにかくソロの濃度が濃くて完成度が高い。(しげどん)
私は、中間派というスイングとモダンの中間的な感じの演奏があまり得意ではない。スイングジャズ自体は嫌いではなく、モダンは大好きだ。この盤のようにズートがモダンなメンバーと演奏した作品、モダンで寛ぎのある作品は好みだ。この盤は、フランスのモダンなピアニスト、アンリ・ルノーのトリオとの共演で中間派的な側面があまりなくていいと思う。特にクインシー作の④イブニング・イン・パリは、名曲の名演で特に気に入っている。ジェリー・マリガンのバンドで渡仏中のアルバイト録音で、トランペットのジョン・オードレイとの参加だが、オードレイはあまり必要だったとは思えない。CDには前日の録音4曲も追加され全11曲となっている。(hand)
楽しい雰囲気の漂う演奏だが、強さが無く、特徴に乏しいアルバム。zoot simsのテナーとhenri renandのピアノは一貫して心地良く耳に届くが、Jon eardleyのトランペットがやや雑で伸びがない様に感じる。そのため2管のハーモニーもいまいち合っていない。(ショーン)
Jutta Hipp(p),Jerry Lloyd(tp),Zoot Sims(ts),Ahmed Abdul-Malik(b),Ed Thigpen(ds)
ドイツ出身の女性ピアニスト、ユタ・ヒップのリーダー盤にズートとトランペットのジェリー・ロイドがゲスト参加した、ズート唯一のブルーノート盤。ユタは、ビバップとトリスターノのどちらにも通じた私好みのピアニストで、特に「ヒッコリーハウスVol.1」は愛聴盤だ。渡米前にもリーダーとして、管をフロントに何枚か吹き込んでいる。ただ、ここでのプレイは多少控えめで遠慮気味に感じる。ズートのリーダー盤として聞いても全く不自然ではないと思う。ロイドは、オブリガードは多いがソロはズートに比べ圧倒的に少ない。盤としてはモダンなピアノトリオをバックにズートがスイングしまくる好ましい盤に仕上がっている。バラードの②コートにすみれを、はコルトレーン(57年)、J.R.モンテローズ(59年)と並ぶ"3大スミレ”の1つだと思う。ビバップ曲⑤ウィードットも好ましい。CD追加の2曲もいい。面白いことに、ロイドの曲③ダウン・ホームは、ズートの人気盤「ダウン・ホーム」には入っていない。(hand)
ズート・シムスはかなり好調に密度の濃いソロを聴かせている。そればかりが目立つアルバムで、一応リーダーになっているユタ・ヒップのピアノは乾燥気味な感じで印象が薄い。あくまでもズートの作品というべきだろう。旧友ジェリー・ロイドの助演もなかなかだ。(しげどん)
肩の力が抜けたズートの演奏は終始心地良く、若干物足りなさの漂うトランペットのジェリーロイドに対する補佐も適切だ。また2曲目のviolets for your fursでの感傷的で咽び泣く様なプレイは聴き応え十分で、ユタヒップのピアノとの相性も良い。wee-dotの勢いのある演奏、最後のtoo close for comfortの明るい雰囲気を醸す演奏と、バラエティに富んだ好アルバムといえよう。(ショーン)
Zoot Sims(ts,as),Jerome Lloyd(tp),John Williams(p),Bill Anthony, Nabil Totah(b),Gus Johnson(ds)
共演のtpのジェリー・ロイドは知名度が低いが、ハーマン・ハードの盟友だったベテラン実力者で、ブルーノート盤にも参加している。ドーン盤では「モダン・アート・オブ・ジャズ」に人気の点で劣るが、でも曲はかっこいいし、私はこちらの方が好きだ。(しげどん)
オリジナルは8曲だが、CDはおまけ6曲が追加され全14曲。①④⑤⑫の4曲は、ズートがアルトを吹いている。テナーよりも滑らかさが減り、ジジ・グライスに近いと思った。トランペットのジェリー・ロイドはユタ・ヒップ盤と同じ。全体に淡々と進む感じだが、ラスト⑧バイヤがモンク曲で意外に面白い。おまけ6曲も意外といい。⑫ミックスドエモーションではズートの歌も聞かれる。(hand)
Zoot Sims(ts,as),John Williams(p),Nabil Totah(b),Gus Johnson(ds)
ダウン・ホームと並ぶワンホーンの傑作。我が道を行くズートのこれもスィング・セッション!ガス・ジョンソンはベイシーバンドのジョー・ジョーンズの後任なので、ズートのコンセプトにピッタリだ!ジョン・ウィリアムスも最高にズートを引き立てている。(しげどん)
アナログ時代に買った唯一のズート盤。評論家のススメに従って買ったが特にピンときた記憶はない。ゲッツに比べて中間派的なテイストが濃いのがズートの特徴。それが好き嫌いの分かれ目になっていると思う。私はスイングジャズは嫌いではないが、中間派はあまり好みではない。なので、ズートがメンバーも含めてモダン寄りに振れた演奏が好みだ。この盤はメンバーはモダン寄りではあるが、全体としてのテイストは微妙だ。ボヘミアなどハードバップ系の選曲がかえって裏目に出たかもしれない。録音のせいかテナーの音色が細い気もする。(hand)
メロディアスなズートのテナーは、情感豊かで聴く者を惹きつける。ジョンウィリアムスのピアノがまた良くて、雰囲気もサイコーで、全く無駄のない素晴らしい演奏だ。どの曲も演奏時間が4〜5分くらいで、飽きることなく集中して聴くことができるところも良いが、フェードアウトはいかがなものか?(アナログ盤)ズートが30歳の時の演奏だが、もう完成されており、大人の正統派jazzを十二分に感じることのできる名盤だ。(ショーン)
Zoot Sims(ts,as,bs),John Williams(p),Nabil Totah(b),Gus Johnson(ds)
なんだか残念な一枚だ。なぜクリード・テイラーはこんなヘンテコな企画を思いついたのか?そもそも持ち替えが必然とは思えないが、それ自体は企画上の狙いだといえなくもない。でも多重録音は全く余計な演出だと思う。この当時としては新しいチャレンジだったのだろうか?ズートのソロは比較的快調だが、このためにインチキくさい演奏になってしまった。マニアックなズートファンには、珍盤的な対象にはなるが、一般的にはおすすめできる作品ではない。(しげどん)
ズートがアルト、テナー、バリトンの3種のサックスを吹き多重録音した企画盤。ピアニスト&アレンジャーのジョージ・ハンディの曲を集めている(悪くはないが、特段、素晴らしい曲があるとも思えない。)。後年、愛用するソプラノはない。代わりにボーカルもやっている。アルトやバリも当然上手いが、ズートらしさはやはりテナーが際立つ。(hand)
Zoot Sims(ts,as),Nick Travis(tp),George Handy(p),Wilbur Ware(b),Osie Johnson(ds)
全7曲中2曲でズートがアルトを吹いている。ニューヨーク録音ながら、ウエストコーストジャズ的な雰囲気がある。どうもピアノにジョージ・ハンディを迎え、彼の奥さんで歌手のフローレンス・ハンディの曲を①〜④で演奏していることがその理由だと思われる。ジョージ・ハンディは、40年代にボイド・レイバーン楽団のアレンジャーとして活躍した人だが、そのあたりが原因かどうかはわからない。⑤以降いわゆるモダンジャズになり、聞いていてホッとする。(hand)
カルテットだが、ピアノのジョージ・ハンディが、編曲に活躍。4曲の曲を提供しているフローレンス・ハンディはジョージの奥さん。いい曲が多く愛聴に耐える作品だ。それにしても1956年のズートの多作ぶりは尋常ではない。(しげどん)
Spring of 1956:Jack Seldon(tp),Joe Maini(as),Zoot Sims(ts),Kenny Drew(p),Bob Berteau(b),Gart Frommer(ds)
September 22nd,1958:Zoot Sims(ts),Red Garland(p),Oscar Pettiford(b),Kenny Clarke(ds)
1956年と58年の海賊ライブ。安易なタイトルだが、海賊盤はこんな感じのほうがわかりやすくていいと思う。いずれもズートのリーダーセッションではない。前半はアルトのジョー・マイニのセッション。後半は、J&Kの欧州ツアーから。どちらも音はいいとは言えないが、56年の熱いビバップ演奏が私には好ましい。特にマイニは、ここで共演のケニー・ドリューの「トーキン&ウォーキン」など非常に録音が少ないので貴重だ。(hand)
マシュマロレーベルによる発掘音源。1956年と1958年の音源なので5658。で双方の音源は場所、メンバーとも全然違う。1956年春(録音日・場所不明)ライブスポット的な感じで聴衆の声が入る。途中から入って途中で終わるというような不完全な上に音質も悪いが、ズートのソロはノリノリでいい感じなのだ。後半のストックホルムは歴史的な欧州ツアーの際の録音(ライブ・アット・コンセントヘボウ)で、明らかにコンサートステージのもの。ズートのソロは優れているが、マニアックなファン向きの音源だ。(しげどん)
Zoot Sims(as),George Handy(p),Nabil Totah(b),Nick Stabulas(ds)
多重録音で1人フォア・アルト・ブラザーズを演奏した盤。なぜズートがアルトを多重録音するのか全く理解できず、期待しないで聞いたら、意外にも楽しい盤であった。企画自体はキワモノだが、作品自体は悪くない。(hand)
ズートがアルトを多重録音した作品。これもプロデューサーはクリード・テイラーで、ABCパラマウントのへんてこりんな企画の第二弾だ。ズートの多重録音のアンサンブルは確かに気持ちいいし、ハーマン時代のユニゾンアンサンブルを彷彿させてそれなりに聴けてしまう。でもやはりピュアなジャズファンはなんだか納得できないだろう。愛聴盤にはならないが、一度は聴くべき珍盤かも。(しげどん)
Al Cohn,Zoot Sims(ts),Mose Allison(p),Teddy Kotick(b),Nick Stabulas(ds)
アル&ズートの作品の中で、もっともバランスよく充実した作品だ。アルコーンのアレンジはすでにウエスト・コースト的な実験臭はなく、ズートのソロの個性を充分に生かしたものになっている。小節交換などに於ける二人の味わいの違いを感じながらのサウンドはとても気持ちがよい。(しげどん)
タイトルは「アル・アンド・ズート」だが演奏は、アル・コーン・クインテット・フィーチャリング・ズート・シムズとなっていて、アルのバンドにズートがゲスト参加した形の盤。スタンダード4曲に、アルの曲が5曲。57年3月のモノラル録音なので2人が左右に分かれず聞き分けが大変だ。似たようなタイプだがアルの方がややエッジが立ち、ズートの方が滑らかな気がする。サイドマンとしてのモーズ・アリソンの参加は珍しい気がするが、好ましいピアノを弾いている。 ベースとドラムがテディ・コティックとニック・スタビュラスは、フィル・ウッズのリズム隊と共通だが、フィルに比べると、このチームだと中間派的な香りがしてしまう。正直、アル&ズートやアルのリーダー盤を聞いて、あまりいいと思ったことがない。中間派的なモダンジャズなのにスイングテナーみたいなのが苦手なのだ。③では2人ともクラを吹く。CDはおまけ⑨風とともに去りぬが入っている。(hand)
Joe Newman(tp),Zoot Sims(ys),John Acea(p),Oscar Pettiford(b),Osie Johnson(ds)
スイング〜中間派のジョー・ニューマンとの共演なので、当然に古い感じがすると想像して聞くと、割とモダンな内容だった。20年近く後のヴァイオリンのジョー・ヴェヌーティとの共演盤を聞いた後だったかもしれない。多分、この盤は、ニューマンのトランペット自体はスイング風だが力強くはある。また、リズム隊、特にベースがモダンで演奏を牽引している。調べてみると、オスカー・ペティフォードだ。さすがにペティフォードの存在感はすごい。(hand)
中間派的な味わいはズートにマッチしている。そのような雰囲気は嫌いではないが、この作品はベテランらしい陰影や円熟味があまり感じられない軽い感じだ。途中でフェイドアウトする曲なども編集が荒っぽい印象を受ける。(しげどん)
Nick Travis(tp),Jimmy Cleveland(tb),Zoot Sims(ts,cl),Al Cohn(bs,cl),Elliot Lawrence(p),Milt Hinton(b),Osie Johnson(ds),Bill Elton(arr)
映画で天国の場面があれば、そこに流れていると良さそうな演奏。ゆった〜りと時が流れる。全体にヘブンリーな印象はある。ピアノのエリオット・ローレンスがリーダーに、アル&ズートが、ホーギー・カーマイケルに捧げて作った作品のようだ。アルはテナーではなくバリを吹いている。ニック・トラビスのトランペットとジミー・クリーブランドのトロンボーンも入った七重奏団だ。(hand)
ホーギー・カーマイケルはジャズ史に欠かせない作曲者で、その名曲集は聴いていて楽しい。セプテット編成のアレンジも嫌味がなく楽しく聴けるが、ズートのソロを堪能するアルバムというより、アレンジ主体に曲を聴くアルバムのようだ。(しげどん)
・新宿ジャズ談義の会 :ズート・シムズ CDレビュー 目次
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