ケニー・ドーハムのサイド参加作の紹介です。ここでは1956年から59年までの作品を取り上げました。ドーハムのリーダー作はさほど多くありませんが、マックス・ローチ・クインテットなど、サイドマンとしてかなり多くの作品に参加していた時期です。
Gil Mellé(bs),Joe Cinderella(gr:1–6),Vinnie Burke(b:1–6),Ed Thigpen(ds:1–6),Hal McKusick(as:1–6,fl:1–3),Art Farmer(tp:1–3),Kenny Dorham(tp:4–6),Julius Watkins(french horn:1–3),Don Butterfield(tuba:4–6),Phil Woods(as:7–9),Seldon Powell(ts:7–9),Donald Byrd(tp:7–9),Teddy Charles(vib:7–9),George Duvivier(b:7–9),Shadow Wilson(ds7–9)
幾何学ジャズなどという、どう考えてもスイングしなそうなネーミングをされてしまったかわいそうなこの人、ギル・メレ。幾何学的なアレンジとか書いている人がいるが、どんなアレンジか説明できるのか?そして、この命名は誰なのか?本人でないならば、営業妨害に当たる。普通のバリサクのモダンジャズとして楽しめる盤。ドーハムもファーマーとともに、幾何学的でない(笑)ソロをとる。(hand)
Sonny Rollins(ts),Kenny Dorham(tp:except 3),Wade Legge(p),George Morrow(b),Max Roach(ds)
ローチ4盤「プレイズ・パーカー」ではロリンズ退団後のメンバーでパーカーの曲を演奏しているが、このロリンズ盤「プレイズ・フォー・バード」は、事実上のローチ5で、パーカーが演奏したスタンダードを演奏している。パーカー曲はロリンズ向きではないので、こちらのほうがずっと聞きやすい。ドーハムは、メドレーをロリンズと交互に吹くなど主役と遜色なく活躍する。(hand)
Max Roach(ds),Kenny Dorham(tp),Sonny Rollins(ts),Ray Bryant(p),George Morrow(b)
ブラウニーが事故死したので、ドーハムが自らのバンド、ジャズ・プロフェッツを解散して参加したと言われている。日本では、天才ブラウニーの後任に凡庸ドーハムのように言われてきたが、ドーハムにはドーハムなりの良さがある。ローチが比較的うるさ過ぎず、ロリンズもドーハムもいい感じのソロをとり、まとまりのあるハードバップになっていると思う。CDで追加の3曲⑦スイングしなけりゃ、⑧ラブレター、⑨マイナートラブルもいい。(hand)
ロリンズ、ドーハムのソロは味わい深いが、ジョージ・ラッセルのエズセティックのような抽象的な味の曲はこの二人にはマッチしていない。マイルスとコニツツのクールサウンドのプレスティジ盤は名盤でローチも参加しているが、この時点でのドーハム、ロリンズを加えたハードバップとしてはどうかと思う。全体的には二人ともいいソロをしていて、ほかの選曲ももっと二人の味にあったものであればもっと名盤化したのではないかと思う。(しげどん)
Max Roach(ds),Kenny Dorham(tp),Sonny Rollins(ts),Ray Bryant(p:7),Bill Wallace(p:1-6),George Morrow(b)
ロリンズの回で、「よくまあここまで知られざる三拍子曲を集めたと思う。だからといって、全てがいい曲かどうかは微妙」とコメントした。ワルツタイムのジャズは、余程のいい曲でないと聞くのがつらいと思う。3拍子だとローチが激しいソロをしないこともあり、聞き慣れたのか、印象は多少良くなってきた。(hand)
Kenny Dorham(tp),Herb Geller(as),Harold Land(ts),Lou Levy(p),Ray Brown(b),Lawrence Marable(ds)
西海岸のアルト、ハーブ・ゲラーのリーダー盤。「ゲラー・フェラー」のタイトルで発売されたこともある。ドーハムはサイドだが、準主役級の扱いで張り切っている。バッパーの本領発揮で好ましい。私の苦手曲、ジターバグ・ワルツが別の曲だったらもっとよかったのにと思う。(hand)
Cedar Walton(p),Kenny Dorham(tp:1,2,5–7),Junior Cook(ts:1,5,6),Leroy Vinnegar(b),Billy Higgins(ds)
シダー・ウォルトンのデビュー盤にテナーのジュニア・クックとともにドーハムが参加した盤。端正なプレイが人気のシダーだが、私にはあまり魅力的に感じたことがない。もうちょっとメロにこだわって欲しいのだ。この盤も終わり近くのメロのわかりやすいエリントン曲はいいと思う。曲順が逆だったらもっと気に入ったと思う。ドーハムは、淡々としている気がする。(hand)
Abbey Lincoln(vo),Kenny Dorham(tp),Sonny Rollins(ts),Wynton Kelly(p:except 11,b:11),Paul Chambers(b:except 11),Max Roach(ds)
アビー・リンカーンは63年にマックス・ローチ夫人となる。この時点では夫人ではないがこの場では、ドーハム在籍のローチ・クインテットがバックに入っている。これがまさに言葉どおりに、バックの伴奏バンドとしてだけ活用するというもったいない使い方なのだ。リバーサイドにアビーは、「ザッツ・ヒム」、「イッツ・マジック」、「アビー・イズ・ブルー」の3枚を録音しているがいずれも伴奏系だ。これより古い「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」的な管楽器のソロが活かされた盤のような録音をしていれば、いずれも名盤になれた可能性があったと思う。アビーは、60年代に入り、キャンディドからのローチの人種差別プロテスト盤「ウィ・インシスト」や自盤「ストレート・アヘッド」あたりからその過激な個性を発揮するようになるが、リバーサイド盤は、内容が悪いわけではないが、残念としか言いようがない。(hand)
Kenny Dorham(tp),J.J. Johnson(tb),Benny Golson(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Charlie Pership(ds)
ゴルソンの相棒といえば、アート・ファーマーが思い浮かぶ。次候補は、JMでのリー・モーガンか。第3になると、トランペットではなく、トロンボーンのカーティス・フラーではないかと思う。全く思い浮かばないのが、ドーハムだ(笑)。ドーハムと共演したもしかしたら唯一の盤なのだが、聞いてみると意外に悪くない。ゴルソンに比べてソロは少なめだが、ドーハムは相変わらずいい仕事をしている。(hand)
Max Roach(ds),Kenny Dorham(tp),Hank Mobley(ts:1,2,5,7-10),George Morrow(b:1,2,5,7-10),George Coleman(ts:3,4,6),Nelson Boyd(b:3,4,6)
ドーハムはバッパーとしての本領を発揮しており、ピアノレスでバンドとしてもまとまっているのだが、選曲が合っていない気がする。パーカーの鋭角的な音色に合わせて作られた曲は、ハンク・モブレーやジョージ・コールマンのような少々茫洋とした音色はにはあまり向かないと思う。CDオマケの⑧ジス・タイム・ドリームズ・オン・ミーあたりのほうが親しみやすい。(hand)
A. K. Salim(arr,director),Kenny Dorham(tp),Buster Cooper(tb),Johnny Griffin(ts),Pepper Adams(bs,ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Max Roach(ds),Chino Pozo(congas)
ドーハム名義の同タイトルで発売されたこともあるこの盤。聞きもらしは許されないと思い、初めて個人輸入して聞いた。リーダー以外は、有名なメンバーばかりという盤。多分、A.K. サリムもミュージシャンには有名だったのだと思う。内容は、悪くないが、特段良くもない(泣)。アレンジャー、サリムの盤なので、アレンジもいいし、各人のソロもいい。コンガも活躍して、クラブでも使えそうだ。ただ、全曲サリムのオリジナルで、残念ながらキラー・チューンがない。これが一番悲しい。(hand)
Max Roach(ds),Kenny Dorham(tp),Hank Mobley(ts),Ramsey Lewis(p),George Morrow(b)
ドーハムのローチ+4でのラスト作。テナーはモブレーに変わる。シカゴのアーゴ・レーベル録音で、看板ピアニストのラムゼイ・ルイスが珍しいコンボ演奏だ。穏やかなドーハムとモブレーなのに、ローチがいつもの張り切ったドラムでうるさい。ルイスのアーシーな良さもあまり感じられない。ローチという人は、張り切れは客が喜ぶと思っているのか、とにかく思い切り叩くのが嬉しいのか、困った人だ。(hand)
Abbey Lincoln(vo),Kenny Dorham(tp:3-5,7,9),Art Farmer(tp:1,2,6,8,10),Curtis Fuller(tb:1,3,4,7,8),Benny Golson(ts),Jerome Richardson(bs,fl:3,4,7),Sahib Shihab(bs,fl:1,8),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b:3-5,7,9),Sam Jones(b:1,2,6,8,10),Philly Joe Jones(ds)
ドラムがローチからフィリーに変わる。この盤もまたリバーサイドのオールスター的なメンバーが、残念ながら伴奏に徹している。トランペットはドーハムだけでなくファーマーも入っている。(hand)
Betty Carter(vo),Gigi Gryce(arr),Ray Copeland(tp),Kenny Dorham(tp:1–6),Melba Liston(tb),Jimmy Powell(as:1–6),Benny Golson(ts:1–6),Sahib Shihab(bs:1–6),Jerome Richardson(ts,fl.bassoon:7–12),Wynton Kelly(p),Sam Jones(b:1,3–6),Peck Morrison(b:2,7–12),Specs Wright(ds)
超マイナーレーベル、ピーコックが豪華ジャズメンを集めてベティ・カーターの伴奏をさせた盤。演奏には加わっていないジジ・グライスらのアレンジだ。カーターはスキャットもうまいので、スキャットのアドリブがある分、楽器のソロは減ってしまう。ドーハムは前半(A面)6曲のみの参加で、レイ・コープランドとの2トランペットだ。アビー・リンカーンのリバーサイド盤よりも楽器ソロはある。②のベニー・ゴルソンのソロは、レスター・ヤングを感じさせる。④の短いトランペットソロは、2人のどちらか判別できない。(hand)
Kenny Dorham(tp),John Coltrane(ts),Cecil Taylor(p),Chuck Israels(b),Louis Hayes(ds)
セシル・テイラー「ハード・ドライブ」が本来盤だが、その後のコルトレーン人気でコルトレーン名義の「コルトレーン・タイム」というタイトルになってしまった盤。テイラーとコルトレーンにドーハム?と思って聞くと、いたって普通のハードバップ盤で、フリーで有名なテイラーなのだが、ピアノがちょっと変わったソロをとるので面白い、くらいの内容だ。同時期のコルトレーンの代表作「ソウルトレーン」等と同等のいい内容だと思う。もっと聞かれてほしい盤だ。(hand)
Kenny Dorham(tp),Barney Wilen(ts),Duke Jordan(p),Gilbert Rovere(b),Daniel Humair(ds)
アナログ時代の日本タイトルは「ウィラン=ドーハム=ジョーダン」。当時、日本で知られぬバルネ盤の販促のためだと思うが、実際に聞いてみると。三者は対等に活躍するので、間違ってはいないタイトルだと思う。しかも、MCは、ドーハムなので、ドーハム渡欧時のリーダーライブの可能性が高いが、仏RCAがバルネを売るために、リーダー盤扱いにしたと思われる。ジャケ写もバルネ単独だ。①ベサメ・ムーチョなど、ラテンっぽいジャズはドーハムは得意だ。本盤は、CD化で、別テイクや別テイク盤「モア・フロム・バルネ」も発掘されることになるが、どれも好内容で、当日はメンバーが絶好調であったのだと思う。バルネは、その後1986年に仏IDAからの3枚で人気が沸騰し、それに目を付けた私の苦手な日本人プロデューサーのK氏により、1989年からは日本のアルファから甘口のリーダー盤が沢山出ることになる。(hand)
快活なドーハムを聴くことができるバルネ・ウィランの名アルバム 。1959年クラブサンジェルマンでのライプだが、スタンダードを中心に演奏している。弱冠二十歳のウィランをドーハムとデュークジョーダンがバックアップした形で、どの演奏も安定しており、クオリティーが高い。特にジョーダンの止めどなく流れる鍵盤捌きが、大変素晴らしい。目の前でこの演奏が繰り広げられた60年前の夜が羨ましい。(ショーン)
フランスのジャズの保守的さは好きだ。この作品もわかりやすい保守的な演奏で、バルネ・ウィラン人気もそのあたりに起因しているのでは?と思う。ジャズ的な創造的魅力はあまり感じない。(しげどん)